覇者の戦塵
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『覇者の戦塵』(はしゃのせんじん)は中央公論新社より刊行している谷甲州著作の架空戦記。当初は角川書店より出版されていたが6巻を刊行した時点で、中央公論新社へ出版先を変えることになった(その後、角川版6巻を3巻にし、短編を入れた中公版が刊行)。表紙・イラストは佐藤道明。
2009年現在、28巻刊行(中公版)。
刊行リスト
- 角川版
- 北満州油田占領(ISBN 4-04-782601-4)
- 覇者の戦塵1932 激突上海市街戦(ISBN 4-04-782602-2)
- 覇者の戦塵1935 オホーツク海戦(ISBN 4-04-782603-0)
- 覇者の戦塵1936 第2次オホーツク海戦(ISBN 4-04-782604-9)
- 覇者の戦塵1933 謀略熱河戦線(ISBN 4-04-782605-7)
- 覇者の戦塵1937 黒竜江陸戦隊(ISBN 4-04-782606-5)
- 中公版
- 覇者の戦塵1939 殲滅ノモンハン機動戦 上(ISBN 4-12-500441-2)
- 覇者の戦塵1939 殲滅ノモンハン機動戦 下(ISBN 4-12-500455-2)
- 覇者の戦塵1942 撃滅北太平洋航空戦 上(ISBN 4-12-500469-2)
- 覇者の戦塵1942 撃滅北太平洋航空戦 下(ISBN 4-12-500470-6)
- 覇者の戦塵1942 急進真珠湾の蹉跌(ISBN 4-12-500494-3)
- 覇者の戦塵1942 反攻ミッドウェイ上陸戦 上(ISBN 4-12-500500-1)
- 覇者の戦塵1942 反攻ミッドウェイ上陸戦 下(ISBN 4-12-500513-3)
- 覇者の戦塵1942 激突シベリア戦線 上(ISBN 4-12-500560-5)
- 覇者の戦塵1942 激突シベリア戦線 下(ISBN 4-12-500566-4)
- 覇者の戦塵 オホーツク海戦(ISBN 4-12-500598-2)…角川版「オホーツク海戦」「第二次オホーツク海戦」と短編を収録
- 覇者の戦塵 北満州油田(ISBN 4-12-500608-3)…角川版「北満州油田占領」「激突上海油田占領」と短編を収録
- 覇者の戦塵1943 激闘東太平洋海戦 1(ISBN 4-12-500615-6)
- 覇者の戦塵1943 激闘東太平洋海戦 2(ISBN 4-12-500622-9)
- 覇者の戦塵1943 激闘東太平洋海戦 3(ISBN 4-12-500636-9)
- 覇者の戦塵1943 激闘東太平洋海戦 4(ISBN 4-12-500647-4)
- 覇者の戦塵 謀略熱河戦線(ISBN 4-12-500688-1)…角川版「謀略熱河戦線」「黒竜江陸戦隊」と短編を収録
- 覇者の戦塵1943 ダンピール海峡航空戦 上(ISBN 4-12-500727-6)
- 覇者の戦塵1943 ダンピール海峡航空戦 下(ISBN 4-12-500735-7)
- 覇者の戦塵1943 ニューギニア攻防戦 上(ISBN 4-12-500775-6)
- 覇者の戦塵1943 ニューギニア攻防戦 下(ISBN 4-12-500779-9)
- 覇者の戦塵1944 インド洋航空戦 上(ISBN 4-12-500810-8)
- 覇者の戦塵1944 インド洋航空戦 下(ISBN 4-12-500823-X)
- 覇者の戦塵1944 ラングーン侵攻 上(ISBN 4-12-500866-3)
- 覇者の戦塵1944 ラングーン侵攻 下(ISBN 4-12-500874-4)
- 覇者の戦塵1943 電子兵器奪取(ISBN 4-12-500894-9)
