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トラック野郎

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トラック野郎』(トラックやろう)は、1975年1979年東映で(全10作)製作・公開した、日本映画のメインタイトル。

概要

主演はプライベートでも大親友という菅原文太愛川欽也。煌びやかな電飾と極彩画に飾られた長距離トラックの運転手、一番星桃次郎とヤモメのジョナサンが巻き起こす、アクション・メロドラマ・お色気・下ネタ・笑い・人情が渾然一体となった大衆娯楽活劇である。監督は奇才かつヒットメーカーで菅原とは無名時代からの友人でもある鈴木則文

現代やくざ』シリーズ、『仁義なき戦い』シリーズなど、これまでコワモテの硬質なヤクザ役のイメージが定着していた菅原文太が、徹底した喜劇的演技に挑戦することで新たな一面を開拓した作品ともいえる。当初、ヤクザ映画で人気を博したイメージからの大転換に東映側は反対したが、菅原自身は自らのイメージには全くこだわらずに、「面白そうだから」と自ら企画を鈴木に持ち込んで出演を希望し、鈴木も東映入社後、助監督時代から専属だった東映京都撮影所から東映東京撮影所に移って2年程経った頃で、すでに3本の作品を演出していたが、当時、東映の主流だった実録やくざ映画も人気が下火になりつつあった時期でもあり、やくざ映画に変わる新たな娯楽作を出そうと制作に意欲を示したが、当初はシリーズ化の予定はなく単発の穴埋めの低予算作品としての公開だった[1]。ところが、1975年8月に公開された第1作「トラック野郎・御意見無用」は同年公開の大作『新幹線大爆破』の配給収入の2倍以上の約8億円を上げたことからシリーズ化が決まった。

内容は菅原自身も後に語っているように、ライバル映画であった松竹の『男はつらいよ』のスタイルを踏襲している。毎回マドンナが現れ、惚れては失恋するところは、『男はつらいよ』のそれに似ているが、寅さんが「静・雅」なら桃さんは「動・俗」と対極をなしている[2]。物語の中核を担うのは寅さんではありえない「下ネタ」「殴り合いの喧嘩」「派手なカーアクション」で、とりわけ下ネタのシーンは屋外での脱糞トルコ(現・ソープランド)など、かなりえげつないものが多い。なお、トルコ風呂の場面は、人気シリーズとなった本作の子供観客への配慮もあり、シリーズ後半以降はほとんど描かれなくなった。喧嘩のシーンはシリアスなものではなく、必ずギャグが入る。また、カーアクションは毎回、物語のクライマックスで暴走する一番星号を追跡する白バイやパトカーが横転、大破するなど、警察をコケにした代物である。劇中に登場するトラックに関しては、第1作目で使用された一番星号(T951FU)とジョナサン号(T650FK前期型)は廃車両を譲り受けたものだったが、続編の製作決定を期に共に新車(正確には北海道・室蘭で東映が購入した新古車、車種は一番星号がFシリーズで、ジョナサン号はT652型)に代替され、最終作の『故郷特急便』まで使用された。以降、東映の興行の基盤となるドル箱シリーズとして1979年末まで盆と正月の年2回公開されていた。愛川曰くライバル映画の松竹男はつらいよ』と常に同時期の公開だったことから、「トラトラ対決」(「『トラ』ック野郎」と「『寅』さん」の対決の意)と呼ばれていた。また、撮影にあたり、「哥麿会」などのデコレーション・トラックグループが全面協力[3]。実在のトラックも多数登場している。また、由利徹をはじめ、せんだみつお笑福亭鶴光湯原昌幸桂歌丸松鶴家千とせばってん荒川ラビット関根など、当時人気のコメディアンや落語家がキャスティングされていることも特徴で、それぞれ一世を風靡した持ちネタや喜劇的演技を披露していた。

