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フロー (心理学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フロー状態から転送)
不安アウェアネスフローコントロールリラクゼーション (心理学)退屈アパシー心配
ミハイ・チクセントミハイフローモデルによるメンタルステート図。チャレンジレベルとスキルレベルの二軸で表される[1]
ある作業に熱中することはフローの一面である

フロー: flow)とは、人間がそのときしていることに、完全に浸り、精力的に集中している感覚に特徴づけられ、完全にのめり込んでいて、その過程が活発さにおいて成功しているような活動における、精神的な状態をいう。

日本では、スポーツの分野において一般的に「ゾーン」と呼ばれることが多いが、その他にも類語としては「ピークエクスペリエンス」「無我の境地」「忘我状態」とも呼ばれる。心理学者のミハイ・チクセントミハイによって提唱され、その概念は、あらゆる分野に渡って広く論及されている。

フローの構成要素

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ジェーン・ナカムラとチクセントミハイは、フロー体験の構成要素を6つ挙げている[2]

  1. 専念と集中、注意力の限定された分野への高度な集中。(活動に従事する人が、それに深く集中し探求する機会を持つ)
  2. 自己認識感覚の低下
  3. 活動と意識の融合
  4. 状況や活動を自分で制御している感覚。
  5. 時間感覚のゆがみ - 時間への我々の主体的な経験の変更
  6. 活動に本質的な価値がある、だから活動が苦にならない。(報酬系

さらに心理学作家のケンドラチェリーは、チクセントミハイがフロー経験の一部として挙げている3つの構成要素について言及している[3]

  1. 直接的で即座のフィードバック[3](活動の過程における成功と失敗が明確で、行動が必要に応じて調節される)
  2. 成功する可能性があると信じる(明確な目的, 予想と法則が認識できる)
  3. 経験に夢中になり、他のニーズが無視できるようになる

フローを経験するためにこれら要素のすべてが必要というわけではない。

語源

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フローはチクセントミハイの1975年のインタビューにおいて、幾人かが彼らの「フロー」体験を、ずっと彼らを運んでいる流れという隠喩を使って描写したために名付けられた。「活動に没入する」という「フロー」の心理学的な概念は、「時代の流れに従う」という意味の「ゴー・ウィズ・ザ・フロー」という従来の慣用句とは無関係である。

グループフロー

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チクセントミハイは、集団が全体として作用して、個々のメンバーがフローに達するようないくつかの道筋を示した。このような集団の特徴には、以下のものが含まれる。

  • 創造的空間配置:椅子、コルクボード、図表。机は置かない。そうすれば立って動きながらの活動が主体となる。
  • 活動の場のデザイン:情報を書き込む図表、流れ図、企画の概要、熱狂(ここでは熱狂も場所を占める)、安全な場所(ここでは他に何が考えられるかを誰でも言うことができる)、結果掲示板、オープントピック
  • 並行した、組織だった作業
  • グループの集中を目標に定める
  • 存在しているもの(原型)の発達
  • 視覚化による効率の増加
  • 参加者の意見の違いはチャンス

隣接分野

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この概念は西欧心理学の中ではチクセントミハイによってはじめて示したと言える。しかし、彼はこの心理現象に気づき、それに基づく技術を開発したのは、ほぼ間違いなく彼が最初ではないと、彼自身、躊躇なく認めている。

2500年以上前、仏教道教といった東洋の精神的な伝統の実践者は、この訓練を彼らの精神開発の非常に中心的な部分として磨いた。日本の実践者は、そのようなの技術を、彼らの選んだ、剣道から生け花までを含む、芸術の形式(芸道など)を習得するために学んだ。

あまりに使われすぎた慣用句「ビーイング・アット・ワン・ウィズ・シングス」(物と一体化する)も、この概念を説明するのに使われる。

教育にあっては、過剰学習の概念があり、これは、この技術に重要な要素となっているように思われる—少なくとも肉体的な技能を学んでいる場合には。それに加えて、多くの現代のスポーツ選手は、よくこの「ゾーンに入る」(何もかもがうまくいく)という現象を経験する。

