プラズマ
プラズマ(plasma)は、正の電荷をもつ粒子(イオン)と負の電荷をもつ電子が電離状態で同程度分布し、全体としてほぼ電気的中性を保つ粒子集団のこと。1928年にアーヴィング・ラングミュアによって命名された。固体、液体、気体に続く、物質の第4形態といわれている。 プラズマは気体、液体と同じく、流体の部類に属するが、プラズマを形成する個々の粒子(電子・イオン)は電荷を帯びている。電磁場が存在する場合はクーロン力、ローレンツ力がはたらき、気体や液体には見られない独特の性質(電磁流体力学的性質)を示す。
また、医学分野では血漿(Blood plasma)のことを、生物学では原形質(protoplasm)をプラズマと呼んでいる。
歴史
- 200万年前、人類の祖先であるヒト属(原人)、ホモ・ハビリスにより火(後述、プラズマの一種)が使われ始める。
人間の歴史はプラズマとともに始まり、プラズマ技術の発達とともに大きく変動しているといえる。物質の第4形態ともいわれる。
身近なプラズマ
一般に気体中で放電することによって生成される。 身近なプラズマの例としては、点灯している蛍光灯の内部も水銀ガスがプラズマになったものである。 このことはグロー放電を起こしてそれからクルックス管である蛍光灯内のアルゴンやキセノン等に経路状に電流が流れ発光する事と同じである。なお、このグロー放電は放電プラズマの一種である。 また、我々の生活に必要不可欠な火(燃焼炎)もプラズマの一種である。 他に強力な磁界をもつ高圧鉄塔の電線の周りには同心円状にプラズマが発生する。 また、地下水脈で水が勢いよく岩盤にぶつかることでその空洞内に発生すると言われている。
電離層、オーロラ、太陽・恒星の内部、太陽風、星間物質、科学博物館によく展示されているプラズマボールなどもその例。
プラズマの種類と産業への応用
プラズマには高温プラズマ(プラズマを構成する粒子すべての温度が高い状態、熱プラズマ)と、低温プラズマ(電子温度のみが高い)があり、金属の内部や蛍光灯の内部は低温プラズマと見なされる。高温な熱プラズマは1~数万ケルビンにもなり、地球上のあらゆる物質を溶かしてしまうため、高融点の材料の開発が求められている。 なお、種々のプラズマにより、核融合、プラズマディスプレイ、溶接、プラズマロケット、カーボンナノチューブをはじめとする立体構造を持つ様々な機能・特性を備えたハイテク新素材の生成技術など、その応用分野は広い。
半導体内での電子と正孔や、金属内の電子の振る舞いがプラズマと酷似しているため、固体プラズマと呼ばれる。
強結合プラズマ物理の一領域に見られるダストプラズマは、プラズマ中に微粒子が混在した状態を指す。条件が整うとクーロン結晶と呼ばれる規則的な構造を持つ微粒子集団などが、自己組織化されていく。生物の分子組織化を手本として、散逸構造形成を利用することで、ナノメーターからサブミリメーターにいたるメゾスコピック領域におけるパターン化された高分子集合体の階層的な自己組織化を行い、エネルギーサイクルを有するマイクロメーターサイズの上位構造物へと成長させることによって、プラズマ中に光制御型の量子演算素子群を自律生成させながら、逐次電路を書き換えていく情報処理システムが構築可能となる。
現時点では、閉ざされた放電管内に微粒子のダストを散布して、たとえば静電複写機が文字や図形を描くような感じで、散逸構造を有する逐次書き換え可能な小規模の立体的電路を生成できるレベルに過ぎないが、将来的には、プラズマで出来ている恒星やプラズマで満たされた広大な宇宙空間そのものを、巨大な量子コンピュータに作り替える壮大な構想も描かれている。最終的には、イリヤ・プリゴジンやエリッヒ・ヤンツらによって示唆された、自己組織化する宇宙全体を人類がその手で制御する究極のテクノロジーに到達すると目される、プラズマ宇宙論とも関わりを持つ最重要の研究領域である。
プラズマの語源
英語のplasmaは母体,基盤,そして鋳型(mold)といった意味のギリシア語をもとにしている。放電現象が放電管の中で隅々まで広がる様子を見てラングミュアが命名したといわれている。 元のギリシア語は宗教用語としても使われ、神に創造されたものといった意味で使われていたことから、神秘的なもの、霊的なものとも結び付けられ、エクトプラズム(ect plasm)といった用語もある。
オカルトとの関連性
オカルトへの解釈として高温プラズマが目撃されると火の玉と見られることや、プラズマから発せられる高磁場の脳波への影響により幻覚症状を引き起こす可能性があることから、UFOや霊、ミステリーサークルなど、あらゆる超常現象の原因であるとする説が、早稲田大学の大槻義彦教授をはじめとする著名人により唱えられている。
関連項目
- サイクロトロン運動
- 磁場中ではプラズマを構成している荷電粒子がローレンツ力を受け、回転運動を行う。この運動をサイクロトロン運動と呼ぶ。
- デバイ遮蔽
- 通常空間中に電荷がある場合は、クーロンの法則に従い電場ができる。ところが、プラズマ中ではこの電荷の周りに逆符号の電荷を持つ荷電粒子がクーロン力を受けて集合するため、実効的に電場が遮蔽される。これをデバイ遮蔽という。
- ドリフト
- プラズマを構成している個々の荷電粒子は磁場中でサイクロトロン運動を行う。その回転中心が磁場や電場の分布によって移動することがある。巨視的にはプラズマが移動していることになる。この事象をドリフトと呼ぶ。
- ピンチ効果
- 柱状になったプラズマの軸方向に大電流を流すと、作り出された磁場と電流自身の相互作用ローレンツ力により、プラズマが急速に締め付けられて、中心部に細い紐状になって集中する現象。これによってプラズマは容器壁から離れてプラズマの閉じ込めが可能になり、同時にジュール熱の発生と圧縮による高温を生じる。核融合の初期段階の研究にとって重要。
- プラズマ波動
- プラズマ中は、電磁波、音波、静電波など様々な波が伝搬する事が可能である。これらの波の物理的性質はプラズマ中のマックスウェル方程式、流体方程式等によって記述される。プラズマ中の電磁波の伝搬速度(位相速度)は真空中の光速度(約3× 108m/s)とは大きく異なる場合もある。
- プラズマ振動
- プラズマが電気的中性を保とうとする強い傾向を持つために生まれる特徴的な現象。プラズマのなかに、何らかの理由で電荷の不均一が生じたとき、均衡を取り戻すように電子の集団の動きが加速される。ところが、電子が勢い余って行き過ぎてはまた引き戻されて、また行き過ぎるような往復運動が生じると、プラズマに振動が発生しているように見える。
- シース
- プラズマ宇宙論