シアター・シエマ
シアター・シエマ Theater CIEMA | |
---|---|
シアター・シエマのスクリーン | |
情報 | |
正式名称 | シアター・シエマ |
開館 | 2007年12月15日 |
収容人員 | (2スクリーン計)157人 |
客席数 |
スクリーン1:90席 スクリーン2:67席 |
設備 | ドルビーデジタル5.1ch、DLP |
用途 | 映画上映 |
運営 | 有限会社69'nersFILM |
所在地 |
〒840-0831 佐賀県佐賀市松原2丁目14-16 セントラルプラザ3階 |
位置 | 北緯33度15分10.6秒 東経130度18分12.0秒 / 北緯33.252944度 東経130.303333度座標: 北緯33度15分10.6秒 東経130度18分12.0秒 / 北緯33.252944度 東経130.303333度 |
最寄駅 | JR佐賀駅 |
最寄バス停 | 佐賀市営バス・西鉄バス佐賀・祐徳バス・昭和バス「呉服元町」停留所(県道30号沿い) |
外部リンク |
ciema |
シアター・シエマ(Theater CiEMA)は、佐賀県佐賀市松原2丁目14-16の商業施設ビル『セントラルプラザ』3階にある映画館(ミニシアター)。
90席と67席の2スクリーンを有する。運営は有限会社69'nersFILM(シックスナイナーズフィルム)[1]。支配人は重松恵梨子[1]。
特色
[編集]名称のシエマ(CiEMA)は、「空」を意味するスペイン語のCiero、「映画館」を意味する英語のCinemaを組み合わせた造語である[1]。運営する有限会社69'nersFILMの代表は芳賀英行である。芳賀は20代の頃にバーや喫茶店で自主上映会を行い、後に有名になった監督のデビュー前の作品を上映したこともあった[2]。芳賀は大分県日田市の日田シネマテーク・リベルテにもプロデューサーとして関与している[3]。シアター・シエマはスタジオシエマという映像制作部門を有しており、アニメーションや3DCGを利用した映像制作を行っている[4]。
佐賀セントラル時代は3スクリーンを有していたが、シアター・シエマの開館の際に1スクリーンがカフェスペースや交流スペースに転用された[1][5]。カフェスペースではコーヒー、アルコール、軽食などが販売され、交流スペースには映画関連書籍や絵本などが置かれた[1]。一部の座席はソファ席と交換され[6]、通常席に加えてペア席もある[7]。ミニシアター系作品や旧作名画を中心に上映している[6]。
観客と運営側の距離が近い映画館とされる[8]。2014年(平成26年)以降には映画館と常連客らが協力し、毎月1回の頻度で上映作品についてカフェで語り合う催しを開催している[9]。芳賀はシアター・シエマを「スクリーンもカフェも含めたサロンのような“空間”として発信したい」と語る[10]。
歴史
[編集]前史
[編集]- 佐賀東宝劇場
かつてこの場所には1939年(昭和14年)10月に開館した東宝映画劇場(後の佐賀東宝劇場)があり、1940年(昭和15年)6月には南側の隣接地に松竹世界館(後の佐賀松竹劇場)が開館した。戦後の1955年(昭和30年)には有楽映劇(後の佐賀有楽会館)が開館、1957年(昭和32年)2月28日には佐賀東映劇場が開館し[11]、佐賀東宝劇場を含む松原地区は映画館街となっていった。
- 佐賀セントラル
1996年(平成8年)には有楽商事によって佐賀東宝劇場が建て替えられ、3階に3スクリーンの佐賀セントラルが開館した。2001年(平成13年)にはイオンシネマ佐賀大和、2006年(平成18年)には109シネマズ佐賀と、佐賀市郊外に相次いでシネマコンプレックスが開館し、佐賀セントラルの観客数が激減したことで、2006年(平成18年)9月に閉館した[12]。かつて松原地区には多数の映画館があったが、佐賀セントラルの閉館によって映画館がなくなった[6]。
- 街なかキネマさが
佐賀セントラルの閉館後、市民有志によって自主上映団体「街なかキネマさが」が設立され、上映会やシンポジウムが開催された[12]。福岡市の69'ners FILMが映画館の運営に手を挙げ、佐賀セントラル跡地を改装して開館準備が進められた[12]。2007年(平成19年)12月12日から14日にはプレイベントが開催され、12日にはおやこでみるチェコアニメ上映会、13日には『ニュー・シネマ・パラダイス』の上映、14日には山田広野のライブと『バサラ人間』の先行上映が行われた[13][14]。
シアター・シエマの開館
[編集]2007年(平成19年)12月15日、セントラルプラザ3階にミニシアターとしてシアター・シエマが開館した[1][12][13][14][6][7]。オープニング作品はカンヌ国際映画祭で最優秀脚本賞と女優賞を受賞したスペイン映画『ボルベール〈帰郷〉』、河瀨直美監督作『殯の森』など6作品[12]。開館時には110席と72席の2スクリーンを有していた[1]。2007年(平成19年)末にはシアター・シエマに近い佐嘉神社でもロケが行われた『男はつらいよ ぼくの伯父さん』(1989年)が上映された[6]。
