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日本の核武装論

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核武装論(かくぶそうろん)とは、核兵器を保有していない国家において安全保障政策上の核武装の是非や利得の議論を指す。狭義においては核武装すべきであるとの主張を指す。本稿では日本における核武装論について述べる。

なお、核兵器保有国では既に保有する核兵器をどのように運用整備するかという核戦略として語られる。

1945年8月以前の核武装計画

日本において原爆が具体的に語られたのは1940年仁科芳雄博士が安田武雄陸軍航空技術研究所長にウラン爆弾の研究を進言したのが始まりといわれる。

以後、陸軍1941年理化学研究所原子爆弾の研究を委託(ニ号研究)、海軍1942年に核物理応用研究委員会を設けて原爆の可能性を検討した。しかし、当時は人形峠岡山県鳥取県境)のウラン鉱脈の存在も知られておらず、ウラン鉱石の入手はもっぱらナチス・ドイツとの連絡潜水艦に頼る状況であり、ウラン爆弾1個に必要な2トンのウラン鉱石の確保は絶望的であった。

1945年6月には陸軍が、7月には海軍が研究を打ち切り、日本は敗戦を待たずして原爆研究から撤退した。

冷戦中の核武装論

佐藤内閣時代の1960年代後半には、政府が極秘に核保有の可能性を検討していたことが明らかになっている。2010年10月3日放映のNHKスペシャル「核を求めた日本」では、元外務事務次官の村田良平(2010年3月死去)の証言をもとに、核拡散防止条約(NPT条約)調印後の1969年に、日本の外務省高官が西ドイツ外務省の関係者を箱根に招いて、核保有の可能性を探る会合を持っていた事実を明らかにした。また、佐藤内閣が専門家の意見を集めた上で、内閣情報調査室に極秘に核兵器の製造能力についての報告書を作成させていた事実も明らかにされた。報告書では外交・内政上の障害を理由に「有効な核戦力を持つには多くの困難がある」と結論づけていた。これらの背景には1964年に中国が核保有国となったことが挙げられている。

この報道を受けて外務省は、省内で調査をおこなった結果を2010年11月29日に報告書として発表した。それによると、日本と西ドイツの外交当局者が1969年に「政策企画協議」を東京で開催した後に箱根で懇談した事実を確認し、「政策企画協議」自体は「自由な意見交換が目的で、政策の交渉や調整の場ではない」としたものの、西ドイツ側関係者の証言などに基づき、日本の核保有の可能性に関連する発言が「何らかの形でなされていた可能性を完全に排除できない」と結論づけている[1]

その後、1979年のソ連アフガニスタン侵攻をきっかけとして冷戦が再び激化すると、ソ連からの核攻撃の脅威を回避するためには日本も核武装し抑止力を持つべきだという主張がおこなわれた[2] 。一方、日本が冷戦期に核武装しなかったことでソ連が日本に対して軍事的行動に出られなかったという主張も存在する。ただし、日本は米の核により守られていたのでこの見方が成り立つとは考えにくい[3]

なお、NPT条約の締結以前、非核三原則以前であれば日本政府は「防衛用核兵器は憲法上保有しうる」という見解で核武装の完全な否定はしていない。しかし、日米安保体制にある限り、やはり戦略核抑止について論じられることはなく、戦術核に言及されるのみである。

当時、核弾頭の運用が可能な兵器としては航空自衛隊ナイキJ海上自衛隊対潜爆雷アスロック陸上自衛隊の155ミリ榴弾砲、核地雷が考えられた。いずれも精密誘導兵器の発達によって必要性が無くなった分野である。

現在の東アジア軍事情勢及び核開発状況

日本の近くには南北朝鮮・中国台湾という分断国家が存在し、潜在的な危機が存在する。日本の核武装論において、仮想敵と想定されるケースの多い国々でもある。

北朝鮮

北朝鮮は原子爆弾の開発は完了したと見る向きもある。その場合、テポドンの改良型を用いれば日本に核兵器を投下可能とされている。朝鮮中央テレビは恫喝的な放送を繰り返しており、その中にはしばしば過激な表現が含まれる。ただし、これが北朝鮮政府の公式な発言や要求となって日本政府に伝達されたという事実は無く、国家財政が破綻に瀕した状況で有効性のある大規模な軍事行動を起こす能力があるわけでもない。

また、北朝鮮は移動式のスカッド600基、ノドン320基、ムスダン18基、固定式テポドン1号テポドン2号などの1000基前後の弾道ミサイルを保有している。特に、ノドンは中国のDF21の数倍の320基が日本に向けられており、2009年には小型核弾頭の搭載・東京への核ミサイル攻撃可能であることが報じられている[4]

北朝鮮のノドンミサイルに搭載可能な核弾頭を製造するには小型化(1t程度)が必要である。1994年のCIA報告では数tの原始的原爆が1-2個という事であったが、脱北核技術者の情報で2001年時点で高さ直径とも1mの原爆が完成しており、2009年現在米国の研究機関ISISの報告書によればノドン搭載可能な核弾頭3個、航空用核爆弾3個と予測されていた[5]

北朝鮮は現在稼動停止・無力化中の5MW炉(核兵器1個/年)のほかに、建設中断中の50MW黒鉛炉(同10個/年)と200MW黒鉛炉(同40個/年)を持っている。外交による解体も空爆もせず大型炉建設再開を座視すると北朝鮮の核生産能力は50倍になってしまい、数年でノドン320基が全弾核装備になるという見解もある[1]。2009年現在、6カ国協議で米ブッシュ政権のライス国務長官は(拉致問題同様)日本にとっての核問題の核心である大型黒鉛炉について解体どころか無力化対象からさえ外している。ただ、核弾頭の量産に必要な資金や材料の入手について、楽観的な予測から懐疑的な予測まで様々であり、核戦力の誇示による恫喝を行うのであれば、その能力の実証が不可欠となる。すなわち連続した核実験による弾頭威力や、弾道弾あるいはロケットの試射による投射手段の性能ならびに信頼性の証明である。北朝鮮はこの部分での行動が政治的、資金的、技術的問題から制限されており、実験や試射のないままの大量配備は疑問視されている。

北朝鮮の核開発の資金源は、国家財政からの支出のほか、日本のパチンコ産業に代表される北朝鮮系機関による不正送金や韓朝合弁事業収益、拉致被害者5人と引き換えに小泉政権から得た1兆円(詳細・朝銀信用組合事件)など、非合法の海外収入あったとされる。しかし弾道弾の試射以降の経済制裁によるGDPの減少は深刻であり、不正手段による外貨獲得も大きく減少している。核開発に投じる資金も減少しており、2009年の一連の核実験と弾道弾の試射においては、536億円と推測された国防予算を超過したとみられている。国防予算は1999年の1600億円の1/3程度、1994年の2400億円の1/5以下であり、核開発の進捗が疑問視される所以でもある。 その状況で予算を核開発や弾道弾に振り向けた結果、韓国ならびに在韓米軍に備えるべき通常兵器分野においては、更新はおろか訓練もままならない状況が続いている。しかし韓国への戦備としては首都ソウルを射程に収める大量の長距離砲、スカッドなどの短距離弾道弾を保有しており、日本以上に首都圏への一極集中が進んだ韓国への抑止力として機能している。

北朝鮮はソビエト時代に供与された射程600kmスカッドをリバースエンジニアリングすることで、90年代末に射程1300km移動式ノドン、2007年に射程3200km移動式ムスダンと弾道弾の射程延伸を進めており、最終的にはアメリカ本土に到達する弾道弾を保有することを目標としている。

ただし、その弾道弾を開発し、生産し、対米核戦力を構築すること、アメリカとの対決自体が目的というわけではなく、金日成時代からの経済の限定的開放や経済特区の設置など、日本との国交正常化や国際社会への復帰を画策したことからも、当初は「国際社会での発言力の維持」より具体的には「国際社会への復帰後においても韓国に呑み込まれないだけのプレゼンスの獲得」という目標があったと思われる。しかし金日成の死後、周辺国家との国交正常化や国際社会への復帰、あるいは体制の変更という決断を下せる人間がいなくなり、このロードマップは失われてしまった。結果、後継者と官僚は核開発を近視眼的に国家生存に必要な物資を獲得する手段に矮小化してしまい、そのことが現在でも継続し、問題解決の糸口を見失わせていると言える。

中国

中国は日本向けに使用できる能力を持つDF-21を推定60-80基保有している。なお、中国は核戦力を近代化し、生残性を高めることには熱心であるものの、量的には核より通常兵器への予算配分が圧倒的であり「基本的には核を使わずに通常戦力で目的を達する事を指向している」との見方もある。2009年に軍事費が849億ドルとロシアを抜いて世界2位となった状況においても、近代化すべき分野があまりに多岐にわたるためでもある。中国が現在運用するICBMは液体燃料による固定サイロ配備であり、充分なCEP(半数必中界)と弾頭威力を持った先制核攻撃に対しては脆弱となる。中国は1970年代から戦略原潜の開発に乗り出したが、完成した夏型原子力潜水艦は1隻しかない上に、搭載しているJL1ミサイルは改良型でも射程4,000km以下であり、核抑止力として機能していなかった。量的にも質的にも不十分な地上発射ICBMもあわせて、中国は長らく「核兵器保有国」であっても「核抑止力」を持たない状況にあったと言える。

経済の伸張とともにこの分野への開発資金が投下されるようになり、2007年頃から固体燃料移動式でMIRVを装備したDF31Aが就役している。移動式弾道弾は頻繁な移動によって位置を特定させないことで固定サイロとは比較にならない生残性を発揮する。ただし、移動することによる生残性の向上は移動車両(TEL)そのものの機動性、それを助ける道路網の構築があってのことである事に留意する必要性がある。また、核戦略において第二撃能力として機能するSSBNについては、オホーツクから米本土を狙える新型弾道弾を搭載した晋型原子力潜水艦を建造し、2015年頃に対米報復核戦力を獲得する予定であったが、2007年から2010年に掛けて配備するという計画は、潜水艦、搭載弾道弾双方の技術的課題から戦力化は大きくずれこんでいる。