エピソード

  • 「トラック野郎」誕生のきっかけは、ジョナサン役の愛川欽也が自身も吹き替えをしていた外国テレビ映画『ルート66』の様なロードムービーをやりたい」と自ら東映に企画を持ち込み、これに菅原文太が乗ったのが始まりと云われる。
  • 「トラック野郎」という言葉は、東映が作った造語であるが、映画のヒットで一般的に使用されるようになった。また本作は満艦飾のデコレーショントラック(デコトラ)が巷に溢れるきっかけの一つとなった。
  • 一番星号・ジョナサン号・ライバル車といった、劇中に登場するトラックのデザイン及びトラックの箱(荷台)に描かれた絵は、本シリーズ全10作の美術監督を務めた桑名忠之がデザインを担当、ペイントを担当したのは塗装業務会社「日展企画」である。[4]
  • 本シリーズのお約束でもある、桃次郎とマドンナが初めて遭遇する場面で、アップで映るマドンナの周囲に無数の星が輝くカットがあるが、これを考案したのは第1作『御意見無用』、第4作『天下御免』の撮影を担当した東映東京撮影所のベテラン撮影技師・仲沢半次郎である。[5]
  • トラックの「違法改造」の問題、また菅原文太が当初大型免許を所持していなかったことから、撮影時は警察との対立が絶えなかった。大型免許に関しては第5作の『度胸一番星』の冒頭で菅原が実際に一番星号を運転するシーンが見られることから、5作目撮影開始までには取得していたと思われる。ただ、実際の運転はお世辞にも上手いものとは言えなかったようで、運転中に一番星号をぶつけて飾りを壊していたという話も残っている。
  • 物語は1978年8月公開の第7作『突撃一番星』まではコメディ路線であったが、同年12月公開の第8作『一番星北へ帰る』からシリアス路線となる。
  • 1979年12月公開の第10作『故郷特急便」は2人のマドンナを迎え、これまでの大ヒットには及ばないとはいえ、多くの観客動員数を集めた。第11作も予定されていた経緯もあるが、東映が当初予定していた興行成績を下回り、また、作品のマンネリ化や、主演の菅原がNHK大河ドラマ獅子の時代」主演のため1年間も拘束されていることもあり、1980年の春頃に東映がシリーズの打ち切りを発表、トラックも売却された。
  • トラック映画をあきらめきれない東映首脳は新しいトラック野郎に黒沢年男を起用して「ダンプ渡り鳥」を1981年に公開するが興行的に惨敗する。
  • 一番星号は現在、一般の人が購入しレストア(復旧のための修理)が行われ現存しているが、ジョナサン号は所在を転々とした後、何者かによる解体(盗難?)で現存しない。1994年頃までは荷台箱のみ現存していたらしい。最近、第9作『熱風5000キロ』仕様の一番星号のレプリカ車が製作された。
  • 1978年12月にシリーズ初のテレビ放映。第1作「御意見無用」が「土曜ワイド劇場」の特別篇として2時間拡大版(当時は1時間半枠)で放送された。そして翌年に第2作~第4作とゴールデンタイムに順次放送されていった。また製作会社である東映が、テレビ朝日の筆頭株主だった(当時、現在は2位株主)関係で、1980年代の中期ぐらいまではよく同局で放送され、特に年末年始は必ずといっていいほど放送があった。また、90年代初頭まではTBS土曜午後の映画枠の常連でもあった。
  • 玩具メーカーのバンダイが版権を獲得し、発売した模型 (1/48) も月に10万台も売れる大ヒットとなった。
  • その後、全長約55センチという (1/20) スケールの超大型モデルも登場し、映画が終了して30年近く経つ現在でも販売されているロングセラー商品となっている。
  • その後は「デコトラ」の商標を持つアオシマがコンスタントにアートトラックの模型を発売している。最近、当時の映出車(コリーダ丸や龍馬号など)がモデル化されている。2009年にはアオシマからも一番星(故郷特急便)が(1/32)のキットとして初モデル化された。その他、チョロQや光るRCカー (1/32) が新たに発売されており、今なお根強い人気を保っている。
  • 第1作の撮影前、鈴木則文と澤井信一郎とで、長距離トラックに同乗する5日間の取材旅行を敢行し、シナリオの執筆にあたった。一番星号の正面下部にある「雪の下北」「はぐれ鳥」の装飾は、取材旅行で最初に同乗したトラックにあった装飾を、そのまま引き継いだものである[6]

