バロキサビル
IUPAC命名法による物質名 | |
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臨床データ | |
販売名 | ゾフルーザ |
法的規制 |
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データベースID | |
CAS番号 | 1985606-14-1 |
PubChem | CID: 124081896 |
UNII | 505CXM6OHG |
KEGG | D11021 |
化学的データ | |
化学式 | C27H23F2N3O7S |
分子量 | 571.5518 |
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バロキサビル マルボキシル(Baloxavir marboxil)は、A型・B型インフルエンザ治療薬。商品名は「ゾフルーザ」(XOFLUZA)。塩野義製薬が開発し、2018年2月23日に製造承認され、同年3月14日に販売が開始された[1][2]。可能な限り早期の服用が必要とされる[3]。
タミフルなどの開発実績のあるロシュと開発提携を行っているシオノギが開発したインフルエンザ治療薬(エンドヌクレアーゼ阻害薬)であり[4]、1回の服用で済むのが特徴。2017年10月に承認申請がなされ、先駆け審査指定制度の対象として2018年2月23日に製造販売承認され、同年3月14日に発売された[5][2]。
作用機序
[編集]ウイルスを感染細胞表面から遊離させるノイラミニダーゼの働きを阻害するノイラミニダーゼ阻害薬(タミフルやリレンザなど)とは異なり、細胞内でのキャップ依存性エンドヌクレアーゼを阻害することで、ウイルスが細胞内に侵入後増殖するときに使う酵素を阻害し、ウイルスのmRNAの複製段階においてその複製を阻止する[6]。全く新しい機序の薬である[7]。
ウイルスが増殖できずそのまま死滅するため、1回の投与で1日以内に症状を抑える効果がある。ノイラミニダーゼ阻害薬と比べ早期に効果があるため抗ウイルス効果が高いとされ、投与翌日には半数以上の患者で感染性を持つウイルス量が減っていることが認められた[5]。
耐性
[編集]ウイルスが薬剤に対し抵抗力を持つ耐性が生じる事がある[8]。2019年 A/H3N2亜型で9.5%(21株中2株)に耐性株が見つかったと報じられた[8][9]。
薬剤感受性試験を実施し、A型ウイルスでは100倍以上、B型ウイルスでは50倍以上の感受性低下が確認されると耐性ウイルスと判定される[10]。
小児への投与
[編集]本剤は、小児へも投与可能で、添付文書では体重10kg以上の小児に対する用法容量が記載されている[11]。しかし、日本小児科学会は2019年10月に、12歳以下の小児への本剤の使用を「推奨しない」とするインフルエンザ治療指針を公表した[12]。
推奨しない理由として、使用経験に関する報告が少ないことや、薬剤耐性ウイルスの出現を挙げており[12]、他剤を使用するように案内している[12]。日本感染症学会インフルエンザ委員会では、非推奨とまでは踏み込んで判断を示さなかったが、「小児では慎重に投与を検討すべき」という提言を発表している[13]。
売上
[編集]2018年3月発売後の4月からの半年間で、国内医療機関への売り上げが抗インフル薬市場の65%とシェア1位となった[14]。同期間の国内売上高は4億6千万円で、複数回投与が必要なタミフルは、ジェネリック医薬品発売が始まったこともあり備蓄薬を除くと0億円、前年度売上首位の1回投与吸入薬イナビルは1億円だった[14]。薬価はゾフルーザが4,789円(20mg 2個)、タミフルが2,720円(75mg 2個を5日)、同ジェネリックが1,360円(同)、イナビルは2,139.9円(1キット)とゾフルーザは高額で、インフルエンザウイルスA/H3N2では治療中に約10%が耐性化する可能性が指摘されている[15]ことから、採用を見送る医療機関も出ている[16]。
重要な基本的注意
[編集]- 抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無又は種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には、異常行動を発現した例が報告されている。
- 細菌感染症の場合には,抗菌剤を投与するなど適切な処置を行うこと。
- 出血があらわれることがあるので、患者及びその家族に説明すること。血便、鼻出血、血尿等があらわれた場合には医師に連絡すること。 投与数日後にもあらわれることがあること。
3. は第5版(2019年3月)に追加されたもので[17]、国内副作用症例として出血関連症例が25例集積され、このうち13例は因果関係が否定できない症例で、3例の死亡例を含んでいたことを受けた改訂[18]。
相互作用
[編集]新たに相互作用の項目が設けられ、「併用注意」として「ワルファリン」を追記[19]。
副作用
