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Ubuntu Studio

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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Ubuntu Studio
Logo
Ubuntu Studio 9.10 (Karmic Koala)
開発者 Canonical Ltd. / Ubuntu Foundation
OSの系統 Linux
開発状況 開発中
ソースモデル フリーソフトウェア/オープンソースソフトウェア
最新安定版 9.10 (Karmic Koala) / 2009年10月29日
使用できる言語 日本を含む約200の国と地域のローカルコミュニティー[1]
パッケージ管理 Advanced Packaging Tool (APT)
プラットフォーム i386x86_64
カーネル種別 モノリシックカーネル
既定のUI GNOME
ライセンス GPLおよびその他のライセンス
ウェブサイト ubuntustudio.org
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Ubuntu Studioは、LinuxディストリビューションのひとつであるUbuntuの、公式派生ディストリビューションである。マルチメディア環境に特化している。

オリジナルバージョンはUbuntu 7.04をベースにして、2007年5月10日にリリースされた。

特徴

先述のとおり、Ubuntu Studioはマルチメディア(音楽・映像・画像)編集に特化しており、そのためのソフトウェアを多数、標準でインストールする。

また、リアルタイムカーネルを用いることで、ソフトウェア処理の実行遅延時間(レイテンシ)を短縮し、それらソフトウェアが即時処理(リアルタイム処理)を行うことを可能としている。

テーマについては独自のアートワークに基づき、Ubuntu標準の茶色と橙色のものではなく、青と黒で構成されたものを用いている。

インストール

Ubuntu Studioは、isoイメージファイルの形で提供されている。

使用者はまず、ダウンロードしたこのファイルからブート可能なディスクを作成し、そのディスクからコンピュータを起動してインストール作業に入る。インストール作業は、画面に表示されたメッセージに従ってキーボードで操作を行うことで進行する。9.10が公開された現在でも、Ubuntu Studioのisoイメージファイルのサイズは1GB以上であり、標準的なCD-ROMの記憶容量を超えている。そのため、ブート可能なディスクはDVD-ROM、もしくはUSBやネットワークで起動するディスクに作成する必要がある。

既にUbuntuをインストールしてあれば、インターネット経由でパッケージ「ubuntustudio-desktop」を導入することでもインストールできる。

短い実行遅延時間(低レイテンシ)とリアルタイムカーネル

実行遅延時間(レイテンシ)とは、デバイスからの入力信号をコンピュータが処理し、その処理結果を帰すまでの遅延時間のことである。コンピュータのハードウェアとしての制約がその原因であり、どれほど高性能なコンピュータだろうが、どのようなデバイスを用いた操作だろうが、大なり小なりレイテンシは発生している。

製作環境においては、例えばMIDIキーボードを押して発信した信号が音声として出力されるまでの遅延時間や、ペンタブレットによる入力が画面に描画されるまでの遅延時間がこれに該当する。実行遅延時間の大小は製作者のパフォーマンスに直接影響するため、可能な限り短いのが望ましい。

実行遅延時間の短縮は、WindowsではASIOドライバ、Mac OS XではCore Audioドライバ (Mac OS 9以前はSound Manager) で実現している。Linuxはカーネルがドライバを含む構造(モノリシックカーネル)となっているため、リアルタイムカーネル(=RTカーネル)とすることで実現している。

このカーネルは、通常のLinuxカーネルにCONFIG_PREEMPT_RTパッチを適用し、リアルタイムオペレーティングシステムとしての性能を発揮させたものであり、入力信号を素早く処理することが可能となっている。

日本語環境

表示

インストール言語に日本語を選択した場合、初期状態ではGNOMEデスクトップ環境と一部のソフトウェア(FirefoxやGIMPなど)のみ、日本語表示が可能となる。個別に日本語化設定を持つソフトウェア(Blenderなど)は、それぞれのソフトウェアの設定をユーザ側で変更し、日本語表示する。

入力

Ubuntu Studioで漢字/仮名変換を含む日本語入力を行うには、インプット・メソッド・プラットフォームであるiBusの設定においてインプット・メソッドにAnthyを追加し、優先順位を一番上にする。こうすると、キーボードの「半角/全角」キーを押して日本語入力モードのオン/オフができ、「スペース」キーで漢字変換候補を表示、「エンター」キーで決定することができるようになる。

また、Ubuntu Japanese TeamのPPAをシステムに登録すると、iBusの更新された日本語関連パッケージを導入することができるほか、Ubuntu Studio 9.04以前のインプット・メソッド・プラットフォームであるSCIMと、日本語入力システムであるAnthyのSCIM対応版を導入する事ができる。なお、SCIMは既にメンテナンスを終了している。

デバイス(ハードウェア)の利用

Ubuntu Studioはオープンソース・コミュニティに基づいているため、デバイス・ドライバも有志によって作成される。そのため、発売されたばかりのデバイスは使えない場合が多い。また、メーカーがLinux用のドライバを提供しているデバイスもある。

音楽編集目的

ハードウェアは特に音楽編集において使用頻度が高い。Ubuntu Studioでは、PCI接続やマザーボード付属のサウンド・カード、USBやIEEE1394(Firewire)で接続されたオーディオ・インターフェース、USBやMIDIインターフェースで接続されたMIDIコントローラを利用することができる。

