証券会社
証券会社(しょうけんがいしゃ)とは、有価証券の売買の取次ぎや引受けなどを行う企業。日本においては、通常、金融商品取引業者のうち、第一種金融商品取引業(有価証券関連業に該当するものに限る。)を行う者を指す。かつては、証券取引法において登録(かつては免許)を受けて証券業を営む会社を指す法令用語であったが、金融商品取引法への改正に伴ってこの概念が廃止され、従前の証券会社は、経過規定により、金融商品取引法第28条第1項第1号、第2号および第3号ハに掲げる行為に係る業務、有価証券等管理業務ならびに第二種金融商品取引業行う金融商品取引業者とされた(「みなし登録第一種業者」)。
日本の証券会社
概説
かつては、証券取引法により定義されたが、2007年9月に改正された金融商品取引法により、法律上の定義はなくなった。これまでの証券業の概念は、概ね有価証券関連業として定義された。
金融商品取引法第33条第1項により、「銀行、協同組織金融機関その他政令で定める金融機関は、有価証券関連業又は投資運用業を行つてはならない。」として、金融機関(銀行等)が有価証券関連業を行うことを禁止している。しかしながら、同法同条第2項により、有価証券関連業の一部を営むことは可能である。
第1種金融商品取引業は金融庁長官の登録制である。 登録要件は(1)株式会社である(2)資本金5,000万円以上である(3)自己資本比率が120%以上である、ほかに社内の「人的構成」や主要株主の規制があり、従来の証券取引法と比較して厳格になった。
免許・登録制度
1968年4月1日に、それまでの登録制に代わる形で「免許制」が導入されたが、1998年証券取引法改正により免許制を廃し、「登録制」に移行した。 なお、免許制時代には、免許が細分化され、業務ごとに以下のような免許があり、この全ての免許を有する証券会社を「総合証券会社」と表現された。
- 第1号免許 - 自己計算売買, ディーリング(Dealing)
- 第2号免許 - 売買仲介, ブローカレッジ(Brokerage)
- 第3号免許 - 引受, アンダーライティング(Underwriting)
- 第4号免許 - 売り捌き, セリング(Selling)
なお、登録制に移行した現在においても、有価証券店頭デリバティブ取引等の取り扱いを行う業務、有価証券の元引受を行う業務、私設取引システム(PTS)を開設・運営する業務については、第29条によりそれぞれ「認可制」となっている。
日本の主要な証券会社
- 一覧については日本の企業一覧 (証券・商品先物取引)も参照。
- ここでは主要な証券会社[1]について、系譜を添えて紹介することとする。
大手証券
リテールから投資銀行業務までフルサービスを提供する。世界各地に海外拠点を持ち、国際的な展開を図る。
- 野村證券 (野村ホールディングス)
- 大和証券 (大和証券グループ本社)
- SMBC日興証券 (三井住友フィナンシャルグループ)
- みずほ証券 (みずほフィナンシャルグループ)
- 三菱UFJ証券ホールディングス(三菱UFJフィナンシャル・グループ)
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 (MUFG完全子会社の三菱UFJ証券ホールディングスとモルガン・スタンレーグループの合弁)
- 三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券 (三菱UFJ証券ホールディングス・三菱東京UFJ銀行の共同出資。元々はメリルリンチ日本証券のリテール部門が母体)
準大手証券
大手と同様にフルサービスを提供するもののリテール重視の経営形態であり、日本全国に支店網をもつ。大手証券と差別化を図るため、独自色を出す傾向がある。
独立色が強い岡三・東海東京と、メガバンク色が強いSMBCフレンドでは経営戦略上大きく異なる方針をとる。 前者は法人部門やネット証券、投信運用会社、海外拠点など総合証券会社として多くの機能をもっているのに対して、後者は海外拠点からの撤退や法人部門の縮小、自前の店舗を閉鎖し、グループ内銀行の支店内に拠点を設けるなどグループの経営資源を活用し、より対面リテール営業に特化する傾向がある。
