バイク便
バイク便(バイクびん)とは、大都市内での小規模輸送形態の一つ。書類や小型の荷物をバイクを使って迅速に運ぶ。
ここでは貨物自動車運送事業法などの適用を受けるバイク便事業について記す。
概要
バイク便は、当日の数時間以内という緊急の配達が求められる場合に用いられ、特に渋滞が多い東京23区や大阪などの大都市部で需要が多い。バイク便は宅配便の運賃に比べて割高ではあるものの、宅配便が最短で翌日配送を原則とするため、特に急いで送る必要のある企業間の連絡や小型貨物の輸送に利用される。広告関係・出版関係では、原稿(電子原稿の記録メディアを含む)や写真フィルム等の輸送でも頻繁に利用される。
日本国内では1990年代から、欧米では1980年代から、バイク便業が成長している。近年ではインターネットやブロードバンドが普及したため、バイク便のメリットにやや陰りが見え始めたものの、情報化社会において扱われる情報量も増大し、また電子化できない物品の迅速な輸送に相変わらず重宝されている。
もっとも、近年は文書の電子化や電子メールの普及により、事業規模が頭打ちまたは減少傾向にある。このため郵便事業の一部民間開放に伴い拠点的な事業展開を検討する社もある。
利点
利点としては、バイクゆえに四輪車では通行が困難な狭い道路でも通行できることや、渋滞している区間においてはバイクの機動性(すり抜けができる)を利用して総合的に四輪車より早く輸送できることが挙げられる。
欠点
欠点としては、タンデムシート(後部座席)付近に荷箱を括り付け、その中に荷物を入れて輸送することになるため、輸送する物の大きさや重量に制限があることである。そのため、輸送できるものは書類や印刷物のような「小型・軽量な」ものに限られる。また利点を発揮できない場所や用途(高速道路を使った長距離・大量輸送等)であった場合は、明らかに四輪車に劣ることも欠点ではある。
そこでバイクで運びきれないような比較的大型の貨物輸送にも対応するため、バイク便事業者によってはバイク輸送だけでなく軽四輪輸送にも対応している。また、概ね200km以上の長距離輸送の場合はバイクよりも新幹線など鉄道のほうが時間がかからず安全に配送できることが多いため、長距離配送の場合は輸送手段として新幹線を組み合わせる業者もある。(ハンドキャリー便)
使用車種
バイク便ライダーが使うバイクは、都市部での乗りやすさや、すり抜けの容易さ、1年あたり数万kmの走行に耐えられる耐久性、安い維持費が求められる。そのためCB400SFや、車検が不要な250ccのオフロードバイク、ならびにVTシリーズ(SPADA、ゼルビス、VTR250)、ジェイド/ホーネット250などが向いており使用者が多い。また、アドレスV100に代表される小型自動二輪(原付2種)のスクーターは、高速道路は通行できないながらも小型・軽量で取り回しが良く機動性に優れるため、中近距離配達に最適として使用者が多い。変わったところで往年のジムカーナ常勝マシンのBROSはそのすり抜けのしやすさと豊かなトルク・エンジンの耐久性からバイク便でも高い人気を博した。
バイク便ライダーという職業について
バイク便の配送員(バイク便ライダー)は、バイク便運営会社が配送者個人と運送請負契約を交わすのが一般的な雇用形態であるため、交通事故に遭っても労災保険が適用されない場合が多く、業界内でも問題視されていた。しかしながら厚生労働省は2007年9月、バイク便ライダーは労災保険を適用すべき労働者であるという見解を示した。
自転車便
英国のロンドンや米国のニューヨーク等では一般道と公園や歩道を走り抜けて、いち早く軽量貨物を届ける利便性から、自転車を使った「メッセンジャー」(自転車便)も多い。日本でも2000年ごろより、東京や大阪などの大都市部には、自転車便が登場し始めた。
これは都市構造と渋滞の度合いにも関係しているが、無線機を携えた自転車便は、電話やFAX・電子メールでは送れない物の輸送に利用されている。これらでは地下鉄なども活用され、いち早く相手先に荷物を届けるために、地下鉄列車内に持ち込みやすい軽量で折り畳める自転車が利用されるケースも見られる。
災害地域にて
都市部での、渋滞に強い事が良く知られているバイク便であるが、これとは別に被災地域での機動力が近年になって注目されるに至っている。
日本で1995年に発生した阪神・淡路大震災では、倒壊家屋や道路の分断により、地上ルートが一般車両の交通が不可能なまでに破壊されてしまった。しかし市民らの中でも、オートバイを所有する人たちは、この破損した道路を行き来する事ができ、援助物資の輸送や、各種連絡の際には二輪車が活躍した。
この「バイクは災害に強い」という教訓は、後にバイク便やバイク愛好者を中心としたボランティアチームが勃興するきっかけとなり、新潟県中越地震ではバイク愛好者やバイク便関係者(スクイーズ[1]他)らによるボランティアチームによって、山間地などの被災者に食糧や医薬品等の援助物資の配達が行われている(→ジャパンレスキューサポートバイクネットワーク)。
さらにこれを進め、被災地域での企業関係者へのサポートを行うサービスも登場しており、危機管理の面で注目を集めている(→ソクハイレスキュー便)