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「新幹線N700系電車」の版間の差分

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2018年10月27日 (土) 10:02時点における版

新幹線N700系電車
(共通事項)
小田原駅を通過するN700系(0番台)
2008年6月1日 小田原駅)
基本情報
運用者 東海旅客鉄道
西日本旅客鉄道
九州旅客鉄道
製造所 日立製作所笠戸事業所
日本車輌製造[# 1]
川崎重工業車両カンパニー[# 2]
近畿車輛[# 3]
製造年 先行試作車: 2005年
量産車: 2007年 -
製造数 2,272両 + 代替車1両(2016年現在)
運用開始 2007年7月1日
投入先 東海道山陽九州新幹線
主要諸元
編成 16両編成・9両編成
軌間 1,435 mm
電気方式 交流25,000V 60Hz
最高運転速度 東海道:285 km/h(曲線 +15 km/h)
山陽:300 km/h
九州:260 km/h
設計最高速度 300km/h
起動加速度 2.6 km/h/s
減速度(常用) 2.70 km/h/s (70 - 0km/h)
減速度(非常) 3.64 km/h/s (120 - 0km/h)
全長 27,350 mm(先頭車)
25,000mm(中間車)
全幅 3,360 mm
車体高 3,600 mm(中間車)
3,500mm(先頭車の前部)
車体 アルミニウム合金
台車 ボルスタレス台車
主電動機 かご形三相誘導電動機
駆動方式 WNドライブTD継手
歯車比 2.79
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制動装置 回生ブレーキ[1]併用電気指令式空気ブレーキ
(応荷重装置付き)渦電流式ディスクブレーキ
備考 16両編成は2010年度以降は日立と日車で製造。
脚注
  1. ^ R編成を除く
  2. ^ G・F編成を除く
  3. ^ N・S・R編成
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N700系(エヌ700けい)は、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)および九州旅客鉄道(JR九州)に在籍する新幹線電車である。東海道山陽新幹線の第五世代、九州新幹線の第二世代の営業用車両にあたる。

概要

700系を土台に、さらなる高速性と快適性・環境性能向上の両立を目指し、東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)によって共同開発された。開発当初は700Nと称しN700系は通称だったが、2004年5月28日にN700系が正式な形式称号に決定したと発表された。数字の前に表記される N は new や next などの意味と説明されている。

東海道・山陽新幹線用の16両編成(JR東海が0番台、JR西日本が3000番台)は300系と山陽新幹線にわずかに残存していた0系を完全に置き換え、設備が陳腐化した500系と700系を定期「のぞみ」運用から撤退させるための次期主力車種として、2007年7月1日ダイヤ改正から営業運転を開始。これをベースにJR西日本と九州旅客鉄道(JR九州)によって山陽・九州新幹線用の8両編成(JR西日本が7000番台、JR九州が8000番台)が共同開発され、2011年3月12日の九州新幹線全線開業による山陽・九州新幹線の直通運転開始と、100系の完全置き換えを目的に営業運転を開始した。

改良型のN700Aと呼称される1000番台は700系の置き換えを目的に2013年2月8日から営業運転を開始した。翌年にはJR西日本もN700A(4000番台)を導入。0番台・3000番台をN700Aと同等に改造したものはそれぞれ2000番台・5000番台となる。

各車両の形式番号は、700系ではグリーン車が710番台、普通車が720番台であるのに対し、本系列は60多いグリーン車が770番台、普通車が780番台となり、九州新幹線直通用のみのグリーン・普通合造車は760番台(766形で6号車)となっている[注 1]。詳細は「形式および車種」の節を参照。

編成記号は、JR東海所有の16両編成がX、N700Aの16両編成がG、JR西日本所属車は16両編成がK、N700Aの16両編成がF、8両編成がS、JR九州所属車(8両編成)がR[2]で、車両番号はX編成が2000番台、G編成が1000番台、K編成が5000番台、F編成が4000番台、S編成が7000番台、R編成が8000番台に区分されている[2][3]

デザインはTDO(トランスポーテーションデザイン機構)の福田哲夫によるもので、0・3000番台は2007年10月1日財団法人日本産業デザイン振興会の2007年度グッドデザイン賞金賞(商品デザイン部門)、2008年鉄道友の会ブルーリボン賞を受賞した。7000番台・8000番台は2011年8月にブルネル賞(車両部門)を受賞し[4]、2011年10月3日にグッドデザイン賞(運輸・産業・土木建築関連車両・船舶、関連機器)を受賞した。

なお、JR東海名誉会長葛西敬之「国鉄改革の真実」によると、編成価格は約46億円と700系の約36億円から大幅に跳ね上がっており、これは500系とほとんど同じコストである。

開発から投入まで

背景

日本国有鉄道(国鉄)の分割・民営化以降、新幹線でもサービスの向上が図られ、JR西日本は最高速度300km/hで運行できる500系を開発した。しかし、東海道新幹線区間では山陽新幹線区間に比べ線形が悪く、最高速度は270km/hに抑えられることから過剰な性能であったこと、当時の「のぞみ」運用本数の関係、他形式との座席数や乗降扉の位置の違いなどから、500系は9編成(144両)が落成した時点で製造終了となった。

その後、JR東海とJR西日本は汎用性を重視して両社で共同開発した700系を導入した。同系列は山陽新幹線区間での最高速度は285km/hであったが、最高速度220km/hの0系と230km/hの100系の置き換え用として製造され、東海道・山陽新幹線の高速化に成果を挙げた。

しかし、JR西日本は航空路線との競合から500系と同等の最高速度300km/hの高速性能を、JR東海は品川駅開業とそれに伴う東海道新幹線の列車本数増加やデジタルATC (ATC-NS) の導入に伴い、より高い加減速性能を持つ新車両を求めるようになった。その両社の要求を具現化するべく共同開発されたのが本系列で、従来の300系や700系との各号車別定員の共通化を図ることを前提に開発が開始された。

仕様決定

2000年4月から本系列の共同研究が[5]、2002年6月から共同開発が始まり、2003年6月27日にN700系基本仕様が発表された[6]。本系列の開発目標として、以下の3点があげられる。

  • 東海道・山陽新幹線として最速のハイテク車両
  • 快適性の向上
  • 環境性能の向上

500系・700系では東海道新幹線区間で270km/h運転を実施していたが、実施区間は全線の1/3に渡る直線および曲線半径の大きな曲線区間のみで、線内に60ヶ所存在する半径2,500mの曲線区間で270km/h走行を行うと、規定許容値を超える横Gを乗客に掛けてしまうことから255km/hの制限を敷いていた。本系列では車体傾斜システムの搭載(S・R編成については後述)により、前述の曲線区間でも270km/hで走行できるようになり、東海道新幹線の約3分の2以上の区間で270km/hで走行できるようになった。

起動加速度は新幹線としては高い2.6km/h/sである。

これらにより、東京駅 - 新大阪駅間では従来の500系・700系の「のぞみ」と比べて運行時間は最大5分短縮され、最速列車の所要時間は2時間25分(2007年7月1日ダイヤ改正時の「のぞみ」1・163・52号)となった。

試作編成の落成から量産編成の登場へ

2005年3月4日日本車輌製造日立製作所川崎重工業により先行試作車(Z0編成)が完成し、JR東海浜松工場にて報道陣に公開された[7]。同月10日未明に公式試運転として浜松駅 - 静岡駅間で初めて本線を走行し[8]、4月4日から走行試験を開始し[9]、7月16日には三島駅 - 浜松駅間での日中走行も実施した。同月24日には初めて東京駅 - 新大阪駅間を走行し、29日には山陽新幹線に乗り入れて博多駅まで走行、そして9月7日には速度向上試験で320km/hを記録した。この先行試作車による2年間の実験走行を経て、量産車(Z1編成以降とN編成)を投入することとなった。

2006年12月7日、日本車輌製造豊川製作所で量産車となる構体が報道関係者に公開された。この構体は「Z1編成」のもので、翌2007年3月より搬入が開始された。これにより、100系以来続いていた「量産先行試作車の*0編成→*1編成への改番・量産化改造および営業運転への導入」という東海道・山陽新幹線での慣例を破ることとなった。Z0編成はそれまで各種技術試験を行ってきた300系の量産先行試作車「J1」編成が廃車されたのと、車掌室やコンセントの位置、喫煙ルームの有無が量産車と異なり営業運転に支障をきたすため量産化改造は見送られ、J1編成の後継となる試験車として運用されることになった。ただし、完全な試験専用編成ではない。

同年5月23日には報道関係者約300人向けの試乗会が実施された。使用されたのはZ2編成で、同年7月1日の営業運転開始までにJR東海が準備する5本の編成のうちの一つだった。東京駅 - 博多駅間を約5時間半で走行し、途中名古屋駅京都駅・新大阪駅・岡山駅広島駅に停車した。東京駅を11時46分に出発し、掛川駅通過直前に「只今車体傾斜を行っています」という車内アナウンスが流れ、名古屋駅到着まで幾度か同様の放送が流れたが、ほとんどの添乗者が車体の傾きを体感しなかった。同乗したJR東海の担当者は、カーブに入る手前の緩和曲線を含めて線形を読み、走り込みを続ける中で傾けるタイミングを調節したと語った。その後、同年6月16日・17日・24日に公募による一般向けの試乗会も開催された。

営業運転開始後の2007年8月21日 - 9月11日までの間、JR西日本所有のN1編成が10両に短縮され、新下関駅 - 新山口駅間を試験走行した。具体的には1, 5 - 12, 16(16両編成時の号車番号)号車が連結され、外周幌の取り外しによる乗り心地の変化などがテストされた。9月12日以降は16両に戻されて通常運行に使用されている。

なお、車両輸送日立物流日本通運などが行っている[10][11]。2008年春には日本通運のCMで本系列の輸送シーン(Z7編成(現・X7編成)の納車時)が放映されていた。

営業運転開始

量産1号編成の「Z1」編成(新横浜)

2007年7月1日のダイヤ改正までに6編成96両(Z編成5本〈Z1 - Z5〉・N編成1本〈N1〉)が落成して営業運転を開始した。この時点では品川駅 - 博多駅間下り1本、東京駅 - 博多駅間2.5往復(下り2本・上り3本)・東京駅 - 新大阪駅間1往復に充当された[12]

営業開始当日、JR東海では品川駅(「のぞみ」99号6:00発)・新大阪駅(「のぞみ」100号6:00発)・名古屋駅(「のぞみ」100号6:50発)、JR西日本では博多駅(「のぞみ」26号12:28発)・広島駅(「のぞみ」26号13:30発)・岡山駅(「のぞみ」26号14:06発)でそれぞれ出発式を行い[13]、列車の出発を見送った。また東京駅(「のぞみ1号」6:00発)では花束の贈呈と発進時の警笛吹鳴のみだった。新大阪発の営業初列車となる「のぞみ」100号のグリーン券は発売開始後即完売となる人気ぶりだった。

山陽・九州新幹線直通列車への投入

山陽・九州新幹線で使用されているN700系7000番台
(2009年4月8日 岡山駅 - 相生駅間)

JR西日本とJR九州では、2011年3月12日[14]九州新幹線鹿児島ルートが全線開業することに伴い、九州新幹線と直結する山陽新幹線を直通する列車の運行が検討された。

