ハイドライドシリーズ
ハイドライド
- (HYDLIDE)1984年にT&E SOFTが発売したコンピュータゲームソフトの名前。ゲーム内での正式名称である『THE LEGEND OF HYDLIDE』の略称。本稿にて記載。
- 『1』から始まった一連のシリーズ全般の総称。本稿にて記載。
- (HYDRIDE)化合物に水素原子を導入させたもの。水素化および水素の項目参照。
『ハイドライド』(HYDLIDE)とは、T&E SOFTが開発、発売したコンピュータゲーム。日本におけるコンピュータRPGの基礎を作った。ゲームデザインとプログラミングは内藤時浩。なお、ゲームジャンルとしてはアクションロールプレイングゲームに当たるが、開発元のT&E SOFTは「アクティブロールプレイングゲーム」と表記、1980年代後半のパソコン雑誌で山下章などが中心となって使用したジャンル表記である。
特に『ハイドライド』はそれまでのコンピュータRPGで当たり前だった自由度の高さを捨てて、物語にそって進めるタイプのRPG(俗称「一本道RPG」)を初めて提示したコンピュータRPGである。
ハイドライド
1984年12月13日にPC-8800シリーズ用『ハイドライド』が発売されて以来、当時としては美しいグラフィックと幻想的な世界観、また適度なゲームバランスで、派生作も含めて多くの機種に移植された。
1984年に発売されたBPSの『ザ・ブラックオニキス』、ナムコの『ドルアーガの塔』などの影響を受けつつも、レベルによって得られる経験値が異なるシステムを採用して、絶妙なゲームバランスを実現していたり、LIFE(HP)が0になったら最大まで回復する『生き返りの薬』は同ジャンルの標準アイテムとなるなど、独自のゲームシステムが好評を博した。
『ハイドライド』は1984年12月13日の発売以来パソコンゲーム雑誌のランキングに2年間載り続け、当時の雑誌はその現象を「ハイドライド・シンドローム」と呼んでいる。
世界観
『ハイドライドシリーズ』の舞台となる世界は、フェアリーランドと呼ばれる我々が住んでいる世界とは別のパラレルワールドとされている。これは1984年3月17日公開の『ドラえもん のび太の魔界大冒険』や『ネバーエンディング・ストーリー』(日本公開は1985年3月16日だが原作である『はてしない物語』は1982年に邦訳されている)などからの影響だと思われるがハイドライドではこの考えをさらに推し進めて、移植機種間や『ハイドライド』、『ハイドライドII』、『ハイドライド3』といったシリーズ間もパラレルワールドとしている。その理由として当時の移植機種間での性能に違いがありすぎ、完全移植を目指すよりはその機種の特色を生かすほうが良いという考えがあったからだ。さらにハイドライドは1作完結で作られたため会社の意向で続編を作ることが決定したとき、ハイドライドとの間で矛盾が生じないようにフェアリーランドという世界の名称やバラリスとドラゴンと言った一部のモンスター以外はすべて入れ替えられていることからパラレルワールドと呼んでも差し支えない。
ストーリー
人と妖精が共存する異世界の王国フェアリーランド。この国では3つの宝石(賢者の石)の力によって平和が保たれていたが、一人の悪い心を持ってしまった人間により宝石(賢者の石)の1つが奪われ、力の均衡を失ったことで、封印されていた悪魔バラリスが覚醒してしまう。 王国はバラリスの魔力により崩壊し、国中には怪物がはびこり、王国のアン王女も呪いにより妖精の姿にされていずこかへ連れ去られてしまう。そんな中、ジムと名乗る勇敢な若者が立ち上がった…
パッケージイラストについて
パッケージイラストの背景が『ネバーエンディング・ストーリー』のワンシーンと酷似している為、Windows95/98版ではパッケージイラストを使わなかった。
対応ハードウェア
- 最初に発売され、他機種版の基本となったものだが、音楽がビープ音のみで構成されている。
- 他の機種ではフィールドマップが切替式(画面端に移動すると切り替わる)であったが、唯一全方向フルスクロールを実現していた。またそれに伴ってゲームシステムが多少異なる。登場する敵キャラクターも増減があった。カセットテープ版とフロッピーディスク版が発売された。
- PC-6001MkII以降(1985年2月発売)
- 画面解像度は低いものの、BGM再生、ジョイスティック対応、画面高速切り替えなど、PC-8801版より完成度が高かった。PC-6001MKII以降用のカセットテープ版とPC-6601以降用のフロッピーディスク版が発売された。
- カセットテープ版の半年後、8月にROMカセット版が発売された。この作品から「画面切り替えスクロール」が搭載され、ROMカセット版にはパスワードを利用した画期的な記録方式と5段階の速度調整機能がある。