[編集]「重大な副作用」の項に「出血:血便、鼻出血、血尿等の出血があらわれることがあるので、このような症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。」を追記[19]。さらに2020年4月に「虚血性大腸炎」を追記[20]。
出典
[編集]- ^ “1回飲み効果、インフル治療薬ゾフルーザ販売へ”. 読売新聞社. (2018年2月23日) 2018年2月26日閲覧。
- ^ a b 抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ TM 錠 10mg・20mg」 新発売のお知らせ 塩野義製薬 2018年3月14日
- ^ 斎藤雄一郎、「耳鼻咽喉科医が行うインフルエンザの予防, 診断, 治療」 日本耳鼻咽喉科学会会報 2018年 121巻 11号 p.1422-1423, doi:10.3950/jibiinkoka.121.1422
- ^ 塩野義、1回の服用で治療できるインフル新薬を年内にも米国で申請、製造販売へ 産経WEST 2018年1月29日
- ^ a b 服用1回で治療、塩野義のインフル新薬「ゾフルーザ」厚労省部会が了承 3月にも承認 今春発売も SankeiBiz 2018年2月2日
- ^ 北村正樹:新規機序の抗インフルエンザ薬が先駆け承認 日経メディカルオンライン 記事:2018年3月2日
- ^ インフルエンザ感染症治療薬S-033188の提携に関するRoche社とのライセンス契約締結について (PDF) 塩野義製薬 2016年2月29日
- ^ a b 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス 2019年01月21日 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室 全国地方衛生研究所
- ^ ゾフルーザの耐性株、AH3亜型の9.5%に検出 日経メディカルオンライン 記事:2019年1月23日
- ^ 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランス 2019年03月25日 国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室 全国地方衛生研究所
- ^ ゾフルーザ添付文書 2019年10月28日閲覧
- ^ a b c ■NEWS 小児へのバロキサビル積極的投与「推奨しない」―小児科学会インフルエンザ治療指針 日本醫事新報 No.4984 (2019年11月02日発行) P.67 登録日: 2019年10月23日 2019年10月28日閲覧
- ^ ■NEWS 【抗インフルエンザ薬の使用で提言】バロキサビル、「小児では慎重に投与を検討」―日本感染症学会インフルエンザ委員会 日本醫事新報 No.4983 (2019年10月26日発行) P.70 登録日: 2019年10月18日 2019年10月28日閲覧
- ^ a b “インフル薬「ゾフルーザ」シェア1位に 負担軽く人気”. 産経新聞 (2018年11月6日). 2018年12月5日閲覧。
- ^ Hayden FG.; Sugaya N, Hirotsu N, Lee N, de Jong MD, Hurt AC, Ishida T, Sekino H, Yamada K, Portsmouth S, Kawaguchi K, Shishido T, Arai M, Tsuchiya K, Uehara T, Watanabe A; Baloxavir Marboxil Investigators Group. (September 2018). “Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents.”. N Engl J Med 379 (10): 913-923. doi:10.1056/NEJMoa1716197. PMID 30184455.
- ^ “ゾフルーザ採用見送り”. 亀田メディカルセンター 亀田総合病院 感染症科 (2018年11月11日). 2018年12月5日閲覧。
- ^ 平成31年3月1日 薬生安発0301第1号 別紙 2 (PDF) 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課
- ^ “「ゾフルーザ」、重大な副作用に「出血」 厚労省通知、添文改訂へ”. 日刊薬事 (2019年3月2日). 2019年3月4日閲覧。
- ^ a b “「使用上の注意」の改訂について(平成31年3月1日薬生安発0301第1号)” (PDF). 医薬・生活衛生局 新着の通知. 厚生労働省. p. 3 (2019年3月4日). 2019年3月4日閲覧。
- ^ “ゾフルーザの重大な副作用に虚血性大腸炎”. 日経DI. (2020年4月13日) 2020年4月21日閲覧。
外部リンク
[編集]- 抗インフルエンザウイルス剤ゾフルーザ - シオノギ製薬(塩野義製薬)