コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ゆとり世代

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Xfihgii (会話 | 投稿記録) による 2010年11月25日 (木) 09:58個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (ゆとり世代に対する議論)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

ゆとり世代(ゆとりせだい)とは、2002年度(高等学校は2003年度)学習指導要領による教育(ゆとり教育)を受けた世代のこと。

定義

高等学校における学習指導要領の改訂が2003年度の第1学年から学年進行で実施された。この改訂は学力低下につながる改訂であるという評価から、この改訂後の学習指導要領である現学習指導要領における高校教育をはじめに受けたことになる1987年4月2日 - 1988年4月1日生まれをマスコミなどは「ゆとり第一世代」と呼称することがある。[1]。 ただし、別の生まれた時期をゆとり第一世代とする場合もあり、1993年4月2日 - 1994年4月1日生まれや[2]1985年4月2日 - 1986年4月1日生まれ(2008年入社組、小学校1年から新学力観に基づく教育を受けた)などを指す場合もある[3]

なお、各方面からゆとり第一世代以降の世代は「ゆとり世代」と呼ばれるが[4][5][6][7]、いつまでを「ゆとり世代」と呼ぶのかは、2010年現在の時点では定まっていない。

誕生年度と教育

生まれた年と学習指導要領の対応表。
橙色、緑色が旧学習指導要領下での教育。黄緑色が現行学習指導要領移行措置下での教育。赤色が現行学習指導要領下での教育。ピンクが新学習指導要領移行措置下での教育。青色が新学習指導要領下での教育。学習指導要領の改変が行われない限り、この表通りに教育が実行される。

ゆとり世代と関係する各教育制度が実施された時期を次の表に示す。誕生年度は原級留置(留年)などの処置を受けなかった場合のものである。ただし、完全学校週5日制については国の方針として実施された時期を示してあり、私立学校などにおいては必ずしもこの時期に実施されたとは限らず、2010年には東京都教育委員会が公立小中学校での土曜授業の実施を条件付きで容認するなど[8]、公立校でも地方によっては完全学校週5日制になっているとは限らない。なお、4月1日生まれの者は前年度生まれ扱いとなる。

各制度実施時期早見表
誕生年度 現行学習指導要領 新学習指導要領 完全学校週5日制 総合的な学習の時間
1983年度以前 実施せず 実施せず 実施せず 実施せず
1984年度 [注釈 1] 高校在学中
1985 - 1986年度 中学校在学中
1987年度 中学校在学中 中学校在学中
1988 - 1989年度 小学校在学中
1990 - 1992年度 小学校在学中 小学校在学中
1993年度 小学校入学以前
1994 - 1995年度 [注釈 2]
1996年度 小学校入学以前 [注釈 3] 小学校入学以前
1997 - 1998年度 中学校在学中
1999 - 2003年度 小学校在学中
2004年度 実施せず
2005年度以降 小学校入学以前
  1. ^ 現行学習指導要領は2000年度から移行措置として小中高で先行実施されている[9][10]
  2. ^ 中学校在学中に移行措置として、新学習指導要領に触れるが、高校に関しては新学習指導要領の適用外である。
  3. ^ 中学校在学中に移行措置として、新学習指導要領に触れ、高校に関しても新学習指導要領の移行措置で教育を受ける。
現行指導要領と誕生年度

高等学校の新学習指導要領は2003年度より学年進行で実施されたため、1986年度以前の生まれの者は移行措置期間で教育を受けてはいる者もいるが完全には適用されておらず、1987年度以降の生まれの者には第1学年から完全に適用された。この表の総合的な学習の時間に関する部分は、新学習指導要領の全面実施に先立ち、移行措置として「実施することができる」と定められた時期を示している。実施が義務付けられたのはこれより2年後の新学習指導要領全面実施時であるため、1986年度生まれが総合的な学習の時間を経験していなかったり、1989年度生まれが総合的な学習の時間を初めて受けたのは中学生のときだったりと、実施時期が「現行学習指導要領」の部分と同様になる者もいる。