基本的な発想が東洋西洋とで同じであったり自然科学者、霊的指導者、スポーツ選手の間で共有されているということに価値があるわけではない。チクセントミハイは、他の者が精神的な発展や肉体的な熟達や他の自己改善の形式の発展性に集中している一方で、活動の場のデザインのような現代西洋文化要素の改良について、これから結論を描いただけであろう。実際、東洋の精神的な実践者は、現在の科学的な心理学者たちが用いようと試みてきた組織的な厳密さや制御とは異なる方法で試験し改善してきたにしても、この主題を中心にして、非常に徹底的で全人的な理論の集成を発展させてきた。

職業と仕事

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ソフトウエア開発者は邪魔されないフロー状態に入ることを、"wired in"、The Zone,[4][5] hack mode,[6]software timeに入る[7]などと呼んでいる。株式市場取引者は "in the pipe" という用語を、取引量の多い日や市場の修正時に取引する際のフロー状態を表すのによく使う。プロのカードプレイヤーは、集中力と戦略的認識が最高となったときを "playing the A-game" と呼んでいる。

幸福の心理学

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フローはポジティブ心理学にとっても重要である。目の前のことに夢中になり、我を忘れることで、幸せや健康、長寿につながるのである[8]

フローを取り上げているフィクション作品

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脚注

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  1. ^ Csikszentmihalyi, M., Finding Flow, 1997.
  2. ^ Nakamura, J.; Csikszentmihályi, M. (20 December 2001). “Flow Theory and Research”. In C. R. Snyder Erik Wright, and Shane J. Lopez. Handbook of Positive Psychology. Oxford University Press. pp. 195–206. ISBN 978-0-19-803094-2. https://books.google.com/books?id=2Cr5rP8jOnsC 20 November 2013閲覧。 
  3. ^ a b What is Flow?”. About Education. 30 March 2015閲覧。
  4. ^ Michael Lopp (12 June 2007), “Chapter 25: A Nerd in a Cave”, Managing Humans: Biting and Humorous Tales of a Software Engineering Manager, Apress, p. 143, ISBN 978-1-59059-844-3, http://www.randsinrepose.com/archives/2006/07/10/a_nerd_in_a_cave.html, "[The Zone] is a deeply creative space where inspiration is built. Anything which you perceive as beautiful, useful, or fun comes from someone stumbling through The Zone." 
  5. ^ Joel Spolsky (9 August 2000), The Joel Test: 12 Steps to Better Code, http://www.joelonsoftware.com/articles/fog0000000043.html, "We all know that knowledge workers work best by getting into 'flow', also known as being 'in the zone' (...) Writers, programmers, scientists, and even basketball players will tell you about being in the zone." 
  6. ^ Hack Mode”. Jargon File. 2013年11月閲覧。
  7. ^ Scott Rosenberg (2007), Dreaming in Code: Two Dozen Programmers, Three Years, 4,732 Bugs, and One Quest for Transcendent Software, http://www.dreamingincode.com/book-excerpt/, "When things go well, you can lose track of passing hours in the state psychologists call "flow." When things go badly, you get stuck, frozen between dimensions, unable to move or see a way forward. Either way, you've left the clock far behind. You're on software time." 
  8. ^ Positive Psychology: Harnessing the power of happiness, mindfulness, and inner strength” (英語). Harvard Health. 2022年11月15日閲覧。

参考文献

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  • Csikszentmihalyi, Mihaly (1990). Flow: The Psychology of Optimal Experience. New York: Harper and Row. ISBN 0060920432
  • Csikszentmihalyi, Mihaly (1996). Creativity: Flow and the Psychology of Discovery and Invention. New York: Harper Perennial. ISBN 0060928204
  • Csikszentmihalyi, Mihaly (1998). Finding Flow: The Psychology of Engagement With Everyday Life. Basic Books. ISBN 0465024114 (a popular exposition emphasizing technique)
  • Csikszentmihalyi, Mihaly (2003). Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning. New York: Penguin Books. ISBN 014200409X
  • Langer, Ellen J. (1989). Mindfulness. Reading, Mass: Addison Wesley. ISBN 0201523418

関連項目

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外部リンク

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