この直通運転の実施にあたっては様々な課題が存在し、従来の山陽新幹線用の車両では走行できない博多駅 - 新鳥栖駅間と新八代駅以南の急勾配区間(最大35‰)に対応していること、九州・山陽および新大阪駅東方にある鳥飼車両基地への回送を考慮した東海道新幹線を含む3新幹線全てのATCと列車無線に対応していることなどが車両性能面での課題とされた。これらの課題に対応するべく、JR西日本とJR九州が共同で開発を行った車両が、当形式の東海道・山陽新幹線用の16両編成(Z・N編成)をベースとした8両編成の全車両電動車となる新型車両、N700系7000番台(S編成)と8000番台(R編成)である。

車両性能の他に、車内設備の面でも指定席を「ひかりレールスター」のサルーンシートを継承した2&2の配置としたことや、女性専用トイレの設置など、同形式でありながら車内設備の面では従来の0番台、3000番台とは全く異なるものとなった。デザインは「和のおもてなしの心」をテーマにJR西日本のデザイン顧問である木村一男とJR九州のデザイン顧問である水戸岡鋭治が監修した[15]

後に、JR西日本・JR九州と新大阪駅や鳥飼車両基地を管理するJR東海の3社間で運行における概要についての協議を経て、山陽新幹線と九州新幹線の相互直通運転が決定し、この直通列車の愛称を「さくら」とし、後に速達タイプの「みずほ」が加えられ、両新幹線を直通する車両に当形式が投入されることが発表された。

2008年10月には、JR西日本所属の量産先行車としてN700系7000番台となる1編成8両が博多総合車両所に搬入された[16]。JR西日本所属車の編成記号は S としている[17]。2008年10月24日に博多駅 - 新山口駅間で公式試運転が実施され、11月以降は山陽新幹線内での走行試験が実施されている[17]。その後は姫路駅 - 博多駅間の往復が主であるが、新大阪駅に入線する場合もあった[18]。2010年6月15日には姫路駅にてS2編成が報道陣に一般公開され、姫路駅 - 博多駅間で試運転を行っている同車両への試乗も行われた[19]

JR九州所属車の編成記号は R で、2010年7月にN700系8000番台の1編成である8両が熊本総合車両基地に搬入され[2]、同年9月から九州新幹線の新規開業区間を中心に試験走行を開始した。

その後、2011年3月12日に九州新幹線が全線開業し、同時にN700系7000・8000番台は「みずほ」「さくら」を中心に営業運転を開始した。最終的にJR西日本が19編成、JR九州が10編成の合計29編成(232両)を製造する計画となっている[20][21]

2012年3月17日の時点で、すでに所定の本数が揃ったが、同年7月にJR九州が山陽・九州新幹線沿線相互間において修学旅行等の大口団体での利用増加を見込みR編成を1本増備し、近畿車輛から熊本総合車両所に搬入された[22][23]。増備されたR11編成は同年8月中に運行を開始した。

山陽・九州新幹線用編成は鉄道関連の国際デザインコンペティションである第11回ブルネル賞を受賞した[4]

保有状況

2018年4月1日現在[24]

  • JR東海 - 1920両
    • 16両編成(X0編成、9000番台)×1本 = 16両(東京交番検査車両所配属 / 試験走行
    • 16両編成(G編成、1000番台)×20本 = 320両(東京交番検査車両所配属)
    • 16両編成(X編成、2000番台)×40本 = 640両(東京交番検査車両所配属)
    • 16両編成(G編成、1000番台)×19本 = 304両(大阪交番検査車両所配属)
    • 16両編成(X編成、2000番台)×40本 = 640両(大阪交番検査車両所配属)
  • JR西日本 - 616両
    • 16両編成(F編成、4000番台)×13本 = 208両(博多総合車両所配属)
    • 16両編成(K編成、5000番台)×16本 = 256両(博多総合車両所配属)
    • 8両編成(S編成、7000番台)×19本 = 152両(博多総合車両所配属)
  • JR九州 - 88両
  • 合計2624両
編成数の推移(各年4月1日時点)
所属 東海 西日本 九州 備考
路線 東海道・山陽 山陽・九州
Z編成 G編成 X編成 N編成 F編成 K編成 S編成 R編成
2005 1               JR東海がZ0編成(9000番台)を新製
2006 1                
2007 5+1     1         N700系営業開始。量産車(Z編成0番台・N編成3000番台)を投入。
2008 17+1     8     1   7000番台(S編成量産先行車)完成
2009 33+1     9     1    
2010 49+1     14     1   [25]
2011 65+1     16     9 10 九州新幹線全通。量産車(S編成7000番台・R編成8000番台)を投入
2012 80+1     16     19 10 100系・300系の営業運行終了
2013 80+1 6   16     19 11 JR東海がG編成1000番台「N700A」を投入
2014 48 13 32+1 13 1 3 19 11 JR西日本がF編成4000番台「N700A」を投入
N700系の性能をN700Aと同等とする改造を実施したX編成2000番台・K編成5000番台「N700A」が登場。
同様に、Z0編成もN700A化改造によってX0編成に変更。
2015 11 19 69+1 5 1 11 19 11  
2016   25 80+1   5 16 19 11 Z編成0番台→X編成2000番台、N編成3000番台→K編成5000番台への改造が完了
2017   32 80+1   9 16 19 11  
2018   39 80+1   13 16 19 11  
注:表にあるZ編成、またはX編成の「+1」表記は、X0(旧Z0)編成。X0(旧Z0)編成は原則として営業運用に就かないため、この表記としている。

構造

車両概観

先頭車ノーズ
先頭車両屋根の段差部分

車体は、700系と同じくアルミニウム合金製の中空押出型材によるダブルスキン構造を採用している。700系では、屋根構体、客室部の側構体のみであったが、N700系では使用範囲を広げ、車端部の側構体や妻構体、台車上部の気密床にも使用している[26]。車体断面は700系よりも屋根肩が角張った形となったが、引き続き幕板部分がわずかながらも曲面となっている。

先頭部は、700系のエアロストリーム型を遺伝的アルゴリズムにより改良した「エアロ・ダブルウィング」という形状で、長さは10.7m(500系は15m、700系は9.2m)である。先頭形状の長さを抑えつつ、微気圧波形状のピークを分けることで最大値を抑え、騒音の抑制と先頭車の定員確保に一役買っている。先頭車の定員を300系、700系と一致させるため、両先頭車両の乗務員扉と運転席寄りの客用扉が車体の絞り込み部分と干渉している。騒音対策と製作・保守費用低減を両立するため、は両先頭車の運転室側にある乗務員用と客用のみプラグドア、その他はすべて通常の引き戸が採用されている。その引き戸の開口部も、従来の0系から700系、800系(500系は全車プラグドアのため例外)では車体に別製作の枠をビス止めする構造だったが、本系列では平滑化のため構体が継ぎ目なく開口部を形成している。ドア回り戸袋側に見られるビスは、ドア用ゴムパッキンを着脱するためのものであり、構体とは無関係である。

ワイパーの形状も、空力上の観点から、高速走行時の騒音発生の低減を図ったものとなっている。運転室部分の窓は、車体の絞り込み部分に掛かるため、700系よりも前面窓の開口部面積が特に左右方向に対して小さくなっており、前方視界は狭くなっている。

先頭車両の高さは、3,500mmの部分と3,600mmの部分がある。そのため、先頭車両編成中央寄りの客用扉付近の屋根には段差がある。中間車両高さは3,600mmとなっている。この段差は先頭車の車体断面積を削減し前頭部分の形状と合わせた微気圧波軽減の実現と、空気抵抗軽減などを目的とした空力上の処理である。

また、500系まで乗務員用扉横の握り棒は金属の手すりを埋め込む構造だったが、700系からは走行中の空気抵抗を低減するため、カバーを設置し走行中は自動的にせり上がる平滑把手を採用した。本系列も同様であるが、700系では5km/hでカバーされるのに対し、本系列では70km/hとなっている。これは、ホームを出線するまで、最後尾車両の乗務員が手すりを握って安全確認をできるようにするためである。

走行機器

かご形三相誘導電動機を電動車両1両あたり4基搭載する。300km/hを実現するため、連続定格出力は305kWまで増強されたが、電動機のサイズや重量は700系と同等に仕上げている[27]。高さ60cm、長さ69cm、幅71cm、重量396kgである[27]。4000番台の主電動機は東洋電機製造株式会社[28]により製造された。[29][30][31] M'車に主変圧器、M1車に主変換装置を1台、M2車に主変換装置を2台搭載しており、M1車は自車の主電動機4個を制御するが、M2車は自車と隣りのM'車の主電動機8個を制御する。

4両を1ユニットとし、第1・2・3・4ユニットを構成して16両編成としており、第1・4ユニットは3M1T、第2・3ユニットは4Mとなっているが、主変圧器をユニットの電動車数によって区別することによって、主変換装置と電動機の共通化を図った[3]。3M用の主変圧器(形式名:TTM5/WTM208)は1次容量は4,350kVAとし、4M用の主変圧器(形式名:TTM4/WTM207)は1次容量5,600kVAとしている。また4M用の主変圧器は国内において最大容量である[3]

主変換装置1台で並列接続された4台の主電動機を制御する。主変換装置の半導体素子の冷却方式は、大きく2種類に分けられ、電動車両が3両のユニットには、走行中に受ける床下の走行風で冷却する走行風冷却方式(形式名:TCI100/WPC203)、電動車両が4両のユニットには内蔵されたブロアでの冷却による強制風冷沸騰冷却方式(形式名:TCI3/WPC202)を搭載されている[3]

ブレーキシステムは、制御応答性に優れる回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ方式を採用する。700系までは編成に引き通されたメタル線を順次加圧することで力行・ブレーキ指令を行っていたが、本形式ではデジタル伝送装置による指令とバックアップ指令に変更されている[3]

全周幌

全周幌
(2007年5月21日 新大阪駅)

新たに開発した高性能のセミアクティブサスペンションによるセミアクティブ制振制御装置を全車両に設置することで振動を極力抑えるとともに、車両間には、車端ダンパを装備しているが、今までのリングによる連結ではなく、ダンパを車両間において斜め上下方向に直接、車両妻面に連結する方式を採用している。また、株式会社ジャバラと開発した「全周幌」を新幹線の営業車両として初めて採用[注 2]した。車両の連結面間を伸縮性のゴム素材で下部を除いてほぼ完全に覆ってしまうことで車体側面の空気抵抗と車両内外の騒音の軽減を達成し、結果的に省エネルギーにも寄与することとなった。また、形状を変えた全周幌も試験走行でテストされている。

過去、日本国内の例では、小田急ロマンスカー151系電車80系気動車などで「外幌」が試されているが、当時の在来線特急「こだま」の最高運転速度であった110km/h程度では効果は小さく、むしろメンテナンス難などのデメリットのほうが上回ると判断され、ロマンスカーを除き本格的採用には至っていない。

後に登場した新幹線E5系電車新幹線E6系電車でも全周幌が採用されている。

集電装置

パンタグラフとパンタカバー

集電装置(TPS303[32]/WPS206)も0系以来の基礎中の基礎ともいえる部分の設計から抜本的に見直すことで小型・軽量化が図られた。基本的にはシングルアーム形パンタグラフであるが、従来の700系などに見られるタイプより下枠(関節部分より下側)のアームが極端に短くなり、その関節部と下枠部分も流線型のカバーで完全に覆われた新開発のパンタグラフを採用している。これによって従来のシングルアームパンタグラフよりも風切り音の軽減と、架線への追随性の一層の向上を果たしている。

