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有料発展場

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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クルージングスペースとは、英語の「Cruising」に、一定の「空間」を意味する「Space」を接続した通称で、不特定多数との性行為を求める男性同性愛者に、男性同性愛者の出会いから性行為にいたる場所を有料で提供する性風俗産業を主に表す。「有料系発展場」と呼ばれることが一般的で、このような店舗を表す通称となっている。

他に古くはハッテン旅館、ことに近年はヤリ部屋ゲイサウナなどとも呼ばれる。欧米では「クルージングスペース」のように有料の私設発展場を一括した総称ではなく「Schwule Sauna」「Gay bathhouse」など営業形態に準じた名称でそれぞれに呼ばれることが多い。単に発展場と呼ぶ場合、一般の公園公衆浴場なども含まれる(詳しくは発展場を参照)。

概要

ハッテン旅館」「ゲイサウナ」など「宿泊施設」として許可された大規模店は実質的に終夜・終日営業である。宿泊料金はラブホテルなどよりも安価なため、ゲイ・カップルによる個室の利用や、単に男性同性愛者の宿泊目的で利用されることもある。旧来の男性同性愛者向けのクルージングスペース「ハッテン旅館」「ゲイサウナ」等と違い、近年増えている小・中規模なクルージングスペースは宿泊施設ではなく「レンタルスペース」としての営業である場合が多く、宿泊は出来ない場合が多い。また入場者の年齢、容姿などを一定の水準に限定している場合も多いため、入場そのものを断られる場合もある。

入場料金を支払って入場したあと、入場者同士での合意の元に性交等類似行為(性行為)がなされる。なおクルージングスペースは生物学的に男性と見られる同性愛者の利用のみを想定した施設であるため、性的指向のいかんに関わらず、生物学的に女性と見られる者の入場は店側が拒否する。一部に男性同性愛者の女装者の利用が可能、また女装する設備のあるクルージングスペースも存在したが、男性同性愛者の中でも「女装」は特殊なジャンルであるため「女装」に嫌悪感を感じる利用者が多く、現在は「女装」を容認するクルージングスペースは皆無である。

補足

かつては、不特定多数の性交相手と性行為する目的でなく、男性同性愛者にとって出会いの機会は一部の会員制スナック・バーや、このような場所に限られていた。公園などの公共施設では、かつて「アベック」と呼ばれた男女のカップルらや、周辺住人とのトラブルも心配されるため、これらを回避して男性同性愛者だけが安心して集まることができる施設として広まったものである。

多くのハッテン場が男性同性愛者が不特定多数の性行為の相手と性行為するためだけの場所になっていった経緯とその要因には、男女と違い、出会いの後、親密で継続的な付き合いや、共同生活に発展することを依然、許容しない社会的状況があることは否定できない。また、一般市民を自認する人々が男性同性愛者に対して持つ偏見を、当の男性同性愛者もまた同じように持っていることもある。

店内で不特定多数の相手と性行為を行うので、エイズ等をはじめとする性感染症の危険が指摘される。近年、HIV感染者が増加しているため、店内には「コンドーム使用」によるセーファーセックスを勧めるポスターの掲示、パンフレットの配布などを行なっている店が多い。ただし店側が個々の性行為の内容にまでは関与できないため、啓発に留まっている。なお、2009年現在、発展場やクルージングスペースが同じように存在する先進諸国において、HIV感染者が増加傾向にあるのは日本だけである。


早朝に他のナイトクラブや飲食店が閉店する時間帯になると、多数の客が性欲処理兼、休憩目的に来店する。店子(みせこ:ゲイバーなどの従業員のこと)や売り子(ゲイ用語における男娼)など、職業的ゲイが性欲処理兼寝泊りの場としていることもある。

また、「脱法ドラッグ(医師の処方箋、または所持に必要な証明書なしに使用、所持が認められない薬剤、覚せい剤や、主に脳神経への副作用として幻覚を誘発する通称幻覚剤などを規制する薬事法に規定されていなければ「合法」であると解釈されていた。)が販売されていたが、法規制や取締の強化から、販売を見合わせる店が増えている」とされる。

倫理的な問題

不特定多数の相手との性行為そのものには、性的指向のいかんに関わらず男女共に特別な罰則がなく、性感染症の蔓延を助長するなどの実害的な問題を除いては、専ら倫理的な問題があるのみである。また、同様の倫理的問題は同性愛者のみに限られない。

しばしば売り専や無料の発展場と共にマスコミによる取材対象となることがあるが、これもマスコミに関わる人々の中に「一般人と違い本人も文句が言えない」「一般大衆の賛同を得易い」というゲイバッシングの加害者らと似通った安易な発想があることを感じさせるものである。

不特定多数の相手との性行為を行うゲイもまた、悪質な団体や犯罪組織に属しているわけではなく、普段は一般市民とかわりないばかりか、そもそも、ハッテン行為をするしないにかかわらず、ゲイ=同性愛者は一般市民そのものであることが忘れられがちである。

不特定多数の相手との性行為を行うゲイに対しては、一般人を自認する異性愛者らからはもちろん、同性愛者の中からも批判的な声や議論も多くあるが、過去のアメリカにおける同様な議論やその後の動きを見るかぎりにおいては、このような発展場の営業停止は、必ずしも不特定多数の相手との性行為を減少させることには繋がっていない。

不特定多数の相手と性行為しない同性愛者が、不特定多数の相手と性行為する同性愛者を「一部」すなわち「少数者」と前提して倫理的に批判することは、性的少数者であるところの同性愛者を、性的多数者である異性愛者が倫理的に批判する場合と、ほぼ同じ力関係と図式を呈している場合が多い。

