メノウ
メノウ | |
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アルゼンチンの縞瑪瑙; 横幅9.5cm | |
分類 | 酸化鉱物 石英種(Quartz variety) |
化学式 | SiO2 二酸化ケイ素 |
結晶系 | 三方晶形 微晶質(Rhombohedral Microcrystalline) |
晶癖 | 潜晶質 二酸化ケイ素(Cryptocrystalline silica) |
へき開 | なし |
断口 | 非常に鋭い貝殻状. |
モース硬度 | 6.5–7 |
光沢 | ガラスや樹脂光沢 |
色 | 無色(内包物により多彩な色を現す) |
条痕 | 白色 |
透明度 | 半透明から不透明 |
比重 | 2.58–2.64 |
屈折率 | 1.530–1.540 |
複屈折 | up to +0.004 (B-G) |
多色性 | なし |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
メノウ(瑪瑙、碼碯、agate、アゲート、アゲット)は、縞状の玉髄の一種で、オパール(蛋白石)、石英、玉髄が、火成岩あるいは堆積岩の空洞中に層状に沈殿してできた、鉱物の変種である。
性質・特徴
[編集]主成分は SiO2(二酸化ケイ素)。比重は2.62-2.64、モース硬度は6.5-7。隠微晶質であるため、肉眼では結晶を認めることができず、非晶質のように見える。
しばしば中心部にすき間を残し、晶洞を形成していることがあり、またまれに液体・気体がそのすき間に存在することもある。
成分・種類
[編集]- 縞瑪瑙(しまめのう、Banded agate)
- タマネギのように同心状に縞が成長したもの、平行に縞が成長したもの、レースのカーテンのように縞が成長したものなど、様々な縞瑪瑙が存在する。
- オニキス(onyx、オニックス)
- →詳細は「オニキス」を参照
- 縞瑪瑙の中でも平行な縞状模様があるもの。蛋白石質と石英質の部分が交互に配列するため、縞状に見え、黒色と白色がきれいに層状になっているものは、古くからカメオ細工の材料として用いられている。縞を生かしたデザインにされる場合と、単色部分のみを用いたデザインにされる場合がある。単に縞瑪瑙とも呼ばれる。
- サードニクス(sardonyx、サードニックス)
- オニキスの一種で、縞目が紅色と白色に彩られていて美しいもの。紅縞瑪瑙とも呼ばれる。
- サンダーエッグ(雷の卵、Thunderegg)
- メノウや蛋白石、碧玉が満たされた、流紋岩等のノジュール(団塊)。アメリカのオレゴン州の先住民の伝説に由来している。アメリカのオレゴンとニューメキシコ州やドイツのザクセン州で産出したものが有名。
- 雨花石(うかせき、Rain flower pebble、ユーファストーン)
- 南京近郊の川で採れるカラフルな模様石(主にメノウや碧玉)で、磨かなくともそのままの状態で美しい。かつて南京の雨花台で採れたことに由来している。乾燥時は白っぽいが、水に濡らすと透明感や色の鮮やかさが増す。
- 錦石(にしきいし、Nishiki stone)
- 青森県津軽地方で採れる、メノウや碧玉、珪化木などの磨くとツヤの出る美しい色彩の石。どのような石か、明確に定義されているわけではない。
- 苔瑪瑙(こけめのう、Moss agate、モスアゲート)
- 緑泥石や鉄やマンガンの酸化物の内包により、緑や赤色等の苔状の模様が現れたもの。インドやハンガリーのマトラ山脈で産出したものが有名。
- 樹枝瑪瑙(Dendritic agate、デンドリティックアゲート)
- 鉄やマンガンの酸化物の内包により、黒や赤色等のシダ状の模様が現れたもの。石の中に0.何ミリという薄さで模様が入っているため、薄くカットされアクセサリー用に加工される。マダガスカルやインドのケン川で産出したものが有名。
- 羽毛瑪瑙(うもうめのう、Plume agate、プルームアゲート)
- 鉄やマンガンの酸化物の内包により、黒や赤色等の羽毛や草花状の模様が現れたもの。樹枝瑪瑙とは異なり、模様にボリュームがある。アメリカのテキサス州、オレゴン州、カリフォルニア州で産出したものが有名。
- 針入り瑪瑙(はりいりめのう、Sagenite agate、セージナイトアゲート)
- 針鉄鉱や沸石、輝安鉱等の針状鉱物の内包により、針状の模様が現れたもの。模様だけを残し、メノウに置換しているもの(仮晶)も多い。アメリカのカリフォルニア州ニポモで産出したものが有名。
- チューブアゲート(Tube agate)
- 針状に伸びた針状鉱物や霰石、鉄やマンガンの酸化物を芯に、周囲を玉髄が覆い管状の模様が現れたもの。
- 虹瑪瑙(にじめのう、Iris agate、イリスアゲート)
- 稀に透明度の高い縞瑪瑙の中に、薄くスライスして強い光を当てると虹が現れるものがある(細かい縞が回折格子の役割を果たすため) 。ギリシア神話に登場する虹の女神イリス(Iris)に由来している。ブラジル、アメリカ、アルゼンチンやメキシコでの産出が確認されている。
- ファイアーアゲート(Fire agate)
- 葡萄状の玉髄を多層の薄膜状褐鉄鉱が覆うことにより、虹が現れたもの。メキシコとアメリカのアリゾナ州での産出が確認されている。人工的に処理された虹の無い赤いメノウ、クラブファイアーアゲート(スパイダーウェブ・カーネリアン)がよくファイアーアゲートの名で流通しているが、まったくの別物である。
- 水入りメノウ