中堅証券
リテール重視の経営形態であるが、大手・準大手と異なり支店網に地域的な偏りがある。そのため地元密着の営業手法を採る。
日本経済新聞社が使用する『主要証券20社』は以上の15社+大手ネット証券5社である。
中小証券
リテール営業が中心であるが、特定の得意分野に注力し、他では扱わない金融商品を採り扱う傾向がある。
- あかつき証券 (あかつきフィナンシャルグループ)
- 高木証券(野村ホールディングス(野村土地建物関連会社))
- エース証券(富士ソフトグループ)
- 内藤証券
- 藍澤證券
- 光世証券
- エイチ・エス証券 (澤田ホールディングス)
- 日の出証券 (大和証券グループ)
- 日本アジア証券 (日本アジアグループ)
- 明和證券
- 日本クラウド証券 (マイクロファイナンス)(クラウドファンディング)(グリーンシート)
インターネット専業の証券会社
1990年代後半のインターネットの爆発的普及に加え、1999年の株式売買委託手数料の自由化により、1998年の松井証券を皮切りにインターネットを利用した証券会社が登場した。 それまでの対面営業と異なり、基本的に営業拠点や営業員を必要としないため、人件費などの固定費を削減が可能となり、低コストで機動的な運営ができるようになった。 このため株式売買委託手数料を大幅に引き下げ、価格競争力をつける形でマーケットでのシェアを急速に伸ばした。 しかしその後、低コストで運営でき参入障壁が低いため 大手銀行や商社、外資系証券に加え、証券業界最大手の野村證券も参入するなど、競争過多の状態となり、価格競争に拍車がかかった。 その結果、撤退や合併が相次ぎ、また残った証券会社も価格競争だけでなく取扱商品の多様化などサービスの充実にも力を入れている。
大手ネット証券
- SBI証券 (SBIホールディングス) 2007年10月、旧SBI証券と合併し対面営業に進出
- 楽天証券 (楽天)
- GMOクリック証券(GMOグループ)
- カブドットコム証券 (三菱UFJフィナンシャル・グループ)
- 松井証券
- マネックス証券 (マネックスグループ)
- 岡三オンライン証券 (岡三証券グループ)
日本経済新聞は2012年4月分の株式売買代金調査よりGMOクリック証券を、後に岡三オンライン証券も集計対象に加え、大手7社としている。
新興ネット証券
- ライブスター証券 (ISホールディングス)
- 証券ジャパン
- ニュース証券
- DMM.com証券(DMM.comグループ)
- イニシア・スター証券
- MF Global FXA証券
- レクセム証券
- IGマーケッツ証券
- FXCMジャパン証券
- サクソバンクFX証券
先物会社系証券会社
先物会社系証券会社とは、先物会社が母体である証券会社のこと。商品先物を扱っている証券会社という意味ではない。先物会社が証券業の資格を取るケースと、既存証券会社を買収して証券会社を存続会社とするケースがある。1998年の証券取引法改正により、先物会社による証券業の参入が進んだ。
先物会社系証券会社は一般的な証券会社に比べ、中国株・先物・信用取引・オプション・外国為替証拠金取引(FX)・CFDなど、リスクの大きい商品を積極的に勧める傾向がある。また証券会社であるにもかかわらず、現物株の取り扱いすら行わない証券会社も存在する。
主な先物会社系証券会社
- スター為替証券 (スターホールディングス)
- KOYO証券 (光陽ホールディングス)
- インヴァスト証券 (光陽ホールディングス)
- ひまわり証券 (ひまわりホールディングス)
- ばんせい証券
- トレイダーズ証券 (トレイダーズホールディングス)
- あい証券
- セントレード証券
地場証券
地元に密着した証券会社であり、地縁を生かした営業活動を行っている。ただし、株式売買委託手数料が自由化されて以降、インターネットによる株式取引の活発化等で収益力が低下している。このため、これまで収益の多くを占めていた株式から投信売買に営業の比重を移したり、自己売買に注力して収益力の強化を図っている。
- 三晃証券(岡三証券グループ) - 東京都渋谷区
- 三縁証券(岡三証券グループ) - 岐阜県大垣市