毛沢東による「核戦争を辞さず」の発言は「核戦争で先進国と共倒れても、生き残った国民の数で勝るから復興速度も速く、故に核戦争後の覇者になれる」というもので、このような発言を真に受ける限り中国相手に核抑止は成り立たない事になる。中国の大規模な紛争の例としては台湾との数回の軍事衝突、中ソ戦争、中越紛争が挙げられるがいずれも地域紛争であって核兵器を使用する局面には至らなかった。これは核兵器国はもちろん、非核兵器国が対象であっても核兵器国の支援を受けることによる核の傘が機能することを示している。ただし、これは全面核戦争を覚悟するような致命的な国家利害の衝突において、核戦力の格差を理由に譲歩することはないという毛沢東の発言を否定するものでもなく、現役将官による同種の発言は21世紀になっても続いている。

韓国

韓国は1970年代に米国の圧力により一旦は核兵器開発計画を放棄し、「朝鮮半島非核化に関する共同宣言」を行っている。しかし1994年に北朝鮮の核開発疑惑があり、米国は北朝鮮の爆撃を検討し、ソウルでは市民の大規模な避難が行われるなど朝鮮半島での戦争の危機が高まったことなどから、その後韓国政府はNPTに違反する独自の核開発を検討した可能性がある。

2000年1-2月にNPT(核拡散防止条約)に明らかに違反した核燃料濃縮実験を科学者が極秘で行ったことを2004年になって韓国政府は認めた(2004年9月3日の読売新聞によると、その高濃縮ウランは兵器級の90%に近い濃縮度に達していたとされる)。そのためIAEAは検査団を韓国に急行させ強制的な査察を行っている。韓国政府は実験があくまで平和利用目的であることを主張したが、IAEA内部では疑義が出ており、専門家は核兵器レベルのウランを醸成するレーザーを使用したその技術を民生利用したとは信用し難いと主張している(2004年9月2日のBBC NEWSより)。

現在の韓国政府は公式には核兵器開発の検討などは否定している。しかし韓国の世論は核兵器開発に賛成が多く、東アジア研究院の2004年7月調査で核保有賛成が51%。2006年の北朝鮮の核実験後は65%が核保有賛成で、賛成しないという回答は32%だった。

なお、核兵器の運搬手段になり得るものとしては、韓国は弾道ミサイルは保有しないものの、F-15K戦闘爆撃機巡航ミサイルを保有しており、特に、玄武III Cは日本のほぼ全域と中国沿岸部の大半が射程内に入るとみられる。

また将来、もし北朝鮮と国家統一を果たした際に、北朝鮮が保有していると見られる核弾頭を継承し核保有国となる可能性が懸念されている。

台湾

台湾の複数の軍関係者らによると、台湾は中国が核実験に成功した1964年以降、当時の蒋介石政権が核開発に着手したが、計画を知った米国は1976年、台湾に圧力をかけ、計画はいったんは中止されたとされる。しかし、1980年代後半になり、蒋経国政権下で開発が再開され、同研究院内に1987年、秘密裏に小規模核実験施設が造られプルトニウム抽出実験などが行なわれたが、米国に亡命した同研究院幹部が1988年1月に行なった証言などをもとに、米政府が李登輝政権時代に施設を閉鎖に追い込んだとされる。

陳水扁政権は核開発を完全否定しIAEAの査察も受け入れている(以上2004年10月14日の毎日新聞より)。

核兵器の運搬手段になり得るものとして、台湾は射程距離1,000キロ、弾頭重量400キロの巡航ミサイル雄風2Eを保有している。

国際政治的には中国が台湾は自国の一部であると主張しており、その中国は近年の著しい経済成長に伴い軍事力を急速に増強し、また、アメリカに対する核抑止力も高めていることから、台湾がもし核開発を始めれば中国と極度の緊張を引き起こすため、台湾の現在の親中国政権下では核武装の可能性は低いと見られる。

核武装賛成論の主張

主な核武装論者

核保有議論の例

石原慎太郎と田母神俊雄の対談
12345

核武装主張の理由

核抑止力の保有

  • 日本が核武装することによって、主に中国、北朝鮮、またはロシアに対する核抑止力が得られるとするのが、核武装論の中核である。
    • 日本の狭く都市部に人口が密集した地理的条件から中・露など広大な国に対する核抑止力を否定する意見もあるが、それは相互確証破壊の概念と核抑止力の概念の混同である。
    • 核抑止力とは、敵の先制攻撃によっても生存可能な報復用の核兵器を持つことにより、敵の核攻撃を抑止する力である。
      • 核によって攻撃しようとする側は、核攻撃によって得られる利益が不利益を上回らなければ攻撃できないから、報復用の核を持つことによりその不利益の割合を増大させれば、核攻撃の動機を抑止出来ることになる。そして核抑止力の大きさは反撃可能な核の量に比例する。これが核抑止力の基本的な考えであり、その核抑止力が敵対しあう2国間で最大、すなわち国家の存続が不可能となった状態が、相互確証破壊である。
      • 日本が核武装するとしても中国などに対し相互確証破壊に至るまでの核戦力を保有することは困難であり、日本同様狭い国土で一定の核抑止力を構築しているイギリスやフランス、またはイスラエル程度の核戦力の保有が現実的選択肢と思われる。

「核の傘」への疑問

  • 米国政府は公式には同盟国への核の傘を一度も否定したことは無く、今後も核の傘の提供を維持することを再三明言しているが、 それは同盟国や仮想敵国に対する外交戦略として当然の政治的アピールであり、実際に同盟国が核攻撃を受けた場合、米国が何千万もの自国民が死亡する危険を覚悟して核による報復という軍事的選択を行うかどうかは、全く次元の異なる問題である。
  • 核武装論と言っても考えは多様であるが、共通して挙げられる核武装の必要性の最大の理由は、「たとえ日本が核攻撃を受けたとしても米国は核報復はしない」と日本に核を向けている国が判断する可能性があるという、核の傘懐疑論である。このため、日本自身がある程度以上の核戦力を保有することによって、「日本を核攻撃したら確実に日本から核反撃される」と知らしめる効果があるとするのが一般的主張である。
  • 日本の政治学や安全保障などの専門家の間では、核武装を主張する者はごく少数であり、反対派が大多数である。日本の核を向けている国が「日本を核攻撃すれば、米国が核によって反撃する可能性がある」と判断してくれなければその国に対して核の傘が機能しないのが事実であり、米国による核報復を想定していても自国民の被害を顧みないような独裁者の存在も想定しなければならない。それは核武装を議論する際に留意すべき重要な点である。
  • なお、米国が同盟国に対して本当に核の傘を提供するかという議論は、米ソ冷戦時代から存在した。欧州においても大論争があり、米国が「欧州が核攻撃されたら米国本土からソ連に対し報復核による攻撃を行う」と説得したものの、欧州諸国は納得せず、米国によるより強い核のプレゼンス(核の傘)を求め、欧州を脅かしていたソ連の中距離弾道ミサイル「SS20」と対等のミサイルを配備するよう求め、結局米国は欧州諸国に中距離弾道ミサイル「パーシングII」を配備することになった(中西輝政編著『「日本核武装」の論点』参考)。
  • また、米国の核の傘に対する否定的考えは個人的見解ではあるが当の米国の政治家や学者からも出ている(伊藤貫著『中国の「核」が世界を制す』参考)。
  • ヘンリー・キッシンジャーは「超大国は同盟国に対する核の傘を保証するため自殺行為をするわけはない」と語っており、CIA長官を務めたスタンスフィールド・ターナー(Stansfield Turner)元海軍大将は「もしロシアが日本に核ミサイルを撃ち込んでも、アメリカがロシアに対して核攻撃をかけるはずがない」と断言し、カール・フォード元国務次官補は「自主的な核抑止力を持たない日本は、もし有事の際、米軍と共に行動していてもニュークリア・ブラックメール(核による脅迫)をかけられた途端、降伏または大幅な譲歩の末停戦に応じなければならない」と言う。
  • その他、以下の米国の要人、著名人が、米国の核の傘を否定する発言をしているという。

中国脅威論

  • 核武装論のほとんどは中国脅威論と並行して主張される。また中国脅威論の多くは米国の一極支配の終焉と同時に語られることが多い。
  • 米国は20世紀初頭から圧倒的な経済力と軍事力を背景に世界秩序を制御してきたが、経済においてはEUの通貨ユーロの台頭により、ドルの世界の機軸通貨としての地位低下が確実視され、軍事においては中国の経済成長に伴う軍事力の拡大によって米軍の影響力の低下が予想されている。
  • 中国の軍事支出の伸びは19年連続2桁パーセント増で、2007年の時点で5兆円超と公表されているが、米国防総省は実態はその3倍になると指摘している。また中国は2015年までには晋型戦略原潜を5隻就役させ、それと並行して固体燃料移動式ICBMDF-31を配備する予定である。それらの核ミサイルは発見困難で先制攻撃で破壊できない。ゆえにMDが有効性を持ち得ないという前提において現在米が保っている核戦力による圧倒性は低下するだろう。
  • かつて米国はソ連との冷戦期において同盟国を保護し、やがてソ連を崩壊に追い込んだが、中国相手に同様の構図は成り立たないと考えられる。ソ連は経済的には貧弱であったが、中国の経済力はやがて米国を上回るという予測もある[2]。そして冷戦期の米ソの経済関係は極めて希薄であったが、米中の経済関係は極めて緊密であり、米国の国別の貿易額では、中国は2004年に日本を抜いて3位になっている[3]。また米国債の保有額では2007年で日本は1兆ドル弱、中国が約7000億ドルと推定される。
    • 今後も中国の経済発展により、米中の貿易額は増加していくのは確実である。それに対して日本は人口減少により対米貿易額は減少すると考えられる。即ち米国経済にとって中国の価値が日本の価値を上回れば、米国が中国の脅威から日本を守ろうとする動機が希薄になる。
    • 実際に中国が経済的、軍事的に超大国となった場合、米国は台湾や日本を守るため中国と戦争は出来ないという指摘は米国の学者からもなされており、ハーバード大学スティーヴン・ウォルトシカゴ大学ジョン・ミアシャイマー、そしてサミュエル・P・ハンティントンなどは、米国が東アジアでの覇権を放棄して中国との力関係を保つ「オフ・ショアー・バランサー戦略」という選択肢を主張している(中西輝政編著『「日本核武装」の論点』より)。
    • リチャード・アーミテージの講演では米国一極超大国時代は2020年以降に不確実になる可能性があるという認識が示された[4]
  • その他、予測される核武装によるメリット
    • 国際的影響力の大幅な増加が期待される。
    • 米国の被保護国からの脱却を目指せる。核武装を行っている・または進めている周辺国(中、露、北朝鮮)への抑止力を米国に依存(核の傘)する現状が、日本の自主外交力を低下させているという考えが背景にある。
    • 複数国家間の勢力均衡維持が期待できる(勢力の均衡が平和をもたらすという考え)。

