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「テクノスーパーライナー」の版間の差分

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== 小笠原TSL ==
== 小笠原TSL ==
[[画像:Super Liner Ogasawara.jpg|300px|thumb|right|三井造船玉野事業所に繋留されているSUPER LINER OGASAWARA]]
実用船の1隻目は、先に実験船「飛翔」にてデータを検証し建造されたTSL-A型船で、海上での速度は40[[ノット]]近い時速約70kmの航行を可能としており、[[アルミ合金]]製としては世界最大級の超高速[[貨客船]]として運航される予定であった。船名は一般から公募し、[[石原慎太郎]][[東京都]]知事夫人により、「'''SUPER LINER OGASAWARA'''」と命名された。海上試運転では42.8ノットを記録した。
実用船の1隻目は、先に実験船「飛翔」にてデータを検証し建造されたTSL-A型船で、海上での速度は40[[ノット]]近い時速約70kmの航行を可能としており、[[アルミ合金]]製としては世界最大級の超高速[[貨客船]]として運航される予定であった。船名は一般から公募し、[[石原慎太郎]][[東京都]]知事夫人により、「'''SUPER LINER OGASAWARA'''」と命名された。海上試運転では42.8ノットを記録した。


当初の運行は[[東京港|東京]] - [[小笠原村|小笠原]]航路が予定されていたが、現在の「[[おがさわら丸]]」に較べ小型のため接岸時に波の影響を受けやすく欠航率が高まることに加え、[[2005年]](平成17年)の[[原油価格]]高騰の影響をうけ、軽油を使用するTSLは一度の往復にかかる費用が2,500万円近くとなり、運航費用に4倍近くの差(従来の重油を使用する船舶は一往復600万円程度)ができてしまうことがわかり、支援を予定していた東京都が撤退。それに続き[[国土交通省]]も撤退し、運行会社の[[小笠原海運]]は、支援が受けられないのならば運行しても半年で会社が倒産するということで、TSLの受け取りを拒否した。「SUPER LINER OGASAWARA」は運行されないまま廃船になる可能性もあり、2008年(平成20年)4月現在、建造所である[[三井造船]]玉野事業所に繋留されたままである。なお、TSLを保有するテクノ・シーウェイズ(三井造船系企業)は小笠原海運に対し契約不履行で損害賠償を求める提訴をした<ref>[http://www.asahi.com/special/061213/TKY200612110085.html 小笠原就航断念で海運会社を提訴] - 朝日新聞(asahi.com)2006年12月11日</ref>ものの、小笠原海運側はTSLはコストが高く、国の支援が受けられなければ経営が成立しないことは最初から国土交通省は承知していた筈であるとして全面的に争う構えを見せている。
当初の運行は[[東京港|東京]] - [[小笠原村|小笠原]]航路が予定されていたが、現在の「[[おがさわら丸]]」に較べ小型のため接岸時に波の影響を受けやすく欠航率が高まることに加え、[[2005年]](平成17年)の[[原油価格]]高騰の影響をうけ、軽油を使用するTSLは一度の往復にかかる費用が2,500万円近くとなり、運航費用に4倍近くの差(従来の重油を使用する船舶は一往復600万円程度)ができてしまうことがわかり、支援を予定していた東京都が撤退。それに続き[[国土交通省]]も撤退し、運行会社の[[小笠原海運]]は、支援が受けられないのならば運行しても半年で会社が倒産するということで、TSLの受け取りを拒否した。「SUPER LINER OGASAWARA」は運行されないまま廃船になる可能性もあり、2008年(平成20年)8月現在、建造所である[[三井造船]]玉野事業所に繋留されたままである。なお、TSLを保有するテクノ・シーウェイズ(三井造船系企業)は小笠原海運に対し契約不履行で損害賠償を求める提訴をした<ref>[http://www.asahi.com/special/061213/TKY200612110085.html 小笠原就航断念で海運会社を提訴] - 朝日新聞(asahi.com)2006年12月11日</ref>ものの、小笠原海運側はTSLはコストが高く、国の支援が受けられなければ経営が成立しないことは最初から国土交通省は承知していた筈であるとして全面的に争う構えを見せている。