内容

日本全国津々浦々を走る長距離トラック運転手(白ナンバー)の主人公、一番星・星桃次郎(菅原文太)と、子沢山の相棒、やもめのジョナサン・松下金造(愛川欽也)が、各地で起こす珍道中。シリーズ全10作に通ずる基本的なストーリーは、桃次郎が目の前に現われたマドンナに(たいてい便所や情けない姿をしている時に遭遇)一目惚れをし、相手の趣味や嗜好に合わせて(見当違いの)付け焼刃の知識で積極的にアタックしていく。また、個性の強いライバルトラッカーが現われ、ワッパ勝負(トラック運転での勝負)や一対一の殴り合いの大喧嘩を展開する。そして、「母ちゃん」こと松下君江(春川ますみ)を始めとするジョナサン一家、女トラッカー、ドライブインに集う多くのトラック野郎達等を絡ませ、人間味あふれるキャラクター・桃次郎を中心に、様々な人間模様が綴られてゆく。また、青森ねぶた祭り唐津くんちなど、全国各地の有名な祭りの場面が登場するのも、このシリーズの特色である。結局、恋は成就せず物語はクライマックスへ。天下御免のトラック野郎に戻った桃次郎は、時間が足りない悪条件の仕事を引き受け、一番星に荷(人)を載せてアクセルを踏み込み大爆走させる。そのアクセルを踏み込んだ時の加速力(メーターの上がり方)は圧巻である。追っ手の警察を蹴散らし、強化された検問を突破し、トラック野郎達の応援・協力を得て、道なき道を走り一番星号をボロボロにしながらも(劇中に障害物で行灯が割れたり、泥水でトラックが汚れるなどの描写がある)時間内に無事送り届け、修理を終えた一番星号とジョナサン号が走り去る-というシーンで「完」を迎える。ただし、第1作のエンディングは一番星号がジョナサン号を牽引し、第3作ではジョナサン号が一番星号を牽引した(激走の代償として自走不能となってしまった)。

制作

(主な)協力

出演

レギュラー・準レギュラー

  • 菅原文太星桃次郎(一番星)
    主人公、独身。性格は短気でケンカっぱやいが情に厚く真っ直ぐで、卑怯な真似を嫌う純情タイプ。トラック仲間からの人望が厚い。ジョナサンと大喧嘩しても、心では親友と思っている。着る服や腹巻には必ず「☆」マークが入っている。マドンナに自己紹介する時は「学者」「運輸省関係」など職業を偽るクセがある。お腹が弱く、運転中によく便意を催し、野グソをする。住所不定のため手紙はいきつけの川崎のトルコ宛に届けられる。自ら「心の故郷」と言うほどのトルコ好きである。ジョナサンからは「桃さん」と呼ばれている。希に「一番星」とも呼ばれる。東北の寒村の生まれだが、小学生の時にダム建設のため、一家は村を追われ、父親の知り合いを頼って青森県下北へ移る。にわか漁師だった父親は下北へ移って間もなく海難事故で死亡。その後、母親と妹と3人で極貧の中生き抜いてきたが、母親もその後病死している。妹は生死不明で、劇中でも殆ど語られる事はなかった。自分の生まれ故郷がダムの湖底に沈んで無くなってしまった為か、「故郷」というものに対する想いは人一倍強い。
  • 愛川欽也…松下金造(やもめのジョナサン)
    桃次郎の相棒、妻帯者。元警察官で、かつては鬼代官ならぬ「花巻の鬼台貫(だいかん)」と恐れられた。鬼台貫とは台貫(=重量測定器)を用いて容赦のない過積載取締りをする鬼代官(=警察官)であることを表した掛詞である。パトカーの酔っ払い運転で懲戒免職になり、トラック野郎になる。性格は温厚で明るく人情家。男女の仲を取り持つのが得意だが、桃次郎とマドンナの仲は取り持てていない。ちなみに愛称の「やもめのジョナサン」は当時ヒットした映画「かもめのジョナサン」のパロディ、役名の「松下」は愛川が出演した松下電器産業ラジカセのCM内でのセリフ「あんた、松下さん?」からの命名。
  • 春川ますみ…松下君江(母ちゃん)(1, 2, 3, 4, 6, 8, 9, 10)
    ジョナサンの女房。子沢山で、実子は7人(第1作)~9人に増加(第3作)。父は元警察署長。ジョナサンが病気や怪我のときは代わってジョナサン号に乗るパワフルな肝っ玉母ちゃんである。
  • せんだみつお…桶川玉三郎(三番星)(7, 8, 9)
    元トラック野郎だったが、第7作の登場時にはインチキセールスマン。その後「三番星」としてトラック野郎に復帰。10作目も出演予定であったがせんだの急病により取りやめとなった。