核廃絶への疑念

  • 核保有国が果たして核を廃棄するのか、という疑念を日本の核武装の根拠とする者もいる。
    • 小林よしのりは、広島と長崎の原爆資料館に行って核の被害の現実を目の当たりにしたことを強調しつつ、「核保有国が核を放棄するはずがないという現実から目をそむけたくはない」と発言し、日本の核武装を唱えた(「新ゴーマニズム宣言」)。

核安全保障論の種類

単独核保有論

日本が独自に核兵器を開発し、運用すべきであるとする考えである。一般に「核武装論」とはこの単独核保有論を指す事が多い。

利点
  • 発射に関して、米国などの干渉を受けないため、信頼性の高い核抑止力を持つことが出来る。
  • 安全保障において日本の自立性が飛躍的に高まる。
  • NPT改革などと違い時間のかかる多国間交渉が不要である。 
  • 共同核の場合は先制攻撃ができないが、単独核保有は先制核攻撃が可能であるため、他国を核恫喝可能(ただし、核恫喝による日本国家意思の強要は明白に違憲である)。
問題点
  • 非核三原則をはじめとするこれまでの政策の大幅転換が必要であり、日本が加盟している核拡散防止条約を反故にせざるをえなくなる。
  • 外交的には、これ以上核保有国を増やさないとする核拡散防止条約(NPT)加盟国約190カ国、および核武装した仮想日本の核兵器射程圏内に入る国々の反発が予想される。大量破壊兵器不拡散を国家基本安全保障政策に掲げる米国にとって、NPT体制こそがパクス・アメリカーナの安定維持装置であり、それに反した政策をとる国(かつてのイラクフセイン政権・イラン・北朝鮮など)に対して制裁を行う急先鋒となっているため、同意を得るのは非常に困難。
  • 米国の経済・金融制裁に対して日本は脆弱である。また、米中露による海洋封鎖・臨検や、核施設空爆の危険を乗り越える方策の案出が必要。

米国の核兵器配備要請論

欧州では欧州を射程に収めるソ連のSS20配備に対して米国がパーシングII配備で対抗し、結局中距離核戦力全廃条約によってSS20とパーシングIIが両方撤去された歴史があるので、これと同じように米国に中距離核ミサイルの配備を求めて北朝鮮や中国に対抗しようとするもの。

利点
  • 欧州で一度相互核ミサイル撤廃に成功した実績がある(中距離核戦力全廃条約)。
  • 欧米世論に対して、説明が容易である。
問題点
  • 抑止力としてみるならば、日本に配備されようと発射の権限がアメリカにある以上、究極的には「核の傘」の信頼性の問題でしかない。
  • 冷戦期のNATO正面のような差し迫った軍事的緊張が中ロとの間に無い現状の日本において、日本向け(あるいは日本が標的と類推される)中距離弾道弾を撤去させなければならない喫緊の理由が無い。当時の欧州では軍事的緊張の緩和、軍縮、核廃絶を求めたデモがしばしば行われ、パーシングIIの配備はそれを受けての政府の公式な要請であったが、現在の日本において国民はそのような危機感を仮想敵に対して抱いていない。
    • 基本的に、「相互ミサイル廃棄」に持ち込む方便であり、予算を投じて配備を推進しても相互撤廃交渉が成立すれば、配備したばかりのミサイルを廃棄する必要があり、費用の妥当性、効果、米国とのコストの分担などで解決すべき問題がある。
    • 北朝鮮の瀬戸際外交における核恫喝には効力を発揮しない。

日米共同核保有論

最近、田母神俊雄などは核兵器シェアリング(Nuclear Sharing)の導入を提言している。アメリカがNATO加盟国(ドイツ、オランダ、イタリア、ベルギー)に提供する核武装オプションである。平時はアメリカ軍が核兵器を保持・管理しつつ相手国と核兵器の使用と管理の訓練を行なう。戦時になったとき、アメリカ軍が相手国に核兵器を提供し、相手国は核武装する。

利点
  • この方法には開戦後に核兵器が提供されるという点で開戦前まではNPT条約に抵触しないという特徴がある。
  • NPT改革のような多国間交渉が必要なく、究極的にはアメリカの同意を取り付ければよい。
問題点
  • 非核三原則を放棄するという大幅な政策の転換が必要。
  • NATOの核シェアリングはあくまで戦術核兵器の運用であり、その目的は、戦時には不足こそすれ余ることなどない戦術核兵器投射手段の確保にある。日本が考える核抑止力の構築とは目的が違うし、アメリカが戦略核兵器の供与を意図したことはない。
  • そのNATOの核シェアリングにおいても、核の使用はNATOの総意とされるもので、最終的な決断は核兵器国にある。

NPT改革論

国連改革で常任理事国を増やそうという提案がなされているが、NPTを脱退して核武装するのではなく、NPT内に留まりながら、他の非核諸国と連携してNPTのルールを変革してNPT公認の核保有に至ろうとする考え方。

利点
  • NPTを崩壊させる場合よりは、米国の賛同を得られ易い。
  • NPTを崩壊させる場合よりは、米中露に核施設爆撃や経済封鎖など制裁の口実を与えにくい。 
問題点
  • 現NPT体制に比べて核保有国が増えてしまうので、米国など核兵器国をはじめとする核拡散に反対する各国の賛同を取り付けることが極めて困難。
  • 非核三原則を放棄するという大幅な政策の転換が必要。
  • 国連改革が進まない様に、複雑な多国間交渉が必要で時間がかかる。

その他(核抑止以外の核安全保障論)

北朝鮮に核抑止の効果は無い。すでに経済的に破綻し、自助努力による国家再建が不可能な北朝鮮において、核は短期的な要求を飲ませるための安易な手段になっている。アメリカ政府が封鎖した20億円の資金の解除を要求するほどに困窮している状況で、常識的に考えて数兆円の予算を必要とする対米核戦力の構築など不可能であり、その核戦力もない北朝鮮が「核を保有する」アメリカを始め、中国、ロシアの意向を無視している以上、日本が核武装したところで拉致問題や核開発において日本の要求をどのように飲ませ、効果を挙げるのかについて、確たる分析は無い。

米ソ核抑止という有名すぎる例があるために「核には核抑止」が半ば常識になっているが、「実際には核抑止は常に成立するわけではない。(核ボタンを押せば相互に損する場合・失う物がある者にしか抑止が効かない)」。

ミサイル防衛

本論に際しては核武装を主張する側によって否定的解釈がなされていることから、利点と問題点を逆に記述する。

  • 問題点
    • 迎撃成功率は10-50%と見積もる報道がある(拳銃弾を拳銃弾で撃ち落とそうとするに等しい)。
    • 2009年テポドン発射誤報事件で探知ならびに連絡に問題が発生している。
    • 同時迎撃数が少なく、300発以上を保有する北朝鮮の飽和攻撃に対処できない。費用対効果が疑問視される。
    • 探知、迎撃、報復は一連の行動とされるべきで、報復の要素を持たない日本においては抑止力となりえない。MDの特徴はその純防御性にあり、国家主権ないしは国家意思を遂行する為のバックボーン(=攻撃力)の代用にはならない。MD単独では、漁船拿捕、船員射殺、領海海底資源侵略、島に対する上陸占拠、国民拉致など、じわじわした侵略に対する事後的な排除又は事前的な予防の手段にはなりえないでいるということは現実が証明している。また、大規模な侵略や攻撃に対する抑止は、明らかに、MDよりは米軍による攻撃力に依存しているが、当然米国はその攻撃力の実際の行使を避けようとするから日本の外交的な能動性はゼロに近い状態に押さえ込まれる。

(注意:本稿はMDオンリー主義に対する否定であり、MDそのものに対する否定ではない)

  • 利点
    • 現状の防空システムの更新であり、政治コストが最小の選択肢となる
    • その最小の政治コストによって、戦略兵器への対抗という従来の日米関係では行われなかった分野での協力体制を構築できる。
    • クリントン、ブッシュ、オバマと政権が変わっても計画が中止されることはなかった。むしろ継続して予算が投下されたことによって、現実的な弾道弾対処能力が確保されつつある。一方の北朝鮮は六者協議の枠組みのなかに押さえ込まれ、核保有国としての認知をいまだ受けることはできず、また経済制裁によって弾度弾の開発や配備のペースは当初予想より低い水準に留まっている。むしろ多弾頭化やデコイなどへの対策として構想されたMKVが計画延期となっている。欧州へのMD配備がアメリカにとっての同盟国への責任となっている現状においては、かつて危惧された「計画中止」はありえず、仮想敵の弾道弾勢力の伸張のペースが遅い状況においては相対的な優位を期待できる。

MDの真の問題点とは、技術的難易度や予算、運用方法などではなく、MDの「まったくの防御兵器が国運をかけた戦略兵器の攻撃を無効化する」というコンセプトに対する反プロパガンダにある。現代においてなお20年近く前の湾岸戦争での迎撃率を引き合いに出したり、あるいはSDI計画当時の技術者による「ミサイル迎撃の困難」を唱える例もあるが、MDとはすでに10兆円を超える開発費を10年以上にわたってつぎ込まれており、節々において事業の妥当性や達成度合いが検証されている。再三再四、中国、北朝鮮、ロシアがMDを批判し、中止を求めながら自らも弾道弾迎撃手段の確保を目指している事実は、MDの有効性の証左でもある。

しばしばMDは矛と盾の関係に喩えられ、矛としての核攻撃能力(あるいは報復能力)が不可欠と説明されるが、日本においては矛の必要性は重視されない。冷戦期から一貫して攻撃を米国に依存してきたためであり、MDが使用される状況、すなわち日本への核攻撃が行われた以上、アメリカは自らの覇権国家としての存在を証明するために必ず報復を行う必要があるからである。さらには日本にとってのMDの真価とは「日本を攻撃するコスト」を暴騰させることにある。中国であっても北朝鮮であっても、保有する弾道弾は米ロが保有するような高性能なMIRVではない。単弾頭か、中国であっても3MIRVs程度であり、日本がMDを推進する状況において攻撃の成功率を維持しようとするのであれば弾道弾の増勢や、さらなるMIRVの開発を進める以外に対処法が無い。しばしば指摘される「MDの対処能力の限界」であるが、逆に言えば日本を攻撃しようとする限りは必ず飽和攻撃を図らねばならないということでもある。大量の弾道弾の生産、配備、そして即応体制の維持は膨大な予算を必要とする。PAC3やSM3が高価で、中国や、ことに北朝鮮が西側に比較して安価に兵器を生産できるとしたところで、国民負担という面で見れば日本人にとってのMDは、中国人や朝鮮人にとっての弾道弾よりも安い。

