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ハシブトガラス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オサハシブトガラスから転送)
ハシブトガラス
ハシブトガラス Corvus macrorhynchos
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: スズメ目 Passeriformes
: カラス科 Corvidae
: カラス属 Corvus
: ハシブトガラス
C. macrorhynchos
学名
Corvus macrorhynchos
Wagler, 1827
和名
ハシブトガラス
英名
Large-billed crow
亜種
  • チョウセンハシブトガラス
  • リュウキュウハシブトガラス
  • オサハシブトガラス
分布域

ハシブトガラス嘴太烏、嘴太鴉、学名Corvus macrorhynchos)は、スズメ目カラス科カラス属分類される鳥類の一[1]。日本で「カラス」といえば本種かハシボソガラスを指すのが一般的である。

分布

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ユーラシア大陸東部(東洋区旧北区東部)に分布する。

日本では留鳥として、小笠原諸島を除き全国で、低地から山地まで幅広く分布する[2]

特徴

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全長約56cm、翼開長約100cm、体重550-750gほどで、全身が光沢のある黒色をしており、雌雄同色。ハシボソガラスに似るがやや大きく、が太く上嘴が曲がっているところと、額(嘴の上)が出っ張っているところで判別できる。また、ハシボソガラスよりも澄んだ「カー」という声で鳴き、また、鳴く際は、体を水平にし、鳴き声に合わせて尾を上下に振る(ペア相手と居場所を確認し合うときのみ、翼を上に上げ、パタパタ振りながら鳴く)。なお、突然変異で白い個体が出現することもあり、これはアルビノまたは白変種と考えられる。

※下に掲載されている写真は幼鳥のもの。幼鳥は虹彩の色が青や灰色で、口の中もピンクであるなど、成鳥との外見的相違が目立つ。

生態

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英名 "jungle crow" (かつてはハシブトガラスに分類されていたが現在は別種として扱われている近縁種も含む総称)が示すように、元来は森林に住むカラスであり、現在も山間部など森林地帯に広く分布しているが、近年日本では都市部において急速に分布を拡げた。

食性は雑食で、昆虫や木の実、動物の死骸など、あらゆるものを食べる。特に脂質を好み、石鹸和蝋燭を食べることもある。また、スズメなどの小鳥ネズミリス昆虫コウモリなどの生きた小動物を捕食することもある。主に電柱高木上など高所から地上を見下ろして餌を探し、餌を見つけると下りて行ってとり、高所に戻って食べる。鋭い嘴は、つつくだけでなく咬む力にも優れており、肉なども引きちぎって食べることができる。生態が類似するハシボソガラスよりも肉食性が強い[3]。前述のとおり油脂に富んだ物を好むためマヨネーズの残りかすや切り落とされた肉の獣脂を狙い生ゴミを漁ることも多い一方、胡桃など硬い殻をもつ蒴果を割るために車道に落とし轢かせるなど知恵を働かせることもある。カラスの知能は一般の5〜7歳児と同程度であるという説も存在しており、実際にIQテストなどによる証明が行われている。[4]

また、知能の高さ故に「遊ぶ」という概念を持っており、木の枝にジャンプで届くかどうかのチャレンジを幾度となく繰り返すなど、捕食や採餌とは関係のない、つまり生存には直接の必要がない行動をとっている様子も確認されている。[5]

産卵期は4月頃で、主に樹林内の大木に木の枝などを用いた巣を作り、2〜5個の卵を産む。抱卵日数は約20日で、メスのみが抱卵する。雛への給餌は雌雄で行い、雛は孵化してから約1か月で巣立つ。その後約1か月は家族群で行動し、独立する。若鳥は約3年間群れで行動し、その後ペアで縄張りを構える。

夜間人が立ち入る事の無いよく茂った森に集団ねぐらをとる習性があり、冬期には特に多数が集まる。

頭のいいカラスは、雪を水の代わりに浴びる「雪浴び」や、アリを羽毛になすりつけたり、巣の上に伏せてアリにたからせる「蟻浴(アリの持つ蟻酸によって、ハジラミを退治している)」、銭湯の煙を浴びる「煙浴」、洗濯用洗剤などの粉洗剤を浴びる「薬浴」など、いろいろな入浴方法を実践している[6]