今日の日本において、不特定多数の相手との性行為を倫理的罪悪とし、一夫一婦制の論拠とされるキリスト教の教理は、多くの日本人に周知されていない。また不特定多数の相手との性行為は婚姻した異性愛男女の間で「浮気」として認知され、個々の夫婦間の価値観や認識においては一定の範囲で許容されている場合もある。

一夫一婦制の論拠とされるキリスト教の教理は、厳密には生物学的な男性と女性に限定されると解釈されるため、同性間に教理に基づく倫理をあてはめることそのものが間違いとする解釈がある。アメリカのキリスト教保守派、超保守派(原理主義)が強い影響力を持つ州において「同性婚」が否定されるのも、こうした教理解釈による。

ヨーロッパの一部、主に先進国都市部においては、このようなキリスト教倫理に基づく排他的な一夫一婦制の婚姻制度を嫌い、あえて配偶者の財産に対して所有権を主張せず、不特定多数の相手との性行為をも互いに認める「自由結婚(自由婚)」を取る異性愛男女も増えている。

クルージングスペースとウリ専の違い

ゲイを対象とした他の性風俗産業としては、男娼が性的サービスを行う「売り専」が存在する。日本では「性交」は男女による異性間のみに存在する行為とされるため、同性間性接触は双方の同意に基づく「性的行為」ではあっても「性交」の有償提供とは見なされないため、罰則がない。

クルージングスペースは、性的行為目的で利用するものがほとんどであり、それを想定した上で経営してるが、同性間性接触は「性的行為」ではあっても「性交」と見なされないため、罰則がない。またそれぞれに同意があれば、来場者への性的行為の強制や強要には当たらない。いかに店側が性的行為を勧めても自由意志を持つ客側に同意がなければ成り立たないからである。そのため基本的には場所貸しを行っているだけと認識せざるをえない。かつてあった「規制を免れるために実際には性行為は利用者同士の自由意志で行われると称している」との説明にはこれらの点で認識に不備がある。

一部の店では、個人的に休息やハッテンのみを目的として来店するのではなく、有料で男娼が性的サービスを行っている場合もある。ウリ専を併設している店舗も存在する。繰り返すが同性間性接触は「性的行為」ではあっても「性交」と見なされないため、有償であっても罰則がない。ちなみに実質的に男女間の「性交」を有償で提供する「風営法認可産業」であるところの「ソープランド」では、店側が表向きには「性行為(性交)は利用者と女性従業員との間の自由意志で行われる。と称している」のである。

店舗概要

一般的には、大部屋のミックスルームと複数の個室を持つ「ヤリ部屋」タイプの構造を持つ店舗が多い。

建物全てを発展場として使用している大規模店は、浴室など宿泊のための設備が充実しており、宿泊客の比率が高い。

ノンケ(異性愛者)や女性の誤入場を防ぐため、ゲイバーなどと同様に、入口に「会員制」などの表記がされる場合が多い。実際には年齢制限などの条件を満たすゲイならば誰でも入場できるが、入会金を徴収する店もいくつか存在する。

利用料金は、小規模な店舗の多くが1000~2000円、大規模店で3000円弱と低額で、再入場が可能な場合も多い。

利用者同士の出会いに頼った営業形態を反映して、スポーツジム利用者若年者など、来場者を集めると店側が期待する来場者に対する値引きや、早朝・デイタイムの値引きもしばしば行われる。

特殊設備

店内には特有の特殊設備を設置している場合もある。

  • トレーニングマシン
  • サンタンマシン
  • ケツ掘りブランコ
  • 迷路: 出会いの補助目的で、真っ暗で相手が見えない迷路が設置される。
  • PC: 出会い系サイトや店の公式サイトで待ち合わせをする目的で設置されている。悪用厳禁。

種類

店舗の形態による種別

  • ヤリ部屋タイプ - ミックスルーム、個室(基本的に無料)を持つ。マンションの一室で経営している場合もある。
  • サウナ公衆浴場タイプ - 上記に浴場を併設する。欧米ではこちらが主流といわれる。
  • ホテルタイプ - 上記に加えて、有料個室を持つ。「24会館」「北欧館」などが有名。
  • ビデオボックスタイプ - ゲイ向けアダルトビデオを放映するテレビを多数店内に設備するもの。インターネットカフェの形態をとるものもある。着衣系が比較的多いとされる。壁に開いた穴から性器を隣室に露出したり、隣室と手紙交換をして移動して性行為に及ぶ形式などがある。
  • 映画館タイプ - ゲイ・ポルノを上映し、館内でハッテンが行われることを前提とした映画館。
  • バータイプ - バーカウンターを設備しバーテンダーウェイターが飲食物を提供するもの。

営業許可は上記の営業形態、規定の内容に準じて取得される。

体型別

店側で、入場者の体型を指定している場合がある。

年齢制限もしばしば行われる。

趣味嗜好別

場内の服装は、店側によりある程度指定されているか暗黙の常識となっている。曜日によりドレスコードを設定している場合もある。指定の衣類やタオル類は店側が貸し出す場合もある。主に長髪禁止(短髪系)など、髪型について指定されることもある。

そのほか、性的嗜好にあわせて下記のような服装が指定されることが多い。

  • アンダーウェア(下着等)
  • 全裸
  • 六尺褌
  • スポーツユニフォーム - 競パン(競泳用水着)など
  • 浴衣 - 大型店で用意されている場合が多い。
  • 着衣 - 外出着のまま入場する。

立地

大都市圏に集中している。ゲイ・タウンと呼ばれるような、ゲイ向けの店舗が多い場所と、交通便利なターミナル駅の近くで営業している例が多い。

関連項目

外部リンク