また飽和攻撃においてもPAC3のレーダーは9目標、アーレイバーク級イージス駆逐艦で12目標、タイコンデロガ級イージス巡洋艦で16目標にミサイルを同時誘導する。つまりPAC3が18高射隊171目標、こんごう級までのMD対応が完了すれば72目標。ほかに横須賀を母港とする第七艦隊の第15駆逐隊には2隻のタイコンデロガ級巡洋艦と7隻のアーレイバーク級駆逐艦が所属しており、これがすべてMD対応となれば116目標への「同時誘導」が行われる。海上配備MDにおいては2隻で日本全土をカバーできる一方で、PAC3は拠点防御しかできないし、第七艦隊の配備状況にも拠るために単純な足し算はできないが、少なくともミッドコース迎撃においては日米同盟によって100発以上の迎撃を受けることになる。攻撃側が1~2発の弾道弾の着弾による恫喝的攻撃を望んだとしても、まずもって着弾を期待するために3桁の弾道弾あるいは核弾頭が必要なのだから「弾道弾の大量使用」という対米全面核戦争を覚悟が必要となる。 MDの推進は日本への戦争の可能性への過剰な投資を強要することになり、MD以前に保持していた日本への核攻撃の効果(被害)を求め続ける限り、明確に軍拡競争を行うことになる。従来、ほぼすべての軍縮交渉においては、最終的に相互の同種の兵器の削減・廃棄が行われてきたが、日本が「矛を抜きに」MDを推進する限りはまったくの「防御兵器」であり、その開発、生産、配備、数量、性能に他国の干渉を受けることは無い。日本は、仮想敵国のMD配備に反対しないからだ。

極論ではあるが、20億円のSM3を1000発揃えても2兆円でしかない。

敵地攻撃

戦闘機や巡航ミサイルで、攻撃国が弾道弾を発射する前に破壊する方策。船田中額賀福志郎石破茂歴代防衛庁長官が「憲法9条の専守防衛は座して死を待つ規定ではない」、「日本への攻撃予告と(弾道弾への燃料注入などの)攻撃準備があれば、発射前に攻撃破壊するのは個別自衛権の範疇」と国会答弁している。

北朝鮮の2006年テポドン試射でクローズアップされ、2009年テポドン発射誤報事件でミサイル防衛の余りに短いリアクションタイムと実効性に対する疑問が漸く政界でも認識されるようになったため、山本一太衆議院議員などが推進している

  • 利点
    • 憲法9条の在来の政府見解の範囲内であり、核拡散防止条約や日米原子力協定を反故にする「日本核武装」や憲法9条解釈変更を必要とする「核施設先制空爆」に比べて、政治的ハードルが低い。
  • 問題点
    • 政府が言及した「敵地攻撃」は固定式発射台の液体燃料ミサイルを前提としたものであり、TELに搭載される移動式弾道弾に対してはより高度な対応が必要になる。
核施設解体強制執行

湾岸戦争においてミサイル防衛敵地攻撃(スカッド狩り)も失敗したが、イスラエルはあらかじめイラク原子炉爆撃事件でイラクのプルトニウム生産核施設を「強制解体」しておいたために、有事に、エルサレムに降ったスカッドは核弾頭ではなく、通常爆薬弾頭で済んだ。そのために「実戦で核被弾回避の有効性が実証された方法」とみなされている。

ただし、イスラエルは国連の武力制裁決議を取らずに空爆を行ったので非難を浴びた。しかし、安保理武力制裁決議か平和のための結集決議(国連総会2/3再可決で常任理事国の拒否権をひっくり返せる)で「核施設限定の武力制裁・強制解体」に国連の「錦の御旗・判決」を得れば国際社会の非難を浴びることはなく、憲法9条も学説によっては国連軍参加までは認める学説もあるので、国連武力制裁決議さえあれば(衆参2/3決議と国民投票の必要な)条文改憲ではなく(学者の答申か、国民投票があれば実施可能な)解釈改憲で核施設空爆を行っても合法である。

また、米国も1994年、2006年、2007年と三度にわたり北朝鮮の核施設空爆・巡航ミサイル攻撃を検討している。

  • 利点
    • 技術的にはミサイル防衛や敵地攻撃のような無理がなく現実的で、実効性が高い。
    • 核武装に比べても北の大量核保有を妨害すれば、核の撃ち合いになるリスクがない。
    • 安保理武力制裁決議ないし平和のための結集決議で武力制裁決議を得て、日本が北朝鮮の、NATOがイランの核施設を空爆すれば核拡散防止条約の箍を締め直せる。
    • 日本は地理的に核施設空爆をやっても冷戦に持ち込める公算が大きい(北朝鮮も日本も充分な揚陸艦を持っていない)。
    • 仮に報復核攻撃があっても2009年現在、北朝鮮のプルトニウム総量は50kg以下、核ノドンは3発前後と見られており、まだミサイル防衛で対処可能な範囲である。毎年270kg、核兵器100発以上に相当するプルトニウムの生産が可能な、建設停止中の大型炉の建設再開・稼動を指を咥えて傍観して、320基の核ノドンを配備されたら、数十-100発の多数同時攻撃を完全に防ぐ手段は存在しない。
  • 問題点
    • 米軍が韓国の都合に引きずられ、あてにならないため、日本が自力で北朝鮮核施設解体の強制執行を目指す場合、憲法9条1項は部分的放棄説(通説)によれば「国際紛争を解決する手段としては戦争放棄」は「国家意思強要戦争(私闘)」の放棄であり「自衛戦争(正当防衛)」「国連の政治的・司法的解決の強制執行(強制執行)」は放棄していないとなっている。なので、武力制裁国連軍参加までは(衆参2/3可決と国民投票の必要な条文改憲ではなく、法学者の答申か国民投票のみで実行可能な)解釈改憲で可能であるが、左翼政党と公明党の反発が予想される上、安保理は中露の拒否権発動が予想され、平和のための結集決議総会2/3可決で中国の拒否権を覆すには、ODAによる途上国票買収合戦で中国に競り勝たねばならず、政治的・財政的にハードルが高い(もっとも核被弾損害に比べれば安上がりである)。
    • 米軍が核施設空爆をやった場合、北朝鮮はソウルに報復砲撃、日本に3発以下の報復核攻撃を行いうる。実際1994年に米国が空爆を中止したのは、「(報復に)ソウルを火の海にできる」という北朝鮮側の恫喝に金大中が屈した結果である。
    • 米大統領としては、日韓を助けるために北朝鮮の大型炉を空爆して、報復に不測の事態(=ソウル砲撃や東京ミサイル攻撃)を招いて、日韓に恨まれては損なので、日韓に要請されないと北朝鮮の大型炉空爆ができない。
    • 危険地帯に首都を置いている韓国が悪いが、米国の勧告で盧武鉉政権は遷都を推進したが、「明文化されてない憲法違反」という前代未聞の違憲判決で遷都は挫折して、規模縮小した分都になってしまい、相変わらず1000万人以上が北朝鮮砲兵の人質状態にあり疎開は進んでいない。

日本核武装の実現性

冷戦終結直後の日本には軍事的対立状態にある国家は無く日米同盟も継続していた。そのため、政府も世論も「核を保有しなければ対処不可能な脅威」が現在の日本にあるとの認識を持っておらず核武装に対しての政府、世論のモチベーションは非常に低い状態にあった。

しかし北朝鮮のミサイル発射、核実験が続く中で北朝鮮が核開発を中止する見込みが全く無いため、一部核武装論が主張されている。

経済的技術的問題

伊藤貫によれば、「必要最小限の抑止力でよしとするならば、日本にとって高いハードルではない」とし、伊藤の試算によれば核弾頭(原爆)付き巡航ミサイル200-300基と、専用の駆逐艦及び潜水艦約30隻の建設と運用にかかる軍事予算は年間1兆円となっている。この場合の「必要最小限の抑止力」とはケネス・ウォルツ核戦略理論に基づくもので、具体的には中国東部の主要都市への対価値攻撃力(カウンターバリュー)を意味する。ただし、この核戦力でどのような段階まで中国の核攻撃の意図を抑止できるのか、そもそも「必要最小限」の定義とは何かについての具体的な議論はないため、国(防衛省)による本格的な抑止力の算定が行われた場合には「必要最小限」とされた規模、予算は伊藤個人の試算に比べて大きく上下する可能性が高い。

核実験についてはガンバレル方式だけでなく、インプロージョン方式も現代の技術なら起爆装置臨界前核実験だけで十分とする意見がある(イスラエルと南アフリカは起爆装置の実験だけで原爆を開発したという説がある)が、複数回の核実験が必要という説の方が多い。

核実験は技術的な問題以上に、政治的に「核武装の実証を公言」するため必須となる。1970年代初頭に当時の防衛庁の行なった研究では「国内に実験場が無い」ことを核武装断念の理由としている。これを本土から離れた無人島地下核実験を行えば良いという意見もあるが、現実問題としてそのほとんどが国定公園である離島を核実験場にすることは固有種絶滅危惧種生態系など環境への深刻な影響を与える。これは核実験の放射能の影響云々以前に、核実験場という施設の建設や、維持する人員によって惹起されるものである。また、地下核実験を行っても問題が無い地層地質であるかの研究はまったく行われていないため、候補地そのものを探すところから始めなければならない。

巡航ミサイルは開発の前提となる諸技術は全て備えているので比較的短期で開発は可能であるとされる。ただし、巡航ミサイルの長射程は核弾頭の小型化(トマホークに搭載されたW80で290ポンド)によって達成されたものであり、潜水艦を発射プラットフォームとする限りは、魚雷発射管を始めとする寸法、容積、重量の制限を受ける。

米英仏露中のような戦略原潜水爆の保有を求めるとなると、開発のハードルはより高いものとなる。

内政的問題

非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)ならぬ非核四原則(三原則に加え「議論させず」を追加)の状態にあると言われるほど、日本人の核兵器に対する嫌悪は強い。これは原子力発電政策や、米海軍の原子力艦艇の寄航とは一線を画している。その一方で核を持ち込ませないための方針については、厳正な適用すらアメリカに求めることができない自己矛盾にある。