集電装置は、碍子で車体に固定されているが、この碍子の本数を700系の4本から3本に減少させ、さらにケーブルヘッド用の碍子を共有させることで、パンタグラフ周りの占有スペースの減少と軽量化、騒音源の減少を実現している[26]

碍子覆いと二面側壁の形状は700系とほぼ同一で、碍子覆いの両側に大型の二面側壁を設けている。この二面側壁の全長は700系のものより延長され、傾斜角も緩やかなものとなっている。またEGS投入目視確認用の小窓が無くなり、かわりにEGSの投入状態を監視するカメラが碍子覆い内に、モニターが各パンタグラフ搭載号車の車内に設置された。この碍子覆いと二面側壁はアルミニウムハニカムパネル、炭素繊維強化プラスチックパネルを使用することで軽量化を実現している[26]

700系では16両編成の場合4両おき(4 - 5, 8 - 9, 12 - 13号車間)に設置されていた高圧引き通し線のケーブルヘッドは、編成中間の1箇所のみの設置に削減され、他の車両間では直ジョイントによる接続となっている。

また試作車両(Z0編成)には800系U001編成と同様にカメラセンサ・投光器で構成される架線の検測装置が設置され、車体傾斜時の架線との接触状況などの確認が行われていた。全般検査を行った際、一時的に取り外されたが、量産車が登場した現在でも設置されている。

行先表示器・座席指定表示器

JR東海の営業用新幹線車両では初めてフルカラーLED行先表示器HIDランプによる標識灯が採用された[注 3]。行先表示器は全車両に設置され[注 4]、表示内容は列車名・行先・指定席/自由席の種別を日本語、英語の順に表示し、日本語で列車名・行先表示とともに、始発駅では停車駅をスクロール表示させ、途中駅では次の停車駅を表示する。座席指定表示器も700系C編成までの液晶からLEDに変更され[注 5]、「指定席」は緑色、「自由席」は白色表示となっている[注 6]

なお、列車種別表示の地色は指定の列車種別色に準拠しており、のぞみは黄色、ひかりは赤色、こだまは青色、みずほは橙色、さくらは桃色、つばめは水色の地色で表示される。

標識灯

尾灯(点灯中)と前照灯(消灯中)

前照灯尾灯は300系以前と同様、遠方では同じ場所の電球のように見えても、前照灯と尾灯は分離されている構造である。前照灯は東海道・山陽新幹線系統の車輌としては初めての採用となるHID灯を採用しており、これにより700系より標識灯の開口部が縮小されたものの、充分な光度を得る事を実現している。従来の車両では前照灯と尾灯が横並びになればそのほとんどは内側が前照灯、外側が尾灯で、縦並びになれば500系を除いて上側が前照灯、下側が尾灯という配置が一般的だった。本系列では前照灯は左右それぞれ2基が横並びになり、丸い前照灯の周りを覆い尽くす格好でLEDの尾灯が配置される過去に前例のない構造となった。Z0編成の走行試験時に、前頭部の連結器カバーの下部に補助前照灯(HID灯)を試験的に装備し、しばらくの間試験走行に供された事があるが、後に撤去され原型に復元されている。

車両性能

博多総合車両所で並ぶN700系(左)と500系(右)
内周締結式(N700系 Z・N編成)
内周締結式(N700系 Z・N編成)
中央締結式(N700A G・F編成、N700系 X・K編成)
中央締結式(N700A G・F編成、N700系 X・K編成)

起動加速度は新幹線車両として最高の、通勤形電車並みの2.6km/h/s[注 7]で、およそ3分で270km/hまで加速する動力性能を持つ。営業運転での最高速度は500系と同じ300km/hとされた。これを達成するために主電動機の出力を向上(275kW〈700系〉→305kW)し、電動車 (M) と付随車 (T)の構成(MT比)も変更(12:4〈700系〉→14:2)した。これにより編成出力は17,080kWとなり、700系と比べて約30%向上した。

ブレーキは、各台車に基礎ブレーキとして、300系や700系と同じキャリパー式車輪ディスクブレーキを装備している。Z・N編成(従来のN700系)では、ディスクローターを固定するボルトとナットをその内周で締結する「内周締結式」を採用していたが、G・X・F・K編成(改造Aを含むN700A)では、ディスクローターの中央で締結する「中央締結式」を採用した。これは、従来の内周締結式では、制動時の熱によってディスクが熱変形により反り返り、ブレーキライニングとの接触面積が減少して制動力の低下が発生するおそれがあるため、ディスクローターの中央で締結することによって、その反り返りを少なくして制動力の低下を防ぐとともにブレーキ装置の軽量化が図られている。本系列(16両編成)では14M2Tの編成となり電動車の比率が上がったため、300系や700系で使用されていたT車の渦電流ブレーキが廃止され、その分の制動力を14両のM車の回生ブレーキで得るようにした。自動列車制御装置 (ATC) の老朽置き換えに伴い設置されたデジタルATC (ATC-NS) 車上装置が搭載され、制動距離と閉塞間隔の最適化が行われる。先行試作車(Z0編成)では、落成前の計画では700系に引き続いて渦電流ブレーキが採用される予定だったが、ブレーキ負担率の改善と重量増を避ける意味合いもあり、取りやめになった。

走行時のエネルギー消費も曲線での余分な加減速を不要とすることなどで、東海道区間で700系と比較して1割低減することを当初の目標としていたが、先行試作車による走行試験の結果、270km/h走行時の利用客1人当たりの消費エネルギーが13.23kWh[注 8]となり、19%削減(改善)という当初の目標値を上回る省エネ効果が得られたことが確認された。全周幌などの空力改善の積み重ねもこれに寄与している。山陽区間では9%の削減に成功した[33]

騒音についても大幅に低減されている。

車内設備

空間と窓

車体傾斜装置の採用で全幅は700系に比べて20mm狭くなったが、強度を確保しながら車体壁を薄くするなどした結果、同系列と同等の車内空間を確保している。反面、軽量化しつつ十分な強度を確保するため、窓の面積は700系の約60%に縮小された(普通車で天地520mm×幅500mm、窓框〈かまち〉高さ780mm)。このため、車内からの眺望が若干犠牲となっており、通路側の座席(特に普通車自由席とN・Z編成の普通車指定席のC席)から外の景色を見ることは難しい。

普通車の窓には特殊なポリカーボネート樹脂を採用している。従来の複層ガラスの表面に特殊ポリカーボネート樹脂製シートを貼り合わせたコンポジットタイプと比較して、飛び石などに強く、耐久性に優れ軽量であるとともに、部材使用量を約半分に抑え、単位面積当たりの質量を約3割軽量化することに成功した。また、車体側の開口部に窓材がはまり込むような形状とすることで、車体表面と窓との段差を極力小さくするようにしている[34]

セキュリティ対策

デッキ部防犯カメラ

鉄道車両では初めて、全ての乗降口ドア上部と運転室出入口に防犯カメラを設置し、乗務員室のモニター上で監視できるシステムが備えられた。これは乗降口に備え付けられている非常用ドアコックがいたずらで操作され、その安全確認のためしばしば遅延をきたしていることや、電話室や喫煙ルームなど個室部分の増加とともにそれらの空間を悪用される恐れがあるため、防犯カメラによる抑止効果を図るためである。また、防犯カメラを設置することで、テロの発生や痴漢迷惑行為の抑止効果も期待できるとした。

ただ、2015年に東海道新幹線火災事件が発生したことを受けて、追加対策として、デッキ通路部および車内(両端にある車内案内表示装置の横)にも防犯カメラを増設することになった。事件以降に追加新造する車両は製造時に対応、既存車両についても2018年度までに全ての車両に追設するとしている[35]。2016年2月23日より、車内などに増設が完了した1編成が運行を開始している[36](1編成あたりのカメラは60台から105台に増加)[37]。なお、N700系以降に登場したE5系・H5系E6系E7系・W7系の各車両では、新造時からデッキ部に加えてグランクラスを除く全ての客室内にも防犯カメラを設置している。

この他、ドアコックのいたずら対策として走行中にドアコックの蓋を自動的に施錠して開けられないようにすることとし、蓋を開けると警報ブザーが鳴る機能が備えられた。追加新造するN700系は製造時に設置し、既存のN700系および施錠機能のみ追加する700系および500系においても2009年9月までにすべての改修を終えた。

その他の設備

便所は2両に1箇所(奇数号車の東京寄り)に設置されており、大便所2箇所(洋式便器2箇所)と男性用小便所1箇所、洗面所2箇所という構成である。ただし、1号車(781形・783形)は客室スペースを確保するため、洗面所が1箇所となっている。洋式便所に統一されるとともに、新幹線車両では初めてオストメイト対応トイレが設置された。(16両編成は11号車に8両編成は7号車)また一部のトイレにはおむつ交換台、多目的室にはベビーチェアも設置されている。

車内は全席禁煙とし、強制排煙装置やJR東海の小牧研究施設が開発した光触媒脱臭装置を備えた喫煙ルームを設けている。喫煙ルームに近い座席では喫煙を希望する乗客の希望を優先して指定席券が発行される。駅自動放送でも本系列で運転される列車は全席禁煙である旨と喫煙ルームが何号車に設置されているかがアナウンスされる。

車内案内表示器は新幹線では初めてフルカラー・2段表示が可能となり、新聞社から配信されるニュース広告や、「のぞみ」・「ひかり」・「みずほ」・「さくら」で駅を通過する際の「ただいま●●駅を通過。」など従来からのものに加えて、駅停車時のドア開閉方向も表示されるようになっている。実際の表示に使用されている色は、Z・N編成では白色・橙色・黄緑色・水色・赤色の5色(「こだま」使用時には深青も使用)だが、このうち赤色は接続する在来線も含めて大幅な遅れや運休・運転見合わせなどが発生した際の告知に使用される。企業広告やS・R編成では、薄紫色や緑色などフルカラーを存分に生かした表示がなされている。

座席番号表示なども含めて、車内外ともに各種表示の文字が従来車に比べて大判化されていることも本系列の特長である。

運転室および車掌室には乗務員連絡用のPHS端末が搭載されており、車掌が客室内にいても乗務員間の連絡ができる。また、このPHS端末から直接車内放送を行うこともできる。

東海道・山陽新幹線用の編成

16両で1編成を構成し、東海道・山陽新幹線用として製造される。8 - 10号車がグリーン車、ほかの車両は普通車である。

Z・N編成

Z・N編成
半径2,500mの曲線を走行するN700系(0番台)
(2007年9月27日 新横浜駅 - 小田原駅間)
基本情報
運用者 東海旅客鉄道(Z編成)
西日本旅客鉄道(N編成)
製造所 日立製作所笠戸事業所(Z・N編成)
日本車輌製造(Z・N編成)
川崎重工業車両カンパニー(Z・N編成)
近畿車輛(N編成)
製造年 2007年 - 2012年
製造数 Z編成 80編成1,280両
N編成: 9編成144両
運用開始 2007年7月1日
投入先 東海道山陽新幹線
主要諸元
編成 16両編成(14M2T)
最高運転速度 東海道:270 km/h(曲線 +15km/h)
山陽:300 km/h
編成定員 計1,323名
(うちグリーン車200名)
編成長 404.7 m
台車 円筒ゴムばね併用軸箱支持方式 TDT205/TTR7003(車体傾斜装置搭載、Z編成)
WDT207/WTR7003(車体傾斜装置搭載、N編成)
主電動機 かご形三相誘導電動機
TMT9, TMT10(Z編成)
WMT207, WMT208(N編成)
駆動方式 WN駆動方式(普通車)
TD平行カルダン駆動方式(グリーン車)
編成出力 305kW×56 = 17,080kW(Z・N編成)
制動装置 回生ブレーキ[1]併用電気指令式空気ブレーキ
(応荷重装置付き)
保安装置 ATC-1型ATC-NS
第51回(2008年
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外観

