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「エスシタロプラム」の版間の差分

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'''エスシタロプラム'''(''Escitalopram'')とは[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]](SSRI)と呼ばれる三世代抗うつ薬の一つである。<br />
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[[デンマーク]]のH. Lundbeck A/S社により合成・開発され、[[2001年]]に[[スウェーデン]]で承認された後、[[2010年]][[10月]]現在には世界96ヵ国で使用されており、[[2010年]][[8月]]現在で投与された患者数は2億3千万人以上にも上る。
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<!-- TODO: 発売されたら、その情報について載せてください。 -->
<!-- TODO: 発売されたら、その情報について載せてください。 -->
== 特徴 ==
== 特徴 ==
[[ファイル:Lexapro pills.jpg|thumb|のね|レクサプロの錠剤]]
[[ファイル:Lexapro pills.jpg|thumb|none|レクサプロの錠剤]]
光学分離された''S''-シタロプラムは既存のSSRIのなかで最も選択的なセロトニントランスポーター再取り込み阻害作用を有る。<br />
光学分離された''S''-シタロプラム(エスシタロプラム)は既存のSSRIのなかで最も選択的なセロトニン再取り込み阻害作用を有しており、ノルアドレナリンの1190倍、ドパミンの19000倍のセロトニン再取り込み阻害作用が''in vitro''で確認されている。
反対に''R''-シタロプラムは''S''-シタロプラムのセロトニントランスポーター再取り込み阻害作用を競合的に阻害し、その作用を減弱させる。<br />
また、''R''-シタロプラムはヒスタミンH<sub>1</sub>受容体阻害作用やCYP2D6阻害作用を有している。<br />
そのため、ヒスタミンH<sub>1</sub>受容体を介した傾眠や鎮静、CYP2D6阻害作用による薬物相互作用副作用が発現する可能性がある。


反対に''R''-シタロプラムはエスシタロプラムのセロトニン再取り込み阻害作用を競合的に阻害し、その作用を減弱させる。<br />
また、うつ病患者を対象とした用量反応試験において2名の死亡者が出た。<br />
その他に、''R''-シタロプラムはヒスタミンH<sub>1</sub>受容体阻害作用やCYP2D6阻害作用を有している。<br />
1名の亡者はプラセボとの果関係が否定されたが、もう1名の死亡者は凍死でありエスシタロプラムとの因果関係は不明である。
そのため、ヒスタミンH<sub>1</sub>受容体を介した傾眠や鎮静、CYP2D6阻害作用による薬物相互作用のような副作用が発現する可能性がある。

また、うつ病患者を対象とした用量反応試験において、エスシタロプラムを投与された被験者の死亡者が出た。<br />
死因は凍死でありエスシタロプラムとの因果関係は不明である。
プラセボでも1名の死亡者が出ているが、因果関係は否定されている。


== 代謝 ==
== 代謝 ==
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白人の1/20人がCYP2D6を日本人の1/5人がCYP2C19遺伝子を欠損、あるいは低活性であるとの報告がある。<br />
白人の1/20人がCYP2D6を日本人の1/5人がCYP2C19遺伝子を欠損、あるいは低活性であるとの報告がある。<br />
そのため、日本の第I相試験では代謝などの薬物動態を考慮して、CYP2C19遺伝子型が欠損してる群(PM)と欠損していない(EM)の被験者を分けてそれぞれ行った。<br />
そのため、日本の第I相試験では代謝などの薬物動態を考慮して、CYP2C19遺伝子型が欠損してる群(PM)と欠損していない(EM)の被験者を分けてそれぞれ行った。<br />
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また[[イギリス|英国]]でもCYP2C19EMの白人のみを対象とした臨床試験が行われたが、日本人とほぼ類似した薬物動態の推移を示した<ref name="escitalopram-003">{{Cite journal| 和書| coauthors=佐藤 宏宣、平安良雄| year = 2011| month = 5| title=Escitalopram臨床薬物動態試験――単回投与および反復投与試験(英国)| journal = 臨床精神薬理| issn = 1343-3474| valume = 14| issue = 5}}</ref>。<br />
しかし、日本人に比べて白人被験者のほうが血中濃度が低かった。 これは白人被験者のほうが体重が大きいことに起因する。