2008年(平成20年)2月23日夜にはキャバレーに変貌し、新宿ゴールデン街を拠点とするシャンソン歌手のソワレが『サン・トワ・マミー』や『ラ・ヴィ・アン・ローズ』(ばら色の人生)などを歌った[15]。それまでにも小規模な演奏会などを行っていたが、本格的に歌手を招いたライブは初めてのことだった[15]。
2008年(平成20年)4月27日には映画看板職人の豊福久義を講師とする「シエマスクール 昭和レトロ編」が開催され、カフェスペースをアトリエとして『男はつらいよ』シリーズの寅さんを描くパフォーマンスが行われた[16]。同年1月に『男はつらいよ ぼくの伯父さん』を上映した際、豊福に手描き看板の製作を依頼したことがきっかけである[16]。
2008年(平成20年)12月15日には開館1周年を迎えた[17]。12月10日には開館1周年記念イベントとして、フランス映画『男と女』で知られる歌手・俳優のピエール・バルーのライブが行われた[18]。開館からの1年間で『靖国 YASUKUNI』や『いのちの食べかた』など135本を上映し、最大のヒット作はリリー・フランキー主演の『ぐるりのこと。』だった[17]。開館後1年間の入場者数は約1万2000人と目標の半分程度であり、約250人の年間会員も目標の300人には届かなかった[10]。
2009年(平成21年)1月24日には伊万里市でもロケが行われた『天使のいた屋上』の高木聡監督による舞台挨拶が行われた[19]。2009年(平成21年)4月11日にはシアター・シエマなど九州4県の映画館で、鹿島市などでロケが行われた『島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん』の先行上映が開始された[20]。
2010年(平成22年)6月5日、佐賀市で開催される第5回食育推進全国大会のプレイベントとして、俳優の菅原文太と古川康佐賀県知事のトークセッションが開催され、韓国のドキュメンタリー映画『牛の鈴音』が上映された[21]。2011年(平成23年)9月10日には映画字幕翻訳者の戸田奈津子のトークイベントがあり、古川康佐賀県知事も出演した[22]。
2011年(平成23年)には午前十時の映画祭「赤のシリーズ」を開催する佐賀県唯一の映画館となった[23]。全国の上映館25館のうち第6位となる1万6307人を集め、人口比では全国第1位を記録した[24]。
2012年(平成24年)6月には映画監督の若松孝二による舞台挨拶が行われたが、若松は自身のトークそっちのけで来場者に質問を促すなどして観客と交流した[25]。2012年(平成24年)11月には福島県南相馬市を撮影したドキュメンタリー『相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶』が上映され、初日の11月17日には福岡県大川市出身の松林要樹監督による舞台挨拶が行われた[26]。
デジタル化対応後
[編集]2012年(平成24年)頃には映画のデジタルシネマ化が急速に進み、同年末時点では日本国内の85%の映画館がデジタル化を完了させた[27]。この頃のシアター・シエマはフィルム上映用の機材しか保有しておらず、フィルムからデジタルへの移行期用の臨時システムを使用していたが[28]、35ミリフィルム映写機では上映できないデジタルデータの映画配信が増え、機材の切り替えが映画館存続の課題となっていた[29]。
2013年(平成25年)12月に常連客が数十万円を寄付したことがきっかけとなり[28]、2014年(平成26年)3月には「シエマでいろんな映画をずっと見たいからシエマのデジタル化に協力する会」(シエデジ会)が発足し[30][31]、同年4月には常連客らが1000万円を目標とする募金活動を開始した[28]。飲食店など佐賀県内の100か所に募金箱が設置され、チャリティコンサートなどでも寄付を募った[29]。12月20日までに目標額を上回る1236万6384円を集め、2014年(平成26年)12月27日からデジタル上映が開始された[29]。
シエデジ会を継承する形で、2015年(平成27年)には映画館の支援団体「シエマでずっといろんな映画を観たいからシエマをサポートする会」(シエサポ会)が設立された[32]。2015年(平成27年)10月、シエサポ会はシアター・シエマを学びの場として月2回の講座を開く「かっぱカレッジ」を開始し、初回は和楽器に関する講座、第2階は金継に関する講座を行った[33]。
2017年(平成29年)12月には開館10周年を迎えた[9]。10年間で上映した作品は新作・旧作合わせて約1700作品にのぼる[9]。開館以来、シアター・シエマは佐賀県唯一のミニシアターだったが、2019年(令和元年)10月25日には唐津市にTHEATER ENYAが開館した[34]。
