クチナガワニ属
クチナガワニ属 | ||||||||||||||||||||||||
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ニシアフリカクチナガワニ
Mecistops cataphractus | ||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Mecistops Gray, 1844 | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
African slender-snouted Crocodiles African sharp-nosed Crocodiles | ||||||||||||||||||||||||
分布域
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クチナガワニ属[2](学名:Mecistops)は、クロコダイル科に属する属。アフリカクチナガワニ属とも呼ばれる。サブサハラアフリカから2種が知られ、名前の通り細長い吻が特徴である。属名はギリシア語の「μήκιστ(mēkist、最長を意味)」と「ὄψις (ópsis、外観を意味)」あるいは「ὄψ (óps、顔を意味)」に由来し、細長い体を示している[2]。
分類
[編集]以前はクロコダイル属に分類されていたが、DNAおよび形態学研究により、実際にはクロコダイル属の基部系統であることが示され、独自の属に分類された[3][4][5][6]。アフリカクチナガワニ1種のみを含むと考えられていたが、遺伝子解析により、ニシアフリカクチナガワニとチュウオウアフリカクチナガワニの2種に分けられた。両種は約650万-750万年前の中新世に分岐し、カメルーン火山列によって隔てられている[7][8]。
系統
[編集]以下の系統樹は、形態学的、分子学的データを組み合わせた2つの研究に基づく[9][10]。ほとんどの形態学的分析では、エウテコドンとBrochuchusの間に密接な関係があることが分かっている[11]。
クロコダイル科 |
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(クラウングループ) |
一方他の形態学的研究では、クチナガワニ属はクロコダイル科の基部系統であり、コビトワニ亜科よりもクロコダイル属に近いことが判明しており[1][11]、以下の系統樹に示される[11]。赤色は古代アフリカ系統、黄色は新熱帯系統、緑色はインド太平洋系統を示す。
クロコダイル科 |
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下位分類
[編集]和名は中井(2023)による[2]。
- ニシアフリカクチナガワニ (クチナガワニ、アフリカクチナガワニ) Mecistops cataphractus (Cuvier, 1825) (West African slender-snouted crocodile) ベナン、ブルキナファソ、セネガル南部、ガンビア、ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、リベリア、マリ共和国南部、ナイジェリア、シエラレオネ、トーゴに分布
- チュウオウアフリカクチナガワニ (フクスクチナガワニ) Mecistops leptorhynchus (Bennett, 1835) (Central African slender-snouted crocodile) カメルーン、赤道ギニア、ガボン、アンゴラ北部、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国に分布
形態
[編集]中型のクロコダイルで、ナイルワニよりわずかに小さく、通常全長は約2.5mに達し、最大全長は4.2m[12][13]。体重は125-325kg[14][15]。雄は雌よりもかなり大きい。幼体は黄褐色で、暗褐色の斑点が散らばる。成体の体色は黄色、オレンジ色、茶色、灰褐色などで、斑点が残る個体もいる。細長い吻は水中で魚類を捉える際に適応している[2]。
生態と行動
[編集]中部アフリカと西アフリカの淡水域に生息し、獲物や天敵から身を隠すために、植物が茂った河川や湖を好む。汽水域に進出することもある。主に魚類、両生類、甲殻類を捕食する。成体は小型哺乳類、水生のヘビ、カメ、鳥を捕食することもある。通常は陸上で日光浴をする。繁殖期以外は群れで見られない。雌は主に植物質から成る塚状の巣を作る。巣は高さ50-60 cm、直径1-2mである。巣は雨季の始まりとともに川岸に作られ、繁殖時期は同一個体群内であっても異なる。コビトワニ属と営巣期が重なるが、その期間は短く、コビトワニは川から離れた場所に巣を作ることもある。繁殖期は1-7月[2]。
巣が完成してから約1週間後に、13-27個、平均16個の卵を産み、その大きさは母親の体と比べて非常に大きい。巣は朽ちかけた植物で作られる[16]。抱卵期間は他のクロコダイルと比較して長く、雌では平均90-100日で、雄では通常85-86日であるが、110日を超えることもある。雌は巣の近くに留まるが、他のクロコダイルのように熱心に巣を守らない。卵が孵化し、幼体が鳴き声を発すると、雌は巣を破って孵化を助ける。幼体はその後、浸水林に分散していく。スッポン科などの捕食者も存在するが、捕食は最小限にとどまっており、卵が大きく、孵化期間も長いことに起因する可能性がある。性別は温度によって決まり、28-31℃では雌が、31-33℃では雄が産まれる。卵が耐えられる最高温度は34℃で、その場合雌が産まれる[17]。性別は産卵後14日目から21日目の間に決まる。幼体は早熟で、親と行動は似る。また身を守るために非常に鋭い歯を持つ。性成熟の年齢や、寿命については不明な点が多い[2]。
聴覚、視覚、嗅覚が優れている。体全体に感覚孔があり、その中に神経末端がある。体を覆う感覚器官と、主に吻の周りで頭部を覆う器官がある。半透明の瞬膜は水中でゴーグルのように機能し、視力を改善し、目の損傷を防ぐ。特に幼体は発声を行い、母親に孵化の時期を知らせる。脅威を感じたときにはシューという音や、うなり声を上げることもある。
人間との関係
[編集]水生傾向が強く、生息地も人里離れた場所が多いため、研究がほとんど行われていない。旧アフリカクチナガワニ(2種を含む)は、IUCNのレッドリストにおいて近絶滅種に分類されている。皮やブッシュミートを目的とした狩猟、生息地の喪失、餌の魚類の乱獲、生息地の撹乱などが脅威である。以前生息していたいくつかの国からは完全に絶滅しており、他の地域でも減少している。特にガボンでは、比較的健全なチュウオウアフリカクチナガワニの個体群が維持されている[7]。野生個体数については不明な点が多いが、1,000-20,000頭と推定されている。ヨーロッパと北アメリカの多くの動物園で飼育・繁殖されており、コートジボワールでは飼育下繁殖プログラムが開始されている。