- 難易度が多少簡単になっている(FM-7のキー割り込み処理の関係で、操作がしにくかったため)。また、プログラマーのお遊びにより、他機種にはない隠れキャラクターが存在する(人魚、ラドン)。
- グラフィック性能に合わせてVRAM64K用(16色)、VRAM128K用(256色)からの選択式。 カセットテープ版とフロッピーディスク版が発売された。
- PC-9801U/F以降(1985年9月発売)
- PC-8801版を完全に再現することを目指して移植されている。10段階の速度調整機能があった。
- MZ-2500・2200・2000用(キャリーラボによる移植版)
- カセットテープ版で発売。テープのA面にMZ-2500、2200用のカラー版を、B面にMZ-2000用の「グリーンディスプレイ」版を収録している。
アレンジ版
- PCG機能のアクセスが垂直帰線期間にしかできなかったのを水平帰線期間にもできるようになったX1turbo専用にマップを総入れ替えした高速バージョン。
- 『ハイドライド・スペシャル』 ファミリーコンピュータ(1986年3月18日発売 東芝EMI)
- 『ドラゴンクエスト』に先駆けること2ヶ月、ファミリーコンピュータ初のRPGである。「スペシャル」という名称は、既に発売されていた『ハイドライド2』の要素として魔法などを取り入れたことによる。通常版と基本的には大差ないが迷宮シーンなどが簡単になり、登場する敵キャラクターにやや違いがある。
- なお、1999年3月にT&Eソフトから発売されたプレイステーション用の恋愛パラレルRPG『ソナタ』ではある一定の条件をクリアするとプレイ可能となるおまけゲームとしてこの『ハイドライド・スペシャル』が収録されている。
- 『ハイドライド』のオリジナルバージョンと『ハイドライド』のアレンジバージョンが収録され、ゲーム中にも切替が可能である。
- また、資料集『ハイドライドミュージアム』があり、『ハイドライド』発売当時の雑誌記事、発売全機種データ、開発者などのインタビューなどを見る事が可能で、さらにリメイク版の全楽曲と、当時『ハイドライド3』初回版の特典だった「T&E SOFT創立5周年記念ゲームミュージックライブラリー」の楽曲の一部を収録している。
- ほぼ原作どおりのオリジナルモードと、グラフィック、サウンドなどを強化したアレンジモードを収録。攻略のヒントや登場するモンスターのリストが閲覧できるなど、ライトユーザー向けの調整がされている。なお2001年9月3日よりデータ容量50KBのJAVAアプリバージョンが配信されており、こちらは簡易版といえる作りとなっている。なお「Ev」とは「Evolution」(進化)の略。
- セガサターン初のRPG。3D版ハイドライドだが、世界観以外はほとんど共通点が無い。背景がポリゴンで描かれ、キャラクターは2Dの実写風になっている。毎回自動生成される箱庭的世界を探検していくものだが、セガサターン最初期ということもあり、実験的要素が強い。
「ハイドライド」と言う名前の由来
公式的には、星座の学名である「hydra」(ハイドラ又は、ヒュドラ・海蛇座)と「?」(なんとかライド)の組み合わせであるとされているが、全88星座の中に語尾に「ライド」とつく名前の星座は存在していない。
では、『ハイドライド』という名前はどこから生まれたのか?
仮説として、星座の学名である「hydra」(ハイドラ)から「HYDRIDE」(ハイドライド)と言う単語を探し出して、「R」を「L」に変更したと考えられる。
公認のライバル
公式的ではないが内藤時浩個人が公認するライバルが存在する。それがコスモスコンピュータの『カレイジアスペルセウス』である。吉川泰生などの当時のスタッフの証言では、『カレイジアスペルセウス』の発表を知った内藤時浩が深刻な顔をして「(プロジェクトとしての)『ハイドライド』は、もう終わった……」、『ハイドライド』発売後も「『カレイジアスペルセウス』のグラフィックがもう少し綺麗だったら、負けていたのは、『ハイドライド』だったかもしれない……」などの発言がある。
ただ、内藤時浩個人以外は、『カレイジアスペルセウス』を知る知らないに関わらず、誰もそう考えていない。
また、2006年発行の雑誌の中の対談でも、『カレイジアスペルセウス』のことを語っている。
なお、ファンの間では日本ファルコムのドラゴンスレイヤーシリーズがライバルと目されることが多い。これは両シリーズが国産アクションRPGの草分け的存在として人気を二分したことと、それぞれの続編の発売日が近く、セールス上でも競争相手となったからである。
ギブアップについての考察
『ハイドライド』では、ESCキーを押すことによってシンキングラビットの『倉庫番』やデービーソフトの『フラッピー』などのパズルゲームのようにギブアップをすることが出来る。しかし詰まる場所が1カ所と少なく、さらにセーブ(save)とロード(load)ができる『ハイドライド』では、普通に考えてギブアップは必要がないと考えられる。