- 覇者の戦塵1943 空中雷撃(ISBN 978-4-12-500997-1)
- 覇者の戦塵1944 翔龍雷撃隊(ISBN 978-4-12-501051-9)
- 覇者の戦塵1944 マリアナ機動戦 1(ISBN 978-4-12-501085-4)
- 覇者の戦塵1944 マリアナ機動戦 2(ISBN 978-4-12-501100-4)
注)角川版は全巻、中公版も近刊を除き現在、新刊本での入手は困難。但し、中公版は順次に電子書籍での販売が行われている。
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
概要
昭和6年、満州事変の最中に北満州で巨大油田が発見された。この油田を日本が確保すれば、列強の軍事バランスは一変する。日本の台頭に大きな危機感を抱いた米ソは満州軍閥や南京政府等の抗日勢力に支援を行い、結果として日本陸海軍は満州国・北太平洋などで抗日勢力やソ連と恒常的かつ活発な地域紛争を経験し、多くの戦訓を得る事となった。
紛争が続く中でも北満州油田の開発は順調に進み、日本の大国化を看過せず露骨なソ連への援助を続けるアメリカと、大陸の権益を拡大するアメリカに対抗し、南方地域へ勢力を拡大しようとする日本の関係は悪化を続け、遂には日本の仏印侵駐を期にアメリカは列強を含めた経済封鎖を断行することになる。
昭和17年春、日本はアメリカと戦端を開き、シベリア・太平洋・東南アジア各地で熾烈な戦闘は繰り広げられていった…。
世界観
本作は史実なら約30年後に発見される大慶油田が満州事変時に発見された事を起点とし、これに警戒した列強の援助により活性化した内外からの抗日組織活動による満州国の不安定な状況(副次的な要素として溥儀が満州国皇帝になっていない)と、ソ連の極東兵力増強により上海事変・熱河作戦において日本軍は苦戦を強いられ、戦果は史実よりも少なくなっている。また永田鉄山が暗殺を免れた事に伴う宇垣一成内閣の成立は永田鉄山の関東軍司令就任と共に盧溝橋事件を不拡大と成し、日中戦争は勃発していない。また、宇垣内閣によって関東軍の満州国への発言力低下や日独伊三国同盟の流産がなされている。
ソ連・アメリカの圧力は当初は両国が経済的な理由で介入ができない為、馬占山軍へのアメリカ製兵器の軍事援助という形で現れた。これを阻止せんとする日本海軍はソ連極東海軍との間でオホーツク海で二度の海戦を生じさせ、北千島を海軍の主戦場とする。この二度の海戦と直前の空母を含む艦隊難破は日本海軍に大艦巨砲主義の疑念と空母の脆弱性を認識させ、損耗した駆逐艦の代艦建造等を含めて海軍の建艦計画に大きな変革をもたらす。また、濃霧の北太平洋を戦場にした海軍は目視に頼らない捜索手段、電波探信儀の開発に力を入れるようになる。
また上海事変・北千島警備・ソ満国境の黒竜江警備に海軍陸戦隊があたった結果、独自に外地警備・着上陸戦を行う海兵隊が海軍より独立している。
そして北満州油田の発見と開発は満州国の農地開拓に必要な現地トラクター工場の設立を成功させ、それらは結果として土木作業の機械化や日本の戦車開発を促進させることになる。同時に石油資源の安定供給量の増大とそれに伴う陸軍の機械化の進展は、国内産業全体の底上げも実現している。
この様に全般的に技術力を向上させた日本軍将兵は連合国に対し技術力を基にした戦法・作戦を行っているが、組織・人材はそれに追いついておらず、アメリカとの戦争に突入した段階に至っても、軍(特に陸軍)の高級将校の中には前時代的かつ観念的な作戦指導しかできない者もいる。
登場人物
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陸軍
- 秋津