700系までと違い、ほとんどの部分でJR東海とJR西日本所属編成間の差異が見られなくなっている。数少ない違いとしては下記が挙げられる。

  • JRマークは当初、300・700系と同様に1・8・16号車の形式番号の前に貼り付けられていた。その後Z編成は2010年頃からJR東海所有車とJR西日本所有車の識別のため全車の形式番号の前に貼り付けられる様になり、少し遅れてN編成も全般検査時の再塗装時に順次全車に貼り付ける様になった。
  • JRマークの色や車両番号の番台区分および編成番号のアルファベットが違う。

車体塗装は700系16両編成と同じく窓下に太帯(上側)と細帯(下側)が並んでいるが、先頭部分のラインが斜めに切り込まれる部分の角度、若干小さくなっている。また700系とは異なる、「N700」のロゴの中に車輌のシルエットが入った独自のロゴタイプを車体側面に掲げている。

なお、量産先行試作車であるZ0編成は細かい外観のポイントとして客用ドア横の号車番号表記と禁煙ピクトグラムが横に並んでいたのに対し、量産車では縦並びとされた(300系は、登場当初は縦並びであった)。そして最初の全般検査を2009年8月に浜松工場から出場した際、車体側面の号車表示や身障者表示などはそれまでより一回り大きいものへ、車体表記やグリーン車のマークは一回り小さいものへと、車体外装のピクトグラム類がZ1編成以降の量産車と揃えられた。しかし、量産車で設置されている喫煙ルームの新設などの改造はされず、喫煙車の禁煙マークも貼られていない。出場試運転後の8月5日には再び浜松工場へ戻っている[38]

台車(Z・N編成)

台車は300系以来の実績がある、コイルバネと円筒積層ゴムを併用したウイングバネ式軸箱支持装置のアンチヨーダンパ付きのボルスタレス台車を採用しており、軸箱の上部と台車枠の間には軸ダンパーが装備されている。

700系では、先頭車両進行方向側の台車にのみ空気抵抗軽減用のカバーがついていたが、本系列からは、台車部分の転動音・空力音を低減するためにすべての台車に台車カバーが採用された[39]

先行試作車(Z0編成)では、試験の途中でカバーの形状が変更されており、変更後のものが量産車にも採用された。先頭車両の台車カバーも、700系のそれより空気の流れを考慮した3次元的な造形となっている。軽量化とリサイクル性の面から、炭素繊維強化プラスチック (CFRP) が採用されている[39]

セミアクティブサスペンションは比例電磁式リリーフ弁による無段階制御のものを採用し、台車の牽引装置の中心ピン付近の台車枠と車体の間の枕木方向に装備され、減衰力を無段階で制御できるようになっている[注 9]。また、トンネルと明かり区間での線路データマップを元にそれぞれの区間で最適な制御パラメータを選択する機能をもつ。700系では一部の車両のみに搭載されていたが、本系列では全車両に搭載することで乗り心地の改善を図っている。

量産車では電動車にTDT205/WDT207を、付随車である1・16号車にはTTR7003/WTR7003を搭載する。700系とは異なり、台車はZ編成とN編成で共通のものを採用する。

軸箱支持方式は300系と同じくコイルばね+円筒積層ゴム併用式であり、駆動方式は、普通車では新型の歯型形状の採用と歯車中心間距離の拡大によりバックラッシュを低減した低騒音形WN継手が、グリーン車ではJR東海所有の700系C19編成以降と同じくTD継手が引き続き採用された[26]

300km/hでの走行に対応するため、700系から歯車比が変更されている[26]

線内の60か所の曲線半径2,500mの曲線区間[注 10]を270km/hのまま走行できるように新幹線車両で初めて空気バネによる車体傾斜装置(最大傾斜角1度)を採用している。これは、自車の位置を、車両に記録された線路データを元に、地上側から送信される絶対位置情報により補正しながら位置を特定し、曲線区間で車体を傾斜させるもので、曲線の線路の外軌側の空気ばねを上昇させるシステムとなっている。車体傾斜機能は大半が半径4000m以上のカーブである山陽区間では使用しないが、完全に機能を停止するのではなく車体を水平に保つLV制御(0度制御または水平制御)として機能しており、乗り心地を向上させている。

信頼性を確保するために、車体傾斜装置の制御系統は二重化されている[40]。この二系統が両方ともトラブルなどに見舞われた場合、車体傾斜装置の使用を停止し、700系と同じ運転パターンに変更されるというバックアップ機能が搭載されている[40]

車内設備

グリーン車は東京寄り(775形、776形)もしくは博多寄り(777形)車端の1か所に、普通車は各車両端の2か所に客用扉・デッキを設けた。車販準備室を備える車両(786形700番台・3700番台、787形400番台・3400番台)には、客用扉と同様の扉を持つが、業務用扉であり、乗客の乗降には供されない。

11号車にはオストメイト対応トイレとベビーチェア付きの多目的室が設置される。

喫煙ルームを3・7・10・15号車のデッキ部分に計6か所設けている。

座席

シートピッチは100系以降の標準である、普通車1,040mm、グリーン車1,160mmである。ただし、1号車(783形)と16号車(784形)は先頭形状との兼ね合いで1,023mmとなっている。

普通車は座席幅を700系から10mm拡大して440mmとし[注 11]、グリーン席には新たに開発された「シンクロナイズド・コンフォートシート」が採用された。これはリクライニングすると座面後部が沈む構造で、座り心地が改善された。日本航空国内線のクラスJに近いものといえ、具体的には、ヘッドレストとレッグレストが装備されていない以外はほぼ同等の仕様となっている。座席幅も475mmから480mmに拡大された[注 11]

300系以降の座席は編成重量削減のため座席クッションのスプリングを廃止しポリウレタンを重ねる構造だったが、座り心地の点で評判が芳しくないため、本系列では金属製のSばねを加えた複合ばね構造に改良された。

普通車座席の背もたれは高機能な新型のポリエステルクッションである。従来のウレタンに比べて同じ体積で約20%軽く、透湿性にも優れ蒸れにくい。通勤電車用の座席に比べ着座時のフィット感に配慮されている。弾力性が長持ちするとともに耐久性に優れるほか、ポリエステル素材のため完全循環型システムでリサイクルできる。

このほかの素材ではクラレグループ製のマジックテープと「セプトン コンパウンド」も使われている。マジックテープは従来からのヘッドレストカバー・座席表皮端末固定用に加え、座席表皮の浮き止めやクッションパッドにも新たに採用された。また、スイミングゴーグルのバンド部やとび縄の縄部分にも使われている「セプトン コンパウンド」は座席の肘掛に採用された。これまでのポリカーボネート製より肘掛が柔らかくなったことで触り心地を向上し、硬いものが接触した時に発生する不快音の低減を実現した。

テーブルはA4サイズのノートパソコンが置けるサイズに拡大され、コンセントは700系では最前列座席の妻壁のみに設置されていたが、本系列ではグリーン車の全座席と普通車の窓側(A・E席)・最前部・最後部の座席に設けられた。その結果、1編成の定員(1,323人)の約6割に当たる個数が用意されたことになる。また、座席番号表示と、テーブル背面の車内設備案内などの文字やピクトグラムは、従来のものより大きくなり、見やすくなっている。

100系以降700系までは所有会社によって座席の色や形状などの仕様が異なっていたが、本系列ではすべて統一されている。

車内照明には松下電工(現在のパナソニック株式会社 エコソリューションズ社)製や東芝ライテック製のLED照明器具も採用された。このLED照明器具は白熱灯に比べ消費電力が少なく振動に強い[41][42]

1編成あたりの納入台数
松下電工製
グリーン車への通路部にフットライト26台
運転席にスポットライト12台と補助ライト2台
東芝ライテック製
グリーン車に読書灯200台と側補助灯100台
喫煙ルームなどに直線補助灯45台と円筒スポット灯43台

このほか足元を暖める機能(レッグウォーマー)も新たに導入された。

グリーン車の各座席に設置されたオーディオサービス用のコントロールパネルがあったが、サービス終了に伴い検査時の座席交換の際に取り外される事となっている。

そのほかの設備
公衆無線LANサービス
2009年春のダイヤ改正から公衆無線LANによるインターネット接続サービスが利用できるようになった[43]。ただし当面は東京 - 新大阪間での利用となる。またこのサービスは有料で、事前に特定のプロバイダ(無線LAN運営業者)と契約をしなければならない[注 12]
2018年7月からは、これとは別に無料で使える、東海道・山陽・九州新幹線共通の車内無料公衆無線LANサービス「Shinkansen Free Wi-Fi」が開始された。
車内放送チャイム
車内チャイムは在来車と同様、Z→X・G編成は『AMBITIOUS JAPAN!』、N→K・F編成は『いい日旅立ち・西へ』を使用している。

X・K編成への改造

2012年4月、JR東海はN700Aの導入に合わせ、同社が保有する現行のZ編成(0番台)全80編成をN700Aの同様のスペックに改造工事を実施すると発表した[45]

改造内容
  • キャリパー式車輪ディスクブレーキのブレーキディスクのボルト締結方式を、内周締結式から中央締結式に変更(ブレーキの強化)。
  • 定速走行装置の搭載・地震ブレーキの搭載で、N700Aに採用する機能の一部を反映する。

台車振動検知システムの搭載は行われない[46]。なお、概算の改造費用は約230億円である[47]。また、改造済の編成記号はX編成となり0番台から2000番台に改番される(ただしX0編成は9000番台のまま)。2013年から3年間をかけて順次、各編成の全般検査時に浜松工場で実施され、2013年度に32編成、2014年度に37編成、2015年度に11編成の改造が行われた[48]。2015年8月5日、改造工事の完遂式が行われた[49]

初めて改造が完了する編成は2013年5月中旬から運用を開始され、改造した車両には現行ロゴに「A」の文字を追加した新しいロゴが貼り付けられる[50]

この改造によって、車両の性能をできるだけ統一することが可能になり、補修上も運用上も金額はかかるもののメリットがあるとのこと[51]。また、JR西日本でも中央締結ブレーキディスクの試験を九州直通用のS1編成で行った[52]

なお、JR西日本も現行のN編成(3000番台)全16編成も博多総合車両所で同様の改造が実施され、改造済みの編成記号はK編成となり3000番台から5000番台に改番される。初めて改造が完了する編成は、2013年10月下旬から運用を開始し、2013年度に3編成、2014年度に8編成、2015年度に5編成の改造を行ない[53]、2016年3月7日にK9(←N9)編成の出場をもって完了した[46]

形式・車種(Z・N→X・K編成)