出典
[編集]- ^ a b Rio, Jonathan P.; Mannion, Philip D. (6 September 2021). “Phylogenetic analysis of a new morphological dataset elucidates the evolutionary history of Crocodylia and resolves the long-standing gharial problem”. PeerJ 9: e12094. doi:10.7717/peerj.12094. PMC 8428266. PMID 34567843 .
- ^ a b c d e f 中井穂瑞嶺『ディスカバリー 生き物再発見 ワニ大図鑑』誠文堂新光社、2023年4月15日、204-205頁。ISBN 978-4-416-52371-1。
- ^ McAliley, L. Rex; Willis, Ray E.; Ray, David A.; White, P. Scott; Brochu, Christopher A.; Densmore, Llewellyn D. (2006). “Are crocodiles really monophyletic?—Evidence for subdivisions from sequence and morphological data”. Molecular Phylogenetics and Evolution 39 (1): 16–32. doi:10.1016/j.ympev.2006.01.012. PMID 16495085.
- ^ Brochu, C. A.; Njau, J.; Blumenschine, R. J.; Densmore, L. D. (2010). “A new horned crocodile from the Plio-Pleistocene hominid sites at Olduvai Gorge, Tanzania”. PLoS ONE 5 (2): e9333. Bibcode: 2010PLoSO...5.9333B. doi:10.1371/journal.pone.0009333. PMC 2827537. PMID 20195356 .
- ^ Robert W. Meredith; Evon R. Hekkala; George Amato & John Gatesy (2011). “A phylogenetic hypothesis for Crocodylus (Crocodylia) based on mitochondrial DNA: Evidence for a trans-Atlantic voyage from Africa to the New World”. Molecular Phylogenetics and Evolution 60 (1): 183–191. doi:10.1016/j.ympev.2011.03.026. PMID 21459152.
- ^ Brochu, C. A.; Storrs, G. W. (2012). “A giant crocodile from the Plio-Pleistocene of Kenya, the phylogenetic relationships of Neogene African crocodylines, and the antiquity of Crocodylus in Africa”. Journal of Vertebrate Paleontology 32 (3): 587. Bibcode: 2012JVPal..32..587B. doi:10.1080/02724634.2012.652324.
- ^ a b Shirley, M. H.; Vliet, K. A.; Carr, A. N.; Austin, J. D. (2014). “Rigorous approaches to species delimitation have significant implications for African crocodilian systematics and conservation”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences 281 (1776): 20132483. doi:10.1098/rspb.2013.2483. PMC 3871313. PMID 24335982 .
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- ^ “Crocodylus cataphractus”. WAZA. 2016年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月18日閲覧。
- ^ Britton, Adam (2009年1月1日). “Crocodylus/Mecistops cataphractus”. Crocodilians: Natural History & Conservation. Florida Museum of Natural History. 2022年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年1月18日閲覧。
- ^ “African Slender-Snouted Crocodile”. Marylandzoo.org. The Maryland Zoo in Baltimore. 2024年11月29日閲覧。
- ^ “Slender-Snouted Crocodile”. Sandiegozoo.org.. San Diego Zoo Animals. 2024年11月29日閲覧。
- ^ Groombridge, Brian, ed (1982). The IUCN Amphibia–Reptilia Red Data Book. ISBN 9782880326012
- ^ Bradford, C.; Eschenbrenner, M. (June 2017). “Health Survey Including Selected Blood Parameters in the African Slender Snouted Crocodile (Mecistops cataphractus) at the Abidjan Zoo in Cote d'Ivoire”. Journal of Zoo and Wildlife Medicine 48 (2): 510–513. doi:10.1638/2016-0006R3.1. PMID 28749270.