単回投与ではCYP2C19のPMが同EMに比べ、AUCが2倍以上になったという結果も出ている<ref name="escitalopram-001" />。
単回投与ではCYP2C19PMが同EMに比べ、AUCが2倍以上になったという結果も出ている<ref name="escitalopram-001" />。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2011年5月10日 (火) 17:43時点における版

エスシタロプラム
ファイル:Escitalopram-structure.png
ファイル:Escitalopram-3D-model.png
IUPAC命名法による物質名
臨床データ
胎児危険度分類
  • US: C
法的規制
薬物動態データ
生物学的利用能80%
血漿タンパク結合~56%
代謝CYP2C19
CYP3A4
CYP2D6
半減期24.6~55.8時間
(20mg, β相, 単回)
排泄尿中: 35.1%
データベースID
CAS番号
128196-01-0 (塩基)
ATCコード N06AB10 (WHO) (塩基)
PubChem CID: 146570
DrugBank DB01175
ChemSpider 129277
KEGG D07913
化学的データ
化学式C20H21FN2O
分子量324.3919g/mol(塩基)[2]
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エスシタロプラム(Escitalopram)とは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)と呼ばれる三世代抗うつ薬の一つである。
シタロプラムエナンチオマーであり、S体であるエスシタロプラムがSSRIとしての活性がある。

デンマークのH. Lundbeck A/S社により合成・開発され、2001年スウェーデンで承認された後、2010年10月現在には世界96ヵ国で使用されており、2010年8月現在で投与された患者数は2億3千万人以上にも上る。

エスシタロプラムシュウ酸塩として、レクサプロ®(Lexapro®)などの商品名で発売されている。

特徴

レクサプロの錠剤

光学分離されたS-シタロプラム(エスシタロプラム)は既存のSSRIのなかで最も選択的なセロトニン再取り込み阻害作用を有しており、ノルアドレナリンの1190倍、ドパミンの19000倍のセロトニン再取り込み阻害作用がin vitroで確認されている。

反対にR-シタロプラムはエスシタロプラムのセロトニン再取り込み阻害作用を競合的に阻害し、その作用を減弱させる。
その他に、R-シタロプラムはヒスタミンH1受容体阻害作用やCYP2D6阻害作用を有している。
そのため、ヒスタミンH1受容体を介した傾眠や鎮静、CYP2D6阻害作用による薬物相互作用のような副作用が発現する可能性がある。

また、うつ病患者を対象とした用量反応試験において、エスシタロプラムを投与された被験者の死亡者が出た。
死因は凍死でありエスシタロプラムとの因果関係は不明である。 プラセボでも1名の死亡者が出ているが、因果関係は否定されている。

代謝

エスシタロプラムはCYP2C19CYP2D6CYP3A4で代謝され、N-脱メチル化が主要代謝経路である。 一次代謝物としてS-demethyl体(S-DCT)、二次代謝物にはCYP2D6のみが関与してS-didemethyl体(S-DDCT)が産生される。

白人の1/20人がCYP2D6を日本人の1/5人がCYP2C19遺伝子を欠損、あるいは低活性であるとの報告がある。
そのため、日本の第I相試験では代謝などの薬物動態を考慮して、CYP2C19遺伝子型が欠損してる群(PM)と欠損していない(EM)の被験者を分けてそれぞれ行った。
また、英国でもCYP2C19EMの白人のみを対象とした臨床試験が行われたが、日本人とほぼ類似した薬物動態の推移を示した[3]
しかし、日本人に比べて白人被験者のほうが血中濃度が低かった。 これは白人被験者のほうが体重が大きいことに起因する。

単回投与ではCYP2C19PMが同EMに比べ、AUCが2倍以上になったという結果も出ている[1]

脚注

  1. ^ a b 「Escitalopram臨床薬物動態試験――単回投与および反復投与試験(日本)」『臨床精神薬理』第5号、2011年5月、ISSN 1343-3474 
  2. ^ DrugBank: Escitalopram (DB01175)”. 2011年4月27日閲覧。
  3. ^ 「Escitalopram臨床薬物動態試験――単回投与および反復投与試験(英国)」『臨床精神薬理』第5号、2011年5月、ISSN 1343-3474 

参考文献

  • Stephen M. Stahl. 精神薬理学エッセンシャルズ 神経科学的基本と応用 第3版. ISBN 978-4-89592-640-9 
  • 『臨床精神薬理』第5号、2011年5月、ISSN 1343-3474