[[小笠原諸島]]([[父島列島]]と[[母島列島]])には自然保護の目的もあり[[空港]]が作れないでいる([[硫黄島 (東京都)|硫黄島]]と[[南鳥島]]には飛行場があるが、両島に一般住民はおらず観光客は利用できない。ちなみに、硫黄島から母島までは200km以上、南鳥島から母島は1000km以上離れている)ため、公共交通手段は船舶による渡航しかなく、6日に約1便運航され片道25時間かかる客船「おがさわら丸」か、不定期運航で片道約45時間の貨物船「[[共勝丸|第二十八共勝丸]]」を利用するしかなかった。そのためTSLの運行は本土との往来が活発になるため期待されていた。東京都や国土交通省もそれにあわせて、利用者が増えるとの資料をもとに説明し、施設などを宿泊できるよう受け入れ態勢を整えるよう求めたが、就航が白紙になったため、島民には施設増設などの経済的負担だけが残る結果になった。その後、2006年(平成18年)には国土交通省と東京都は改めて空路整備の検討に入っている。<ref>[http://www.ogasawara-channel.com/news/archives/000717.html 小笠原ニュース:高速船断念で空路整備へ] - 小笠原チャンネル</ref>
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2008年10月9日 (木) 10:51時点における版

テクノスーパーライナーA船型「希望」(2003年、清水港にて)
展示保存されているテクノスーパーライナーF船型「疾風」(神戸海洋博物館

テクノスーパーライナーTSL, techno super liner)は、旧運輸省が中心となって計画し、最新の船舶技術を使用して建造された高速船の総称である。実験船が2隻、実用船が1隻建造された。

開発経緯

従来からの輸送機関として航空機船舶があげられるが、航空機は速度は速いがコストがかかり、船舶は大量輸送が可能だが速度は遅い。そこでこの2つの輸送機関の中間的な輸送機関として構想されたのが「テクノスーパーライナー」である。1989年平成元年)から運輸省(当時)の指導の下に国家プロジェクトとして研究開発が始まった。国内輸送だけでなく東アジア地域との国際輸送も視野に入れており、研究開発目標は速力50kt、載貨重量1,000t、航続距離500海里以上、波高4~6mでも安全に航行できることとされた。

実験船は2種類建造され、一方はTSL-A船型と名付けられ浮力とホバークラフトのような空気圧力によって浮上する。研究船は実用船の想定サイズの半分で「飛翔」と名づけられた。もう一方はTSL-F船型と名付けられ浮力と水中翼の揚力によって、船体を海上から浮かせて高速運行を目指した船である。こちらは実用船の6分の1の大きさで建造され、「疾風」と名づけられた。

その後、1995年(平成7年)までTSL-A船型「飛翔」及びTSL-F船型「疾風」を用いた実海域での航海試験も行い、性能としては開発目標をクリアした。

しかし現在のところ、一時的に民間航路に就航したことがあるものの、燃料費など航空機並みの運用コストが掛かることもあって民間利用の目処が立っていない。(詳細は後述)

TSL-A船型

空気圧力式複合支持船型と呼ばれる、空気浮上型の双胴船である。2つの船体間の空間にディーゼルエンジン駆動のファンによって空気を送り込み、その圧力によって浮上する。推進はガスタービンエンジンによるウォータージェット推進。イギリスでは同様のシステムで浮上するフェリーがドーバー海峡に就航していた[1]。実験船「飛翔」の設計・建造は三菱重工業三井造船の共同による。

「飛翔」は静岡県が防災船として購入し「希望」と改称され、1日1往復の清水港 - 下田港を結ぶカーフェリーとしても利用されていた。しかし、原油価格高騰の影響(燃費は軽油1リットルあたり8m)[2]を受けて2005年(平成17年)11月に運行停止、2006年(平成18年)3月に廃止となった。2006年4月以降は横浜港に係留(係留費:10万円/日)され、売却先が決定しない場合は解体されることとなった。

後に静岡県知事の石川は三菱重工業と結んでいたエンジンのリース契約を解除することで合意、「希望」の廃船が事実上決定した(エンジンリースは途中解除だったので、違約金が発生している)。[3]

その後、売却先を探していた静岡県は軍事転用の懸念などから廃船を決定し、製造元である三菱重工業に随意契約により解体を依頼。解体費用は9億円とされていた[4]が、県は鉄くずなどのスクラップ資源の売却益を差し引いてプラスの収益を得た。なお、三菱重工業は構内での解体を行わずに産業廃棄物処理業者に4,000万円で売却した。技術流失を防ぐ為に引き受けた解体工事を丸投げした経緯については一切の説明を拒否している。