寿命は飼育下では約20年、野生下では約10年とされる。

人間との関係

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ハシブトガラスの頭部

前述のように元来は森林などに住む鳥であったが、近年都市化が進んだ日本では都市部においても分布を拡げており、「都会の鳥」としてのイメージが定着した。

何でも食糧にしうるハシブトガラスにとって都市部は食糧が豊かであったこと、止まり木代わりになる構造物が入り組んでいること、また天敵となる猛禽類が住めなくなった事などが相まって、その数は激増し、早朝に群れで生ゴミを漁る光景や、洗濯物を干す針金ハンガーを集めて営巣する様子などが各地で観察されるようになった。

近年都会で急激に数を増やしたのには、自治体により黒色のゴミ袋に代わり透明・半透明のゴミ袋の使用が義務づけられたため、視覚により餌を探すカラスにとってゴミを漁りやすくなった事が原因の一つとして指摘されている。

その対策として、ゴミ置き場にネット等を用いてカラスがゴミを漁れないようにする、夜間のゴミ収集を行いカラスの行動する時間にゴミを残さないなどの方法[7]がとられた。

また2004年には、4色型色覚であるカラスの目の特性を逆手にとり、紫外線を遮断する特殊な顔料(企業秘密)を混ぜ、カラスには中身をわからなくした黄色いポリエチレンゴミ袋を、大倉工業三井化学宇都宮大学農学部杉田昭栄教授の協力で開発した。コストは従来のゴミ袋よりも高いが、大分県臼杵市東京都杉並区などで試験的に導入されている。

また、都市部では街路樹電柱などでも営巣し繁殖を行うが、本能的に気性が荒くなりがちな4-7月の繁殖期においては、時に巣の近くを歩く人間を攻撃(後頭部への蹴り)することもある。

成鳥は滅多にトラップにかからないが、若鳥は経験不足と好奇心から捕まってしまう事がある。

カラスは非常に知能の高い鳥で、トラップカカシを見抜く。記憶力も高く、石や銃で狙われた経験があるものは、石を拾おうとしたり傘をライフルのように構えただけで逃げ出す。反面、幼鳥から飼い馴らしたカラスは人間に非常によく懐き、トイレを覚えたり、飼い主の肩にとまって眉毛を丁寧に毛繕いしたり、さらにはキュウカンチョウのように人間の言葉を真似て喋ったりと、愛玩鳥として最も優れた特性を持つ。

東京都においては石原慎太郎都知事の政策により、2001年9月3日に都庁内にカラス対策プロジェクトチーム[8]が発足し(同年月28日に報告書を作成した後解散)、同年12月からトラップによるカラスの捕獲を中心としたカラス対策が実施されている。

狩猟鳥獣の一種なので、定められた猟区、狩猟期間では狩猟可能である(期間は、猟区内10月15日〜3月15日、ただし北海道は10月1日〜2月末日)。

各部の写真

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日本国内で見られる亜種

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ハシブトガラス
Corvus macrorhynchos japonensis Bonaparte, 1850
北海道から九州にかけて分布する。
チョウセンハシブトガラス(朝鮮~)
Corvus macrorhynchos mandshuricus Bturlin, 1913
対馬付近に分布し、亜種ハシブトガラスよりやや小型。
リュウキュウハシブトガラス(琉球~)
Corvus macrorhynchos connectens Stresemann, 1916
奄美群島以南の南西諸島に分布し、亜種ハシブトガラスよりやや小型。
オサハシブトガラス(長~)
Corvus macrorhynchos osai Ogawa, 1905
八重山列島に分布し、亜種ハシブトガラスより小型。

脚注

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  1. ^ 『小学館の図鑑NEO 鳥』、小学館、2002年
  2. ^ 柴田佳秀『街・野山・水辺で見かける 野鳥図鑑』日本文芸社、38頁。ISBN 978-4-537-21685-1 
  3. ^ 松原P129,151,175など
  4. ^ ANIMALive.me. “ANIMALive(アニマライブ)動物と生きる”. ANIMALive. 2021年10月5日閲覧。
  5. ^ Matsubara, Hajime; 松原始. (2016). Karasu no kyōkasho. Tōkyō: Kōdansha. ISBN 978-4-06-293357-5. OCLC 945180101. https://www.worldcat.org/oclc/945180101 
  6. ^ 戸塚 学・箕輪 義隆 『身近な野鳥観察ガイド』 (文一総合出版)、 2012年
  7. ^ 2002年に東京都杉並区が試験実施したがコスト高の問題が指摘された。
  8. ^ プロジェクトチーム報告書

参考文献

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  • 柴田佳秀 『カラスの常識』 子どもの未来社〈寺子屋新書〉、2007年。
  • 松原始 『カラスの教科書』 〈雷鳥社〉、2012年。

外部リンク

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