- 「北満州油田占領」より登場。油田調査時は護衛隊の小隊長であったが、後に陸軍大学校を経て参謀将校としての道を歩む。冷静な判断能力を持ち、機械化戦力の集中運用や兵站の重要性といった現代戦を理解している。
- 各務
- 「北満州油田占領」より登場。油田調査時は秋津の上官として護衛隊長(中隊長)を勤めていた陸軍大学校出のエリート士官。無謀な作戦や前時代的な部隊運用を指揮系統を無視して強引に現地部隊に押し付け、失敗すれば現地部隊長に詰め腹を切らせる性格。
- 陣内
- 「謀略熱河戦線」より登場。秋津とは士官学校で同期だった士官。当初は歩兵小隊を指揮していたが、熱河作戦時に機械化部隊の段列を指揮。その後も海倫特務機関に属したり、農地開拓の為に設立された満州殖拓公司に出向するなど、通常の兵科士官とは異なる経歴を有する。
- 武嶋
- 「シベリア戦線」より登場。航空下士官。
海軍
- 佐久田
- 「オホーツク海戦」に登場した艦政本部の造船官。早くから戦時量産を前提とした軍艦設計の重要性を唱え、ブロック工法や溶接などを駆使して簡易型の駆逐艦や海防艦など小型艦艇の整備に尽力した。佐久田自身の登場は「黒竜江陸戦隊」以後無いが、この設計思想に沿った艦艇が以後登場する。
- 柳井
- 「オホーツク海戦」より登場。造船官。
- 深町
- 「第二次オホーツク海戦」より登場。技術士官。電探開発に携わる人物であるが、新兵器「丸大兵器」の開発も行う。仕事に集中しすぎて、他の事が目に入らなくなることも多々ある。
- 野上
- 「ミッドウェイ上陸戦」より登場。通信参謀。
- 大津
- 「東太平洋海戦 2」より登場。予備士官。通信傍受を担当。
海兵隊(陸戦隊)
- 小早川
- 「上海市街戦」より登場。士官。上海特別陸戦隊の将校として上海事変に遭遇。その後、北千島特別陸戦隊・海軍砲術学校・黒龍江特別陸戦隊などを経て、編成途上の「陸上機動部隊」司令としてノモンハンに参戦した。また持論としていた陸戦隊の独立に尽力し、海兵隊創設後も実戦部隊の指揮官として前線に立っている。
- 蓮実
- 「北太平洋航空戦」より登場。海兵隊の諸兵科混合部隊として編成された連合機動部隊の司令(大佐)。最初に彼に会った人は戸惑い、次に会ったときは頭痛がし、最後は苦笑いしか出てこなくなる人物。作者の別作品である「軌道傭兵」シリーズよりの出張。
- 黒崎
- 「北太平洋航空戦」より登場。航空下士官。
満州国軍
- 趙
- 陣内に付き従う。
- 嘉門寺
- 満州国軍に所属する元大陸浪人。阿片中毒。
民間
- 日下部光昭
- 「北満州油田占領」より登場。新聞記者。記事を書くより事態の経過を知ろうとする人物。広い交友関係を持ち、様々な情報を流し、入手している。
- 上村尽瞑
- 「北満州油田占領」より登場。謎の僧侶。史実を知っているような口ぶりで北満州油田の存在を示唆し、上海事変の発生遅延などを行う。他にも多くの登場人物へ将来に対して助言を行う。歴史が大きく変わり始めた「ノモンハン機動戦」で回想として出た以降は登場しなくなる。
- 南部
- 「北満州油田占領」より登場。満鉄職員/技術者。
- 桑原
- 「北満州油田占領」より登場。技術者/学生。
オリジナル兵器
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- 零式重戦車(十二試重戦車)
- 海軍が陸戦隊用に独自開発した戦車。設計・製造は奉天製作所。
- 主砲に40口径76mm砲、発動機は400馬力の水冷ガソリンエンジン、最大装甲厚は車体・砲塔前面75mmで、重量は明記されていないが30tを超えており、当時の日本では破格の強武装・重装甲の重戦車となっている。