4両で1ユニットを構成(TC+M2+M'+M1もしくはM1+M2+M'+M1)する。

番台としては、X0編成が9000番台、Z編成量産車が0番台、N編成が3000番台、X編成が2000番台、K編成が5000番台を名乗る。Z0編成(現・X0編成)の量産車編入が行われなかったことから100系・300系・700系[注 13]とは異なり、編成番号と下2桁の車両番号のずれが生じていない。

N700系16両編成 編成表・ユニット構成
← 博多
東京 →
号車 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16
形式 783形
(Tc)
787形
(M2)
786形
(M'w)
785形
(M1)
785形
(M1w)
786形
(M')
787形
(M2k)
775形
(M1s)
776形
(M1sw)
777形
(M2s)
786形
(M'h)
785形
(M1)
785形
(M1w)
786形
(M')
787形
(M2w)
784形
(T'c)
定員 65 100 85 100 90 100 75 68 64 68 63 100 90 100 80 75
座席 普通車 グリーン車 普通車
ユニット 1ユニット 2ユニット 3ユニット 4ユニット
775形 (M1S)
775形 (775-13) 姫路駅
グリーン席を備える中間電動車
0,3000,2000,5000番台
Z・N・X・K編成8号車として使用。車掌室、業務用室、ラゲージスペース(ともに博多寄り)を備え、主変換装置・空気圧縮機・補助電源装置などを搭載する。定員68名。
9001
X0編成8号車として使用。乗務員室、業務用室、ラゲージスペース(ともに博多寄り)を備え、主変換装置・空気圧縮機・補助電源装置などを搭載する。定員68名。
776形 (M1Sw)
776形 (776-13) 姫路駅
グリーン席を備える中間電動車。
0.3000,2000,5000番台
Z・N・X・K編成9号車として使用。便所、洗面所(ともに東京寄り)、公衆電話・乗務員室・業務用室(ともに博多寄り)を備え、主変換装置・空気圧縮機・補助電源装置などを搭載する。定員64名。
9001
X0編成9号車として使用。便所、洗面所(ともに東京寄り)、ラゲージスペース(博多寄り)を備え、主変換装置、空気圧縮機、補助電源装置などを搭載する。定員64名。
777形 (M2S)
777形 (777-13) 姫路駅
グリーン席を備える中間電動車。
0,3000,2000,5000番台
Z・N・X・K編成10号車として使用。業務用室、喫煙ルーム(ともに東京寄り)、ラゲージスペース(博多寄り)などを備え、主変換装置を搭載する。定員68名。
9001
X0編成10号車として使用。車掌室(東京寄り)、ラゲージスペース(博多寄り)などを備え、主変換装置を搭載する。定員68名。
783形 (TC)
783形 (783-13) 姫路駅にて
普通席を備える制御付随車。Z・N・X・K編成1号車として使用。博多向き運転台、便所・洗面所を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員65名。シートピッチは1,023mm。
784形 (T'C)
普通席を備える制御付随車。Z・N・X・K編成16号車として使用。東京向き運転台を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員75名。シートピッチは1,023mm。JR東海の本形式の内50両には、関ケ原地区を走行中に車体に付着した雪の状況を撮影する車上カメラが設置されており、総合指令所にリアルタイムに画像が送られ、冬季の安定輸送の確保に資している[54]
785形 (M1,M1w)
普通席を備える中間電動車。
0,3000,2000,5000番台 (M1)
Z・N・X・K編成4号車として使用。公衆電話を備え、主変換装置・空気圧縮機・補助電源装置などを搭載する。定員100名。
9001 (M1)
X0編成4号車として使用。自動販売機[注 14]を備え、主変換装置・空気圧縮機・補助電源装置などを搭載する。定員100名。
300,3300,2300,5300番台、9301 (M1w)
Z・N・X・K編成5号車として使用。便所・洗面所を備え、主変換装置・空気圧縮機・集電装置などを搭載する。定員90名。
500,3500,2500,5500番台、9501 (M1w)
Z・N・X・K編成13号車として使用。便所・洗面所を備え、主変換装置・空気圧縮機などを搭載する。定員90名。
600,3600,2600,5600番台、9601 (M1)
Z・N・X・K編成12号車として使用。公衆電話を備え、主変換装置・空気圧縮機・補助電源装置・集電装置などを搭載する。定員100名。
786形 (M',M'w,M'h)
普通席を備える中間電動車。主変圧器を搭載する。
0,3000,2000,5000番台 (M')
Z・N・X・K編成6号車として使用。自動販売機[注 14]などを備える。定員100名。
9001 (M')
X0編成6号車として使用。公衆電話などを備える。定員100名。
200,3200,2200,5200番台 (M')
Z・N・X・K編成14号車として使用。定員100名。
9201 (M')
X0編成14号車として使用。自動販売機[注 14]を備える。定員100名。
500,3500,2500,5500番台 (M'w)
Z・N・X・K編成3号車として使用。便所・洗面所(ともに東京寄り)、喫煙ルーム(博多寄り)などを備える。定員85名。
9501 (M'w)
X0編成3号車として使用。便所・洗面所(ともに東京寄り)、公衆電話(博多寄り)などを備える。定員85名。
700,3700,2700,5700番台、9701 (M'h)
Z・N・X・K編成11号車として使用。便所・洗面所・多目的室・車椅子対応設備・車販準備室・自動販売機[注 14]などを備える。定員63名。
787形 (M2,M2K,M2w)
787形0番台 (787-13) 姫路駅
普通席を備える中間電動車。主変換装置を搭載する。
0,3000,2000,5000番台 (M2)
Z・N・X・K編成2号車として使用。定員100名。
9001 (M2)
X0編成2号車として使用。自動販売機[注 14]を備える。定員100名。
400,3400,2400,5400番台 (M2K)
787形400番台 (787-413) 姫路駅
Z・N・X・K編成7号車として使用。便所・洗面所・喫煙ルーム・車販準備室(ともに東京寄り)などを備える。定員75名。
9401 (M2K)
X0編成7号車として使用。便所・洗面所・自動販売機[注 14](ともに東京寄り)などを備える。定員75名。
500,3500,2500,5500番台、9501 (M2w)
Z・N・X・K編成15号車として使用。便所・洗面所・喫煙ルーム・公衆電話を備える。定員80名。

編成一覧(Z・N→X・K編成)

G・F編成(N700A)

G・F編成(N700A)
N700Aのロゴ
基本情報
運用者 東海旅客鉄道(G編成)
西日本旅客鉄道(F編成)
製造所 日立製作所笠戸事業所
日本車輌製造
製造年 2012年 -
運用開始 2013年2月8日
投入先 東海道山陽新幹線
主要諸元
編成 16両編成
最高運転速度 東海道:285 km/h(曲線 +15km/h)
山陽:300 km/h
編成定員 計1,323名
(うちグリーン車200名)
編成長 404.7 m
台車 高速ボルスタレス台車、中央締結ブレーキディスク付き
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2011年5月、JR東海は700系の老朽取り替え車として改良型となるN700系1000番台(通称「N700A」、「A」はAdvanced(アドバンス、「進歩」の意)の頭文字)を投入することを発表し、2012年8月21日に落成第1編成が公開された。現行の0・3000番台をベースとしているため、外観もほぼ同じであるが、安全性・定時制の確保、環境性能・乗り心地の観点からいくつもの改善が行われている。

主な改善点は以下の通り。

車体構造
  • キャリパー式車輪ディスクブレーキのブレーキディスクのボルト締結方式を、内周締結式から中央締結式に変更することで、制動距離を削減(700系比20%、N700系比10%の短縮)[58][59]
  • 台車振動検知システムの採用[注 16][59]
  • 車体傾斜装置の動作範囲を曲線半径5,000m未満の曲線にまで拡大することで、乗り心地を改善[60]。(半径2,500mで275km/h、半径3,000mから4,500mでも動作させて285km/h[61]
  • リサイクル性の観点から、台車カバーをステンレス製に変更[62]
  • 電動車両全車の主変換装置を、走行中に受ける床下の走行風を利用して半導体素子の冷却を行い、小型軽量化を図ったブロアレス主変換装置 (TCI101) に統一[62][63]
    • 原設計は東芝が担当[64]。性能を落とすことなく、N700系のブロワレス主変換装置 (TCI100) [注 17]と比べて容積比75%、質量比85%となる小型軽量化を達成[64][注 18]
  • モニタ中央装置と各車両のモニタ端末機を接続する通信回線伝送容量を100Mbpsから1Gbpsに向上させ、新たに搭載されたモニタ幹線データ記録装置に対応[64]
  • ATC情報を活用した定速走行装置を搭載[59]
接客設備
  • 従来はグリーン車のみに採用されていた吸音床構造を普通車にも採用。さらに、グリーン車の内壁には新たに制振パネルを搭載することで、さらなる静音化を図っている。
  • 座席の模様を薄い色に変更。「普通車はより明るく、グリーン車はより落ち着いた」雰囲気とした[65]
  • 座席の背もたれのヘッドレストの改良。
  • トイレや洗面室の電灯を、利用者が来ると明るくなる、調光機能付きLED照明に変更。従来のN700より車内照明の電力を2割削減した[65]
  • 自動販売機の廃止(2013年末投入分より[66])。
  • 扉上のドア開閉予告灯装着。(従来のN700には付いてないため、車内からではロゴマークの変更と共に相違点がある唯一の存在)

なお、外観上の区別のため車体横にはAdvancedの「A」をあしらったロゴマークが刻まれる[65]。編成記号は G

2012年(平成24年)度に6編成、2013年(平成25年)度に7編成の計13編成を製作して700系を置き換える計画で、費用は概算で660億円である[67]

さらに2014年(平成26年)度から2016年(平成28年)度末にかけ毎年度6編成ずつ、計18編成を追加投入する計画で費用概算は約880億円。新たにトイレ便座に温水洗浄機能を加える。これにより2016年度末にはN700Aが31編成、0番台が80編成となり、同社の新幹線車両全体の8割以上がN700系およびN700Aとなる予定[68]

営業運転開始は2013年2月8日[69]。一番列車は、「のぞみ203号(G3編成)」と、「のぞみ208号(G2編成)」で、東京駅新大阪駅においてそれぞれ出発式が行われた[70]

JR西日本も、平成25年11月下旬にN700A(N700系4000番台)を1編成投入した[71]。編成記号は F [72]。2015年度、2016年度には4編成ずつ投入される予定である[73]

なお、N700Aは限定運用ではなく、G編成はZ・X編成と、F編成はN・K編成とそれぞれ共通運用が組まれている[注 19]。当初は東海道区間のみの運用だったが、2013年3月16日ダイヤ改正より山陽新幹線への乗り入れも開始された。

編成一覧(G・F編成)

運用(16両編成)

2017年3月4日現在

特記無き限り定期列車における運用について記載する。東海道新幹線区間についてはJR東海のニュースリリース[74]に基づく。

  • のぞみ
    • 不定期列車を除く全列車に運用。
  • ひかり
    • 山陽新幹線区間のみ運用の上り3本・下り2本を除く全定期列車に運用。
  • こだま
    • 東京駅 - 三島駅間:下り4本・上り5本に運用。
    • 東京駅 - 静岡駅浜松駅間:下り3本・上り4本に運用。
    • 東京駅 - 名古屋駅新大阪駅間: 上り12本下り13本に運用。
    • 三島駅・静岡駅・名古屋駅 - 新大阪駅間: 下り4本・上り5本に運用。
    • 小倉駅 - 博多駅間:下り1本・上り1本に運用。

