ナヌークサウルス
ナヌークサウルス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ナヌークサウルスの復元図
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保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
絶滅(化石) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
約6910万年前 (中生代白亜紀後期マーストリヒチアン) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Nanuqsaurus Fiorillo & Tykoski, 2014 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Nanuqsaurus hoglundi Fiorillo & Tykoski, 2014 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
下位分類(種) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ナヌークサウルス(Nanuqsaurus)は、上部白亜系マーストリヒチアン階のアラスカ州ノーススロープ(ブルックス山脈の斜面)プリンスクリーク層から化石が産出した、絶滅したティラノサウルス科の恐竜の1属。部分的な頭骨の化石のみが発見されており、知られている種はナヌークサウルス・ホグルンディ1種のみである。ナヌクサウルスと表されることもある。
形態
[編集]ナヌークサウルスはティラノサウルス亜科の中では中型の部類であり、当初全長はティラノサウルスの約半分にあたる6メートルと推定されていた[1]。 この体格の小ささは北極圏という高緯度地域の過酷な気候のもと適応したものと古生物学者フィオリロとティコスキーは推測した[2]。しかし2023年の再研究により、既知の標本は死亡時の年齢が14歳ほどと、未だ成長途中であった可能性が示された。これは仮に本種が無事成熟するまで成長したならば、その全長が約8メートルほどまで達した可能性があることを示唆している[3]。
ナヌークサウルスの頭部には鋭い鼻筋があり、ティラノサウルスに近縁であったことを示唆している。近縁種の肉食恐竜の形態に基づき、ナヌークサウルスの頭骨の長さは60センチメートルから70センチメートル程度と推定されている[2]。
ティラノサウルス亜科として同定された根拠としては、前頭葉と涙腺が吻の側に突出した長い構造により分けられている点、口腔先端に位置する歯が後方の歯より小型である点、頭頂部の骨が癒着した構造が挙げられる[2]。
北極圏に生息していたということで、羽毛の生えた復元が多い。また、カーネギー自然史博物館の古生物学者マット・ラマンナは、ナヌークサウルスの皮膚が南方のティラノサウルス科よりも分厚かった可能性が高いという趣旨のコメントをしている[4]。
発見と命名
[編集]2006年、アラスカノーススロープのキカク・テゴシーク採石場から中型の獣脚類の化石の断片が発見され、頭骨長は約60センチメートルから70センチメートルと推定された。初めはゴルゴサウルスに、その後はアルバートサウルスに含まれていたが、ペロー自然科学博物館(ダラス自然史博物館)を経て新たな属であることが認められた[2]。タイプ標本である「DMNH 21461」はプリンスクリーク層で発見されており、6910万年前の物である。頭骨の下顎の一部分から構成され、断片は互いに付近で発見された。頭頂葉の一部や前頭葉、右側の鼻腔、左側の歯列も発見されている[2]。標本は完全に成熟した個体であり、鼻筋が滑らかであった[2]。
ナヌークサウルスは2014年にアンソニー・R・フィオリロとロナルド・S・ティコスキーにより記載・命名された。模式種はナヌークサウルス・ホグルンディである。属名は「ホッキョクグマ」を意味するnanuqとトカゲを意味するsaurosに由来する。種小名は、慈善事業家フォレスト・ホグランドの慈善事業などでの功績を称えたものである[2]。
分類
[編集]ナヌークサウルスは高度に進化したティラノサウルス亜科とみられ、ティラノサウルスやタルボサウルス、ズケンティラヌスを含むグループの姉妹群と考えられている[2]。
ティラノサウルス科 |
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生態
