シーケンシャル・サーキット プロフェット5
シーケンシャル・サーキット社のプロフェット5(英語名:Prophet-5)は、デイヴ・スミスによって[1]1977年に開発され[2]、1978年1月にNAMMにおいて発表され、シーケンシャル・サーキット社から発売されていたアナログシンセサイザー。
概要
[編集]Rev.1から、Rev.3は1978年から1984年にかけて販売され、日本ではモリダイラ楽器によって輸入・販売され、日本での標準価格は170万円であった。Rev.4は2020年に発売となり、日本での輸入・販売はProphet-6などと同様に福産起業である[3]。また、Sequential Circuitsは1987年にYAMAHAに買収されており、Rev.4は開発者であったデイヴ・スミスが創業したSEQUENTIALが製造している。渋谷区の楽器店「FIVE G」では改造を施し、MIDIに対応したモデルが売られていた。
特徴
[編集]当時では希少な音色メモリ可能なポリフォニックシンセサイザーで、ポリ・モジュレーション(POLY-MOD)という独自の機能により特徴的な音色が出せる。
5音同時発音が可能(5音までの和音を同時に発音することができる)[4]で、音色はRev.1(後述)の場合40音のメモリーが可能である[5][6]。音色メモリー機能はZ80をCPUとして搭載し各パラメータの状態を記録可能にしたことにより実現した。また、カセットテープ用インターフェイスを搭載しており、外部のデータレコーダに音色データをセーブできる。61鍵、2VCO+VCF+VCA+LFOの構成である。
ポリ・モジュレーションという機能は、オシレーター(VCO)Bやフィルタのエンベロープで、オシレーターA、パルスウィズス、フィルターのカットオフ周波数を変調できるもので、複雑な倍音を合成することが可能となっている。
ユニゾンモードでのグライドが可能(後発のprophet-600はポリフォニックでのグライドが可能)
バージョン
[編集]Rev.3までで約7200台販売された。大きく分けて4つのバージョンに分かれる。機械としての安定性や機能面はRev.3が勝るが、反面楽器としての出音はRev.2以前の方が良いというユーザーもいる。
- Rev.1 - 製造番号0001から0182。製造初期のモデルで若干個体差がある。木製ボード部はアカシア材、VCOとVCFのチップはSolid State Micro Technology(SSMT)製。電源スイッチはフロントパネルにある。
- Rev.2 - 製造番号0183から1300。木製ボードの材質と内蔵チップはRev.1と同じ。電源スイッチが背面に移り、また若干パーツの変更があった。
- Rev.3 - 製造番号1301から2469。木製ボード部はクルミ材に変更、また内部のVCO、VCFチップがCurtis Electromusic Specilities(CES)製となり、電圧制御法が変わったことによりRev.1や2に比べ安定性が増した。ノブやボタン等の一部も変更されている。
- Rev.3.2 - 製造番号2470から4063。120音メモリとなった。後期モデルは部品を加えることでMIDI対応が可能。(製造番号で判断するとRev.3.3だが実際はRev.3.2が存在する)
- Rev.3.3 - 製造番号4064以降。
- Rev.4 - 2020年に発売。MIDI端子に加え、USB-B端子も搭載される。VCFは、Rev.1・2で採用されたものの同等品(SSI2140)とRev.3で採用されたもの(CEM3320)の2種類を搭載し、スイッチにより選択できるようになっている。このことから、単純なバージョンアップというよりは当機種の復刻版とされている。価格は3,499ドル。日本ではオープンプライスとなっているが、実売価格は499,800円のところが多い。また、同時に発音数が倍になったProphet-10も同時に発売された(価格は4,299ドル。日本ではオープンプライスで、実売価格は多くの店舗で599,800円)。ただしRev3以前の2段鍵盤ではなく、1段鍵盤のProphet-5 Rev.4と共通の筐体である。
主なユーザー
[編集]国内
[編集]- YMO
- 前期終盤のワールドツアーから後期(散開ライブまで)にかけて本機を多用し、音作りに関しても熟知していた。YMOのライブでサポートしていた矢野顕子も使用。
- 和泉宏隆
- THE SQUARE在籍中に本機を使用。前任の久米大作も本機を使用していた。加入して2作目の1983年のアルバム『うち水にRainbow』から使用機材としてクレジットがあるが、その頃から1987年頃までレコーディングやライブでも使用していた。