運用の変遷

ダイヤ改正 のぞみ ひかり こだま 所属編成(JR東海) 所属編成(JR西日本) 備考
Z編成 X編成 G編成 N編成 K編成 F編成
2007年7月1日 8 0 0 Z1 - Z5     N1     N700系0番台(Z編成)・3000番台(N編成)登場
2008年3月15日 41 2 4 Z1 - Z16     N1 - N8    
2009年3月14日 81 5 2 Z1 - Z32     N1 - N9    
2010年3月13日[75] 120 7 7 Z1 - Z48     N1 - N14     500系が定期「のぞみ」から撤退
東海道・山陽直通「のぞみ」のN700系化完了
2011年3月12日[76] 149 7 7 Z1 - Z64     N1 - N16    
2012年3月17日[77] 163 18 18 Z1 - Z80     N1 - N16     300系引退
定期「のぞみ」のN700系化完了
2013年3月16日[78] 163 19 26 Z1 - Z80   G1 - G6 N1 - N16     N700系1000番台(G編成)登場
2014年3月15日[79] 163 39 41 Z1 - Z5
Z15 - Z35, Z37
Z48 - Z64
Z66, Z67
Z79, Z80
X6 - X14
X36
X38 - X47
X65
X68 - X78
G1 - G13 N1 - N3
N6 - N12
N14 - N16
K4, K5, K13 F1 N700系4000番台(F編成)登場
N700系0番台(Z編成)→2000番台(X編成)改造開始
N700系3000番台(N編成)→5000番台(K編成)改造開始
2015年3月14日 164 44 43 Z1 - Z5
Z33,Z35,Z37
Z64,Z66, Z67
X6 - X32
X34,X36
X38 - X63
X65,X68 - X80
G1 - G19 N6,N7, N9
N11, N16
K1 - K4
K5, K8, K10
K12 - K15
F1
2016年3月26日 164 47 48 X1 - X80 G1 - G25 K1 - K16 F1 - F5 N700系0番台(Z編成)→2000番台(X編成)改造完了
N700系3000番台(N編成)→5000番台(K編成)改造完了
2017年3月4日 164 65 50 X1 - X80 G1 - G31 K1 - K16 F1 - F9  
2018年3月17日 164 65 63 X1 - X80 G1 - G39 K1 - K16 F1 - F12 

2009年度末までに東京駅 - 博多駅間運転の定期「のぞみ」すべてを含む110本以上、2011年度末までにすべての「のぞみ」が本系列での運転とされた[80][81]。これにより、共通運用していた500系は編成を16両から8両に短縮して「こだま」に、700系は順次「ひかり」「こだま」にそれぞれ転用され、300系・100系を逐次置き換えた。

2007年7月1日ダイヤ改正

2007年7月1日「のぞみ」で運転開始(東京駅 - 博多駅間:下り2本・上り3本、品川駅 - 博多駅間:下り1本、東京駅 - 新大阪駅間:1往復)。

その後、N700系の増備に伴い、700系や500系で運転されていた「のぞみ」を順次置き換えていった。

2008年3月15日ダイヤ改正
N700系「のぞみ」の通過待ちをする0系「こだま」(東広島駅

東京駅 - 博多駅間の「のぞみ」の毎時1本がN700系で運行される。

定期列車としては初めて「ひかり」2本に充当されるなど、上下合計で43本の「のぞみ」・「ひかり」が本系列で運転されるようになった。また小倉駅 - 博多駅間の「こだま」2往復にも間合い運用として充当されるようになった。さらに同年5月27日から順次「のぞみ」での運用が増加し、同日から翌年2月にかけて30本の「のぞみ」運用を置き換えた。

また、2008年10月1日より「ひかり」での運用1本が新たに追加。また、山陽新幹線の「こだま」1往復にて300系の代走として一部の日に充当された。

2009年3月14日ダイヤ改正

上下合計88本の「のぞみ」「ひかり」「こだま」がN700系で運転される。特に、東京駅 - 広島駅間と東京駅 - 博多駅間の「のぞみ」の1本ずつの毎時2本がN700系で運行される。さらに、同年4月28日から順次「のぞみ」での運用が増加し、同日から翌年3月にかけて28本の「のぞみ」運用を置き換え、500系は「のぞみ」運用から撤退した。また、2009年10月2日以降、「ひかり」での運用が同日から12月にかけて2本追加された。

過密ダイヤの影響で、これまで高速化による所要時間短縮の恩恵は早朝・深夜の列車にしか得られていなかったが、この改正で全日においてN700系専用のダイヤが組まれ、若干ではあるもののデータイムにもその恩恵がもたらされることとなった。当時の本系列による東京駅 - 博多駅間直通「のぞみ」は、日中でも東京駅 - 新大阪駅間を4駅停車しながら従来の3駅停車「のぞみ」の一部と同等の2時間33分で結び、日中「のぞみ」の標準到達時間を延ばすことなく品川駅と新横浜駅の両駅に全列車を停車させることができた[注 20]

2010年3月13日ダイヤ改正

東海道・山陽新幹線を直通するすべての定期「のぞみ」101本がN700系で運転されている[82]。また、博多駅 - 小倉駅・新下関駅間の「こだま」にも1往復ずつ充当される[83]

2017年3月4日ダイヤ改正

東海道・山陽新幹線を直通または東海道新幹線内で完結する全ての定期「ひかり」がN700系化[84]。また、山陽新幹線内の新ATC導入に伴い、速度向上と到達時間短縮が図られる[85]。合わせて東海道新幹線内の「こだま」もN700系使用列車が2本増加。

事故からの復旧[注 21]

2015年6月30日、「のぞみ225号」の新横浜 - 小田原間を走行中に男が1号車に放火・焼身自殺し(東海道新幹線火災事件)、X59編成のうちダメージが酷かった1号車の783-2059が廃車解体された。その後日本車輌製造で2代目となる783-2059が新造、2016年7月25日に試運転が行われ、7月30日の「のぞみ205号」から営業運転に復帰した。前照灯などは1000番台に準じたマイナーチェンジが行われているが、連結編成の仕様に合わせられている[86][87]

投入スケジュール

山陽新幹線区間を走行するN700系Z28編成(0番台)
(2009年4月8日 岡山駅 - 相生駅間)

2006年5月26日のJR東海・JR西日本両社の発表では、投入計画は以下のとおりとされた。

  • 2007年度:23編成 …東海15、西日本8
  • 2008年度:17編成 …東海16、西日本1
  • 2009年度:14編成 …東海11、西日本3
  • 計:54編成 …東海42、西日本12

費用はJR東海が約2000億円、JR西日本が約600億円であり、2009年度には東海道・山陽新幹線直通のすべての「のぞみ」を本系列に置き換える計画だった。その後、営業運転開始後の好調と増備によるさらなる地球環境への貢献を図るため、従来の計画を前倒しするとともに2009年度以降にも追加投入され、合計で1,500両以上が製造されることとなった[88]

  • 2007年度:24編成 …東海16 (+1) 、西日本8
  • 2008年度:17編成 …東海16、西日本1
  • 2009年度:21編成 …東海16 (+5) 、西日本5 (+2)
  • 2010年度:18編成 …東海16、西日本2
  • 2011年度:16編成 …東海のみ
  • 計:96編成…東海80・西日本16 ( ) は当初計画からの増加。Z0編成を含めた場合だと、97編成…東海81・西日本16

追加投入の費用はJR東海が約1,800億円、JR西日本が約200億円で、総額はJR東海が約3,800億円、JR西日本が約800億円となる。

2012年3月17日ダイヤ改正で、「のぞみ」定期列車がすべて本系列での運行に置き換えられ、「ひかり」「こだま」への充当も増やされ東海道新幹線の定期列車の約64%が本系列で運転されている。

2012年度からは、1000番台「N700A」の投入が開始された(前述)。

  • 2012年度:6編成 …東海のみ
  • 2013年度:8編成 …東海7、西日本1
  • 2014年度:6編成 …東海のみ
  • 2015年度:10編成 …東海6、西日本4
  • 2016年度:10編成 …東海6、西日本4

2015年10月には、JR東海が2016年度から2019年度にかけて計20編成を追加投入し、2019年度末には全ての車両がN700Aタイプになると発表した。続いてJR西日本も2016年12月21日に2017年度から2019年度にかけて15編成の追加投入を発表した[89]

これらの編成は、新しいブレーキライニングを装備し従来のN700Aよりも地震ブレーキの停止距離が約5%短縮される他、パンタグラフの状態監視機能の追加、台車振動検知システムの強化、ATC状態監視機能の強化などが行われ、既存のN700・N700Aもこれらの機能を反映させる改造工事が2017年度から2019年度にかけて行われる。 費用はJR東海の場合、車両の製造費・改造費で1040億円。[90]

  • 2016年度:11編成 …東海7(+1)、西日本4
  • 2017年度:10編成 …東海7、西日本3
  • 2018年度:13編成 …東海7、西日本6
  • 2019年度:11編成 …東海5、西日本6

山陽・九州新幹線用の編成

S・R編成
N700系S5編成
(2011年4月13日 姫路駅)
基本情報
運用者 西日本旅客鉄道(S編成)
九州旅客鉄道(R編成)
製造所 日立製作所笠戸事業所(S・R編成)
日本車輌製造(S編成)
川崎重工業車両カンパニー(S・R編成)
近畿車輛(S・R編成)
製造年 2008年 - 2012年
製造数 S編成: 19編成152両
R編成: 11編成88両
運用開始 2011年3月12日
投入先 山陽九州新幹線
博多南線
主要諸元
編成 8両編成(全電動車
最高運転速度 300 km/h(山陽新幹線)
260 km/h(九州新幹線)
120 km/h(博多南線)
編成定員 計546名
(うちグリーン車24名)
台車 軸梁支持方式WDT208
主電動機 かご形三相誘導電動機
WMT207, WMT208, WMT209
駆動方式 WN駆動方式
編成出力 305kW×32 = 9,760kW
保安装置 ATC-1型ATC-NS
KS-ATC
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2011年に投入された車両で、8両で1編成を構成し、山陽・九州新幹線直通運転用として製造される。6号車がグリーン車・普通車の合造車、ほかの車両は普通車である。前述のとおり、東海道・山陽新幹線用の編成と仕様が大きく異なる点が複数存在する。

車体構造

主要構造はZ・N編成と同じアルミニウム合金製ダブルスキン構造を採用している。更なる騒音低減のために、車体天井中央部にある特高圧引通線の覆いを車体屋根中央部の型材と一体化構造とし、引通線自体は型材内を貫通する構造としている[91]

4 - 5号車間には、異常時の回路切り離しが可能な特高圧引き通しケーブルヘッドが装備されている[92]。そのケーブルヘッドの傾斜角が騒音との兼ね合いで5度となっており、Z・N編成のものとは形状が違う[92]。そのため全周幌とケーブルが接近し、絶縁間隔の確保ができないため4 - 5号車間の全周幌の天井部分が撤去されている[92]