ただ、1998年の北朝鮮の弾道弾の試射によって費用の問題から疑問視されていたMD配備が一気に加速したり、2001年の同時多発テロの直後にはテロ対策特別法が、2002年に拉致被害者が公式に確認された後に経済制裁に関する諸法が速やかに立法されたことから、何かの事由で世論が大きく動く可能性はある。しかしMDの配備の目処がついた2006年に北朝鮮の核実験が行われた際は(MD配備や経済制裁を超える)具体的な新たな対抗措置をとれという世論にはならなかった。

外交的問題

  • 大半の核武装論者の考えで共通するのは、日本は最大の同盟国である米国の理解を得て核武装するという点である。これは日本の核武装が決して単独防衛を目指すものでなく、米国と同盟関係を維持しながら自主的な防衛力を強化するという考えである。また日本が核武装を試みれば、周辺国の反発が予想され、国際連合安全保障理事会国際連合憲章第7章に基づく対日制裁決議案が提出される可能性が高い。だが、あらかじめ米国の理解を得ていれば安保理における米国の拒否権によって制裁決議を否決でき、核開発や原発に必要なウランを引き続き輸入できるという主張もある(月刊核武装論[5]参考)。ただし、アメリカ一国では日本の原子力発電所の需要を満たすだけのウランの供給、再処理は困難である。
  • 米国が日本の核武装を承認する可能性
    • 基本的に米国は日本の核武装に反対である。それは日本が核武装すれば核拡散防止体制が崩壊し、核のドミノ現象や核拡散が生じ、それにより核戦争及び核技術流出による核テロの危険性が格段に高まることでパクス・アメリカーナ終焉の引き金となる懸念があるからである。
    • 米国が日本の核武装を容認する可能性は低いが、米国を射程に入れない核攻撃手段に限定するのなら可能性がある。安保理で対日制裁決議案が提出された場合は日米の経済的繋がりを理由として拒否権の行使する可能性が無いわけではないが、経済的な得失とアメリカの国家戦略とのすりあわせがあってのことなので、日本は自国の核武装がアメリカの国益にとって必須であることを提示する必要性がある。
      • 即ち、日本の核武装が、核不拡散以上に米国と日本との共通の国益として認識されれば、アメリカの援助による核武装の可能はある。
    • 現状、アメリカは核の不拡散を至上命令としている。NPTの維持に努力を払っており、アメリカ主導のNPTが存在する限りは日本への核武装の支援は現実的ではない。それが行われるとすればNPT体制の崩壊後のこととなる。
    • NPTが崩壊した後であれば、核による脅迫(ニュークリア・ブラックメール)をアメリカの同盟国が受けた場合であっても、米国は当事国の核武装を支援することで、事態を当事者間の交渉に限定し、核攻撃による自国民が犠牲になる危険を回避できる。
      • ただしこれらはすべてNPTの崩壊、あるいはアメリカが核不拡散を断念した後の仮定であり、その場合には日本の核武装の有無と無関係に多くの不利益を蒙っていることが予想される。現実の日本はアメリカと共にNPTを支持しており、また、核の不拡散によって得られる以上の国益をアメリカに与えることも不可能である。
  • ただしアメリカの同意を取り付けたとしても、それが他の二国間の関係に影響を与えないというわけではない。アメリカが日本に核技術を供与することと、第三国が安定して日本にウランを供給する義務を負うことは別問題だからである。
    • つまり、日本が核武装後においても現在のような経済大国としての地位を占めるのであれば、アメリカ一国ではなく世界の殆どの国家に対して、日本の核武装の正当性を認識させる必要がある。これは二国間の問題である日米の技術供与問題よりも格段にハードルが高い。
  • 核拡散防止条約は第10条第1項で条約脱退の権利を容認しているが、それは「条約の対象である諸事項に関連し異常な事態が発生し、自国の至高の利益を危うくしているため」でなければならず、脱退を宣言するに際してはその「異常な事態」についても明記しなければならない。(条約改訂は第8条に規定されているが、これは提案を全加盟国に配布し3分の2以上の審議入り承認と過半数の賛成を得る必要があり、更にハードルが高い)

核兵器を戦力化させる手段

核爆弾を搭載する兵器については、弾道弾、巡航ミサイル、爆撃機の選択肢が考えられる。また兵器のプラットフォームとしては、地上基地・水上艦・潜水艦・航空機などが考えられる。なお敵の先制攻撃に対する生存性を高めるために複数の運用手段を確保するのが望ましい。

弾道ミサイル

日本はM-Vロケットに代表される固体燃料ロケットの技術を保有していることから、弾道ミサイルの基本的な技術は有していると考えられる。

宇宙ロケットと弾道ミサイルの主な違いは誘導システム、そして再突入体の有無である。宇宙ロケットは地上施設からの電波によって誘導される点が支援を受けずに自律誘導する弾道ミサイルとは大きく異なる。そのため弾道ミサイルを開発するならば誘導システムの新規開発は必須である。再突入体(RV)については、日本はOREXなどで大気圏再突入の実験を5回行ない、慣性航法装置のテストや空力加熱のデータなどをテレメトリー収集した。当初計画においては実験体の回収までを目標としていたが回収に成功したのは2回であり、さらには情報収集の目的であった宇宙往還機HOPE計画の事実上の凍結もあって、軍事転用できるだけの技術的蓄積は無く、今後も同種の再突入体に関する計画は無いことから、継続しての研究、あるいはデータの取得も見込めない。核弾頭を搭載した再突入体を開発するならば核抑止力としての有効性持つだけのCEPを有するRVをJAXAとは別に行う必要がある。

固定基地の弾道ミサイルは先制攻撃で狙われやすく、生存性が低い。これは「ソビエトに近い島国」であるイギリスも陥ったジレンマで、空中発射弾道弾を開発しようとして失敗し、ポラリスを導入した経緯がある。後年に実用化された車両移動式ミサイル(TEL)を僻地で運用する方法も考えられるが、日本における僻地とはすなわち国土の7割を占める山地であり、その山岳地における狭隘な道路事情での数十トンのTELの運用は非常な困難を伴う。

ちなみに、兵頭二十八は山岳地帯にミサイル基地建設を提案している。これは敵の先制核攻撃があっても、よほどCEPが高くなければ山自体が盾になるためミサイルの生存性が高まるという考えであるが、周辺住民の反発は確実で政治的難易度が最も高い運用方法である。

もし、日本が核弾頭を搭載した弾道弾で核抑止力を構築するというのであれば、潜水艦発射弾道弾(SLBM)の開発と発射プラットフォームとしての戦略原潜の開発がもっとも現実的となる。

攻撃機・爆撃機

国産開発する場合、日本がライセンス生産したF-15要撃戦闘機や、日米共同開発のF-2支援戦闘機の開発の経験があるとはいえ、国産のエンジン開発能力がネックとなっている(米ロのエンジンは推力18tだが、日本は5tエンジンを試作している段階)。

国防の重点政策として資金を投入しても、米国が保有するような、敵の防空網を潜り抜けて核弾頭を目標に確実に命中させるようなステルス戦略爆撃機(もしくはそのような戦略用途に使用できる航空機と搭載兵装の組み合わせ)の開発には多年を要する。国産大型エンジンとB-2爆撃機のようなステルス性を獲得しても、その時点では更なる軍事技術の発展が見込まれる。戦略爆撃機は高価であり、効果的に運用しているのが米国だけであり、専守防衛政策面からも予算面からも日本が1機2500億円もするB-2爆撃機のような大型の戦略爆撃部隊を保有するのは困難である。

日本が運搬手段として航空機を使うのであれば、長射程の巡航ミサイルと搭載母機の組み合わせも考えられる。しかし航空基地は敵の先制攻撃の標的になるため航空機を核抑止に用いるのであれば、かつてアメリカ戦略空軍が行っていたような核パトロール(核弾頭搭載機の24時間空中待機)を行う必要があるが、極めて高い経費を必要とする。

戦略原潜(SSBN)

原潜は隠密性に優れ、衛星で発見しにくいため生残性が高く、報復戦力として優れている。但し固定サイロより自己位置計測誤差が大きく命中精度が悪いため、核攻撃に対する防護を施された軍事目標(核爆発の熱線、衝撃波に耐えうる硬化サイロに格納されたICBMなど)を攻撃する第一撃には向かない(ただしこれは報復のみを目的とした場合は無視してもよい要素となる。例を挙げるならイギリスは核戦力を戦略原潜搭載の弾道弾のみに依存している)。陸上配備の場合のような受入れ自治体を探す立地難がない。最もコスト高な方法ではあるが日本の核武装を考えた場合、最も現実的な核配備手段といわれている。

米海軍は1948年に潜水艦用原子力機関の設計を始め、世界初の原子力潜水艦ノーチラス」を1952年に起工、1954年に完成させた。以後も米海軍は原子力潜水艦の戦力拡充を図ったが、ソビエトとのミサイルギャップを受けて建造中のスキップジャック級原子力潜水艦にミサイル区画40メートルを挿入すると言う強引な手法でジョージ・ワシントン級戦略ミサイル原潜を1960年に完成している。

現在の日本は当時の米国より工業水準は優れているが、搭載すべきミサイルも敵対国の潜水艦捜索装備も1960年代より大幅に進歩しているため、それに見合う船体や静粛な原子力機関の開発を米海軍同様の短期間で達成するのは困難と見られる。米国からの技術導入が得られなければ夏級原子力潜水艦のような習作を経て米露中英仏の水準にステップアップするような形にならざるを得ないであろう。また、潜水艦建造可能な造船所は2箇所あるが、いずれも排水量1万トンにならざるを得ない現代のSSBNを建造するには規模が不足するので、原潜を建造する場合、二分割で建造して大型ドックで接合するか、あるいは新規に造船設備を建設する事になるが工員身元調査、技術教育、機密保持、財政、立地・用地取得など多くの課題がある。

