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モンテッソーリ教育

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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モンテッソーリ教育(モンテッソーリきょういく Montessori method)とは20世紀始めにマリア・モンテッソーリによって考案された教育法。イタリアローマで医師として精神病院で働いていたモンテッソーリは知的障害児へ感覚教育法を施し知的水準を上げるという効果を見た。1907年に設立した貧困層の健常児を対象とした保育施設「子どもの家」において、その独特な教育法を完成させた。以後、モンテッソーリ教育を実施する施設は「子どもの家」と呼ばれるようになる。

モンテッソーリ教育法

子供の家

1907年、イタリア・ローマに最初に誕生した「子供の家(Casa dei bambini)」は、瞬く間に欧米を中心に世界各国に広がった。特にアメリカ合衆国では2度にわたってモンテッソーリ・ブームが起こり、アメリカ全土にその教育法が普及した。現在、アメリカの私立をはじめ数百の公立学校でもプログラムが導入され、3000ヶ所のモンテッソーリ・子供の家があるといわれる。日本には1960年代に紹介され、モンテッソーリ・プログラムを導入する幼稚園やモンテッソーリ教育を専門に行う「子供の家」が創設された。

モンテッソーリ教具と感覚教育

モンテッソーリの木製教具

モンテッソーリ「子供の家」の教室に入ると、整然と並ぶ色とりどりの「教具」と呼ばれる木製玩具が目に飛び込んでくる。これらはモンテッソーリの感覚教育法に基づく教材で、モンテッソーリとその助手たちが開発した。モンテッソーリ教育法では教具の形、大きさは無論、手触り、重さ、材質にまでこだわり、子供たちの繊細な五感をやわらかく刺激するよう配慮がなされている。また、教具を通し、暗記でなく経験に基づいて質量や数量の感覚を養うことと、同時に教具を通して感じ取れる形容詞などの言語教育も組み込まれている。

自発性と「敏感期」

常に子供を観察し、そこから学ぶ姿勢を貫いたモンテッソーリは、感覚教育と同様に重要と説いたのは、子供の中の自発性を重んじることである。どの子供にもある知的好奇心は、何よりその自発性が尊重されるべきで、周囲の大人はこの知的好奇心が自発的に現われるよう、子供に「自由な環境」を提供することを重要視した。また、子供を観察するうち月齢、年齢ごとに子供たちの興味の対象がつぎつぎ移り変わる点に着目し、脳生理学に基づき、さまざまな能力の獲得には、それぞれ最適な時期があると結論付け、これを「敏感期」と名づけた。モンテッソーリ教育の特徴の一面とされる一斉教育を行わない教育形態は、この子供たちの「自由」の保証と「敏感期」を育むモンテッソーリ理論の視点に立つものであるぽ。

「整えられた環境」と教員養成

オランダの教室 1915年
アメリカの教室 2007年

モンテッソーリ教育では、子供たちが安心して自由に遊び、作業のできる環境整備が重視される。教室が清潔に保たれ、子供の目線で教室を見渡せることにも配慮が求められる。また、モンテッソーリ教育法における教師の存在は、教室や教具と同様、整えられた環境の担い手の一つと考えられている。彼らには、教具などを扱う技術や管理する能力も要求されるが、何より子供を注意深く観察する態度が要求され、各々の子供たちの欲求に沿ってその教育を提供する注意深さが求められる。また、子供たちの集中時、それを妨げない心遣いや、子供の自発性を待つ姿勢も養成コースにおける重要な要素となる。晩年のモンテッソーリが力を注いだ教員養成方法は現在も世界各国で実践され、この厳しい教員養成もモンテッソーリ教育の特徴のひとつにあげられる。

モンテッソーリ教育を受けた有名人

モンテッソーリ・スクールの卒業生である有名人は世界中に数多くいる。

日本におけるモンテッソーリ教育

子どもの自主性、独立心、知的好奇心などを育み、社会に貢献する人物となること(モンテッソーリ教育の終了は24歳)を目的とするモンテッソーリ教育は、欧米ではオルタナティブ教育として評価されている。一方、日本においては潜在能力を引き出す、知的能力をあげる、小学校のお受験対策といった英才教育や早期教育として注目され、幼児教育だと誤解されることが多い。

教員資格

日本にはマリア・モンテッソーリが創立した国際モンテッソーリ協会(AMI;Association Montessori Internationaleの略、本部はオランダのアムステルダム)の認可を受けた日本モンテッソーリ協会1968年に発足した。日本モンテッソーリ協会は教員養成講座を開いているが、国際モンテッソーリ協会に準ずる国際免状と、日本協会独自の免状がある。

国際免状は1975年東京都新宿区四谷に東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターを創立、2007年現在は神奈川県相模原市にて1年制(夜間2年制)の養成教育を行っている。卒業生は日本国内および国外で3歳から6歳の対象クラスを教える国際モンテソーリ教員資格を得ることができる。

日本独自の免状は1970年から2006年まで上智大学に付設する「上智モンテッソーリ教員養成コース」を開講していた[1]。2007年現在は東京モンテッソーリ教育研究所として東京都文京区で2年制の付属教員養成コースを開設している。総合試験に合格すると日本モンテッソーリ協会認定の教員資格が与えられる。東京のほかに京都市伏見区広島県安芸郡福岡県宗像市長崎県長崎市などでも受講できる。

そのほか東京には、日本モンテッソーリ教育綜合研究所教師養成センターやうめだ・あけぼの治療教育職員養成所で開講されている。またマリア・モンテッソーリ教育研究会(横浜市)では2008年より3年制のモンテッソーリ小学校教員養成コースを開講する予定である[2]

モンテッソーリ・スクール

モンテッソーリ教育法は主に乳児、幼児、園児あるいは児童を対象にしているが、欧米にはモンテッソーリの小学校は数多くあり、中学校高等学校も存在する[3]

日本においてはモンテッソーリ保育園や幼稚園は数多くあるが、学校法で規定され日本政府に認可されているモンテッソーリ小学校(公立・私立)はない。現在、横浜モンテッソーリ幼稚園およびマリア・モンテッソーリ教育研究所を経営している横浜市の学校法人高根学園は0歳から12歳までのモンテッソーリ教育一貫校を計画している[4]

脚注

  1. ^ 上智大学コミュニティーカレッジ モンテッソーリ教員養成コース
  2. ^ マリア・モンテッソーリ教育研究所
  3. ^ w:en:Montessori method(英語版Wikipedia)04:45, 5 September 2007
  4. ^ 読売新聞 2005年6月24日『0-12歳までの一貫教育、横浜の学校法人が計画』

外部リンク