塗装

車体側面に描かれるロゴ

ボディカラーには陶磁器の青磁を連想させる白藍色を使用し、紺藍色と金色の側面ラインが1本入っている。

両先頭車両と奇数号車の側面にはロゴマークが貼り付けられている。これはJR西日本とJR九州が相互協力して山陽・九州新幹線の乗り入れを実現することを、手を携えて交わるような曲線で表現している。ただし車体の左右ではロゴのアルファベットの位置が異なる(どちらもKYUSHUの文字が下り方に、WEST JAPANの文字が上り方になるように書かれている)。

R10編成においては九州新幹線全線開業を記念したCM撮影のため、虹色のラッピングが施されたことがある[93]

R2編成は2013年10月1日から11月4日の間、「どっちゃん行く?熊本キャンペーン」の一環として、熊本県営業部長の「くまモン」と阿蘇駅名誉駅長の「くろちゃん」のラッピングを施して運行された[94]

2015年2月14日から2016年1月にかけて、S編成2本にユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクション「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」のラッピングが施され、主に土曜日の「さくら580号」「ひかり580号」を中心に運行された[95]

R7編成[注 22]は2016年7月9日から9月30日の間、「元気に!九州プロジェクト」の一環として九州各県のキャラクター[注 23]をデザインしたラッピングを施して運行された[96][97]

主要機器

Z・N編成をベースに、勾配対応のための全電動車編成とし、九州区間での35‰勾配の上りでのユニットカット起動を可能とするために引張り力を増加させる(九州区間のみで使用可)ことで、勾配起動を可能としている[98]。また、短編成化による冗長性の確保のため、ユニット解放時の限流値増機能を有する[98]

最高速度はZ・N編成と同じく300km/hで、九州新幹線内は現状260km/hとなっている[17]

電源・制御機器

主変圧器は、単相外鉄形送油風冷式(定格容量5,650kVA)を採用し、小型・軽量化を図っている[98]

主変換装置は、3レベルPWMコンバータ+3レベルVVVFインバータで構成されている[98]。内蔵されたブロアでの冷却による強制風冷沸騰冷却方式を採用し、車体側面から制御機器を引き出して点検可能な構造とした WPC204 を搭載する[3][98]

主電動機はWMT207, WMT208, WMT209を搭載する。WMT207 は中間車両用、WMT208 は高周波ノイズ低減対策として回路にコアを挿入した先頭車両連結面用、WMT209 は高周波ノイズ対策のコアとATCノイズ対策としてシールドカバーとジッパーチューブを取り付けた先頭車両運転台寄り用である[99][100]

台車

JR九州の検修設備の関係で500系や700系E・B編成、800系の台車をベースにしたボルスタレス台車 WDT208 を搭載している[92]。これは軸箱支持方式を軸梁式とし、軸箱側端部と台車枠との間に軸ダンパが装備されている。駆動方式も全車WNドライブを採用しているが、車体傾斜装置は東海道区間へは乗り入れないため未搭載であり、準備工事に留めている。

特徴としては下記のような点が挙げられる。

  • 軸受け性能を向上させるために車軸の軸受けのサイズを直径130mmに拡大[92][注 24]
  • 軸受けの荷重分布を最適化するために軸箱体の形状を変更[92]
  • WN駆動部の塵除けを水除けに変更することで、火山灰が多い九州区間(特に桜島を抱える鹿児島県内)での防塵性能を強化[92]
  • セミアクティブダンパを搭載[92]

保安装置

東海道区間・山陽区間・九州区間で列車無線の仕様が異なるため、そのすべてに対応した設備となっている[99]

また自動列車制御装置 (ATC) は東海道・九州区間における1段デジタルATC(ATC-NS)、山陽区間における多段アナログATC(ATC-1型)のそれぞれに対応している[99]。東海道区間には営業運転での乗り入れはないが、鳥飼車両基地への回送と山陽区間のATC-NS化を考慮し設置されている。

車内設備

編成は、グリーン車(6号車の半室で定員24名)・普通車指定席(4 - 8号車で計282名)・自由席(1 - 3号車で計240名)からなり、車内はいずれも木目調のデザインが用いられて落ち着きのある内装となっている[17]。喫煙ルームの設置や6号車の半室グリーン車化による定員の減少を最小限に抑えるべく、室内機器配置の最適化が行われた。

7号車には車椅子対応座席を備えており便洗設備も広めの設計で、3・7号車には喫煙ルームを、5号車には女性専用トイレとパウダールームを備えている[17]。なお、博多南線内は全面禁煙のため、喫煙ルームでも喫煙できない。この他、3・7号車には16両編成では廃止された自動販売機が設置・稼働している。

また、車内チャイムはS編成はN編成と同様の『いい日旅立ち・西へ』、R編成が向谷実作曲によるオリジナルのチャイムを使用する。R編成では、博多駅熊本駅鹿児島中央駅発着時は特別にアレンジされたチャイムが鳴る[注 25]

客室

座席比較
項目 普通車自由席 普通車指定席 グリーン席
シートピッチ 1,040 mm 1,040 mm 1,160 mm
シート幅[注 11] 430 mm(D・E席)
440 mm(A・C席)
460 mm(B席)
460 mm 475 mm
シート配列 2列+3列 2列+2列 2列+2列
付帯設備 背面テーブル 背面テーブル
ドリンクホルダー
背面テーブル
インアームテーブル
レッグレスト
LED読書灯
オーディオ設備

客室内はホワイトベージュを基調とした布目調とし、グリーン車は仕切り壁と荷棚先端部は古代桜調の木目化粧シート張りとなっている。通路部の絨毯には紫紺色と金茶色の花唐草紋様柄を取り入れている[17]。普通車自由席の仕切り壁と荷棚先端部は若桜調の木目化粧シート張り、指定席の仕切り壁と荷棚先端部は朱桜調の木目化粧シート張りとなっている。

座席はグリーン車と普通車指定席は通路を挟んで左右各2列、自由席は2列+3列の配置である[17]。普通車のシートピッチは1,040mmに統一されているため、両先頭車の座席列数がZ・N編成と比べて1列ずつ減少している。そのため、両先頭車の側窓が1つ少なくなっている。

普通車自由席はZ・N編成普通席をベースとしている。モケットの基本色は3列側が「縹色」、2列側が「茜色」とし、表面の柄は市松模様を主体としている。

普通車指定席はモケットの色は濃菜種色をベースとし、遠山紋をアレンジした紋様を採用した。背面テーブルなどに木目調の木材を採用。座席中央の肘掛が可動化されている。座席の寸法は700系「ひかりレールスター」の指定席「サルーンシート」と同様肘掛の幅も大きく取られており、実効的な座席幅は600mm以上とグリーン席並みの基本寸法を有している。

グリーン席は、Z・N編成グリーン席で新たに搭載されたシンクロリクライニング機構にエアシリンダー駆動によるレッグレストを新たに搭載し、ピローを取り付けるなどして実効座席幅がほぼ同じである普通車指定席との差別化を図っている。モケットには濃紫紺色の花唐草模様の平織生地を採用し、テーブルなどに木目調の木材を使用している。

東海道・山陽新幹線を走るN700同様、グリーン車全席と、指定席・普通席の前後方と窓側にパソコンや携帯電話を充電するためのAC電源が備わっている。網棚は奥行きが400mm。高さは手前が390mm、弧を描きながら低くなり最奥部では250mmになる。

また、N700系グリーン車のオーディオ設備はかつてラジオを聞くことができたが、2013年をもって廃止されている。

形式・車種

N700系8両編成 ユニット構成
← 鹿児島中央
新大阪 →
号車 1 2 3 4 5 6 7 8
形式 781形
(Mc)
788形
(M1)
786形
(M'w)
787形
(M2)
787形
(M2w)
766形
(M'hs)
788形
(M1h)
782形
(M'c)
座席 普通車 3+2列 普通車 2+2列 グリーン車・普通車
2+2列
普通車 2+2列
ユニット 1ユニット 2ユニット

番台としてはJR西日本のS編成が7000番台、JR九州のR編成が8000番台を名乗っており、車両の仕様やカラーリングは同じだが、車体側面に描かれたJRのロゴが前者がブルー、後者がレッドで描かれているのが相違点である。4両で1ユニット (Mc+M1+M'+M2) を構成し、M'車に主変圧器、M1,M2車に主変換装置を2台ずつ搭載している。本番台区分に属する各形式名とその車種は以下のとおり。

編成定員はS編成・R編成ともに546名である。

766形 (M'hS)
グリーン席と普通席を備える中間電動車。6号車として使用。車掌室を備え、主変圧器・補助電源装置などを搭載する。定員60名(グリーン席24名・普通席36名)。
781形 (MC)
普通席を備える制御電動車。1号車として使用。鹿児島中央向き運転台、便所・洗面所を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員60名。
782形 (M'C)
普通席を備える制御電動車。8号車として使用。新大阪向き運転台を備え、空気圧縮機、補助電源装置などを搭載する。定員56名。
786形7000, 8000番台 (M')
普通席を備える中間電動車。3号車として使用。便所・洗面所(ともに新大阪寄り)、喫煙ルーム・自動販売機(鹿児島中央寄り)などを備え、主変圧器、補助電源装置などを搭載する。定員80名。
787形 (M2,M2w)
普通席を備える中間電動車。主変換装置を搭載する。
7000, 8000番台 (M2)
4号車として使用。公衆電話を備え、空気圧縮機などを搭載する。定員80名。
7500, 8500番台 (M2w)
5号車として使用。便所・洗面所・パウダールームを備える。定員72名。
788形 (M1)
普通席を備える中間電動車。主変換装置を搭載する。
7000, 8000番台
2号車として使用。定員100名。
7700, 8700番台
7号車として使用。便所・洗面所・喫煙ルーム・自動販売機・車椅子対応設備・多目的室などを備える。定員38名。

編成一覧(S・R編成)

運用(8両編成)

2012年3月17日現在

山陽・九州新幹線を直通するすべての「みずほ」「さくら」と九州新幹線内の「さくら」「つばめ」の一部、山陽新幹線「ひかり」「こだま」および博多南線の一部で運用[101]されている。JR西日本所有のS編成は運用の都合上、九州新幹線内完結列車にも使われている[102]

  • みずほ[103]
    • 新大阪駅 - 鹿児島中央駅間:10本すべて
  • さくら[103]
    • 新大阪駅 - 鹿児島中央駅間:35本すべて
    • 新大阪駅 ← 熊本駅間:上り1本
    • 新下関駅 → 鹿児島中央駅間:下り2本
    • 博多駅 - 鹿児島中央駅間:9本
  • つばめ[103]
    • 新下関駅 ← 熊本間:上り1本
    • 小倉駅 ← 鹿児島中央駅間:上り1本
    • 博多駅 - 鹿児島中央駅間:2本
    • 博多駅 → 熊本駅間:下り1本
    • 熊本駅 - 鹿児島中央駅間:3本すべて
    • 川内駅 ← 鹿児島中央駅間:上り1本
  • ひかり[103]
    • 新大阪駅 → 博多駅間: 下り1本
    • 新大阪駅 ← 広島駅間: 上り1本
  • こだま[103]
    • 新大阪駅 - 岡山駅間: 2本
    • 広島駅 ← 博多駅間: 上り1本
    • 新下関駅 ← 博多駅 ← 博多南駅間: 上り1本
    • 小倉駅 → 博多駅 → 博多南駅間: 下り1本

今後の予定

JR東海では2015年8月15日にZ編成のX編成への改造が完了した[104]。引き続き、G編成を増備し、最終的に51編成まで増やす計画が発表されている[105]