- 小田和正(オフコース時代)
- コンサート時は数台の本機を楽曲により使い分けていた。特にYes-Noにおけるポルタメントを使ったアウトロは有名。
- 喜多郎
- 坂本龍一
- 佐藤博
- アルバム『awakening』にて本機を使用。
- TM NETWORK
- 初期の楽曲では使用されており、「金曜日のライオン (Take it to the lucky)」のMVで確認できる。後に廉価版であるProphet-600に変更している。
- 冨田勲
- アルバム『大峡谷』にて本機を使用。
- 難波弘之
- 80年代前半頃から現在に至るまでレコーディングやライブで使用し続けている。1981年のソロアルバム、『PARTY TONIGHT』から使用機材として記載がある。
- 久石譲
- ホッピー神山
- 蓑輪単志
- 向谷実
- カシオペア在籍時ライブでは使用していなかったが、レコーディングでは1980年のアルバム『MAKE UP CITY』や翌年の『EYES OF THE MIND』等で使用。さらにその後もプロフェット5の倍の10音ポリで2段鍵盤となっているプロフェット10もレコーディングでは引き続き使用している。
海外
[編集]- ジョー・ザヴィヌル
- ハービー・ハンコック
- ジョージ・デューク
- ライル・メイズ
- ジャパン
- ホール&オーツ
- TOTO
- マイケル・マクドナルド
- ニュー・オーダー
- ジャン・ミッシェル・ジャール
- クラフトワーク[11]
- ピーター・ガブリエル
- キース・レヴィン
- ラルフ・タウナー
エミュレータ
[編集]音色を再現したソフトウェア・シンセサイザーとして、米国Wine Country ProductionsよりProphet Plus(日本未発売)、Native InstrumentsよりPro-53、ArturiaよりProphetV、u-heよりREPRO-5が発売されている。
ハードウェアとしては2006年にCreamwareよりPro-12 ASB、2007年にはプロフェット5の開発者であるDave Smithが設立したDave Smith InstrumentsよりProphet'08、2017年に本機の準復刻版であるProphet6が発表・市販されている。
脚注
[編集]- ^ “ハフポスト、「デイヴ・スミスさん死去。伝説的なシンセ「Prophet-5」の作者。“MIDIの父”とも呼ばれていた」2022年06月02日記事”. 2024年3月15日閲覧。
- ^ “Sequential(Dave Smithの会社)公式サイト、About Dave Smith”. 2024年3月19日閲覧。
- ^ “SEQUENTIAL 社 Prophet-5 / Prophet-10 の製品情報を掲載”. 有限会社福産起業 (2020年10月5日). 2021年3月16日閲覧。
- ^ “サウンドハウス(楽器の通信販売会社)、「シンセサイザー鍵盤狂 漂流記 ~音楽を彩った電気鍵盤たちとシンセ名盤の数々~ その17」2020-10-23”. 2024年3月14日閲覧。
- ^ “島村楽器、【Dave Smith】Sequential Prophet-5 rev.4 / Prophet-10”. 2024年3月14日閲覧。
- ^ “サウンドハウス(楽器の通信販売会社)、「シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その135 追悼 坂本龍一特集part4 ~プロフェット5への熱き想い…~」2023-05-12”. 2024年3月14日閲覧。
- ^ “坂本龍一|第19回 「テクノ」について言いきる”. OPENERS. 株式会社スマートメディア (2015年3月9日). 2021年3月16日閲覧。
- ^ 『風の谷のナウシカ サウンドトラック はるかな地へ』ライナーノーツ
- ^ 『久石譲in武道館 パンフレット』p15
- ^ 久石譲『I am 遥かなる音楽への道』メディアファクトリー、1992年、p40
- ^ “サウンドハウス(楽器の通信販売会社)、「シンセサイザー鍵盤狂漂流記 その135 追悼 坂本龍一特集part4 ~プロフェット5への熱き想い…~」2023-05-12”. 2024年3月19日閲覧。
外部リンク
[編集]- Prophet-5|SEQUENTIAL - 有限会社福産起業
- Prophet-5 Module|SEQUENTIAL - 有限会社福産起業