[編集]7000万年前の北アメリカ北部はララミディア大陸の一部であり、寒冷でかつ白夜と極夜が存在していた。白夜がある夏の時期は獲物を捕食できる可能性が高まるが、暗い冬には獲物を得る機会は減少し捕食動物はほぼ獲物にありつけなかったと推測されている[2]。本来はベルクマンの法則に従って寒冷地域の動物ほど大型化することが多いが、大型動物は多くの食料資源を必要とするため、ナヌークサウルスが小柄であるのは食料資源の不足が要因である可能性があるとフィオリロは述べている。アラスカに生息していたトロオドンは南方の個体よりも50%ほど大柄であったが、これはトロオドンの眼が大きく極夜の状況下でも視力に頼って狩りを行えたためと考えられている。ナヌークサウルスは寒冷な気候による食料供給の減少ゆえ小型化している可能性が高い[2]。
頭骨の形状から、脳の肥大化した領域が嗅覚を司る部位であることが示唆されている。これはティラノサウルスと同様に、獲物の臭いを頼りに狩りを行っていたことが導かれている。これは死肉を漁るよりも積極的に生きた動物を襲っていたことを示している[2]。セコイアが繁茂する森林でハドロサウルス科などの植物食恐竜を捕食していたとフィオリロは推測している[4]。
“渡り”の可能性
[編集]かつては極圏の極夜や食料不足から逃れるため、一帯の恐竜の一部(例エドモントサウルスやパキリノサウルス)は現生動物のように渡りを行っていた可能性が指摘されていた。そして移動能力の低い小型恐竜や曲竜類は極圏で冬季を過ごしていた可能性も指摘された。この場合ナヌークサウルスが移動と残留のどちらを選択したかは不明であった[5]。しかし2020年の研究によると、恐竜が極めて長距離に及ぶ渡りを行った可能性は低いため[6]、恐竜達は極圏で1年を過ごしていたとされる。
古環境
[編集]ナヌークサウルスのタイプ標本はマーストリヒチアンのプリンスクリーク層のものである。7100万年前から6800万年前のキカク・テゴシーク採石場のプリンスクリーク層はマーストリヒチアン後期の初期に位置付けられている。その地点における層の岩石を年代測定したところ、岩石の平均的な年代は6910万±300万年前のものであったため、ナヌークサウルスもその時期に生息していた可能性が高い。層はノーススロープのコルビル川に沿っており、堆積物で構成されている。高緯度地域に分布するごく少数の恐竜の1つであることが分かっている[2]。
当時の地球は現代と比較して温暖で、ナヌークサウルスが生息していたアラスカは現在のワシントン州シアトルに近い気候であったが、先述のように極夜などもあり過酷な環境ではあった。セコイアの森林が茂り、海岸沿いの平地には花が咲いていたとみられている[4]。
出典
[編集]- ^ Christine Dell'Amore (2013年3月13日). “New Pygmy Tyrannosaur Found, Roamed the Arctic”. ナショナルジオグラフィック協会. 2020年3月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l Fiorillo, A. R.; Tykoski, R. S. (2014). Dodson, Peter. ed. “A Diminutive New Tyrannosaur from the Top of the World”. PLoS ONE 9 (3): e91287. doi:10.1371/journal.pone.0091287. PMC 3951350. PMID 24621577 .
- ^ “A Reinterpretation of Nanuqsaurus hoglundi (Tyrannosauridae) From the Late Cretaceous Prince Creek Formation, Northern Alaska - ProQuest”. www.proquest.com. 2023年8月29日閲覧。
- ^ a b c Christine Dell'Amore (2014年3月14日). “ティラノサウルスの小型種、極地で発見”. ナショナルジオグラフィック協会. 2020年3月27日閲覧。
- ^ Phil R. Bell; Eric Snively (2008-08-13). “Polar dinosaurs on parade: a review of dinosaur migration”. Alcheringa: An Australasian Journal of Palaeontology (Australasian Palaeontologists) 32 (3): 271-284. doi:10.1080/03115510802096101 .
- ^ David F. Terrill; Charles M. Henderson; Jason S. Anderson (2020-03-01). “New application of strontium isotopes reveals evidence of limited migratory behaviour in Late Cretaceous hadrosaurs”. Biology Letters 16 (3). doi:10.1098/rsbl.2019.0930. ISSN 1744-9561 .