カルタンの定理A, B
数学においてカルタンの定理(カルタンのていり、英: Cartan's theorem)とは、1951年頃にアンリ・カルタンによって証明された、シュタイン多様体 X 上のある連接層 F に関する定理で、A と B の二種類が存在する。それらはいずれも多変数複素函数論に対する応用や、層コホモロジーの一般的な発展に対して意義のあるものである。
- カルタンの定理 A:F は大域切断によって張られる層である。
定理 B は、以下のようなコホモロジーにおける用語で表現される(これは Cartan (1953, p.51) が J.-P. Serre に帰するものとしている式である):
- カルタンの定理 B:すべての p > 0 に対して H p(X, F) = 0 である。
代数幾何学における連接層に対する同様の性質は、X がアフィンスキームである場合に、Serre (1957) によって示されている。定理 B と類似のそのような定理は、以下のように記述される (Hartshorne 1977, Theorem III.3.7):
- 定理 B(スキーム論的表現):X をアフィンスキームとし、F を X 上のザリスキー位相に対する OX-加群の準連接層とする。このとき、すべての p > 0 に対して H p(X, F) = 0 である。
以上の定理は、多くの重要な場面で応用される。素朴に考えると、これらの定理は、シュタイン多様体 X の閉複素部分多様体 Z 上の正則函数は、X 全体上の正則函数に拡張可能であることを意味している。より深い段階では、これらの定理はGAGAの定理を証明するためにジャン=ピエール・セールによって利用された。
カルタンの定理 B は、複素多様体 X 上のすべての連接層 F(resp. ネータースキーム X 上の準連接層 F)に対して H 1(X, F) = 0 であるなら、X はシュタイン多様体(resp. アフィン多様体)であるという明確な結果である。(Serre 1956) (resp. (Serre 1957) and Hartshorne (1977, Theorem III.3.7)) を参照されたい。
関連項目
[編集]参考文献
[編集]- Cartan, H. (1953), “Variétés analytiques complexes et cohomologie”, Colloque tenu à Bruxelles: 41–55.
- Gunning, Robert C.; Rossi, Hugo (1965), Analytic Functions of Several Complex Variables, Prentice Hall.
- Hartshorne, Robin (1977), Algebraic Geometry, Springer-Verlag, ISBN 0-387-90244-9.Serre, Jean-Pierre (1956), “Géométrie algébrique et géométrie analytique”, Université de Grenoble. Annales de l'Institut Fourier 6: 1–42, doi:10.5802/aif.59, ISSN 0373-0956, MR0082175.
- Serre, Jean-Pierre (1957), “Sur la cohomologie des variétés algébriques”, Journal de Mathématiques Pures et Appliquées 36: 1–16.
- Serre, Jean-Pierre (1956), “Géométrie algébrique et géométrie analytique”, Université de Grenoble. Annales de l'Institut Fourier 6: 1–42, doi:10.5802/aif.59, ISSN 0373-0956, MR0082175