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ナナフシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナナフシ科から転送)
ナナフシ目
生息年代: 55.8–0 Ma
始新世 - 現代
Phyllium sp.
コノハムシPhyllium 属)の一種
(2000年1月27日)
地質時代
始新世 - 現代
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
亜綱 : 有翅昆虫亜綱 Pterygota
下綱 : 新翅下綱 Neoptera
上目 : 直翅上目 Orthopterida
: ナナフシ目 Phasmatodea
学名
Phasmatodea
Jacobson and Bianchi[1], 1902
シノニム
英名
phasmids
亜目

ナナフシ(七節、竹節虫)は、節足動物であり、ナナフシ目に属する昆虫の総称。草食性で、木の擬態した姿が特徴的。「七節」の「七」は単に「たくさん」という程度の意味で、実際に体節を正しく7つもっているわけではない。また、「竹節虫」は中国語由来の表記である。ナナフシ目の学名の "Phasmatodea" は「異様なもの」を意味する phasma と、高次の分類群を示す odea を合わせたもので[3]、学名についてはこの他に "Phasmida" とする場合もある。

形態・生態

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様々な種のナナフシ類の

細長い体で、その姿はなどの植物体に擬態している。また、硬い卵殻に覆われた卵も植物の種子に似ている[3]。体長は数cmから50cmを超えるものまで様々。日本には15 - 20種類程度が生息していると言われている。

不完全変態[3]。基本的に両性生殖だが、ナナフシモドキオランダ語版などは単為生殖を行い、オスが非常に稀である[4]

や飛翔能力を失ったものが多い。退化の程度は様々で、雌雄とも完全な飛翔能力を有するものから、オスのみ飛翔能力を有するもの、雌雄とも完全に無翅のものまである。コノハムシメスのように、上翅を有するものの飛翔能力は失われている例もある。

防御手段の一つとして、敵に襲われた際にを自ら切り離す自切を行う種が多い。失われた脚は、自切が若齡幼虫時に行われたものであれば、脱皮とともに再生していくが、成長段階の終わりに近い時期の自切ほど再生され難く、終齡幼虫・成虫での自切は再生されない。

ナナフシは自重の40倍の重量を運搬することができ、従来は自重の1/20程度の重さしか運べなかった産業用ロボットを改良するためミュンヘン工科大学などで幅広く研究され、ナナフシモデルと呼ばれる6脚ロボットが開発されている[5]

ナナフシは飛べないが、産卵前の成虫が鳥類に捕食され、硬い卵殻に守られた卵が消化されずに遠方でとともに排泄されて孵化し、分布を広げた可能性が、神戸大学高知大学東京農工大学などによる遺伝子分析に基づく研究で指摘されている[6]

分布

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熱帯から温帯に分布する[3]

下位分類

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世界には約2,500がいるとされている。ただ、分類は大幅な見直しが進められており、以下に記述されている日本国内種についても、これから整理される可能性がある。

コブナナフシ亜科

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ナナフシ亜科

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ナナフシモドキ
  • ナナフシモドキ(ナナフシ) Baculum irregulariterdentatum (Brunner von Wattenwyl, 1907)
    体長:オス57 - 62mm(非常に稀で数匹しか見つかっていない)、メス74 - 100mm。
    分布:日本(本州四国、九州)。
    Phraortes elongatus (Thunberg, 1815)と混同する例が多いが、Baculum 属は触角が短くPhraortes 属は触角が長いことで区別できる。
  • イシガキナナフシ Entoria ishigakiensis (Shiraki, 1935)[7]
    分布:日本(石垣島、西表島)、台湾。
    Entoria okinawaensis と同種の可能性がある。
  • ヤマトナナフシ Entoria japonica (Shiraki, 1911)[8]
    原記載論文[8]では Yoshihama で採集との記録。Shiraki(1935)[7]では神奈川県 Yoshihama と記載。その後は記載がなく、詳細は不明。
  • オオナナフシ Entoria magna (Shiraki, 1911)[8]
    原記載論文[8]では Yoshihama で採集との記録。Shiraki(1935)[7]では神奈川県 Yoshihama と記載。その後は記載がなく、詳細は不明。
  • Entoria nuda (Brunner von Wattenwyl, 1907)
    分布:日本(奄美大島、石垣島、大東諸島)、台湾。
  • オキナワナナフシ Entoria okinawaensis (Shiraki, 1935)[7]
    分布:日本(奄美大島、沖縄本島、久米島南大東島、宮古島、石垣島、西表島)。
    ミヤコナナフシ Entoria miyakoensis (Shiraki, 1935)とナゴナナフシ Entoria nagoensis (Shiraki, 1935)[7]は同種[9]
  • Rhamphophasma japanicum (Brunner von Wattenwyl, 1907)
    分布:日本。