御意見無用

爆走一番星

  • 田中邦衛
    • イタリアンマフィアを髣髴とさせる派手なスーツにボルサリーノのソフト帽をかぶったダンプ運転手。通称ボルサリーノ2。子分にボルサリーノ3と4がいる。かつて警官時代のジョナサンの取り締まりを受けたことから、その事を恨み続けている。「市民なんてどこにいる?!金持ちと貧乏人の二とおりだけじゃねえか!」は彼の名台詞。
  • 山城新伍:トルコの帝王 須間田三四郎
  • あべ静江:高見沢瑛子
  • 佐藤京一:ボルサリーノ3
  • 小林稔侍:ボルサリーノ4
  • 織本順吉:小野松吉
  • 研ナオコ:バスガイド
  • なべおさみ:赤塚周平
  • 加茂さくらバキュームカーの運転手役。ジョナサンから手渡された見合い写真から勘違いに発展するが、なべおさみ演ずる白バイ警官と結ばれる。
  • ラビット関根(関根勤):バキュームカー助手 堀釜太郎
  • 笑福亭鶴光:ポルノショップのお兄ちゃん
  • 夏八木勲:片岡光二

望郷一番星

天下御免

度胸一番星

男一匹桃次郎

突撃一番星

一番星北へ帰る

熱風5000キロ

故郷特急便

3作品以上出演

全10作サブタイトル・概要・同時上映作品

No. サブタイトル マドンナ役 ライバル役
(ニックネーム)
主なロケ地
(イベント等)
公開年(時期) 同時上映
第1作 御意見無用 中島ゆたか 佐藤允
(関門のドラゴン)
盛岡青森川崎下関仙台
青森ねぶた仙台七夕
1975年(夏) 帰って来た女必殺拳
第2作 爆走一番星 あべ静江 田中邦衛
(ボルサリーノ2)
姫路長崎川崎福岡天草
長崎くんち
1975年(末) 『けんか空手 極真無頼拳』
第3作 望郷一番星 島田陽子 梅宮辰夫
(カムチャッカ丸)
広島釧路・静内(新ひだか)・札幌
ハイセイコー
1976年(夏) 『武闘拳! 猛虎激殺』
第4作 天下御免 由美かおる 杉浦直樹
(コリーダ丸)
倉敷宇和島松山境港京都
闘牛
1976年(末) 『河内のオッサンの唄 よう来たのワレ』
第5作 度胸一番星 片平なぎさ 千葉真一
(ジョーズ)
新潟佐渡金沢山形
白根大凧合戦新潟まつり
1977年(夏) サーキットの狼
第6作 男一匹桃次郎 夏目雅子 若山富三郎
(子連れ狼)
唐津鹿児島東京熊本
唐津くんち・餅すすり大会)
1977年(末) こちら葛飾区亀有公園派出所
第7作 突撃一番星 原田美枝子 川谷拓三
(矢野 駿介)この役はトラック野郎ではない。
鳥羽下呂温泉東京
高山祭り
1978年(夏) 『多羅尾伴内 鬼面村の惨劇』
第8作 一番星北へ帰る 大谷直子 黒沢年男
(Big99)
花巻会津若松常磐ハワイアンセンター福島
(輓馬大会)
1978年(末) 水戸黄門
第9作 熱風5000キロ 小野みゆき 地井武男
(ノサップ)
木曽上松安曇野長野魚津 1979年(夏) ドランクモンキー 酔拳
第10作 故郷特急便 石川さゆり
森下愛子
原田大二郎
(龍馬號)桃次郎は「土佐犬(いぬ)」と呼ぶ。
高知大阪高松銚子東京
闘犬よさこい祭り
1979年(末) 『夢一族 ザ・らいばる』

主題歌

挿入歌

関連グッズ

  • DVD(全10作)…東映ビデオ
  • ビデオ(全10作)…東映ビデオ
  • サウンドトラック(全3枚)…AMJ
  • 1/48スケールプラモデル(8種類、2・3・4・5・7・9・10作目の一番星号及び2作目のジョナサン号)…バンダイ
  • 1/20スケールプラモデル(5種類、4・5・7・9・10作目の一番星号)…バンダイ
  • 1/32光るRC(7種類)…青島文化教材社
  • チョロQ(10種・12台)…タカラ(現・タカラトミー
  • モーター駆動で走って光る(4種類)…スカイネット

脚注

  1. ^ 日本経済新聞2009年2月21日掲載分・鈴木則文コラムより
  2. ^ 鈴木則文は後年のコラムで『男はつらいよ』=古典落語、『トラック野郎』=漫才と述べている
  3. ^ 「一番星」の名は、哥麿会副会長のトラックの愛称が由来となっている。
  4. ^ 洋泉社「映画『トラック野郎』大全集 」より
  5. ^ 洋泉社「映画『トラック野郎』大全集 」より
  6. ^ 非売品小冊子「東映ビデオコレクション劇映画総解説」p.18より

外部リンク