また、原子力潜水艦は燃料棒の交換は船体を切り開く長期間の大工事になりがちである。米海軍の新型原子力艦艇は超高濃縮ウランを使用することで燃料棒交換の回数、あるいは燃料棒の交換そのものを省いているが、日本がいきなりこの水準に到達するのは困難である。高被爆環境下での保守点検と燃料交換に多額の費用が掛かり、寿命が切れた原子力潜水艦は強い放射線を帯びているので解体処理コストも嵩む。相当な予算が必要なこともあり、戦略原潜とそれに搭載するSLBMの開発には10年以上の期間を要すると想定される。また原潜は高価であり調達数量の制限が見込まれるため、SLBMを搭載するなら可能な限り多くのミサイル発射筒を装備させMIRVを採用した多目標個別攻撃能力を持たせることで潜水艦1隻あたりの報復能力の向上を図るのが望ましい。しかしその為には弾頭の小型・高威力化に加え、弾道ミサイル自体の高性能化さらにはSSBNの大型化を要するので、弾道弾にせよ弾頭にせよSSBNにせよ漸進的改良を行わざるを得ない。

日本には原子力船むつの経験を持ち、搭載された原子炉は基本的には軍用船舶の原子炉と同じ加圧水型原子炉で、荒天での激しい船体の揺れや万一の際の転覆事故も想定した設計になっていた。しかし原潜で必須である静粛性はまったく考慮されておらず、なにより出力が圧倒的に足らない(むつの1万馬力に対してロサンゼルス級攻撃原潜で3万馬力、オハイオ級戦略原潜で6万馬力)ことからも大幅な技術革新が前提となる。

SSBNにはミサイル整備施設が必要なため専用の基地が必要である。また通信のために浮上することの無いように、SSBNへの指令は海中にも届く電波である超長波(VLF)が用いられるため、専用の無線基地や通信中継基地が必要になる。

戦略原潜は単独で活動せず、攻撃型原潜が護衛に付くのが一般的である。よって戦略原潜を配備するなら戦略原潜と同数以上の攻撃型原潜が望ましい。日本は世界6位の排他的経済水域を持っているが、ソビエトがかつてカムチャッカ沖に保持した「聖域(敵勢力の活動を排除した海域)」を持つことは困難と見られる。必要なのは航行の自由が保障されるEEZではなく、侵入そのものを違法とできる領海か、または侵入を困難たらしめる内海である。潜水艦以外の護衛戦力の展開についても、広大な海域のエアカバーは海上自衛隊、航空自衛隊の航空部隊の能力を超えるものであるし、水上艦艇の貼り付けではその行為自体が潜水艦の存在の傍証となってしまう。

兵頭二十八の著書などにおいて、運搬手段が潜水艦なら動力が原子力である必要性はないとの主張もあるが、原子力推進艦は長期間哨戒・船体規模に比して小型の機関区という利点があり、同じ大きさ(排水量)ならば通常動力潜水艦より兵器搭載量が多くなり、運搬手段としては原潜が圧倒的に有利となる。また速力と航続力の圧倒的なアドバンテージは、哨戒海域までの進出・帰投にかかる時間を短縮し、オンステーション可能な期間を延長する。速力と航続力がもたらす生残性や、先の搭載量の優位を加えるならば、原子力推進にすることで一定数量の弾道弾を即応体制に置く場合に必要な弾道ミサイル搭載潜水艦の総数を、大幅に削減することができる。逆に言えば、通常動力潜水艦で同じことを試みた場合、膨大な数の潜水艦とその支援設備、脆弱な通常動力潜水艦を守りきる為のより強力な護衛部隊が必要になる。弾道弾の搭載の可否だけを論じても、抑止力というシステムの構築を論じたことにはならない。ただし、核抑止の必要性が明確かつ逼迫した場合においては、非常に効率の悪い装備であっても過渡期としては一定の効果を得る可能性はある。

巡航ミサイル

巡航ミサイルは潜水艦艦船航空機、車両など、発射プラットフォームを陸空、海上、海中と多様化出来るという点が最大の利点である。

トマホーク巡航ミサイルを米国から輸入した場合は、日本が自由に運用できない可能性がある。現にトマホークを米国から輸入したイギリスにおいては運用についての厳しい制限が設けられている(事実上、アメリカの同意が無いと発射できない)。

巡航ミサイルを独自に開発した場合はこの限りではないが、戦略用途の運用であれば、機体規模の小ささ(トマホークで1.5トン、弾頭部は450キロ、事実上の艦艇用長魚雷サイズである)にあわせて、小型核弾頭の開発が必要である(兵頭二十八は大型巡航ミサイルの開発を提唱しているが、その場合はかつてアメリカが建造し、運用を諦めたレギュラス搭載潜水艦のような単能艦でしか運用できないことになり、多彩な発射プラットフォームを選択できるトマホーククラスの巡航ミサイルの持つ運用の柔軟性を失う事になる)。

航法装置(INS)は1時間飛行すると約1.8キロのずれを生じる。戦術用途であれば(もしくは戦争の規模が限定されているのであれば)GPS地形照合システムで補正することもできるが、現在の所GPSはアメリカの独占状態にある。欧州連合やロシア、中国は安全保障上の要請もあって独自企画を開発中である。戦略核兵器を使用する状況(すなわち全面戦争)において、他国の航法支援を使用できない可能性は極めて高く、GPS無しでの命中精度を確立するか、日本独自のGPS衛星を保有する必要がある。

しかしGPSによる航法情報も電波であるためにGPSジャマーと呼ばれる装置で妨害される可能性がある。地形が存在しない海上を長距離飛行する場合に地形照合は使用できないため、海を渡ってから地形照合で位置を補正する必要がある。そのためには弾頭の小型化やエンジンの燃費向上でミサイルの射程距離を延ばさなければならない。

地表情報は民間企業から購入できる高精度の衛星画像を使用できるという説もあるが、日本が独自保有する偵察衛星(情報収集衛星)の精度を上げてより精密な地表情報を入手する方が確実である。

現在、アメリカ軍は巡航ミサイルを戦略兵器として運用していないため戦略抑止としての参考にならないが、ピースキーパーなどの弾道弾は航法情報が無い状態を基本としており、アストロトラッカーと呼ばれる恒星追跡装置による天測を行ってCEP90メートルを達成している。

その他

  • 「攻撃に使える兵器」と言う意味でなら、核でなく青森県で貯蔵されている使用済み核燃料やプルトニウムを兵器に積み込み、報復攻撃対象国上空で爆発させるだけで核と同等の効果を持つ上に長期的に敵国の土地資源や人的資源に汚染を引き起こせる為、費用対効果が高く多大な費用を掛けて核兵器を開発する必要は無いという指摘もある。しかし汚い爆弾は使用しても死者は出ないと言われており、仮に大型の輸送機に満載して自爆させるとしても撃墜される可能性が高い。軍事的確実性が不明確では費用対効果を測る事自体が不可能であり、国家単位のテロにはなり得ても核抑止には寄与しない。
  • 弾道弾も大量破壊兵器WMD)の運搬手段として国際的な監視と規制が行なわれている拡散安全保障イニシアティブ(PSI)
    • 日本はMTCR(ミサイル技術管理レジーム)に参加している。これは弾道ミサイルとその関連技術の輸出管理を目的とするが独自開発は妨げない(米ロをはじめ、弾道弾の開発は行っている)。
    • 日本政府は弾道弾や攻撃型空母など「性能上専ら相手国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器」の保有はしないとしている。核武装とは、非核三原則を含めこれまでの安全保障政策の根本的な変更を意味する。

核武装論への疑念

この項は核武装への「反対」ではなく、核武装という政策提起に対する「疑念」となる。更にこの項はこれら「疑念」に対する解決策や疑念そのものに対する反論をも含む。

国民の核への忌避意識

1999年西村真悟防衛政務次官が核武装発言で、2008年には田母神俊雄航空幕僚長が政府見解に反する主張をして更迭された事件に見られるように、被爆国としての核兵器に対する国民的な忌避意識は強く、米国をはじめとする近隣諸国からの懸念や圧力もあり、政界においては日本が核兵器を配備する可能性について発言すること自体がタブーとされている。

根底の対米不信とアメリカ支援の期待の矛盾

核武装は本来安全保障政策であるのだから、まず差し迫った軍事的必要性から論議されるべきであるが、この先10年程度の国際情勢であれば世界の警察官を自認するアメリカがその立場を放棄することはありえず、またそれはアメリカならびにアメリカ以外の軍事費、兵器開発等を比較すれば「世界唯一の超大国」に変化は無いと考えられ、核の傘を提供する日米安保条約も継続されると見込まれる。しかし多くの核武装論は根底に対米不信を置きながらも都合良くアメリカの支援を得ようとするため、様々な矛盾を孕む事となる。核武装にナショナリズムの高揚(例えば、アメリカからの脱却、国際的地位の向上)を見る核武装論は多いが、所詮は国防のためのシステムでしかない。

仮想敵国はどこなのか

基本的に核兵器は戦略兵器なのであるから、通常兵器以上に戦争を抑止すべき対象というものを明確化する必要があるが、漠然と仮想敵国は中国であるとか対米依存の脱却とかを唱えても説得力を持たせることはできない。中国が相手であれば(ソ連にそうしたように)アメリカとの同盟を継続することで対抗する選択肢もあるし、対米依存の脱却を唱えるのであれば当然、アメリカも「仮想敵のひとつ」としなければならない。さらには仮想敵を明確にした上で、その戦力を評価し、対抗手段(核兵器の場合であれば戦争を抑止できるとする損害の強要)を見積もり、予算を策定しなければならない。なお、中国は国際連合憲章に定める「連合国」の一つであり、国連決議とは一切無関係に、日本に対し軍事行動を起こす権利が保留されている(敵国条項)。

核弾頭の所要量

日本が核武装することによって、中国、北朝鮮、またはロシアに対する核抑止力が得られるとするのが核武装論の中核であるが、日本は都市部に人口が密集する地理的条件から核攻撃に対し非常に脆弱である。日本が核攻撃を受けた場合に大きな損害が予測される以上(そしてその打撃に耐えることが困難である以上)、核攻撃と言う決断を下し難いだけの打撃を仮想敵に与える能力の担保が望まれる。故に防衛白書では独自の核武装に対して否定的な見方(充分な担保を持つ核の傘への依存の表明)をしている。これを相互確証破壊と混同する意見もあるが、日本の国情がより高い担保を求めているだけであり、冷戦期の米ソ中などの国土の広大な国家が、実際に核を撃ち合った上での国家の存続まで意図したような「核への耐性」を無視した論である。日本を容易に殲滅できる仮想敵に対して、日本の核による報復が「許容」されないだけのレベルの核武装によって核の傘以上の有効性を得ようというのであれば、むしろ相互確証破壊以上の難易度であるとも言える。その場合の戦力は「仮想敵が国家としての存続を困難ならしめる」ことを目指したアメリカやソ連の算定基準を援用することになるが「核武装」と「効果的な核抑止力」との違いとしての戦力規模、ひいては取得費用の差が生じることになる。

