コッヘル
コッヘルとは、キャンプ、登山等主に屋外で使用される携帯用の小型の調理器具である。語源はドイツ語のKocher(調理するもの、調理器具)による。コッヒェル、コッフェルともいうがこれらは舞台発音からくるもので、現代ドイツ語発音に近い表記はコッハーである。英語のクッカー(Cooker )とほぼ同義。
概要
[編集]一般的に少人数での調理が念頭に置かれており、600ccから2,000cc前後の容量を持つものが多い。上から見るとソラマメ型の飯盒に対しコッヘルは円筒形[1]で、折りたたみ式の把手が付いているものが主流である。素材は主にステンレス鋼、アルミニウム、チタンが使用される。自転車や徒歩など携帯できる荷物が限られる場で使用するため、同じメーカーの製品であれば異なる大きさのものを組み合わせた上で重ねて収納(スタッキング)できるようにしてあるものがほとんどである。
形状
[編集]丸型
[編集]圧倒的に丸型が多く[1]、豊富なサイズや形式から選択できる[1]。荷物に制限がある場合に用いるため、蓋はフライパンや皿を兼ねるものが多い。こうした形状の蓋は飯盒と比較すると密閉度が低くなるため、米の炊飯時には蓋の上に重石を載せて密閉度を高めるとよい。より携帯性を重視する場合は細長い深胴、調理や食器としての利便性を重視する場合は浅胴のものが選択される。深胴のものはポットとして使用できるように注ぎ口状に加工されたものもある。ポータブルストーブ用のガスボンベに合わせた口径を持つものも少なくない[1]。
角型
[編集]袋入りのインスタントラーメンを調理しやすいように四角い形状をしたコッヘルもあるが、「パッキングしやすい」「角の部分から注ぎやすい」[1]という長所がある一方、「均一に熱が回らない」「角の汚れが落ちにくい」[1]という短所がある。
材質
[編集]いずれの素材でも軽量化のため家庭用の調理器具に比べて肉薄に作られており、空焚きをすると容易に破損してしまうため、空焚きは厳禁である。
ステンレス鋼
[編集]硬くて耐久性がある一方、熱伝導率がアルミに比べて低いため焦げ付きやすいという欠点がある。また重量があるため軽量化を追求する場では敬遠される。耐久性が高く[1]、焦げ付いても金たわしやクレンザーで気軽に磨くことができ、家庭用品とほとんど変わらぬ感覚で使用できる。酸に弱いため、酸性の液体を入れっぱなしにするのは禁物である。
アルミニウム
[編集]家庭用アルミニウム製の調理器具同様、表面にアルマイト加工[1]やスミフロン加工を施してある。熱伝導率が高い[1]ため燃料の節約になるほか、焦げ付きにくく炊飯にも適しており、安価で軽量なこともあって最も一般的な素材。表面加工は強い衝撃などによって傷が付くと剥離してしまい、そこから錆が進行するため取り扱いには注意が必要。ステンレスのように金たわしやクレンザーで乱暴に磨くのは禁物である。錆が発生してしまったときには薄い酸性の液体で煮沸して錆を取った上で牛乳を煮ることによって新たな皮膜を作り応急処置とする。
チタン
[編集]硬くて軽量だが、加工が難しく希少な金属のためステンレスやアルミに比べて高価格である。熱伝導率が低く、ハンドル部分が調理中に熱くなりにくい、調理後そのままコッヘルに口をつけても火傷しにくい等のメリットがある一方、燃費が悪く調理に時間がかかる、炊飯に使用する場合にある程度の経験が要求されるなどの短所がある。
新時代のコッヘル
[編集]携帯性と汎用性を追求した道具としては既に完成されており、特に変わった製品などは見受けられなかったが、近年は燃費を重視し専用のストーブとの併用を前提とした新しいタイプのコッヘルが登場している。風防を兼ねた蛇腹状の蓄熱用金属板[注釈 1]を底面に配したもので、強風下でもロスなく調理できる上にこれまで外部に放出されて無駄になっていた熱も有効に利用できるため、大幅に燃費が向上している。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]参考文献
[編集]- 今井泰博、西原彰一著『山の道具Q&A』山と溪谷社 ISBN 4-635-04067-4