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ドンベヤ・バージェシアエ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ドンベヤ・バージェシアエ
ドンベヤ・バージェシアエ
保全状況評価[8]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ上群 superrosids
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ群 Malvidae / rosid II
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Dombeyoideae
: ドンベヤ(ドムベヤ)属 Dombeya
: ドンベヤ・バージェシアエ D. burgessiae
学名
Dombeya burgessiae Gerr. ex Harv. & Sond.
シノニム
  • 本文参照

ドンベヤ・バージェシアエDombeya burgessiae Gerr. ex Harv. & Sond.)とは、アオイ科クロンキスト体系ではアオギリ科ドンベヤ属英語版(ドムベヤ属)の常緑樹の一種である。原産地はアフリカである(参照: #分布)が、日本のような温帯でも栽培し、屋根のない場所で越冬させることも可能である(参照: #利用)。自家受粉するが、香りやを出してハチを惹きつけるといった虫媒花としての性質も有する(参照: #特徴)。

シノニム

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The Plant List (2013) と Hassler (2018) では以下に挙げるものが本種のシノニムとされている。

  • Assonia burgessiae (Gerrard ex Harv.) Kuntze
  • Assonia calantha Stuntz
  • Assonia sparmannioides Hiern
  • Dombeya angulata Mast.
  • Dombeya antunesii Exell & Mendonça
  • Dombeya auriculata K.Schum.
  • Dombeya burgessiae var. crenulata Szyszył.
  • Dombeya burttii Exell
  • Dombeya calantha K.Schum.
  • Dombeya concinna K.Schum.
  • Dombeya dawei Sprague
  • Dombeya endlichii Engl. & K.Krause
  • Dombeya gamwelliae Exell
  • Dombeya globiflora Staner
  • Dombeya greenwayi Wild
  • Dombeya johnstonii Baker[9]
  • Dombeya kindtiana De Wild.
  • Dombeya lasiostylis K.Schum.
  • Dombeya mastersii Hook.f.(ドムベヤ・マステルシイ)- T・マスターズ英語版(T. Masters)[注 1]という人物により発表された[10]
  • Dombeya nairobensis Engl.
  • Dombeya nyasica Exell
  • Dombeya parvifolia K.Schum.
  • Dombeya platypoda K.Schum.
  • Dombeya rosea Baker f.
  • Dombeya sparmannioides (Hiern) K.Schum.
  • Dombeya sphaerantha Gilli
  • Dombeya tanganyikensis Baker
  • Dombeya trichoclada Mildbr.
  • Dombeya velutina De Wild. & Staner

このほか Hassler (2018) では Dombeya elegans K.Schum. も本種のシノニム扱いとされているが、The Plant List (2013) ではこれは非合法名で、Dombeya tiliacea (Endl.) Planch. のシノニムと判断されている。

分布

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アンゴラ[11]ウガンダ[11]ケニア[11][12]コンゴ民主共和国の東部および南東部[11]ザンビア[11]ジンバブエ[11]スワジランド[11]タンザニア[11]マラウイ[11]南アフリカクワズール・ナタール州ムプマランガ州リンポポ州[11]南スーダン[11]モザンビーク[11]ルワンダ[11]に自生し、原産地は南アフリカ東部である[3]。ただし、シノニムであるドムベヤ・マステルシイが採取されたのはアビシニア(現在のエチオピア)や、Chopeh という場所から北方のナイル河岸である[13]

また、インドアンダマン諸島ニコバル諸島を含む)、コロンビアトリニダード・トバゴフィジーミャンマーにも移入されている[11]

特徴

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ケニアで見られるものは最高でも5メートルの小低木である[12]が、10メートルほどの個体も存在する[10]

葉は大きく長さ約30センチメートルで[10]時に3裂し、上部と下部が毛に覆われ[12]、長い葉柄を持ち形は広卵型、基部が心臓型で先端が鋭く、縁には小鋸歯がある[10]

花は直径約2[3]あるいは3-4センチメートルで受け皿[14]散房花序集散花序[2]あるいは円錐花序で5弁の[10]白色あるいは紅色か、白色に紅色の筋が入った花20個ほどがやや大きめの花房をつくり、葉腋から下垂して咲く[3]。15本の雄蕊(雄しべ)があるが、そのうち内側の5本は大きく、後述する仮雄蕊と同じ輪生体の一部を形成し、の直下の花糸が膝状に湾曲し、葯がわずかに外側に折れ曲がるようにしている[14]。残りの10本の雄蕊は少し小さめで花糸が完全に直立しており、外側の輪生体を形成し、内側の雄蕊や仮雄蕊と互い違いになっている[14]。葯が退化した細いへら状の仮雄蕊英語版は5本存在する[14]。花の中で長い雄蕊が短い雄蕊の花粉を雌蕊(雌しべ)の柱頭に運んで自家受粉するため、他家受粉は起こらないとされる[10]。しかし一般的に自家受粉する植物の花はも香りも出す必要がないとされる[15]にもかかわらず、ドンベヤ・バージェシアエは芳香を持ち[3][14]ミツバチを惹きつける[12]ケンブリッジ大学植物園英語版温室におけるドンベヤ・バージェシアエの観察結果が記録された Yeo (1993) もドンベヤ・バージェシアエの花はハチ[注 2]を好む性質を持ち、蜜が花弁の付け根に蓄えられているとしている[16]が、同時にハチたちが花に集まるからといって彼らを本来の花粉媒介者らしき指標と見做すことはできないとも述べられている[14]

