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ヌエゴケ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヌエゴケ属から転送)
ヌエゴケ
分類
: 植物界 Plantae
: ゼニゴケ植物門 Marchantiophyta
: ウロコゴケ綱 Jungermanniopsida
亜綱 : ウロコゴケ亜綱 Jungermanniidae
: フタマタゴケ目 Metzgeriales
: ヌエゴケ科 Mizutaniaceae
: ヌエゴケ属 Mizutania
: ヌエゴケ M. riccadioides
学名
Mizutania riccardioides
Furuki & Z. Iwats., 1989[1]

ヌエゴケMizutania riccardioides)は、ウロコゴケ綱フタマタゴケ目に属する苔類マレー半島ボルネオに分布する[2]。1科1属1種で、本種のみでヌエゴケ科、ヌエゴケ属を構成するとされているが、ツキヌキゴケ科に含むとする主張もある(後述)。

名称

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和名の「ヌエ」(鵺)は、頭や体、鳴き声がちぐはぐな伝説の生物のことであり、植物体が葉状で、生殖枝は枝状という得体の知れない形態をこの生物になぞらえて命名された[3]。属名の Mizutania は、蘚苔学者の水谷正美への献名であり、種小名の riccardoides は、外部形態がスジゴケ属 (Riccardia) に類似していることにちなんで付けられた。

形態

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ヌエゴケは。ヌエゴケは一細胞層からなる葉状体をもつが、これは他に知られているどの苔類にも見られない特徴である(ただし、苔類が持つリボン状の原糸体は一細胞層からなり、本種の葉状体に類似する)[4]。外見はコケシノブ科(シダ植物)の植物などが持つ前葉体に類似し[4]、不規則に分枝する[2]。生殖枝は枝状で、葉状体から突き出す[3]

分類

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ヌエゴケは、発見当初はシダ植物前葉体として扱われ、博物館に収蔵されていたが[3]葉状体の細胞に油体があることや、染色体の本数 (n=9) が苔類に特徴的な本数であることが判明し[5]、1989年に新種の苔類として記載された[1]

ヌエゴケが新種として記載された1989年当初、スジゴケ属に近縁な独立した科、属として、フタマタゴケ目の中に位置づけられた[1]。しかしrbcL遺伝子を用いた分子系統解析では、ウロコゴケ目に含むことが支持された[2]。また2010年には、分子系統学的な研究によって、ヌエゴケ科をツキヌキゴケ科に含むべきとする結果が示された[6]

脚注

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  1. ^ a b c Furuki, T.; Z. Iwatsuki (1989). “Mizutania riccardioides, gen. et sp. nov. (Mizutaniaceae, fam. nov.), a unique liverwort from tropical Asia”. Journal of the Hattori Botanical Laboratory 67: 291–296. 
  2. ^ a b c Inoue et al. (2008) Developmental Morphology of Irregularly-shaped Gametophytes of the Liverwort Mizutania riccardioides (Mizutaniaceae). APG : Acta phytotaxonomica et geobotanica 59(3), 239-247
  3. ^ a b c 古木達郎「シダとして標本庫に眠っていたコケ--ヌエゴケの正体を突き止める」[1]
  4. ^ a b 戸部博, 田村実 (編著), 日本植物分類学会 (監修)『新しい植物分類学 II』 (2012年、講談社) p.36
  5. ^ Inoue, S. and T. Furuki (1992) Chromosome study of Mizutania riccardioides (Hepaticae). J. Hattori Bot. Lab. 71: 263-266.
  6. ^ Masuzaki, H., M. Shimamura, T. Furuki, H. Tsubota, T. Yamaguchi, H. Mohamed A.M. and H. Deguchi (2010). Systematic position of the enigmatic liverwort Mizutania (Mizutaniaceae, Marchantiophyta) inferred from molecular phylogenetic analyses. Taxon 59 448-458.