- 岡三にいがた証券(岡三証券グループ) - 新潟県長岡市
- 宇都宮証券(東海東京フィナンシャル・ホールディングス) - 栃木県宇都宮市
- 日産センチュリー証券(ユニコムグループホールディングス) - 東京都中央区
- アーク証券 - 東京都千代田区(元名古屋)
- 立花証券 - 東京都中央区
- リテラ・クレア証券 - 東京都中央区
- 安藤証券 - 名古屋市
- 丸八証券 - 名古屋市
- 豊証券 - 名古屋市
- 木村証券 - 名古屋市
- 廣田証券 - 大阪市
- 上光証券 - 札幌市
- 荘内証券 - 酒田市
- 山形證券 - 山形市
- 富岡証券 - 富岡市
- むさし証券 - さいたま市
- 新和証券 - 新潟市
- 島大証券 - 富山市
- 今村証券 - 金沢市
- 竹松証券 - 金沢市
- 益茂証券 - 福井市
- 野畑証券 - 岡崎市
- 西村証券 - 京都市
- 八幡証券 - 広島市
- 香川証券 - 高松市
- 二浪証券 - 松山市
- 大熊本証券 - 熊本県熊本市
- おきなわ証券(日本アジアグループ) - 那覇市
地銀・ネット銀行系証券会社
- 新潟証券 (第四銀行グループ)
- 常陽証券 (常陽グループ)
- ちばぎん証券 (ちばぎんグループ)
- 浜銀TT証券 (横浜銀行、東海東京フィナンシャル・ホールディングスの共同出資)
- 静銀ティーエム証券 (静岡銀行、三菱東京UFJ銀行の共同出資)
- 八十二証券 (八十二銀行グループ)
- 百五証券 (百五銀行グループ)
- 中銀証券 (中国銀行グループ)
- ひろぎんウツミ屋証券 (広島銀行、ウツミ屋証券の共同出資)
- ワイエム証券 (山口フィナンシャルグループ、東海東京フィナンシャル・ホールディングスの共同出資)
- いよぎん証券 (伊予銀行グループ)
- 西日本シティTT証券 (西日本シティ銀行、東海東京フィナンシャル・ホールディングスの共同出資)
- ふくおか証券 (福岡銀行グループ)
- 池田泉州TT証券 (池田泉州銀行、東海東京フィナンシャル・ホールディングスの共同出資)
ホールセール専業証券会社
- 新生証券(新生銀行グループ)
- あおぞら証券(あおぞら銀行グループ)
- しんきん証券(しんきん中金グループ)
- 日本相互証券
- みらい證券
- セントラル短資証券(セントラル投資グループ)
- ジェイ・ボンド東短証券 (東短グループ)
- ICAP東短証券 (東京短資グループ)
- SBIジャパンネクスト証券 (SBIホールディングス)
- エンサイドットコム証券
- 上田八木証券 (上田八木グループ)
- オリックス・ホールセール証券 (オリックスグループ)
投資銀行業務系証券会社
外国の証券会社
かつては証券取引法等で国内証券会社と区別されていたが、改正金融商品取引法により統合された。
投資銀行業務等ホールセールを中心に営んでいるが、業務内容や規模は様々である。都内の一等地に事務所を構え、M&Aやデリバティブ業務など高付加価値業務を行い、いわゆる「ハゲタカ」的イメージを持つ場合もあるが、明治時代から日本に進出している証券会社もあり、カラーは様々である。
主な外国証券会社(東証取引参加者)
日本法人
- ゴールドマン・サックス証券(米)[六本木]
- クレディ・スイス証券(スイス)[六本木]
- バークレイズ・キャピタル証券(英)[六本木(旧リーマン拠点)]
- JPモルガン証券(米)[丸の内]
- シティグループ証券(米)[丸の内]
- モルガン・スタンレーMUFG証券(米)[恵比寿]…モルガン・スタンレー日本法人のホールセール部門と三菱UFJ証券ホールディングスの合弁
- メリルリンチ日本証券(米)[日本橋]
- ドイツ証券(独)[永田町]
- インタラクティブ・ブローカーズ証券(米)[日本橋茅場町]
海外法人(東京支店)
- RBS証券(英)[丸の内]
- RBCキャピタル・マーケッツ証券(加)[虎ノ門]
- HSBC証券(英)[日本橋]
- クレディ・アグリコル証券(仏)[汐留]
- ジェフリーズ証券(米)[有楽町]
- ソシエテ ジェネラル証券(仏)[赤坂]
- ドレスナー・クラインオート証券(独)[六本木]