- これは戦車開発のノウハウがない海軍が既存技術を最大限に流用した結果であり、主砲は艦載砲では最小となる四〇口径十年式八センチ高角砲で、エンジンも「旧式飛行機」からの流用である。また車体に関しては砲塔技術を流用した結果、避弾経始を考慮したものとなり、装甲厚は「自身の主砲に抗湛しうる装甲厚」という戦艦の設計思想に基づいているが、実際には足回りに起因する重量制約によって「主砲に抗湛しうる」強度としては不十分なものとなった。
- エンジンの原型は明記されていないが、九二式艦上攻撃機などに使われた広海軍工廠製の九一式(液冷W型12気筒)が年式や性能的に該当する。
- 開発段階では陸軍から無視されていたが、試作戦車(制式車と比べ、足回りが弱く装甲も薄い)が海兵隊と共にノモンハンに投入されて戦績を挙げ、陸軍も無視できずに海軍由来の流用部材(砲やエンジンなど)を陸軍仕様に変えて採用(百式重戦車)することになる。
- 荒島型防空巡洋艦
- 主砲31cm三連装砲3基9門、98式65口径10cm連装高角砲8基、94式高射装置 対空電探 水上見張電探などを搭載した最高速力33ノットの防空巡洋艦。当初超重巡洋艦として計画された。一番艦荒島の竣工は1941年初頭。二番艦は石鎚。三番艦以降も順調に建造中であるが、後期の艦は防空能力の強化の為か、工程が遅れているとされている。(1942年現在)
- 排水量は明記されていないが、その兵装から米国のアラスカ級大型巡洋艦に匹敵する3万tクラスの大型巡洋艦と思われ、計画だけで終わった超甲巡に近い艦と考えられる。
- ただ超甲巡はアラスカ級に対抗するため昭和16年の第五次海軍軍備充実計画で計画された艦であったが、完成時期から逆算して第三次海軍軍備補充計画で最初の2隻が建造されている。そのため、特定の敵艦への対抗ではなく、当シリーズでは後に大和型戦艦となるA-140が取り消されているため、その代艦であったとも考えられる(米国のアラスカ級は、実際には存在しない日本の大型巡洋艦への対抗との意図もあり、その「幻の超甲巡」がこの艦の元ネタになっている可能性がある)。
- 作中の記述から「6隻以上が計画されている」ことが判明しているが、後述する大峰のように建造途中で改設計された艦もあり、いまだその全容は明らかになっていない。
- 作中のイラストでは平甲板・1本の集合煙突・艦橋後方と煙突後方にマスト(頂部に電探装備)等が確認出来る。
- 大峰型防空巡洋艦
- 荒島型をベースに、艦後部に飛行甲板を設けた実験艦。
- 艦前部には40cm連装砲が2基装備され、後部から艦橋脇に伸びた斜行甲板で主に防空を担当する航空機部隊を運用する(艦上攻撃機は非搭載)。
- 完成時期から逆算すると第四次海軍軍備充実計画の艦(荒島型の3番艦あるいは4番艦)と思われ、同時期に伊勢型戦艦も航空戦艦に改装(詳細は不明)され、同一の戦隊として運用されている。完全な空母化をしなかったのも、伊勢型同様に戦力化までの時間短縮のためと思われる。
- 搭載された40cm連装砲は、戦艦陸奥に搭載されていた物(ワシントン海軍軍縮条約により建造途中で頓挫した加賀型戦艦用に作成された砲身を使用)と説明されている。なお、史実の陸奥は1943年6月8日の爆沈事故で喪われているが、当シリーズでは同日に爆発事故で大破したものの沈没を免れている(主砲を含む兵装を撤去した後は不明)。
- 同時期に建造されていたと思われる僚艦(荒島型の3番艦あるいは4番艦)に関しては不明であり、実験艦とされていることからも同型艦の存在は不確実で、作中でも明確な記述はまだ無い。
- 翔鶴型空母
- 史実の翔鶴と異なり、戦訓を元に格納庫が一層式となり、側面に開口部が設けられている開放型格納庫を備えた空母となっている。その結果搭載機数は減少しているが、ダメージコントロールにより配慮されている。
- 同型艦 翔鶴 瑞鶴
- 一式戦闘爆撃機