だが、BPSの社長ヘンク・B・ロジャースがある雑誌でハイドライドのことを聞かれて「『ハイドライド』はパソコン上でファミコンゲームを実現している。」と発言していることから、当時のゲームと『ハイドライド』の違いを考えた場合に『ハイドライド』では、ギブアップをソフトウェアリセットとして使っていたと考えられる。
また、『ハイドライド3』では、2ボタン式ジョイスティックだけで(イニシャルスタート時の名前入力を除く)すべての操作ができるように設計されているが、これもその考え方を推し進めたものと解釈できる。それまでのパソコンゲームでは、セーブやロードなどの時にはファンクションキーを押させたり、特定のキー(「S」キーなど)を直接押させることが当たり前であった。
日本国外での発売
『ハイドライド』は日本の他、MSXを海外に普及させる際にキラーソフトとして(公式か、非公式かは未確認)北米やヨーロッパで発売されている。ただし、T&E SOFTからの発売ではなくMSXを海外に普及させようとしていた企業が本体に付属させる形で販売していた。1989年6月にファミリーコンピュータ版の『ハイドライド・スペシャル』が『HYDLIDE』のタイトルでポニーキャニオンから発売され、さらに1990年に メガドライブ版の『スーパーハイドライド』が『SUPER HYDLIDE』のタイトルでT&E SOFT OF AMERICAから発売されている。
ハイドライドII
『ハイドライドII』(HYDLIDEII)は『ハイドライド』の続編である。副題は『SHINE OF DARKNESS』。1985年12月13日発売。前作のおよそ6倍に拡大された広大なフィールドマップに加え、会話や魔法、善悪の概念といった要素が取り入れられている。
特定の場所で特定の攻撃魔法を使わないと先には進めない箇所があり、ゲーム内ではヒントが全く存在しなかったため、ゲーム雑誌で謎解きが公開されるまでは先に進めなくなるプレイヤーが続出した。
現在、様々なサイトで書かれている理由として、『ハイドライドII』が前作『ハイドライド』のシステムを単純に拡張する形を採ったため難易度が上昇したのだと思われているが、当時としては、前作『ハイドライド』がまだ売れていたため、『ハイドライド』を初めてシリーズを遊ぶ人の為の作品に、『ハイドライドII』は『ハイドライド』をクリアした上級者向けの作品という位置づけで販売していたと考えられる。
これは『Dungeons and Dragons』と『Advanced Dungeons and Dragons』の関係と同じであり、『ハイドライドII』のシステムは前作『ハイドライド』のシステムとは異なった思想と構造を持つシステムになっている。
ストーリー
かつて怪物に支配された時代が終わりを告げ、フェアリーランドは平和な日々を取り戻していた。しかし今再びフェアリーランドの地下深くで邪悪に満ちた意識が覚醒し、新たな怪物が創りあげ、死者を蘇生して広大な地下世界を創り上げた。そのことにいち早く気づいた修道僧たちは、人々にこの異変を説いたが平和な日々に浸かりきっているため聞き入れてもらえず、 次第に地上へと邪悪な力が及ぶ中、神は人間の中からまだ心の汚れていない一人の男の子をフェアリーランドへ召還した。
対応ハードウェア
- FM版のみ全シーンにBGMがついている。
- ROMカセット版は最初にバッテリーバックアップ方式が採用されていたゲームである。
- 『ハイドライド3 GoldPack』の中にPC-8801版からの完全移植されたオリジナルバージョンが収録されている。
アレンジ版
- ほぼ原作どおりのオリジナルモードと、グラフィック、サウンドなどを強化したアレンジモードを収録。オリジナルモードではPC-8801版をベースにFM-7版のBGMをつけている。
ハイドライド3
『ハイドライド3』(HYDLIDE3)は『ハイドライドII』の続編であると同時に『ハイドライドII』のリメイク作品である。副題は『THE SPACE MEMORIES』(異次元の思い出)。1987年11月21日発売。システム的には過去の『ハイドライド』を完全に切り捨てて、グラフィックやサウンド面を大幅に強化し、当時としては様々な革新的な要素が取り入れられた。
『ハイドライド2』で取り入れられた要素に加えて、時間の概念、食事・睡眠の概念、重さの概念、貨幣の概念など、リアルではあったものの、ゲームとしては難解かつ複雑になってしまった為、その評価は分かれる。
電波新聞社の『チャレンジ!パソコンRPGAVG IV』にPC-88版・MSX1/2版の開発秘話が掲載されている。それによれば同時期発売の『イース』と「洞窟でのスポットライト処理」が重なったのは偶然であるとされる。