2019年(令和元年)以降の新型コロナウイルス感染症の世界的流行が理由で、2020年(令和2年)4月18日から5月14日までは長期休館した[4]。2021年(令和3年)9月4日には館内のユニバーサルデザイン化を目的とする募金を開始した[35]。
脚注
[編集]- ^ a b c d e f g 「ミニシアター 佐賀に『CIEMA』誕生 閉館のセントラルプラザ、来月再生」『毎日新聞』2007年11月23日
- ^ 「芳賀英行さん シエマ運営会社社長」『朝日新聞』2008年2月5日
- ^ 「街の映画館、変身 もう鑑賞だけじゃない 座席はソファ・カフェを併設」『朝日新聞』2009年6月8日
- ^ a b “佐賀のシアター・シエマ、営業再開!”. シネマトゥデイ (2020年5月15日). 2022年5月23日閲覧。
- ^ 「よみがえる映画館、地域交流の場に」『読売新聞』2009年9月6日
- ^ a b c d e 「佐賀市中心街に銀幕の灯再び 名画や単館系中心に上映へ 15日オープン」『朝日新聞』2007年12月13日
- ^ a b 「シエマ開館 ファン続々 旧佐賀セントラル 映画館に交流の場 佐賀市」『西日本新聞』2007年12月16日
- ^ 「九州シネマ 小さな映画館の灯(3) シアター・シエマ(佐賀市) デジタル化 常連が資金」『西日本新聞』2016年5月25日
- ^ a b c 「上映危機乗り越え10周年 シアター・シエマ 佐賀」『読売新聞』2017年12月16日
- ^ a b 「映画好き狙え、個性で勝負 単館系にリピーター『シアター・シエマ』1周年」『朝日新聞』2008年12月6日
- ^ 「三十三番目の直営劇場 佐賀東映劇場開館す」『東映社報』第47号、東映株式会社、1957年3月13日、7頁、2023年10月9日閲覧。
- ^ a b c d e 「佐賀中心街の映画館復活 『シエマ』15日開館 文化復興を目指す 福岡の企画会社 地元も運営に協力」『西日本新聞』2007年12月7日
- ^ a b 「ミニシアター『CIEMA』オープン間近 12日からプレイベント 佐賀」『毎日新聞』2007年12月7日
- ^ a b 「佐賀市中心部に映画館が"復活" 15日オープン フリースペースも併設」『読売新聞』2007年12月13日
- ^ a b 「シャンソン歌手熱唱、100人うっとり 一夜の“キャバレー”」『朝日新聞』2008年2月24日
- ^ a b 「絵看板に寅さん描こう シエマで27日、絵師が指導 昭和初期のアニメも上映」『朝日新聞』2008年4月25日
- ^ a b 「映画好き狙え、個性で勝負 単館系にリピーター『シアター・シエマ』1周年」『朝日新聞』2008年12月6日
- ^ 「ピエール・バルーさんがライブ開催 10日、佐賀のシアター・シエマで」『朝日新聞』2008年12月6日
- ^ 「『天使のいた屋上』高木聡監督、舞台あいさつ 佐賀の映画館」『朝日新聞』2009年1月25日
- ^ 「『見栄捨てたら人生楽しい』島田洋七さん語る『がばいばあちゃん』先行上映」『朝日新聞』2009年4月10日
- ^ 「菅原文太さん食育語る 知事とトークセッション 『無農薬の物を』」『読売新聞』2010年6月6日
- ^ 「トークイベント 戸田奈津子さん、字幕翻訳の裏話披露 佐賀の映画館」『毎日新聞』2011年9月11日
- ^ 「午前十時の映画祭 名作50本を1年かけ上映 来月からシアター・シエマ」『毎日新聞』2011年1月15日
- ^ 「午前十時映画祭あすから第2弾 シアター・シエマ 佐賀」『読売新聞』2012年3月2日
- ^ 「若松孝二監督死去『映画を心底愛してた』 『シアターシエマ』重松支配人が急逝の故人しのぶ」『毎日新聞』2012年10月19日
- ^ 「東日本大震災 福嶌・南相馬の人びと ありのままを見て 松林監督作品を上映、あすから佐賀で」『毎日新聞』2012年11月16日
- ^ 「平野勇治のミニシアターの映写室から デジタル化は映画の革命? 1」『中日新聞』2013年1月16日
- ^ a b c 「シアター・シエマ存続へ募金 常連客 1000万円目標 デジタル化 佐賀」『読売新聞』2014年4月21日
- ^ a b c 「シエマの募金 1000万円達成 27日からデジタル上映」『読売新聞』2014年12月22日
- ^ 「シアター・シエマ 佐賀唯一のミニシアター 『映画文化残すため支援を』デジタル化へ機材1000万円」『毎日新聞』2014年4月13日
- ^ 「シアター・シエマ 募金イベントも多彩 映画館、デジタル化へ支援の輪」『毎日新聞』2014年5月19日
- ^ 「『シアター・シエマ』支配人、重松恵梨子さん」『毎日新聞』2015年2月3日
- ^ 「映画館が学びの場に シアター・シエマ 講座スタート 佐賀」『読売新聞』2015年10月2日
- ^ 「唐津に複合商業施設『KARAE』あすオープン 来月1日、60床のホテルも」『毎日新聞』2019年10月24日
- ^ 「障害者に優しい映画館を目指し募金開始 シアター・シエマ」『朝日新聞』2021年9月5日