また、2016年6月24日に次期新幹線車両である「N700S(Sは、Supreme(スプリーム、最高の)の頭文字」の確認試験車を製作することを発表した[106][107]2018年6月23日に試験走行開始し、2020年頃の営業運転開始を目標とする[108]。なお、N700SはJR東海による単独開発である[109]

重大インシデント

2017年12月11日、「のぞみ34号」(博多駅13時33分発東京駅行き)で運転中のN700系5000番台K5編成(JR西日本・博多総合車両所所属、川崎重工業製)にて、13時50分ごろ、小倉駅発車後に車内に異臭がするのを担当乗務員が発見し、岡山駅でJR西日本・博多総合車両所岡山支所の車両保守の係員が添乗して確認したところ、編成の一部でモーターの異音を認識、係員が「次の駅で列車を止めて点検したらどうか」と提案したものの、東京・新幹線総合指令所の輸送指令が「運行に影響なし」と判断し、そのまま運転を続行した。その後、新大阪駅で乗務員がJR東海の乗務員に交代し、JR東海の輸送指令が「念のため」と異臭の確認指示を出したところ、車掌京都駅を過ぎたところで異臭を報告したため、名古屋駅14番線ホームに到着後、JR東海・名古屋車両所の係員が床下の点検を行った。その結果、13号車(東京駅側から4両目、車両番号785-5505)東京寄りの台車周辺に油漏れを発見。当該編成は名古屋駅での運転中止を決定、乗客は全員、後続便に振り替えた[110]

その後、さらに車両を調べたところ、13号車東京寄りの動力台車にある「継手(三菱電機製)」が焦げたように変色し、ギアボックス(新日鉄住金製)には油が付着、また台車の枠組み部分(JFEスチール製鋼材)に亀裂が発見された[111][112]

12月12日、JTSB(国土交通省運輸安全委員会)は、脱線事故に繋がる危険性があると判断。この案件を新幹線鉄道としては史上初の『重大インシデント』として認定した[113][114][115][116]

この事故を受けて閉鎖された名古屋駅14番線を再開させるには、車両を3km西にあるJR東海・名古屋車両所に回送させなければならないが、亀裂の入った台車のまま3kmの距離を回送させると脱線の危険がある事から、JR東海は、名古屋駅にて以下の工程で3日間かけて台車を交換した上で回送する事となった[117]

  • 12月14日終電後:16 - 14号車を切り離し、牽引用として用意した別のN700系と連結させて15番線経由で名古屋車両所に移動。
  • 12月15日終電後:13号車をクレーンで釣り上げ、亀裂が入った13号車東京寄りの台車を浜松工場から持ち込んだ別の台車に交換。亀裂が入った台車は、モーター類を気泡緩衝材で梱包し、JR西日本が手配したトラックに載せ博多総合車両所へ輸送(12月17日到着)。
  • 12月17日終電後:13 - 1号車を名古屋車両所まで自走。

12月19日、JR西日本は電動台車の「側バリ」(鋼材製、断面は幅16cm、高さ17cmのほぼ正方形。鋼材は厚さ8mmで中空)外枠の亀裂は枠の内側と外側の面でそれぞれ下から約14cm、亀裂の幅は最大13mmに及び、底部でつながってコの字形になっており、17cmある鋼材の側面高さの大半の14cmに達していたことを発表。残り3cmで完全に破断し、大事故に発展する恐れがある「破断寸前」の状態であった。記者会見したJR西日本の吉江則彦副社長兼鉄道本部長は「脱線など非常に大きな事故に至った可能性があった」「途中駅で止めて点検すべきだった。大きな課題だ」との認識を示し、「新幹線の安全性に対する信頼を裏切るものである」と謝罪した[118][119][120]

2018年1月5日、JR西日本の来島達夫社長は会見にて、自身の月額報酬を返上するなど、役員12人の社内処分と、人事異動を発表した[121][122]

2018年2月24日、問題の台車が、台車枠の強度が基準を下回っていた可能性があると報道された。台車枠組み立ての鋼材溶接の際、溶接部位の厚さが設計で定められており、厚さを一定にするために鋼材を削って調整していたとみられる[123]

2018年2月28日、JR西日本は問題の台車の調査結果を公表し、超音波探傷装置や台車温度検知装置などを活用し、安全の確保に努めると発表した[124][125][126][127]。また川崎重工業も、台車製造工程において、現場の班長の指示ミス・確認ミスが原因であることを発表した[128][129]

JR東海によると、当該編成が当日「のぞみ15号」(東京駅8時10分発博多駅行き)で運行した際、小田原市の酒匂川と豊橋市の豊川にある橋梁に設置した赤外線センサー式の「台車温度検知装置」が、台車の「継手」の温度上昇を記録していたことが報道された。この温度上昇は当時の基準の範囲内で警報が出なかったが、JR東海は台車亀裂問題の発覚後に、検知の基準値を下げる対策を行った。その前日の運行では温度上昇は見られなかった。台車温度検知装置はJR東海が開発して2015年7月に導入したが、JR西日本管轄の山陽新幹線区間では設置されていなかった[130][131]が、2018年6月29日に、JR西日本が山陽新幹線区間の5か所にこの装置を設置することが決まっていることが報道された[132]

2018年6月28日、運輸安全委員会は調査の経過報告を公表し[133]、国土交通大臣に意見を提出した[134]。この報告によると、台車の空気ばねの内圧を解析した結果、前日の運行時から台車の亀裂が進行していたことが判明した。また、再現実験の結果、規定通りであれば亀裂が35年程度で底面の角に達するのに対し、川崎重工業が実際に行った鋼材切削作業の場合、この案件の台車のようであれば5年程度で亀裂が進行してしまうことが明らかとなった。さらに、この台車の製造時において、肉盛溶接後に本来行うべき熱処理が行われた形跡がないため、溶接の熱で生じたひずみが部材に残り、そのひずみが台車に加わる力を歪ませた結果、亀裂の進行を大きくしてしまった可能性を示唆した。このほか、報告では台車の見えない部分からの非破壊検査と、走行中の異常検知・伝達システムの確立も求めた[135]

2018年9月28日、川崎重工業はこのインシデントについて「全社品質管理委員会」の調査結果と再発防止策を公表した。石川主典副社長は、台車製造時に規定に反して鋼材が薄く削られていたことについて、担当者が「鋼材の削り込みを禁じる」注意事項を現場に説明していなかったことを明らかにした[136]一方で、作業内容についての明確な記録や当時の作業員の記憶がなく、原因究明が徹底できなかった[137]。この社内の管理体制の甘さと現場任せの作業姿勢に対し、神戸新聞は9月29日に「情報が社内で共有されていなかったことに起因する構造的な問題で、会社全体が風通しの良い組織になる必要がある」と社説を掲載した[138]

高速鉄道シンポジウム (N700-I)

2009年11月16日に名古屋マリオットアソシアホテルで「高速鉄道シンポジウム」が開催され、アメリカイギリスインドマレーシアインドネシアエジプトの6カ国の在日大使館関係者や、米国の高速鉄道プロジェクト関係者、日本政府関係者、大学や企業の関係者が参加した。そのシンポジウムで、N700系をベースにした車両 (N700-I) と、各国の実態に合わせたシステムを組み込む「N700-I Bullet」(N700系を国際仕様としたN700-I (I:International) を中心とする東海道新幹線運行システムの総称[139])が発表された。

N700-Iは、ヨーロッパの高速鉄道でもよく見られる編成長と同じ200m程度(8両編成)を基本とし、輸送量に応じて編成長を自由に組み直すことが可能である。最高速度は330km/hである。

同日深夜には、Z0編成を使用した330km/hでの走行が米原駅 - 京都駅間の下り線を利用して実施され、332km/hを記録した[140]。これはJR東海が日本国外に向けて新幹線を売り込むために行ったものであり、在日大使館関係者などが同乗した。

この332km/hの速度は、東海道新幹線区間における営業用車両の最高記録である(従来の記録は1991年に300系車両が同じ区間で出した325.7km/h)。

脚注

注釈

  1. ^ 車両番号はグリーン車が「777-30」、普通車が「785-3505」、グリーン・普通合造車が「766-7001」など。
  2. ^ 新幹線の試作電車や試験車両での採用例は過去に1000形952・953形などがある。
  3. ^ 在来線車両では313系2次増備車で先に導入されている。
  4. ^ 700系までの車両は東京寄り先頭車(16号車)に行先表示器は設置されていなかった。
  5. ^ JR西日本所属車では、500系で既にLED化されている。
  6. ^ 行先表示器の指定席/自由席表示の色も同じである。
  7. ^ 最高起動加速度は500系が1.92km/h/s、700系が2.0km/h/s、800系が2.5km/h/sである。
  8. ^ 700系が270km/h走行時14.7kWh、100系の220km/h走行時が13.9kWh。
  9. ^ 700系では、ここに左右動ダンパが装備されている。
  10. ^ 東海道新幹線は設計速度250km/h、運転最高速度210km/h計画されていたため、一部の例外を除いて最小曲線半径2500mとし、そこで250km/hで通過した際の転覆・乗り心地対策などで線路の実カント量を200mmとしている。
  11. ^ a b c 肘掛部分を除いた幅。ただし普通車3人掛け中央のB席は従来車両と同じ460mmである。
  12. ^ 2017年1月現在は、docomo Wi-FiBBモバイルポイントUQ Wi-Fiフレッツ・スポット(NTT東西)が対応[44]
  13. ^ この3形式は量産先行車が第1編成に編入されたため、量産車のトップナンバーは編成番号が「2」になっている。
  14. ^ a b c d e f 2014年3月14日をもって廃止[55]
  15. ^ Z0編成は1 - 4号車を日立製作所、5 - 14号車を日本車輌製造、15 - 16号車を川崎重工業が製造した。
  16. ^ 台車に振動センサーを搭載してそこからの情報を常時監視して故障や異常が発生した場合、運転台のモニターに表示する。
  17. ^ 2 - 4・13 - 15号車に搭載。
  18. ^ 『鉄道ジャーナル』2013年5月号および『富士時報』2015年1月号には、容積比25%、質量比17%の小型軽量化がなされたと記されている。
  19. ^ JR東海テレフォンセンターへ運転当日朝6時以降に問い合わせれば、その日のN700A車両の運用を聞くことが出来る。また、新幹線改札口でも確認できる。
  20. ^ ただし、上り「のぞみ」30号・34号は2時間36分運転である。
  21. ^ 意図的に火を点けているため厳密には事故ではなくテロ行為だが、国土交通省は「新幹線初の列車火災事故」と認定しているため、本項では事故とする。
  22. ^ 800系U001編成も同年7月15日から実施。
  23. ^ 向かって左からエコトン・壺侍・がんばくん・らんばちゃん・めじろん・くまモン・ぐりぶーみやざき犬(ひぃくん・むぅちゃん・かぁくん)。
  24. ^ 軸受けは、500系以降で実績のある密封グリース式の円錐コロ軸受けを採用している。
  25. ^ 一方で、JR東海・西日本保有車のような始発・終着チャイムは設定されていない。
  26. ^ S1編成は1・2・7・8号車を川崎重工業、3・4号車を日本車輌製造、5・6号車を近畿車輛が製造した。

出典

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関連項目

外部リンク