利用

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ケニアキクユ人の間で本種は同属の Dombeya torrida(シノニム: D. goetzenii)とともに mũkeũ(モケオ)として知られ、樹皮の強靭な繊維からが作られ[17]、かつて行われていた新生児誕生の儀式においてはその紐は臍の緒を切る際に臍の緒を縛って固定する役割を果たしていた[17][18]。また、根は胸にくる風邪(ただし気管支炎ではない。キクユ語: rũhayo)の際にアオイ科フヨウ属Hibiscus fuscusキクユ語: mũgere モゲレ)やマキ科アフリカマキAfrocarpus gracilior、シノニム: Podocarpus gracilior)もしくは同マキ属Podocarpus milanjianus(以上2つともキクユ語: mũthengera モゼンゲラ)の根、そしてムラサキ科カキバチシャノキ属コルディア・アフリカーナCordia africana; キクユ語: mũringa モリンガ)の根の皮とともに煮沸され、その湯で作られたモロコシ粉の薄いが患者に与えられていた[19]

ドンベヤ・バージェシアエは日本にも同属のドンベヤ・ウォリッキー[3]D. wallichii、種小名はウァリチー[6]ウァリキイとも)とともに花木として出回ってきており、寒さにも比較的強く、関東南部以南であれば露地で越冬させることも可能である[7]。バージェシアエ種とウォリッキー種からは種間雑種としてカイオイキシイ種(D. × cayeuxii André)が生み出され、園芸品種として扱われる[2]

諸言語における呼称

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ケニア:

脚注

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注釈

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  1. ^ マクスウェル・チルデン・マスターズ英語版(Maxwell Tylden Masters; 1833–1907)。植物学者。Masters (1867) で本種を Dombeya angulata Cav.(正名: D. acutangula Cav. ドンベヤ・アクタングラ英語版)として発表したが、Hooker (1867)D. angulata とは別種のものと判断された。
  2. ^ Yeo (1993) の観察で見られた花粉媒介者はクロスズメバチ属英語版Vespula)のハチである。

出典

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  1. ^ 京都府立植物園 見ごろの植物情報 平成20年1月18日 (京都府ホームページ). 2018年6月24日閲覧。
  2. ^ a b c d ブリッケル (2003).
  3. ^ a b c d e f g 坂﨑 (1998).
  4. ^ 【開花情報】ツワブキ、ドンベヤ・バージェシアエ見頃 開花時期11月(2012年) (草津市立 水生植物公園みずの森 指定管理者 近江鉄道ゆうグループ).
  5. ^ a b ドンベヤの育て方 (ヤサシイエンゲイ). 2018年6月24日閲覧。
  6. ^ a b ドンベヤ ウァリチー (草津市立 水生植物公園みずの森 指定管理者 近江鉄道ゆうグループ). 2018年6月25日閲覧。
  7. ^ a b 日本園芸協会~季節の園芸作業 2018年6月24日閲覧。
  8. ^ Botanic Gardens Conservation International (BGCI) & IUCN SSC Global Tree Specialist Group (2019). Dombeya burgessiae. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T146224959A146224961. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T146224959A146224961.en. Downloaded on 30 November 2019.
  9. ^ E. C. Stuart Baker (1864–1944; 鳥類学者) もしくはジョン・ギルバート・ベイカー (1834–1920; 植物学者)
  10. ^ a b c d e f 林・古里 (1986).
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m n Hassler (2018).
  12. ^ a b c d Maundu & Tengnäs (2005:208).
  13. ^ Hooker (1867).
  14. ^ a b c d e f Yeo (1993).
  15. ^ Rao & Kaur (2009:56).
  16. ^ Bayer & Kubitzki (2003:234).
  17. ^ a b c Leakey (1977:1343–4).
  18. ^ 杜 (2016:29,38).
  19. ^ Leakey (1977:II:914; III:1300,1306,1326).
  20. ^ Creider & Creider (2001).
  21. ^ Kokwaro & Johns (1998).

参考文献

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英語:

英語・ラテン語:

日本語:

  • 坂﨑信之 主著『日本で育つ 熱帯花木植栽事典』アボック社、1998年、802頁。
  • 「ドムベヤ マステルシイ」 林弥栄、古里和夫 監修『原色世界植物大圖鑑』北隆館、1986年、247頁。
  • クリストファー・ブリッケル 編集責任、横井政人 監訳『A-Z園芸植物百科事典』誠文堂新光社、2003年、375頁。ISBN 4-416-40300-3
  • 杜由木『在りし日 牡羊を屠り 家へ帰る ケニア山のふもとに暮らした人びとの〈伝統・儀礼の書〉を読み解く』東京図書出版、2016年。ISBN 978-4-86223-922-8

関連文献

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英語:

関連項目

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