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「薬物依存症」の版間の差分

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それだけでなく、ニコチンに対する依存症である喫煙のように、依存者自身やその周囲にいる他者へ[[受動喫煙]]として悪影響を与えることで、[[生活習慣病]]や重大な死因、気管支の疾患や胎児へ影響し、健康に対する影響が社会的に甚大である薬物もある。アルコールへの依存も、未成年者の脳の発育や胎児、生活習慣病や[[肝臓]]の疾患に影響する。これらを日本での社会的な費用に換算すると、喫煙は社会全体で約4兆円の損失、アルコールは社会全体で医療費や収入減などを含め約6兆6千億円になるとされる<ref>[http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/index.html 健康日本21]</ref>。
それだけでなく、ニコチンに対する依存症である喫煙のように、依存者自身やその周囲にいる他者へ[[受動喫煙]]として悪影響を与えることで、[[生活習慣病]]や重大な死因、気管支の疾患や胎児へ影響し、健康に対する影響が社会的に甚大である薬物もある。アルコールへの依存も、未成年者の脳の発育や胎児、生活習慣病や[[肝臓]]の疾患に影響する。これらを日本での社会的な費用に換算すると、喫煙は社会全体で約4兆円の損失、アルコールは社会全体で医療費や収入減などを含め約6兆6千億円になるとされる<ref>[http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/index.html 健康日本21]</ref>。


==原因==
==依存性薬物==
中毒を引き起こすと知られている薬物は合法・違法、処方薬・市販薬などに区別される。
中毒を引き起こすと知られている薬物は合法・違法、処方薬・市販薬などに区別される。
米国中毒医学学会によると、
米国中毒医学学会によると、


* [[中枢神経刺激薬]](俗にアッパーと呼ばれる)
* [[覚せい剤]] (中度から重度の精神的依存、離脱は純粋に心身・精神的):
** [[アンフェタミン]] や [[メタンフェタミン]]
** [[アンフェタミン]] や [[メタンフェタミン]](DRA作用による)
** [[コカイン]]
** [[コカイン]]
** [[ニコチン]]
** [[ニコチン]]
** [[カフェイン]]
** [[カフェイン]]
** '''幻覚剤'''(以下の薬物はセロトニン5-HT2受容体を介して幻覚作用を発現する)
* [[鎮静剤]] と [[睡眠薬]] (軽度から重度の精神的依存、重度の身体依存、突然の離脱は致命的なことがある)
*** ''インドールアミン系''
*** [[LSD]]や[[ジメチルトリプタミン]](DMT)、[[ジプロピルトリプタミン]](DPT)
*** ''フェネチルアミン系''
*** [[:en:2C-B]]や[[:en:DOC]]、[[:en:25I-NBOMe]]
* [[鎮静剤]] と [[睡眠薬]]
** [[アルコール]]
** [[アルコール]]
** [[バルビツール酸]]
** [[バルビツール酸]]
** [[ベンゾジアゼピン]](非ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬であるZドラッグは、高用量にて抑制性神経細胞を抑制することによって一過性の脱抑制を生じる)
** [[ベンゾジアゼピン]] 特に[[フルニトラゼパム]]・[[トリアゾラム]]・[[テマゼパム ]]および nimetazepam Z-drugsはベンゾジアゼピンと同様の効果
** [[メタカロン]]、 [[キナゾリノン]]関連の鎮静催眠薬
** [[メタカロン]]、 [[キナゾリノン]]関連の鎮静催眠薬


* [[アヘン]]剤と[[オピオイド]]鎮痛薬 (軽度から重度の精神依存、軽度から重度の身体依存、突然の離脱が致命的なことは殆ど無い)
* [[アヘン]]剤と[[オピオイド]]鎮痛薬
** [[モルヒネ]] と [[コデイン]] 、それらの天然麻薬性鎮痛薬
** [[モルヒネ]] と [[コデイン]] 、それらの天然麻薬性鎮痛薬
** 半合成アヘン(ヘロインなどモルヒネジアセテート、ジアセチルモルヒネ) [[オキシコドン]] 、[[ブプレノルフィン]] 、[[ヒドロモルフォン]]
** 半合成アヘン(ジアセチルモルヒネとも呼ばれるヘロインなどモルヒネジアセテート) [[オキシコドン]] 、[[デスモルヒネ]](クロコディル)、[[ブプレノルフィン]] 、[[ヒドロモルフォン]]
** 完全合成オピオイド [[フェンタニル]] [[メペリジン]]/[[ペチジン]]、[[メドン]]
** 完全合成オピオイド [[フェンタニル]] [[メペリジン]]/[[ペチジン]]、[[メドン]]