PCI接続やマザーボード付属のサウンドカード、USB接続のオーディオ・インターフェースはALSAドライバが対応しているデバイスを、IEEE1394(Firewire)接続のオーディオ・インターフェースはFFADO (旧freeBoB) ドライバが対応しているデバイスを利用することができる。ALSAやFFADOのウェブサイトにおいて、対応しているサウンドカードやオーディオ・インターフェースの一覧を公開している。

接続方法 特徴 ドライバ JACKのDriver 対応機種確認
USBやPCI JACK経由しなくても音声入出力可 ALSA alsa ALSA SoundCard Matrix@alsa-project.org
IEEE1394 (Firewire) JACK経由で音声入出力可 FFADO firewire
(旧freebob)
Device support database@ffado.org

MIDIに関しては、ALSAJACKともにMIDIポートを持ち、ポートとデバイスを接続するためののソフトウェアが標準でインストールされている。

映像編集目的

映像編集では、デジタルビデオカメラをIEEE1394 (i.LINK) やUSBで接続してソフトウェア経由でデータを保存する、USBで接続したウェブカメラからの映像をソフトウェアを使って撮影するといった使い方が可能である。

画像編集目的

画像編集では、ペンタブレットを使うことができる。ペンタブレット大手の株式会社ワコムがドライバのソースコードをLinux Wacom Projectに寄贈しているため、FAVO、Banboo、Intuosシリーズの多くを利用することができる。日本では流通していないが、ACE CAD社やAiptek社、Genius, KYE Systems社のペンタブレット用のドライバも提供されている。また、Waltop社のチップを含む製品(日本国内ではプリンストンテクノロジー株式会社が販売)はWaltop社がLinux用ドライバを提供しているほか、有志によるパッチを適用して利用することも可能である。

メーカー パッケージ名 ドライバ開発プロジェクトのウェブサイト
ワコム xserver-xorg-input-wacom The Linux Wacom Project
Waltop Technology@waltop.com.tw または
xserver-xorg-input-wacom + パッチ
なし
ACE CAD xserver-xorg-input-acecad Acecad Driver for Xfree86 4.x and Linux
Aiptek xserver-xorg-input-aiptek AIPTEK HYPERPEN USB TABLET DRIVERS
Genius, KYE Systems xserver-xorg-input-wizardpen Wizardpen graphics pad driver

標準ソフトウェア

Ubuntu Studioに標準でインストールされるソフトウェアのうち、マルチメディア編集を目的とするものを、Ubuntu Studio 9.10に基づいて以下に示す。これら以外にも、Ubuntuにおいて標準でインストールされるソフトウェアが多数、Ubuntu Studioにも標準でインストールされる。ソフトウェアの性質上、標準パッケージもバグを含んでいる可能性があり、有志がLaunchpadのPPA(Personal Package Archive)で更新版を配布している場合は、そちらを利用することもできる。

音楽編集

Ubuntu Studioにおける音楽編集ソフトウェアは、JACK Audio Connection Kitによってその大部分が実装されている。また、標準で各種LADSPA (Linux Audio Developer's Simple Plugin API) プラグインやDSSI (Disposable Soft Synth Interface) プラグインを利用することができる。VSTVSTiといったWindows向けのプラグインに関しては、Wineを経由することで利用することが可能な場合がある。

利用者はJACK ControlでJACK Audio Connection Kitをスタートした後、ArdourといったJACK対応ソフトウェアを起動、Patchageなどのユーティリティを利用してハードウェア/ソフトウェア間を適切に接続することで、音楽処理環境を構築する。

  • Ardour - マスタリング環境にもなるデジタルオーディオワークステーション
  • Audacity - 強力な波形編集機能を持つデジタルオーディオワークステーション
  • Bristol - 代表的な各種シンセサイザをエミュレートしたソフトウェア・シンセサイザ
  • Creox c - リアルタイムのソフトウェア・ギターエフェクタ
  • Hydrogen - ソフトウェア・ドラムマシン
  • GNU Denemo - 楽譜作成ソフトウェアLylipondのGTK+インターフェース
  • Gtick - GTK+インターフェースの電子メトロノーム
  • Hexter - Yamaha DX7をエミュレートしたソフトウェア・シンセサイザ。DSSiプラグイン
  • Linux Multimedia Studio - マルチプラットホームなオーディオワークステーション。VSTを使うこともできる
  • Mixxx - DJソフトウェア
  • MusE - MIDI/オーディオシーケンサ
  • MuseScore - QTインターフェースの楽譜作成ソフトウェア
  • TiMidity++ - MIDIをPCMに変換するソフトウェア
  • Qsynth - サウンドフォントを使うソフトウェア・シンセサイザFluidSynthのQTインターフェース
  • ZynAddSubFX - 独特のインターフェースを持つソフトウェア・シンセサイザ

(JACK関連ソフトウェア)