現行指導要領は、2003年度生まれまでが受けるが、そのなかでも1995年度生まれまでが、最終的に現行指導要領で高校を卒業する。

新指導要領と誕生年度

小学校では2011年度より、中学校では2012年度より新学習指導要領が実施される予定であり、2009年度より小中学校で新しい学習指導要領の一部が先行実施されている。完全学校週5日制と総合的な学習の時間は新学習指導要領でも実施される。高等学校の学習指導要領は2013年度入学生(1997年度生まれ)から学年進行で実施されるが、理科・数学など一部内容を2012年度入学生(1996年度生まれ)から先行実施することとなっている。すなわち、1996年度生まれ以降は、高校で新学習指導要領による教育(脱ゆとり教育)を受ける世代となる。1997年度生まれ以降は、高校で現学習指導要領による教育を受けない世代となる。さらに、1999年度生まれ以降は、中等教育段階においては完全に新学習指導要領による教育(脱ゆとり教育)を受ける世代となる。

なお、学校週5日制については、国は2010年時点では依然として公立学校完全週5日制堅持の方針を変えていないが、一部の自治体においては義務教育における学校完全週5日制を見直す動きも出てきている。

大学入試センター試験に関しては、2015年入試から一部が新課程の内容が加わり、2016年入試から完全に新課程の内容になる[11]。ほとんどの現役生において1996年度生まれは一部新課程が導入され、1997年度生まれ以降は完全に新課程となる。

成長過程

ゆとり第一世代

ゆとり第一世代を1987年4月2日 - 1988年4月1日生まれとした場合の、ゆとり第一世代の成長の過程を下記に示す。

幼少期・学齢期

バブル景気の最盛期頃に産まれ[7]、その後の1990年代の平成不況情報化社会の中で育ったために好景気を微塵も知らない、最初の世代である。幼少期に1990年代前半のバブルの余韻を目にしたもの、自らが思春期に突入した頃には不況となっていた。 また、小学校入学時からすでに第二土曜日は休みであり、第四土曜日は小学校2年生から休みになった。さらに、中学校2~3年生から学校週五日制により土曜日の授業がなくなった。

小学校高学年のころに山一證券北海道拓殖銀行の破綻をニュースで知り、中学生のころには平成不況の影響を受け、リストラ100円ショップユニクロに代表されるデフレを象徴する大量消費を知りながら育った[7]。小学校の段階では、まだ旧学習指導要領に基づく教育だった。

中学校3年生から現学習指導要領が施行され、それによって、この世代から大学入試の基準が変更され、センター試験では、リスニングが追加された。この世代から薬学部薬学科が6年制教育となった。この世代は、大学・短大への進学率が高く、およそ半分の人が進学している[12]

就職活動期

この世代が順当に進学した場合でも、大学を卒業するのは2010年である。

この前年までの数年間、一時的な景気の回復により、就職活動はいわゆる「売り手市場」となっており、高校・短大・専門学校卒で就職した者には2005年 - 2008年にかけての売り手市場の恩恵を受けた者もいるが、サブプライムローン問題に端を発する世界的な金融危機などの要因による急激な景気悪化により、この世代は状況が厳しくなっている。

なお、2010年の内定率は 91.8% と、1996年以降の統計で2000年の 91.1% に次ぐ低い数値となった[13]

また、会社によっては英語を公用語にしたり[14]、新卒よりも外国人を採用したり[15]などと、就職難の上に外国人と就職活動で競い合わなければならない状況が起きている。

入社後

レジェンダ・コーポレーション株式会社の入社後の意識調査によると、ゆとり世代の人間の中には、自分たちが「ゆとり世代」である、と認識しているものもいる[16]

ゆとり世代は、会社内でうまくいけるのかという心配な声もあり、ゆとり世代をうまく育成させるためのマニュアルなどが出現してくるが[17][18]、ゆとり世代への心配は杞憂ではないかという声もある[19]

ゆとり第一世代後の世代

2011年卒[20]マイコミ学生就職モニター調査の結果では、先輩よりも厳しい状況だと答える学生が増えており、不安を抱える学生が増えてきている[21]