2011年12月19日 (月) 11:43時点における版

薬物依存症
依存症専門の精神科医による、精神に作用する薬物の有害性についての投票[1]
概要
診療科 精神医学, 心理学, 麻薬学[*], 中毒医学[*]
分類および外部参照情報
ICD-10 F10.2-F19.2
ICD-9-CM 303-304
MeSH D019966

薬物依存症(Substance Dependence、やくぶついそんしょう、やくぶついぞんしょう)とは精神疾患の1つで、脳内の神経伝達物質として報酬系などに作用する薬物である「脳に直接作用する物質」に対する依存が多い。ほかの依存症には、脳内麻薬が多量に分泌する「状況への依存」(ギャンブル依存症、ショッピング依存症など)や「人間関係の依存」(共依存など)がある。

医学上は、あらゆる薬物への依存が薬物依存症に含められる。また「薬物」を法制上禁止されている薬物という意味合いに捉え、特に麻薬や違法とされる向精神薬覚せい剤などによる薬物依存症のことを指す言葉として用いられることもある。一般的に幻覚剤には強い依存性はなく、さらに他の薬物の依存症の治療に良好な結果が見られるものもある。

薬物依存の症状としては、精神的依存と身体的依存がある。両者の違いは依存症の項に詳しく書かれている。

依存

薬物依存症は、意志や人格に問題があるというより、依存に陥りやすい脳内麻薬分泌を正常に制御できない状況が引き起こした「病気」である。「まだ大丈夫」と問題性を否認しているうちに、肉体・精神・実生活を徐々に破壊していく。家族などの周囲をも巻きこみながら進行し、社会生活や生命の破滅にいたることも稀でない。また、以前は薬物中毒、略して薬中(やくちゅう)と言われたこともあるが、差別用語(薬物で誘発された精神疾患は、重篤になりやすい)にあたることから現在ではほとんど使われていない。

また、精神疾患の強迫性障害に伴う気分変調を紛らわすという目的で薬物に依存し、アルコール依存症などに陥る場合もある。

それだけでなく、ニコチンに対する依存症である喫煙のように、依存者自身やその周囲にいる他者へ受動喫煙として悪影響を与えることで、生活習慣病や重大な死因、気管支の疾患や胎児へ影響し、健康に対する影響が社会的に甚大である薬物もある。アルコールへの依存も、未成年者の脳の発育や胎児、生活習慣病や肝臓の疾患に影響する。これらを日本での社会的な費用に換算すると、喫煙は社会全体で約4兆円の損失、アルコールは社会全体で医療費や収入減などを含め約6兆6千億円になるとされる[2]

依存性薬物

中毒を引き起こすと知られている薬物は合法・違法、処方薬・市販薬などに区別される。 米国中毒医学学会によると、


依存性

薬物中毒の可能性は、個々の物質ごとにそれぞれ異なる。 用量・頻度・特定物質・投与経路・時間の薬物動態などが、薬物中毒形成の要素である。

医学雑誌The Lancetでは、20の薬物について0-3の範囲で身体依存・精神依存・多幸感の平均スコア尺度を示した。カフェインは研究に含まれていない .[3]

薬物 平均 多幸感 精神的依存 身体依存
ヘロイン 3.00 3.0 3.0 2.9
コカイン 2.37 3.0 2.8 1.3
アルコール 1.93 2.3 1.9 1.6
たばこ 2.23 2.3 2.6 3.0
バルビツール酸 2.01 2.0 2.2 1.8
ベンゾジアゼピン 1.83 1.7 2.1 1.8
アンフェタミン 1.67 2.0 1.9 1.1
大麻 1.47 1.9 1.7 0.8
LSD 1.23 2.2 1.1 0.3
エクスタシー 1.13 1.5 1.2 0.7