トビナナフシ亜科

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ニホントビナナフシ
  • ニホントビナナフシ Micadina phluctainoides (Rehn, 1904)
    体長:オス36 - 40mm、メス46 - 56mm。
    分布:日本(本州、九州、奄美大島、沖縄本島、久米島)。
    本州の個体は単為生殖を行うが屋久島以南の個体は両性生殖。リュウキュウトビナナフシ Micadina rotundata (Shiraki, 1935)は同種[10]
  • ヤスマツトビナナフシ Micadina yasumatsui (Shiraki, 1935)[7]
    分布:日本(本州、四国、九州)。
    単為生殖を行い、オスは未知。
  • シラキトビナナフシ Micadina fagi (Ichikawa and Okada, 2008)[10]
    分布:日本(北海道)。
    単為生殖を行い、オスは未知。

ヒゲナナフシ亜科

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トゲナナフシ
  • トゲナナフシ Neohirasea japonica (de Haan, 1842)
    体長:メス57 - 75mm。
    分布:日本(本州、四国、九州)。
    トゲナナフシモドキ Neohirasea lugens (Brunner von Wattenwyl, 1907)は同種[11]
エダナナフシ
  • エダナナフシ Phraortes illepidus (Brunner von Wattenwyl, 1907)
    体長:オス65 - 82mm、メス82 - 110mm。
    分布:日本(本州、九州)、台湾。
    体色は緑色型、茶褐色型、灰褐色型と様々である。日当たりの良い雑木林などで見られる。食性はサクラノイバラカシコナラなど様々。都市近郊にも多く生息する普通種。ナナフシ Phraortes elongatus (Thunberg, 1815)と Phraortes mikado (Rehn, 1904)は同種と考えられる。なお、ナナフシモドキを Phraortes elongatus (Thunberg, 1815)と混同する例が多いが、Baculum 属は触角が短くPhraortes 属は触角が長いことで区別できる。
  • ミヤコエダナナフシ Phraortes miyakoensis (Shiraki, 1935)[7]
    分布:日本(沖縄本島、宮古島、石垣島、西表島)。
  • タイワントビナナフシ Sipyloidea sipylus (Westwood, 1859)
    分布:日本(九州、奄美大島、沖永良部島、沖縄本島、石垣島、西表島)、中国、台湾、東南アジア
    単為生殖を行い、オスは非常に稀。

最大の種

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ロードハウナナフシの再発見

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ロードハウナナフシ絶滅したと思われていたが、オーストラリア東方の岩礁ボールズ・ピラミッドで生き残っていたことが再発見された[13]

脚注

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  1. ^ Filipe M. Bianchi ブラジルの昆虫学者 or Valentin Lvovitsch Bianchi (1857-1920) ロシアの鳥類学者
  2. ^ William Elford Leach (1790-1836) zoologist or Edwin S. Leach (1878-1971)
  3. ^ a b c d 石川良輔編 編『節足動物の多様性と系統』岩槻邦男馬渡峻輔監修、裳華房〈バイオディバーシティ・シリーズ〉、2008年。ISBN 978-4-7853-5829-7 
  4. ^ 「色が違う」5歳児、珍しいオスのナナフシモドキ発見”. 朝日新聞デジタル. 2021年5月28日閲覧。
  5. ^ George A. Bekey『自律ロボット概論 プレミアムブックス版』(マイナビ出版、2016年)258頁
  6. ^ ナナフシは鳥に食べられて子孫を拡散させる!?~飛べない昆虫の新たな長距離移動法の提唱 神戸大学大学院理学研究科(2018年5月29日)2023年11月19日閲覧
  7. ^ a b c d e f g Tokuichi. Shiraki (1935), “Orthoptera of the Japanese Empire (Part IV) Phasmidae”, Memoirs of the Faculty of Science and Agriculture, Taihoku Imperial University 14: 29-58 
  8. ^ a b c d Shiraki T. (1911). “Phasmiden und Mantiden Japans.”. 日本動物学彙報 (日本動物学会) 7 (5): 291-331. NAID 110003353400. 
  9. ^ Keizo Yasumatsu (1998), “On the identity of Entoria okinawaensis Shiraki (Phasmida)”, MUSHI 38 (15): 123-124 
  10. ^ a b Akihiko Ichikawa; Masaya Okada (2008). “Review of Japanese species of Micadina Redtenbacher (Phasmatodea, Diapheromeridae), with description of a new speces”. Tettigonia (日本直翅類学会) (9): 13-31. 
  11. ^ Paul D Brock (1998) (ドイツ語). Catalogue of type specimens of stick- and leaf-insects in the Naturhistorisches Museum Wien (Insecta: Phasmida). Kataloge der wissenschaftlichen Sammlungen des Naturhistorischen Museums in Wien. Wien: Naturhistorisches Museum. ISBN 390027567X. NCID BA80134657. OCLC 883013043 
  12. ^ 全長62.4センチのナナフシ、世界最長の昆虫か 新華社AFP(2016年5月6日)2023年11月19日閲覧
  13. ^ アン・マックガバン:―― 再発見の物語 沖縄科学技術大学院大学(2017年10月6日)2023年11月19日閲覧

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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