1997年度生まれが高校3年生になっている年である2016年のセンター試験を、大学全入時代が迫っており、受験生の学力の幅が広がっているなどといった背景から難易度別に2種類の問題にすることが検討されている[22]

文化

ファッション(若者服)や世代文化は、基本的には1980年前後生まれ(ポスト団塊ジュニア世代の後半)の若者文化の延長線上にあり、嗜好の多様化・細分化の中で成長した。

インターネットの普及とともに成長した世代で、小学校低学年の頃にはポケットベルPHSが登場し、数年後には携帯電話が普及している。情報化社会の進展によってインターネットも身近になっていった。小学校に上がる頃にはWindows 95が登場し、インターネットの普及も始まった。高校生の頃には都市部においてブロードバンドインターネット接続も一般化し、インターネットや携帯電話が生活必需品となっていった[23]

音楽では、小学校低学年の頃は小室系音楽の全盛期であり、小学校高学年から中学・高校生の頃はモーニング娘。を初めとするハロプロの全盛期であった。

ゆとり世代に対する議論

学力に関する議論

その他の議論

「今の子どもは無能だ」と主張する者がいるが[24]、評論家の後藤和智は、このような批判に対して、そのような批判は的外れであると反論している[25][26][27]

また、ゆとり世代はコミュニケーション能力が劣るのではないかと心配されていたが[28]、実際にゆとり世代の新入社員と接してみるとコミュニケーション能力はあるという評価があり、ゆとり世代に対する心配事は杞憂かもしれないと主張するところもある[29]

偏向報道により恣意的に歪められる実像

教育社会学者の広田照幸伊藤茂樹との共著の中で[30]ある民放テレビ局の番組のコメント依頼を受けた際に制作スタッフから「今の若者のダメぶりを、職場などでの失敗シーンの再現ビデオでつくるので、先生には『ゆとり教育がこういう若者をつくった』とコメントしていただきたい」と、露骨にゆとり世代を貶めるよう依頼されたエピソードを紹介し「あまりにもひどい、と思いました。(中略)あんたが社会に出たときに、似たような失敗をしなかったのかよ」とどなってやりたくなりました。」と感想を述べ、「若者の職場での失敗をゆとり教育のせいにするのは、あまりに暴論です。珍説ですね。そんな議論を聞いたのは、私は初めてです。少なくとも、アカデミックな世界では、そんな議論はありません。」と同局の報道姿勢を痛烈に批判している。

ゆとり

2ちゃんねるなどのインターネット掲示板では、キー局全国紙を主体としたマスコミのゆとり世代の学力低下という主張を引き合いに出し、「ゆとり」という語が侮蔑的に使用される(使用例「これだから、ゆとりは」)。

ネットでは1992年(平成4年)度以降に導入された「週休二日制」の元で教育を受けている(受けた)者に対する蔑称として使われていると書かれており、「以前の土曜日は学校が休みでなかったのに、今の世代は土曜日も休むようになったのが不公平であり、学力の低下を招く」とする、罵倒や皮肉の意味を込めて使われている。

本来の用法では「ゆとりあるスケジュール」などとポジティブなイメージで使われるべきものだが、ネットでは軽蔑する言葉として使われており、この言葉は特にホームレス襲撃事件などが起きた2005年~2006年ごろから蔑称として頻繁に使われ始めた[31]。J-CASTニュースによると『厨房』や『DQN』に代わる言葉になると書かれており、ここでの「ゆとり」という蔑称は、(ここで定義する)ゆとり世代よりも対象が広いと書かれている[31]

2007年12月14日には、2ちゃんねる検索を運営する未来検索ブラジルが主催した「ネット流行語大賞2007」において、「ゆとり」が銅賞に選ばれた[32][33]