- 空洞中に液体の水が含まれるもの。中に含まれる水は、メノウが形成されたときの岩漿水であると言われることが多いが、必ずしもそうとは限らない。中の水は、多孔質の構造を通して蒸発しやすく、逆に長時間水中に浸けることで、人為的に水を入れることもできる。
産出地
[編集]メノウはありふれた鉱物で、世界各地で産する。特にメキシコ、アルゼンチンなどの南米や、ドイツ、オーストラリア、ボツワナ、ポーランド、チェコやイギリスのスコットランドのものはカラフルで、世界中のコレクターの間で人気がある。日本では青森県、石川県、群馬県、富山県、北海道などで産し、七宝のひとつに数えられている。
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アルゼンチンのメノウ
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メキシコのメノウ
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ドイツのメノウ
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オーストラリアのメノウ
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ボツワナのメノウ
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ポーランドのメノウ
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チェコのメノウ
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スコットランドのメノウ
用途・加工法
[編集]メノウは、多孔質であるため、人工的に染色が可能であり、玉髄とともに、灰皿、置物、印鑑など、さまざまな工芸の彫刻材料として使われる。穴を開けた球状の縞瑪瑙に、ゴムや紐を通し、ジュエリーや数珠、ブレスレットやペンダントなどのアクセサリーとしても使われる。硬度が高いのを利用して、化学実験用の乳鉢などにも用いられている。また皮革の艶出し用のローラー素材として使われている。
国内における加工史としては、弥生時代後晩期の遺跡である平原遺跡において、瑪瑙製管玉が出土している(詳細は、「平原遺跡#主な出土品」を参照)。
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メキシコのメノウを用いた、コウノトリの彫物
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スライス後着色され、コースターとして製品化されたメノウ
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いろいろな色に着色されたメノウ
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化学実験に用いられるメノウの乳鉢
定義・由来
[編集]瑪瑙の名前は、石の外観が馬の脳に似ているためつけられた[1]。事実、10世紀前半成立の『和名類聚抄』巻11「玉類」の項目では、メノウを「馬脳」と表記し、「俗音、女奈宇」と記述する。英語の agate は、ギリシャ語の achates に由来し、これはイタリア・シチリア島の同名の川(Acate、現名はディリッロ川)でこの石がとられていたためである。
碧玉や玉髄などが層状になっているものがメノウであり、層状になっていない場合はメノウではない。例えばメノウの縞模様が見えない場合、メノウの一層だけを切り出した場合はすでにメノウではない。しかし宝飾業界ではあまり区別されず、碧玉や玉髄のことを「メノウ」と呼んだり、逆に例えば赤メノウを「カーネリアン」(紅玉髄)と呼んだりすることが多い(縞模様が見えないものがカーネリアンで、縞模様が見えるものは赤メノウである)。
その他
[編集]- 仏教の『無量寿経』では、七宝の一つとされる。
- 中国人の好みであったためか、古墳時代後期の輸出品として、メノウの記録が残り、『新唐書』巻220の記述として、「永徽の初、孝徳が即位して白雉と年号を改めた。大きさ斗のような琥珀と五升の器のような瑪瑙(メノウ)を献じた」と記し、後代の『宋史』においても、「永徽5年(654年)、(日本が)使を遣して琥珀、瑪瑙を献ず」と再録している。
- 島根県花仙山産のメノウを製作できるいずもまがたまの里 伝承館があったが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行にともない、2022年に閉館されている。
脚注
[編集]参考文献
[編集]- 益富寿之助『鉱物 : やさしい鉱物学』保育社〈カラー自然ガイド〉、1974年、31-37頁。ISBN 4-586-40013-7。
- 松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年、227頁。ISBN 4-05-402013-5。
- 青木正博『鉱物分類図鑑 : 見分けるポイントがわかる』誠文堂新光社、2011年、187-188頁。ISBN 978-4-416-21104-5。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- Agate (英語), MinDat.org, 2012年3月31日閲覧。
- “瑪瑙(メノウ)”. 地質標本館. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 2012年3月31日閲覧。