TSL-F船型

揚力式複合支持船型と呼ばれる、全没型水中翼船である。かつて米海軍で研究されたモデルで、没水体の浮力と、水中翼の浮力によって船体を浮き上がらせる。実験船「疾風」で、各種の実験を行ったが、構造上、挙動が不安定なため失敗に終わった[1]。実験船「疾風」の設計・建造は川崎重工業(現 川崎造船)、石川島播磨重工業住友重機械工業(現 IHIMU)、NKK日立造船(現 ユニバーサル造船)の共同による。「疾風」は実験終了後神戸海洋博物館で展示されている。

小笠原TSL

三井造船玉野事業所に繋留されているSUPER LINER OGASAWARA

実用船の1隻目は、先に実験船「飛翔」にてデータを検証し建造されたTSL-A型船で、海上での速度は40ノット近い時速約70kmの航行を可能としており、アルミ合金製としては世界最大級の超高速貨客船として運航される予定であった。船名は一般から公募し、石原慎太郎東京都知事夫人により、「SUPER LINER OGASAWARA」と命名された。海上試運転では42.8ノットを記録した。

当初の運行は東京 - 小笠原航路が予定されていたが、現在の「おがさわら丸」に較べ小型のため接岸時に波の影響を受けやすく欠航率が高まることに加え、2005年(平成17年)の原油価格高騰の影響をうけ、軽油を使用するTSLは一度の往復にかかる費用が2,500万円近くとなり、運航費用に4倍近くの差(従来の重油を使用する船舶は一往復600万円程度)ができてしまうことがわかり、支援を予定していた東京都が撤退。それに続き国土交通省も撤退し、運行会社の小笠原海運は、支援が受けられないのならば運行しても半年で会社が倒産するということで、TSLの受け取りを拒否した。「SUPER LINER OGASAWARA」は運行されないまま廃船になる可能性もあり、2008年(平成20年)8月現在、建造所である三井造船玉野事業所に繋留されたままである。なお、TSLを保有するテクノ・シーウェイズ(三井造船系企業)は小笠原海運に対し契約不履行で損害賠償を求める提訴をした[5]ものの、小笠原海運側はTSLはコストが高く、国の支援が受けられなければ経営が成立しないことは最初から国土交通省は承知していた筈であるとして全面的に争う構えを見せている。

小笠原諸島父島列島母島列島)には自然保護の目的もあり空港が作れないでいる(硫黄島南鳥島には飛行場があるが、両島に一般住民はおらず観光客は利用できない。ちなみに、硫黄島から母島までは200km以上、南鳥島から母島は1000km以上離れている)ため、公共交通手段は船舶による渡航しかなく、6日に約1便運航され片道25時間かかる客船「おがさわら丸」か、不定期運航で片道約45時間の貨物船「第二十八共勝丸」を利用するしかなかった。そのためTSLの運行は本土との往来が活発になるため期待されていた。東京都や国土交通省もそれにあわせて、利用者が増えるとの資料をもとに説明し、施設などを宿泊できるよう受け入れ態勢を整えるよう求めたが、就航が白紙になったため、島民には施設増設などの経済的負担だけが残る結果になった。その後、2006年(平成18年)には国土交通省と東京都は改めて空路整備の検討に入っている。[6]

今後の構想

2005年11月の一部報道によると、在日米軍再編によりグアムへ移転する予定の海兵隊高速輸送艦(HSV)として、TSLを転用する案が検討されている模様だが、実現可能性は不透明という。

2006年6月27日に国土交通大臣北側一雄が和歌山県日高港より淡路島間を往復する試験航海に試乗し、時速80km以上での安定した航行について『様々な方向で活用したい』と語りTSLのアピールを行った。

関連項目

脚注

  1. ^ a b 日経ビジネスオンライン 宮田秀明の「経営の設計学」
  2. ^ みのもんたの朝ズバッ!」(TBS 2007年4月4日放送)による報道。
  3. ^ 読売新聞 2006年8月5日付
  4. ^ 「みのもんたの朝ズバッ!」(TBS 2007年4月4日放送)による報道。
  5. ^ 小笠原就航断念で海運会社を提訴 - 朝日新聞(asahi.com)2006年12月11日
  6. ^ 小笠原ニュース:高速船断念で空路整備へ - 小笠原チャンネル

外部リンク

TSL-A型、TSL-F型
小笠原TSL