脚注

  1. ^ “ゆとり第一世代”仕事は「指示待ち」の傾向あり?”. oricon career. オリコン (2009年8月25日). 2009年11月19日閲覧。
  2. ^ 寺脇研『さらば ゆとり教育 A Farewell to Free Education』光文社光文社ペーパーバックス〉(原著2008年1月24日)。ISBN 9784334934286 
  3. ^ ヤンヤン (2010年4月6日). “【ワイドショー通信簿】「上司が支援するのは当然」 2010新人を面白がる法”. J-CASTテレビウォッチ. 2010年4月7日閲覧。
  4. ^ 星良孝 (2008年8月26日). “「京大工学生はゆとり世代から学力低下」〜さらば工学部(7)”. 日経ビジネスオンライン. 日経BP社. 2009年10月19日閲覧。
  5. ^ “議論OK、学生変わった? 「ゆとり第一世代」入学”. 共同通信社 (47NEWS). (2006年7月1日). http://www.47news.jp/CN/200607/CN2006070101002960.html 2009年10月19日閲覧。 
  6. ^ 採用担当必見! モンスターか新時代の旗手か、”ゆとり世代”2010年卒のつかみ方(1)”. 就職四季報オンライン. 東洋経済新報社 (2008年11月20日). 2009年10月19日閲覧。
  7. ^ a b c 佐俣桂子 (2009年1月5日). “「おゆとり様」の消費”. Hit&Hot. 日経リサーチ. 2009年10月19日閲覧。
  8. ^ 都教委が土曜授業を認める通知 「公開授業」条件に上限月2回
  9. ^ 文部科学省 学習指導要領の改訂
  10. ^ 文部科学省 高等学校学習指導要領並びに中等教育学校及び 併設型中学校・高等学校の教育課程の移行措置の解説
  11. ^ 旺文社 教育情報センター 文科省、高等学校学習指導要領の改正を告示!
  12. ^ 学校基本調査 (文部科学省)
  13. ^ 図録就職内定率の推移(大卒)
  14. ^ [1]
  15. ^ [2]
  16. ^ 新社会人、「ゆとり世代」の自覚あり
  17. ^ ゆとり世代をプロフェッショナルに変える
  18. ^ ゆとり世代育成厳禁10箇条
  19. ^ 「ゆとり世代」への心配は杞憂?
  20. ^ 順当に進学した場合、大卒は1988年度生まれ、高卒は1992年度生まれである。
  21. ^ 2011年卒マイコミ学生就職モニター調査 11月の活動状況~企業との接触が進むなか、不安を感じる学生の割合は前月より増加~” (2009年12月10日). 2010年11月23日閲覧。
  22. ^ センター入試、難易度別に2種類 16年導入を検討”. asahi.com (2010年10月25日). 2010年11月23日閲覧。
  23. ^ 行動特性や世代ごと利用動向を分析した「ネットユーザー白書2006」発刊 ネットユーザー白書2006では、1985年から1991年生まれを「電脳生活世代」と呼んでいる。
  24. ^ 後藤和智『おまえが若者を語るな』角川Oneテーマ21、2008年9月10日(143-172 頁)
  25. ^ 学習指導要領改正案への疑問
  26. ^ 角川Oneテーマ21、2008年9月10日(143-172頁)
  27. ^ 「宝島」二〇〇八年二月号の特集
  28. ^ 池谷聡著書 職場を悩ます ゆとり社員の処方せん
  29. ^ 「ゆとり世代」への心配は杞憂?
  30. ^ 広田照幸・伊藤茂樹『教育問題はなぜまちがって語られるのか?―わかったつもり」からの脱却』(日本図書センター、2010年9月16日)
  31. ^ a b “「ゆとり」という表現 ネットでは他人けなす言葉”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2007年9月11日). http://www.j-cast.com/2007/09/11011193.html 2010年3月2日閲覧。 
  32. ^ “【トレビアン】ネット流行語大賞は朝日新聞社の「アサヒる」に決定!”. トレビアンニュース (ライブドア). (2007年12月14日). http://news.livedoor.com/article/detail/3429417/ 2010年3月2日閲覧。 
  33. ^ 産経新聞 ネット流行語大賞、金賞は「アサヒる」(2007-12-14)

関連項目

参考文献

先代
氷河期世代
1970年-1986年
ポスト団塊ジュニア
1975年-1982年
日本の世代
ゆとり世代
1987年-
次代
-