  • Bitmeter - JACKを介してやりとりされているオーディオ信号のモニター
  • JACK Control - 低レイテンシなサウンドサーバJACKのコントローラ
  • JACK Rack - JACKにおいて、各種エフェクト・プラグインの抜き差しを行うインターフェイス
  • JACK Timemachine - JACKにおいて録音を行うためのインターフェイス
  • JAMin - JACKのオーディオマスタリングインターフェイス
  • JACKEQ - JACKのイコライザ・インターフェイス
  • Meterbridge - JACK用オーディオ・メーター
  • Patchage - JACKを利用するアプリケーションとデバイス間の接続のためのユーティリティ

(デバイス関連のソフトウェア)

  • Aconnectgui - ALSAにおけるMIDIポート接続ユーティリティ
  • FFADO-Mixer - 各種IEEE1394(Firewire)オーディオデバイスのための接続ユーティリティ
  • Echomixer - Echoaudio製サウンドカードのコントローラー
  • Envy24control - Envy24 (ice1712) サウンドカードのコントローラー
  • Hdspconf - Hammerfall HDSPのALSA用設定ユーティリティ
  • Hdspmixer - RME Hammerfall DSP用の拡張版コントローラー.
  • Rmedigicontrol - RME Digi32とDigi96サウンドカードのコントローラー

(以下は、追加でインストール可能)

  • amSynth - 2つのオシレータをリングモジュレーションするタイプのアナログ・モデリング・シンセサイザ
  • Rosegarden - 強力なMIDI編集機能を持つデジタルオーディオワークステーション

動画編集

Ubuntu Studioにおける動画編集ソフトウェアは、Linux対応のソフトウェアが少ないこと、動画関連技術に関して権利関係が完全にフリーなソフトウェアを開発するのが難しいなどの事情により、標準でインストールされるパッケージは少ないものの、リポジトリを追加することで強力なソフトウェアを利用することもできる。

  • FFmpeg - さまざまなフォーマットの動画をデコード/エンコードすることができる。操作はCUI
  • Kino - DVフォーマットに基づいて、ビデオを取り込んだり、動画編集をすることができる
  • Stopmotion - ストップモーション・アニメーションを作成することができる
  • xjadeo - JACKと同期して動作する映像再生ソフトウェア

(デバイス関係のソフトウェア)

  • dvgrab - デジタルビデオカメラからIEEE 1394 (i.LINK)またはUSBを経由してデータをダウンロードすることができる。操作はCUI

(以下は、追加でインストール可能)

  • Avidemux - 動画デコード/エンコードができる。GUIが充実している。
  • Cheese - UVC (USB Video Camera)非対応のウェブカメラから静止画像もしくは映像を取得、保存することができる
  • Cinerella - 動画編集/合成をノンリニアで行うことができる。リポジトリの追加が必要
  • Cinecutie - CinerellaのGUIを向上した派生版。Cinerellaと同じく、リポジトリの登録が必要
  • Kdenlive - 動画編集/合成をノンリニアで行うことができる。レンダリングはFFmpegを利用。KDEアプリケーションのひとつ
  • luvcview - UVC (USB Video Camera)対応のウェブカメラから静止画像もしくは映像を取得、保存することができる
  • PiTiVi - 動画編集をノンリニアで行うことができる。GNOMEのマルチメディアフレームワークであるGstreamerを利用
  • LiVES - 動画編集/合成も可能なVJソフトウェア
  • Synfig Studio - 2Dアニメーション作成ソフトウェア
  • WinFF - FFmpegの簡易GUI

画像編集

リアルタイムカーネルを備えているため、ペンタブレットによる入力処理の遅延が短い。欧文を中心に、権利関係がフリーなフォントを多数追加している。GIMP (GNU Image Manipulation Program) に対しては、ブラシやパレット、グラデーション・テンプレート、拡張機能が追加されている。

  • Enblend - 画像合成ソフトウェア
  • Agave - GNOME向けカラースキームデザイナー
  • Blender - 3Dモデルを作成することができる。シーンを作成することで、映像や動画とすることもできる。
  • FontForge - フォント作成ソフトウェア
  • Fontmatrix - フォント管理ソフトウェア
  • GIMP - 画像編集(フォトレタッチ)ソフトウェア。各種プラグインも同梱
  • Hugin panorama creator - 複数枚のイメージデータをパノラマ写真に合成するソフトウェア
  • Inkscape - ベクトル画像編集ソフトウェア
  • Scribus - DTPソフトウェア

(デバイス関連のソフトウェア)

  • Xsane - イメージスキャナデバイスから画像を取得するためのソフトウェア
  • xserver-xorg-input-wacom - ペンタブレットのXサーバ用デバイスドライバ
  • wacom-tools - ペンタブレットを設定するためのユーティリティ群(wacomcpl、wacdump、xidump、xsetwacom)

(以下は、追加でインストール可能)

関連項目

  • Ubuntu - Debianから派生したLinuxディストリビューション。Cannonical社に支援を受けたオープンソースコミュニティが開発を行っている
  • 64 Studio - Debianをベースとする、マルチメディアに特化したディストリビューション

脚注

  1. ^ LoCoTeamList - Ubuntu Wiki”. 2010年3月13日閲覧。

外部リンク