NPT体制の崩壊の可能性と米国の反対

日本は原子力の平和利用の下、発電の4割を原子力に依存しながらウランの輸入先を比較的政情の安定した国とできるなどのエネルギー安全保障上のメリットも享受している。その日本が核兵器拡散防止条約(NPT)を脱退することは潜在的核保有国のNPT脱退を正当化させ、NPT体制が崩壊する引き金になりかねない(#外交的問題参照)。

その場合、日本の外交的立場は現在の北朝鮮のような「短絡的不法国家」に悪化し、六者会合で北朝鮮に核開発放棄を要求する論拠を失う。韓国など、日本同様にNPTによって原発を建設し、原子力関連技術を蓄積した国に対して、核兵器保有の口実を与えてしまう。

そして、NPTが崩壊した場合、テロリストの手に核が渡る可能性は増える。これにより日本に敵対する国がこれらテロリストの犯行を装って日本を核攻撃する可能性がある。核抑止は一般に非正規戦的な攻撃手法に対し抑止力はないので、結果として日本の核武装が引き起こすNPT体制の崩壊が、日本に対する非正規戦的手段による核攻撃の可能性を増加させる。テロリストによる日本への核攻撃の可能性は他の先進国、ことアメリカにも当てはまるのだから、アメリカとしてはこれに強硬に反対することが予想される。これはNPTの維持拡大を国益と認識するアメリカとの衝突でもあり、日本は唯一にして最強の同盟国を失う契機になろう。

米国の金融制裁・経済制裁

  • 北朝鮮は米国市場に依存していないが、日本の自動車・電機等の最大顧客は米国であり、日本にとって米国の貿易制裁は大打撃になる。北朝鮮と比べ米国への依存度が高く、北朝鮮を単純に真似するのは不可能。
  • ドル決済には米銀とのコルレス契約が必要で、バンコ・デルタ・アジアを見ても金融制裁でドル決済不能に追い込まれると大手邦銀は軒並み倒産すると思われる。この点でも北朝鮮と比べ米国への依存度が大きく米国に対抗するのが困難。
  • 中国の外貨準備が日本に比肩するレベルになっているので、米中に結託されたら米国債を売っても中国に買われてしまい日本は屈服に追い込まれてしまう。
  • 中国のドル準備額が日本を越えて世界のトップになった事実に対する米中両国の反応は苦さを秘めている。

アメリカとしては、「ドル体制離脱」、「元をも基軸通貨に」、「いざとなれば膨大なドル保有をアメリカに対する牙として使用できないか」、などと虎視眈々と狙いながらも、反面ドルの価値低下に対して脅え、アメリカと当面協調せざるを得ないでいるような、この中国という厄介な存在に内心(言葉は悪いが)舌打ちしているのであり、本当は日本のような忠実な国に米国債を保有させておくことのほうをベターだと思っているものと思われる。 中国は、膨大な失業者、出稼ぎ農民などによる安い労賃を武器とした「飢餓輸出」的方法によって蓄積したドルがその価値を減じることに脅え、上述のようにドルから別の財産に外貨保有形態を切り替えること,元の基軸通貨化などの方向に舵を切り替えつつある。したがって、日本が米国による自国の核武装阻止に対抗するために保有するドルを売り、それを中国が更に引き受けるという状況はそう簡単にはできないものと思われる。

  • 米国の金融制裁、経済制裁という想定自体、日本が米国の説得に失敗し、強引にNPTを脱退して核武装を推進するということを唯一の、ありうべき選択肢としているかのようでもある。

米中露の核施設空爆/海上封鎖

  • イスラエルはイラク・シリアの核施設空爆で核武装を強制中絶させているし、米国も北朝鮮核施設空爆は3度も検討している。日本が核武装を宣言し実行に移せば、日本から核を向けられることになる中露や、核不拡散体制維持の急先鋒である米国が海上封鎖や核施設爆撃など、日本の核武装を実力で阻止して来る可能性は高い。戦闘機保有数は米3500・中2400・露2200・日260であり、単純比較はできないが防衛は容易ではない。
  • 日米が核実験を行った北朝鮮に対して臨検・海洋封鎖を検討したように、米中露が日本を海上封鎖した場合、石油・食料・原料輸入と自動車・家電等輸出が止まってしまう。

核燃料返還/原発停止とエネルギー危機

  • 日本は原子力の平和利用というNPTに加盟した上に米国と日米原子力協力協定を結んでおり(他の国との原子力協定も内容としてはほぼ同じものである)、核武装はその二国間協定のならびに国際条約であるNPTの破棄となる。これを破棄すれば協定の破棄条項によって核燃料棒の殆どは米国などに引き渡されるため、原子力発電所は操業を停止せざるを得ない(東京電力は原子力発電への依存度40%以上、新潟県中越沖地震にて柏崎刈羽原子力発電所が停止しただけで“電力需要危機”と騒動になった)。
  • 日本の年間ウラン燃料棒消費は7,500トンだが、ウランを輸入して燃料棒を国内で作ろうにも燃料棒生産設備能力が、年産1500t程度しかなく、その設備さえ米国は廃止を要望していて、核武装宣言前は増設が困難で核武装宣言後建設に数年かかる。その間原子力発電所が使えなくなる。

原料ウラン自給が当面は困難

  • 仮に燃料棒製造設備を建設しても、人形峠のウラン総埋蔵量は2,500トン前後で消費量1年分にも満たない。カナダは核開発国にウランを輸出しない政策である。高速増殖炉を実用化せよとか、海水からのウラン採取を実用化せよとの意見もあるが、まだ実用化に至っていない。

核実験場の確保

核武装するためには核実験が必須である。シミュレーションは核実験の実験データがなければコンピューターがあっても出来ない。過去の事例を見ると、「単なるブラフではない」実効的な核抑止力を行使している全ての国は、核実験により実用的な核兵器の保有を証明してきている。核実験を行う場合、実験場は本土から離れた無人島ということになる。離島は国定公園に指定されている場合もあり、固有種や絶滅危惧種などの希少生物や自然への影響が懸念される。

離島は必ずしも無人ではなく、EEZの根拠の場合もあり、爆発によるこの消滅の危機さえ孕む。沖ノ鳥島に対して中国が「岩礁であって国際法上の島ではない(ゆえにEEZを認めない)」と主張しており、大陸棚資源や漁業権などの子々孫々までの国益も絡む。

「核の傘は破れ傘」なのか

米国政府は公式には同盟国への核の傘を一度も否定したことは無く「同盟国への核の傘の提供とトライアド(大陸間弾道弾、戦略爆撃機、潜水艦発射弾道弾による「核の三本柱」のこと)を維持する」ことを再三明言している。これはアメリカの覇権を構成する根幹であり、実際に同盟国が核攻撃を受けた場合、アメリカが自国への核攻撃への危険を侵してでも核による報復を行わなければならない十分な理由となる。ただし、だからといってアメリカが核攻撃を甘受するつもりはなく、故に条約を破棄してでも「核抑止の効かない相手」への防御手段であるMDの開発と配備を行っている。「核の傘」というと核による報復のみに目が行きがちだが、通常戦力やMD、仮想敵への外交圧力も含めての「同盟」であることを失念している。さらには核の傘の信頼性とは、核を保有しないアメリカの同盟国に核攻撃を仕掛ける国家が評価するものである。これらの国家が「アメリカによる報復は無い」と確信できなければ、反撃がないままに非核国家へ攻撃ができるどころか、世界最大の核保有国による報復に晒される事になる。極論を言えばアメリカが「核の傘を提供しない」とステートメントしたとしても、それが信用できないことになる。実際に撃つまで結果が分からないが故に、アメリカの同盟国への核攻撃はアメリカとの直接対決の覚悟が必要となる。このハードルの高さが核の傘の意義となる。

北朝鮮に核抑止が通じるのか?

日本が北朝鮮の核攻撃を被弾する可能性で最も高いのは、半島戦争の巻き添え被弾である。すなわち北朝鮮が核恫喝で韓国を併合しようとして、日本に核を突きつけ、米国に半島から手を引くように迫る場合である。しかし、北朝鮮政府要人は「統一のためなら核戦争も辞さない」と言明しており、日本が核武装しても「核の撃ち合い」になるだけではないか?という疑問もある。

北朝鮮は独裁国で選挙による人命尊重圧力が掛かりにくく、金正日自身は核シェルターに避難するであろうし、核戦争で数百万人死のうとも半島統一を達成すれば「統一の英雄」になって権力基盤は強固になるため、「半島統一戦争」に絡む場合は核抑止が有効かどうかは疑問の余地がある。また、北朝鮮の体制崩壊に伴う混乱の場合も核抑止が効くかどうか疑問といわれている。そのため、北朝鮮に対しては「核抑止は効かない」ことを理由に真剣に国民保護を考えるなら、核武装よりも核物質生産施設への先制攻撃をすべきであるという積極意見もある。詳細は核抑止・核抑止不成立ケース参照。


核武装を巡る検討と発言の歴史

日本政府の公式見解

  • 「日本が核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則を堅持することについては、これまで歴代の内閣により累次にわたり明確に表明されている。政府としては、今後ともこれを堅持していく立場に変わりはない。日本は、1955年に締結された日米原子力協力協定や、それを受けた国内法の原子力基本法および国際原子力機関(IAEA)、核拡散防止条約(NPT)によってNPT上の非核兵器国として核兵器の製造や取得等を行なわない義務を負っている。このような点から見ても、日本が核兵器を保有することはない」[6]
  • 「核は保有しない、核は製造もしない、核を持ち込まないというこの核に対する三原則のもと、その平和憲法のもと、この核に対する三原則のもと、そのもとにおいて日本の安全はどうしたらいいのか、これが私に課せられた責任でございます」(1967年12月11日 佐藤栄作内閣総理大臣 衆議院予算委員会)。
  • 「たとえば万一核不拡散条約、これを日本が脱退をするということになった場合には、条約上の遵守義務というものはありませんから、先ほど申し上げましたような間接的意味における憲法に由来する九十八条の問題というものは消えちゃうんです。第九条の問題だけが残るということなんです。憲法全体の思想といたしましては、私は、第九条だと思うのです。第九条によって、わが国は専守防衛的意味における核兵器はこれを持てる。ただ、別の法理によりまして、また別の政策によりまして、そういうふうになっておらぬというだけのことである」(1978年3月11日 福田赳夫内閣総理大臣 参議院予算委員会)。