補足するとそれまでの「ウルティマ」や『ドラゴンクエスト』での「たいまつ」や「ランプ」などの「スポットライト処理」を完全な円形にしただけであり、ゲームの進化から考えれば当たり前のことである。『イース』では、本当に「洞窟でのスポットライト」として使われ、『ハイドライド3』では、「洞窟でのランプの照らす範囲」として使われた。この2つのゲームコンセプトを考えれば、似て非なるものだと言える。
ストーリー
全ての災厄の元であったイビルクリスタルが砕けた後、再びフェアリーランドは平和を取り戻し、長い月日が流れた。歴史を重るうちに王国は発展を遂げ、人々は街を広げ、豊かな生活を謳歌していた。次第に魔法は生活に溶け込み、妖精たちの姿も見られなくなっていき、フェアリーランドも人間の世界のようになっていった。
だが、そんなある夜に、地響きとともに巨大な火柱がフェアリーランドに立ち昇り、その翌日から各地に不思議な現象が起こるようになった。不思議な扉、地割れ、怪物たち…。修道僧たちは、この原因の究明を一人の若者に命じた…
対応ハードウェア
- PC-8801mkIISR以降(1987年11月21日発売) - サウンドボード2対応(初対応)
- MSX(1987年12月発売) - ROMカートリッジ、データ保存先はテープ・PAC(SRAMカートリッジ)に対応、PSGのみ対応
- MSX2(1987年12月発売) - ROMカートリッジ、データ保存先はテープ・PAC(SRAMカートリッジ)に対応、PSGのみ対応
- X1(1988年7月発売) - FM音源対応
アレンジ版
- 『ハイドライド3 闇からの訪問者』 ファミリーコンピュータ(1989年2月17日発売 ナムコ)
- バッテリーバックアップ方式でのセーブ。ゲーム自体の簡便化、および登場キャラクターなどに変更がある。
- PC-8801版とファミリーコンピュータ版をベースにビジュアルシーンや新マップ、新キャラクターなどを追加したもの。「SV」は「SpecialVersion」の略。
- 『スーパーハイドライド』 メガドライブ(1989年10月26日発売 アスミック・エースエンタテインメント)
- グラフィックや登場キャラクターなどに変更があり、全曲中4曲が別の曲と入れ替えられており、残りの曲も「ミュージック フロム ハイドライド3」のアレンジバージョンをベースにしてアレンジされている。さらにパソコン版に盛り込めなかった「銀行」が登場している。
- 『ハイドライドII』、『ハイドライド3』のオリジナルバージョンと、ハイドライド3』のアレンジバージョンが収録されている。
- 『ハイドライド3Ev』 ソフトバンクモバイル/S!アプリ(2005年3月1日配信開始 ボーステック/NOLIS SOFT)
- ほぼ原作どおりのオリジナルモードと、グラフィック、サウンドなどを強化したアレンジモードを収録。
ハイドライドX
1989年発行のあるMSX雑誌(MSX・FAN)にタイトル未定にも関わらず、『ハイドライドX』と載ってしまったことがある。また、MSX2用の『T&EマガジンディスクスペシャルVol.1』にこれをフォローするようなコーナーが収録されている(吉川泰生が内藤時浩を、同社のサイオブレードのパロディの形で尋問する)。正体は『ルーンワース 黒衣の貴公子』だったが、それだけ当時の『ハイドライド』が人気が高かったことの現れであろう。
ハイドライド1・2・3
2001年5月23日にデジキューブからコンビニエンスストアを中心としたコンビニ専売で発売され、2001年11月29日にはT&E SOFTから、Windows95/98/Me用として『ハイドライドシリーズ』3作品を全てセットにした『ハイドライド1・2・3』が発売された。シリーズ全3作のオリジナルバージョン(PC-8801版の復刻)以外に『1』と『3』のアレンジバージョンを収録し、ゲーム中にも切替が可能。
また、資料集『ハイドライドミュージアム』があり、ハイドライド発売当時の雑誌記事、発売全機種データ、開発者などのインタビューなどを見る事が可能。さらにリメイク版の全楽曲と、当時『ハイドライド3』に初回特典として添付され、浅倉大介が手がけた事で知られるDAIVAの曲が収録された音楽テープ「T&E SOFT創立5周年記念ゲームミュージックライブラリー」の全楽曲を収録した「HYDLIDE music collection RENEWAL」を同梱している。
デジキューブはその後倒産したため、長い間「HYDLIDE music collection RENEWAL」の入手が不可能となっていたが、2004年12月22日よりAmusement CenterのプロジェクトEGG・PLUSから配信されることになった。
関連項目
- ルーンワースシリーズ