離脱症状と耐性

離脱症状(りだつしょうじょう)とは、摂取した薬物が身体から分解や排出され体内から減ってきた際に起こるイライラをはじめとした不快な症状である。このような離脱症状を回避するために、再び薬物を摂取することを繰り返し薬物に依存することとなる。またアルコールのように、震戦(手の震え)などの身体に禁断症状が出る場合もある。

依存性薬物の中には、連用することによってその薬物が効きにくくなるものがあるが、これを薬物に対する耐性の形成と呼ぶ。薬物が効きにくくなるたびに使用量が増えていくことが多く、最初は少量であったものが最後には致死量に近い量を摂取するようになることすらある。耐性が形成されやすい薬物として、アンフェタミン類、モルヒネ類(オピオイド類)、アルコールなどが挙げられる。

社会問題化

依存性のある治療薬の濫用が問題として取り上げられることもある。例えば、覚醒作用のある薬物で、眠気を発作的に引き起こすナルコレプシーや、アメリカで注意欠陥・多動性障害(ADHD)に処方されるメチルフェニデート(商品名はリタリン®)やアンフェタミンである[4][5]。(アンフェタミンは、日本では覚せい剤取締法で覚醒剤に指定され規制されている。)

日本では、2007年(平成19年)ごろ「リタリン依存」が社会問題化し、厳しく管理されるようになった[6]

薬物依存症の回復

ニコチンの依存では、さまざまな禁煙プログラムなども考え出されている。また、薬物依存を専門に扱う病院もある。

ただし、麻薬の薬物依存は基本的に一度なったらその後は治ることはなく、一生依存症と付き合っていかなければならない。油断すると再度使用してしまうため、周りの人間の手助け、そして本人が一生「止め続ける」強い意志を持ち続けることが重要である[7]

生理的な回復

依存性薬物の作用機序は様々であるが、その多くに直接的にせよ間接的にせよ共通しているのが、脳内で本来働いている物質と同様に働き、脳がその違いを区別できないアゴニストとしての作用によるものである。典型的な例としてはオピオイド(例: ヘロインモルヒネアヘン等)が挙げられる。特定の受容体に対して本来正常に機能している内因性の脳内物質(この場合はβ-エンドルフィンなどいくつかあるオピオイド受容体のアゴニストまたはアンタゴニストといった内因性リガンド)に代わり通常(内因性のアゴニスト)ではありえないほど強力かつ長時間アゴニストとして作用することによって麻薬的な効果を発現する。また、それらに対して拮抗的に作用するのがナルトレキソンナロキソンなどのアンタゴニストである。

身体的依存性のある薬物の血中濃度が低下してくると、生理的・心理的に不快で(しばしば耐え難い、しかしオピオイドの場合はどれほど激しい離脱症状であっても通常致命的ではない)多彩な症状が離脱症状(禁断症状)として表れる。この身体的依存の結果である激しい離脱症状の辛さは、再び薬物を摂取したいという欲求の強力な誘因の一つとなる。

離脱症状はアゴニストとして働いていた物質が単に身体にとって不十分になれば程度の差はあれ生じるが、個々の薬物の摂取後の血中濃度や薬物動態と症状の発現や程度は必ずしも相関しないことが多い。この時もし治療から脱落せずに再び薬物を摂取せずに断薬に成功すれば、慢性的な薬物摂取のため低下していた内因性アゴニストの分泌や受容体の数、感受性等が徐々に回復して正常化していくことで離脱症状も同様に徐々に薄れていき、最終的には離脱症状と身体的依存の状態から完全に回復する。しかし一般的に行われている治療では、それでもまた薬物中毒者に戻ってしまう人々の割合、すなわち再発率は高いことが多くの研究によって明らかになっている。

薬物における耐性現象、そして身体的依存による離脱症状の基本的な説明としては、人体のホメオスタシスがある。薬物摂取による慢性的な過度の多幸感などは人体からすれば明らかに異常な状態であるので、慢性的な薬物摂取によって異常な状態になった人体を、薬物が摂取されたまま正常なバランスを取ろうとする働きの結果、これが耐性と身体的依存の形成と急な断薬による離脱症状という形を取って現れるのである。

