薬缶吊る
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(やかんづるから転送)
薬缶吊る(やかんづる)は、長野県長野地方に伝わる妖怪[1]。ヤカンヅル[2]、ヤカンズル[3]、薬鑵ズルとも表記する[4]。
やかんの姿をした妖怪。夜遅い時間に森の中を歩いていると、木の上からぶら下がって来るといわれる[2]。同様に森の中や山中で木から器物がぶら下がる系統の妖怪は日本各地に伝承があり、青森県のエンツコ下がり、主に西日本に伝わる釣瓶落とし、岡山県のさがり、高知県の茶袋などがある[4][5]。
出現する場所が決まっているのでこれを避けて歩くこともできるが、これを目にすると病気になってしまうとの説もある[4]。
なお、木の上から下がってくるので目撃した人は驚くが、特に危害は加えないという説もある[5]。
小説家・山田野理夫による児童向け書籍には、「喉が渇いた」「水が欲しい」という類の言葉を口にすると薬缶吊るが下りてきて、口を付けて中の水を飲むと、甘い味がしたという民話がある[6]。
中国の書『捜神記』には、貧苦に喘ぐ上に家人の死が続いて不幸な家が、占い師の助言に従い、町で鞭を買って桑の木に掛けておいたところ、3年後に井戸がえをした際に大量の銭、銅器、鉄器などが出てきたという話があり、薬缶吊るはこの話に関連しているとの説もある[5]。
脚注
[編集]- ^ 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、338頁。ISBN 978-4-620-31428-0。
- ^ a b 柳田國男「妖怪名彙(三)」『民間伝承』第3巻第12号(通巻第35号)、民間伝承の会、1938年12月、12頁、NCID AN00236605。
- ^ 谷川健一監修『別冊太陽 日本の妖怪』平凡社、1987年、133頁。ISBN 978-4-582-92057-4。
- ^ a b c 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社〈Truth In Fantasy〉、1990年、95-97頁。ISBN 978-4-915146-44-2。
- ^ a b c 水木しげる『図説 日本妖怪大全』講談社〈講談社+α文庫〉、1994年(原著1991年)、451頁。ISBN 978-4-06-256049-8。
- ^ 山田野理夫『たんたんころりん』太平出版社〈おばけ文庫〉、1978年、41-42頁。ISBN 978-4-8031-1206-1。