- ビー・エヌ・ピー・パリバ証券(仏)[丸の内]
- マッコーリーキャピタル証券(豪)[紀尾井町]
- UBS証券(スイス)[大手町]
- ブラックロック証券(米)[丸の内]
大手・準大手証券会社の系譜
営業収益(売上高)ランキング
2014年3月期
- 野村ホールディングス - 1兆8,138億円
- 大和証券グループ本社 - 6,428億円
- 三菱UFJ証券ホールディングス - 4,877億円
- みずほ証券 - 3,677億円
- SMBC日興証券 - 3,517億円
- 岡三証券グループ - 1,013億円
- 東海東京フィナンシャル・ホールディングス - 905億円
- SBI証券 - 742億円
- SMBCフレンド証券 - 577億円
- マネックスグループ - 547億円
- 楽天証券 - 457億円
- 松井証券 - 398億円
- いちよし証券 - 252億円
- 岩井コスモホールディングス - 239億円
- カブドットコム証券 - 233億円
- 丸三証券 - 231億円
- GMOクリックホールディングス - 166億円
- 藍澤証券 - 160億円
- 東洋証券 - 160億円
- 水戸証券 - 157億円
- 極東証券 - 139億円
【外資】
- モルガン・スタンレーMUFG証券 - 1,062億円
- ドイツ証券 - 779億円
- ゴールドマン・サックス証券 - 777億円
- バークレーズ証券 - 571億円
- メリルリンチ日本証券 - 526億円
- JPモルガン証券 - 520億円
- シティグループ証券 - 480億円
- クレディ・スイス証券 - 375億円
- BNPパリバ証券 - 398億円
- UBS証券 - 230億円
行政所管
証券会社の行政管轄は財務省の各地方財務局(北海道、東北、関東、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、福岡財務支局、沖縄総合事務局)が金融庁長官の委任により担当している。 しかし、全国規模の証券会社に関しては内閣府傘下の金融庁が直接担当している。
過去に存在した証券会社
- 小川証券 (1997年5月23日営業休止)
- 三洋証券 (1997年11月3日会社更生法の適用を申請)
- 山一證券 (1997年11月24日営業休止)
- 丸荘証券 (1997年12月23日自己破産申立て)
- 中村証券 (1998年8月20日自己破産申立て)
- 山吉証券 (1998年10月21日自己破産申立て)
- 南証券 (2000年3月6日自己破産申立て)
- シュワブ東京海上証券 (2002年自主廃業)
- 東京プリンシパル証券 (2007年1月11日自主廃業)
- 海洋証券 (2007年3月1日自主廃業)
- 日本ファースト証券 (2008年3月14日自己破産申立て)
- 塚本証券 (2009年3月31日自主廃業)
- 日本プライベート証券 (2009年6月17日自主廃業)
- タイコム証券 (2009年12月25日自己破産申立て)
- アヴァロン湘南証券 (2010年5月28日自己破産申立て)
- オリエント証券 (2010年9月30日自主廃業)
- エコ・プランニング証券(2011年10月14日廃業)
- ビルウェル証券 (2011年10月21日登録取消[2][3])
- オルタナティブ本舗証券 (2011年11月21日廃業)
- 堂島関東証券 (2012年2月29日廃業)
- 丸大証券 (2012年3月14日倒産)
- 十字屋証券 (2012年3月31日廃業)
- 神崎証券 (2012年4月1日廃業)
- 富証券 (2012年5月21日島大証券との経営統合により解散)
- 金山証券 (2012年7月1日廃業)
- 赤木屋証券 (2012年12月25日撤退)
- みずほインベスターズ証券 (2013年1月4日みずほ証券と合併)
脚注
- ^ 日本経済新聞 2008年5月1日 朝刊 4頁
- ^ ビルウェル証券に対する検査結果に基づく勧告について - 証券取引等監視委員会 2011年10月21日
- ^ ビルウェル証券に対する行政処分について (PDF) - 関東財務局 平成23年10月21日