- 零式艦上戦闘機の機体構造を強化した海兵隊用の単座対地支援機。
- 基本構造は零戦のままであるが、機体の強化に伴ない部品の共有率が大幅に低下していると見られる記述が作中にある。増槽は胴体下では無く両翼に懸下する形になっており、胴体下には爆弾取付金具が備え付けられている。その他、小型爆弾やロケット砲弾を搭載するハードポイントが増設されており、海兵隊の航空部隊で運用されている機体の大半を占めている。(偵察や索敵・指揮等の用途に艦上爆撃機などの多座機も保有しているが、これらが爆撃などに使われることはほとんど無い)
- 九五式対空戦車改
- 陸軍九五式軽戦車に20mm連装機銃を搭載した海兵隊の装甲車両。
- 搭載された20mm機銃は零式艦上戦闘機と同じエリコン系だが、制限が緩い車載であることから当初より九九式二号系列の長砲身型と思われる。砲塔は航空機の機銃座と同じ動力式と思われ、対空兼用であるため直上方向にも向けることが可能。
- 零式戦車がその重量により運用上の制約が多い事から、数的には海兵隊の主力戦車となっている。
- 四式砲戦車
- 丸大兵器
- 自立誘導型の対艦噴進爆弾。当初は3万mの遠距離攻撃を想定していたが技術的な問題が多く、途中で中距離用に変更して戦力化に成功した。機載型と地上発射型がある。
- 現在は誘導装置の精度向上と長射程化が図られている。
- 最初に制式化されたのは「翔竜一一型」。この他「翔竜四三型」とそれを改造した「試製禰式翔竜」が存在する。
- 海軍艦政本部の佐久田中佐が提唱していた戦時量産向けのブロック工法に則った量産型補助艦。
- この系統の最初の艦は、昭和10年の台風の被害(史実の第四艦隊事件とは若干異なる)や昭和11年の第二次オホーツク海戦での被害の補充艦(第二次補充計画)として、佐久田中佐が設計した1300t級の駆逐艦となる。
- それと平行して、800t級の海防艦(平時建造型の甲型、戦時量産型の乙型、最大限に簡略化した丙型の三種類)が柳井大尉により設計され、以後の簡易型補助艦の原型となった。
- この汎用海防艦は800t級(海防艦や二等輸送艦クラス)であるが1500t級(駆逐艦や一等輸送艦クラス)にも応用が可能で、船体は量産性を重視した直線を多用、機関は被弾時の抗湛性を重視してシフト配置となり、兵装・儀装は用途に応じた変更を前提に余裕のある設計となった。その結果、汎用性・量産性に優れ、実戦での被弾後の継戦能力も高く、更に環境や戦況の変化に応じた改装も容易な汎用艦となったが、従来の同種艦に比べ「弱武装で低速」と見られることもあった。
- 柳井大尉の海防艦は、昭和12年の「急速造艦演習」にて呉工廠と民間造船所で計4隻の丙型が建造された。この4隻は僅か3ヶ月ほどで建造され演習は成功したが、最も簡略化された丙型では海軍の規定に満たない点があり、性能試験後に満州国に払い下げられ(渤海艦隊に編入)、日本海軍では使われなかった。
- 続いて、満州国江防艦隊の河川砲艦「禄剛」が昭和12年にハルピン近郊(黒竜江の支流松花江の沿岸)の仮設ドックで建造され、黒龍江陸戦隊と共に実戦に参加している。
- 当初は実戦部隊を中心に「粗製乱造艦」として不評であったが、その後海兵隊の高速輸送艦としても登場し、日米開戦後は数的には海軍の主力小型艦となっている模様。
- 高速輸送艦(一等輸送艦と形状が近く後方のランプより大発を落下発進が可能)は大まかに4種類に分けられる。汎用駆逐艦を改設計した仕様と峯風型駆逐艦を改造した仕様は20ktの艦隊行動が可能であり、前者が5隻、後者が2隻の大発を搭載する。量産型海防艦の改設計した仕様と旧型(主に樅型)駆逐艦を改造した仕様は速力と搭載能力が前者2仕様に比べて劣る。前者の輸送艦は1942年のミッドウェー攻略の段階で約20隻が就役している。