以後の日本政府は憲法98条2項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」に基づきNPT条約を履行するため、非核三原則を「一貫して堅持する」と代々の政府は繰り返し明言している。

  • 「大体いま世界戦略的に、また世界歴史的に見ますと、核武装というのは第二次世界大戦の戦勝国のになってきている。ああいうものをつくってしまいましたからなくすわけにいかぬ、相手が持っている以上は少し優越したものを持っていないと不安である、そういう世界に入り込んでいって、やむを得ず苦悶してSALTをやるというような形になってきておる。それで、私は戦勝国の業であろうと思っております。戦敗国である日本がそんな業にのこのこ入っていく必要はない、そんな考えを私は持っているわけです」中曽根康弘防衛庁長官昭和46年衆議院内閣委員会)。
  • 「私は非核武装論者でありまして、核武装をしなければいかぬなんということは一回もありません」中曽根康弘科学技術庁長官昭和47年衆議院科学技術振興対策特別委員会)。
  • 「国会におけるその非核三原則を堅持しろというような御決議があって、それでその核は持たないという選択をしなさいという御決議があるわけでございますから、それで政府はその政策の選択として非核三原則を堅持しておる、そのことと法律の解釈というのは、それは政策とは別なんですよ、それは」(1978年3月11日 真田秀夫内閣法制局長官 参議院予算委員会)。
  • 「我が国の核保有という選択肢は全く持たない。非核三原則は一切変更がないということをはっきり申し上げたい」(2006年10月10日 安倍晋三内閣総理大臣 衆議院予算委員会)。
  • 「隣の国が持つとなった時に、一つの考え方としていろいろな議論をしておくことは大事だ」「非核三原則を政府として堅持する立場に変わりはないが、日本は言論統制された国ではない。言論の自由を封殺するということに与しない(=核武装の論議容認)という以上に明確な答えはない」(麻生太郎外務大臣 2006年10月18・19日 衆議院テロ対策特別委員会にて)。
  • 2006年12月25日 産経新聞によると、「日本が小型核弾頭を試作するまでには少なくとも3〜5年かかる」とする政府の内部文書が12月24日明らかになった。

日本の政治家の非公式発言

  • 岸信介首相がアメリカ政府宛てに「防衛上、核武装の必要が迫られれば日本は核武装する」と非公式に伝達し、アメリカは大きな衝撃を受け、日米安全保障の強化に乗り出したといわれる。
  • 「閣内に核武装論者がいる」
    • 1961年11月、池田勇人首相が来日したラスク国務長官に
  • 「他人が核を持てば、自分も持つのは常識だ」
  • 中曽根康弘が自著において防衛庁長官だった1970年に「現実の必要性を離れた試論」として核武装について「日本の能力を試算」し「当時の金で2,000億円、5年以内で核武装できるが、実験場を確保できないために現実には不可能」との結論に達したことを明かした。「自省録-歴史法廷の被告として-」
    • 1970年当時の防衛費は4,800億円で一般会計の7パーセントを占めた。現在の貨幣価値に直すなら、消費者物価指数で言えば約3倍の6,000億円、防衛費の伸びで言えば10倍の2兆円といった金額になる。弾頭1発1億円とも述べており、これは当時の主力戦闘機F-104の価格、5億円の1/5という高額なものであった。
    • 「(核武装について)これまでも一貫して否定してきていますし、今でも変わりません」(2004年、インタビューに対して)
    • 中曽根康弘は「日米安保の続く限りにおいて」という条件つきでの一貫した非核武装論者である。
  • 1991年宮沢喜一は、総理就任前に『中央公論』9月号で評論家の田原総一朗との対談で「…日本にとって核武装は技術的に可能であり、財政的にもそれほど難問ではない」と主張した。
  • 2001年、内閣府高官が、雑誌インタビューに対して「3年で核武装可能」と回答。
  • 「あまりいい気になると日本人はヒステリーを起こす。核弾頭をつくるのは簡単なんだ。原発でプルトニウムは何千発分もある。本気になれば軍備では負けない。そうなったらどうするんだ」(2002年4月6日 小沢一郎自由党党首の福岡での講演において、中国共産党情報部の人間に語った内容として自身が紹介)。
  • 「自衛のための必要最小限度を超えない限り、核兵器であると、通常兵器であるとを問わず、これを保有することは、憲法の禁ずるところではない」「核兵器は用いることができる、できないという解釈は憲法の解釈としては適当ではない」(2002年5月13日 安倍晋三官房副長官 早稲田大学の講演において)2003年、週刊金曜日および朝鮮新報の紙上で、安倍晋三官房副長官早稲田大学で行われた講演の後の懇談会で「北朝鮮なんて核落として、ぺんぺん草一つ生えないようにしてやるぜェ」なる発言をしたと伝聞調で紹介された[7][8]。「政府や党の機関としては議論しない。それ以外の議論は自由だから言論封鎖することはできない」(首相就任後 後述中川昭一らが唱えた核保有論について)
  • 「非核三原則は憲法に近いもの。しかし、今は憲法改正の話も出てくるようになったから、何か起こったら国際情勢や国民が『(核兵器を)持つべきだ』ということになるかもしれない」「法理論的には持てる。持っていけないとの理屈にはならない」(2002年5月31日 福田康夫内閣官房長官)。記者団とのオフレコでの発言であったため発言者は「政府首脳」とぼかされていたが6月4日に自身であることを認める。
    • 「核の問題にしても、これからどういう変化が社会にもたらされて、それが政治ケースとなって、国民のその問題に対するとらえ方もおのずと変わってき得るということを福田君はいったことで、ああいう障害に阻まれたと認識しております。そういう点で、過去にあった事例というものを踏まえながら、現在の時点で正確に主張してもらいたいということで、私は激励しました」(関連して石原慎太郎2002年6月18日、都議会で答弁 石原はこの時、『諸君!』1970年10月号に載せた自分の論文「非核の神話は消えた」の全文コピーを福田に送っている)
  • 「欧米の核保有と違って、どうみても頭の回路が理解できない国が持ったと発表したことに対し、どうしても撲滅しないといけないのだから、その選択肢として核という……」(中川昭一自由民主党政務調査会会長 2006年10月15日、テレビ朝日「サンデープロジェクト」にて)「攻められそうになった時にどう防ぐか。万が一のことが起きた時にどうなるかを考えるのは、政治家として当然のことだ」(10月20日、自民党静岡県連合会の集会で)この発言は日本のみならず、海外にまで議論が及ぶこととなり与野党からこの核武装とも取れかねない発言の撤回を求める意見が多数出ることとなり、この発言の後に安倍晋三総理大臣や塩崎恭久官房長官が非核三原則は厳守すると念を押す発言をし、ジョージ・W・ブッシュアメリカ大統領もこの発言に対し「中国が懸念する」と述べた。

その他の見解

  • 2003年に発表されたアメリカの未来予測を記した国防白書において、日本2050年までに核武装すると異例の記述。
  • 「その可能性は大きい。日本はその気になれば90日以内に核爆弾を製造し、ミサイルに搭載できる技術的能力を持っている。われわれはすでに大陸間弾道弾(ICBM)水準のミサイルロケット)を保有しており、50トン以上のプルトニウムを備蓄している。核爆弾2,000基を製造できる分量だ。日本はすでに30〜40年前、原爆製造に必要なあらゆる実験を終えた。日本が核武装をしないのは国民情緒のためだ。9割の日本人が核兵器の開発に反対している。広島長崎の悪夢のためだ。しかしわれわれが北朝鮮核兵器の実質的脅威を受ける状況になれば、世論は急変するはずだ」(2005年2月25日 大前研一 経済評論家 韓国マスコミの「北朝鮮の核保有が最終確認された場合、日本も核武装に動くのか」という質問に対して)
  • 2005年民社党の後身である民社協会系の新憲法組織「創憲会議」の「「創憲」を考えるための提言書」(玉置一弥サイト「「創憲」を考えるための提言書を掲載しました」参照)が明らかにされた。公式に核武装を視野に入れ、核兵器に加え、生物化学兵器の所持をも選択肢に入れるよう提言したものである。国会議員を擁する政党・政治団体で、核武装の検討を公式見解にしている党派はここだけである。ただし、同年10月28日に発表された創憲会議の新憲法草案では、核武装検討の明言はされていない。(「創憲会議 新憲法草案」)。
  • 2005年12月28日に公開されたイギリス政府の機密公文書によると、1975年、日本の科学技術庁(当時)の原子力担当課長が在京の英国大使館に「日本は3か月以内に核兵器の製造が可能」と語った。この情報を基に一時イギリス政府は大騒ぎになった。
  • 数学者のピーター・フランクルは著書の中で、「市民全体で国防のリスクを引受けるべきで、一部の男性にだけ兵役を押し付けるのではなく、核武装して市民社会全体でリスクを引き受ける方が民主的である」と述べている。

脚注

  1. ^ 日本の核保有、外務省幹部が69年に言及か 西独と懇談朝日新聞2010年11月30日
  2. ^ 代表的なものとして清水幾太郎の『日本よ国家たれ――核の選択』(文藝春秋, 1980年)がある。
  3. ^ ただし、西ドイツが米軍供与の戦術核200発を戦時に運用する計画を立てていてもソビエトが欧州正面での戦争の可能性を否定することはなかった以上、日本の核武装の有無が軍事的影響を与えたという主張の妥当性は低く、ソ連が欧州戦争の可能性を否定しなかった事と実際の抑止力との評価の関連性が不明である。
  4. ^ 「北朝鮮、東京に核撃ち込む能力持つ」国際研究機関が報告書読売新聞
  5. ^ 欧州で逮捕された核の闇市場関連のスイス人のパソコンからは小型原爆の設計図が発見されており、北朝鮮の手に渡ったとみられている。
  6. ^ 非核三原則について
  7. ^ http://d.hatena.ne.jp/oizumi-m/20060804 週刊金曜日2003年10月31日号『人寄せパンダ・安倍晋三のお寒い中身』
  8. ^ http://www.ultracyzo.com/cyzo/contents/0602/juuyou/02.html サイゾー2006年2月号『重要参考人2006 ポスト小泉たちの「スネの傷」? 麻垣康三スキャンダル図鑑』

参考文献

関連項目

外部リンク