また、耐性が極度に上昇した者では、未使用者にとっては致死的となる量を摂取しても平気である場合が珍しくない。

心理的なサポート

アルコール依存症を回復する目的で、同じような境遇の人々が集まりお互いに影響を与える自助グループがある。

幻覚剤による心理療法

ロシアの薬物乱用の専門治療を行う精神科医のエフゲニー・クルピツキーは20年間にわたり、麻酔薬のケタミンを幻覚剤として利用するアルコール依存症の治療を行ってきたが、111人の被験者のうち66%が少なくとも1年間禁酒を継続し、対象群では24%であった[8]などのいくつかの報告[9][10]がある。また、ケタミンはヘロインの依存症患者に対しても薬物の利用を中断する効果が見られた[11][12]。アヘンの禁断症状を減衰させるという報告もある[13]。幻覚剤のアヤワスカがアルコールや麻薬の常習を減らしたという報告もある[14]

治療とリハビリテーションのための社会体制の整備

薬物乱用を早期発見し、早期治療に結びつけるため、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)は次の社会体制整備を必須としている。

  • 薬物乱用を早期発見し、治療施設につないでゆく。
  • 医療施設のない地域にも活動を拡大していく。
  • 医療者・ソーシャルワーカーカウンセラーらのチームによる精神的・社会的介入。
  • カウンセリング、回復のための薬物治療、復職など社会復帰への支援、の協同。

脚注

  1. ^ Nutt, D.; King, L. A.; Saulsbury, W.; Blakemore, C. (2007). “Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse” (pdf). The Lancet 369 (9566): 1047–1053. doi:10.1016/S0140-6736(07)60464-4. PMID 17382831. http://www.antoniocasella.eu/archila/NUTT_2007.pdf.  編集
  2. ^ 健康日本21
  3. ^ Nutt, King, Saulsbury, & Blakemore (2007). Development of a rational scale to assess the harm of drugs of potential misuse. Lancet, 369, 1047-1053.
  4. ^ 「脳を活性化する薬」が米国知識層に蔓延:読者からも多数の使用報告(1)WIRED.jp、2008年5月19日)
  5. ^ 覚醒剤の助けで戦闘に臨む米軍兵士たちWIRED.jp、2003年2月20日)
  6. ^ 科学者の2割が向精神薬を使用:『Nature』の調査WIRED.jp、2008年4月15日)
  7. ^ 6)一度依存症になると、もう治らないのですか。 - 日本学校保健会
  8. ^ ジョン・ホーガン 『科学を捨て、神秘へと向かう理性』 竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。ISBN 978-4198619503。210頁。(原著 Rational mysticism, 2003)
  9. ^ E. M. Krupitsky et al. "The Combination of Psychedelic and Aversive Approaches in Alcoholism Treatment: The Affective Contra-Attribution Method" Alcoholism Treatment Quarterly 9(1), 1992
  10. ^ E. M. Krupitsky et al. Ketamine Psychedelic Therapy (KPT): A Review of the Results of Ten Years of Research J Psychoactive Drugs. 1997 Apr-Jun;29(2), pp165-83. Review.
  11. ^ Krupitsky EM, Burakov AM, Dunaevsky IV et al. "Single versus repeated sessions of ketamine-assisted psychotherapy for people with heroin dependence" J Psychoactive Drugs 39(1), 2007 Mar, pp13-9. PMID 17523581
  12. ^ E. M. Krupitsky et al. Ketamine psychotherapy for heroin addiction: immediate effects and two-year follow-up (PDF),Journal of Substance Abuse Treatment23, 2002, pp273-283
  13. ^ Jovaisa T, Laurinenas G, Vosylius S, Sipylaite J, Badaras R, Ivaskevicius J (2006). "Effects of ketamine on precipitated opiate withdrawal". Medicina (Kaunas) 42 (8): pp625-34. PMID 16963828
  14. ^ ジョン・ホーガン 『科学を捨て、神秘へと向かう理性』 竹内薫訳、徳間書店、2004年11月。ISBN 978-4198619503。213頁。(原著 Rational mysticism, 2003)

関連項目

薬物中毒者が起こした主な事件

外部リンク