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イネ科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ホモノ科から転送)
イネ科
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
階級なし : ツユクサ類 Commelinids
: イネ目 Poales
: イネ科 PoaceaeGramineae
学名
Poaceae (R.Br.) Barnhart
クレード
  • Anomochlooideae
  • Pharoideae
  • Puelioideae
  • BEP clade
  • PACCAD clade

イネ科(イネか、Poaceae)は、おおよそ700属と8000種が属する被子植物単子葉類の大きなである。世界中で広く分布する[1]。古くは禾本科(かほんか)又はホモノ科とも呼んだ。

特徴

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草本か、あるいは木質化した中空の茎をもつ木本的な植物である[1]

平行脈をもち、細長く、薄いものが多い。一部で基部でねじれて裏表逆転するものがある。葉は根元から生える根出葉と、茎の途中に生える茎葉がある。ススキのように根出葉が多いものもあれば、ヨシのように茎葉が多いものもある。一部のものは、匍匐枝や地下茎があって横に這う。

葉の基部が茎に巻き付いて葉鞘を形成するが、カヤツリグサ科のように、葉鞘の両端が融合して筒になることは少ない。また、葉鞘の先端にヒレのような出っ張りが生じ、これを葉舌(ようぜつ)という。葉身が葉鞘に至るところで膨らむことがあるがここを葉耳と呼ぶ。葉舌、葉耳を種の同定の目安にするグループも少なくない。

は節があり、節ごとに葉がつき、根が円周上に出る。茎は往々にして中空で、節の所がしきりになる。茎は木質化して堅くなる場合があり、特にタケ亜科のものは材木に使えるほど丈夫になる。ただし、形成層はないので、成長して太くなることはない。タケ亜科は分類体系によってはイネ科から分離し、タケ科として扱ったこともある。

茎から出る側芽英語版(腋芽)が育った分枝をイネ科では分蘖(ぶんげつ)と呼ぶ[2][3][4]

根は、竹に見られるように根からも茎を生やす成長点を持ち、森林火災や草刈りなどにも強い耐性を持つ。そのため、草刈りの際に、根から上で雑草を刈るとイネ科が優勢となる環境を整えることとなり特定の昆虫が繁殖しやすくなる[5]

イネ科植物は、花粉媒介を風によっておこなう風媒花へと進化したものである[1]。そのため、そのは花弁などを失い、雌しべは長くて毛が生えていることが多い。また、花序が変形した小穂と呼ばれる偽花を単位とし、これが集合してを形成する。イネ科植物では小穂内の子房が成熟すると乾燥した果実を結び、これを穎果と呼ぶ。穎果はひとつひとつが外穎と内穎、時には苞穎も加わった籾殻にくるまれ密集する。風媒ではあるが、花粉を食物とするハエの仲間やハナバチなどの昆虫が訪れるのを見ることも多く、イネ科の花粉を専門に集めるハナバチもある。ただし、麦角菌に感染したイネ科植物の穂に昆虫が集まるのは、麦角菌が分生子を含んだ蜜を分泌するためである。

比較的下等なものでは小穂は多数の同じような花を並べた形であり、より進んだものでは、部分的な退化や様々な特殊化が見られる。雄花と雌花の分化が見られるものもある。詳しくは該当の項目を参照されたい。なお、このような特徴はイネ科の属の分類には欠かせない重要な特徴である。そのため、不明のイネ科の同定をおこなう場合、花が咲く直前のものを調べるのがよいとされている。

生育環境

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非常に種類が多く、実に様々な環境に生育するものがある。森林高山に生育するものもあるが、草原はイネ科の植物を中心に構成されることが多い。

双子葉植物が生育する草地では、一番上の層に光合成を行う同化組織が集中し、葉の影で下は暗くなる傾向があるが、イネ科植物の形成する草原は、茎も葉も立っているので、根元まで光が入る。

水辺にもカヤツリグサ科イグサ科とともに大きな群落をなす種がある。

利用の例

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イネ)、コムギ(小麦)、トウモロコシオオムギライムギなど、穎果部分を食用としたものが狭義の穀物であり、全てイネ科に属する。その他サトウキビタケなど馴染深い資源植物が多く含まれる。ススキパンパスグラスもイネ科に属する。穀物は小粒で大量の穎果から籾殻を除去し、さらに硬い果皮を除去(精穀、せいこく)しなければならず、穀物の利用はこれらを効率よく行うための技術の発達とともに進み、これらのすぐれた技術を持った集団がやがて文明として栄えてきた歴史的な背景がある。

代表的な使用例

また肉食動物のネコ燕麦などのイネ科の植物を時折食べる習性を持つため、飼い猫用に猫草としてペットショップなどで売られている事もある。

分類

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イネ科は、初期に枝分かれしたいくつかの原始的で互いには疎遠な亜科と、BEP clade(イネ、ムギ、タケなど)、PACAD clade(トウモロコシ、キビ、ヒエ、ススキなど)という2つの大きな単系統に分かれる。BEP cladePACAD clade は互いに姉妹群である。[6]

亜科・連への分け方は諸説あるが、系統が明らかになるにつれまとまりつつある。ここに示すのはGrass Phylogeny Working Group[7] による12亜科約40連である。さらに Micrairoideae 亜科を認める説もある[8]が、最近の研究によれば Micrairoideae は単系統ではなく[6]位置づけは不確実である。

亜連は省略し、属・種は重要なもののみリストアップしている。

原始的なイネ科

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アノモクロア亜科 Anomochlooideae

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イネ科の一番基盤で分岐した群で、それ以外のすべてのイネ科の群と姉妹群をなす。2連共に1属からなり、いずれも中央~南アメリカの低地林の林床に生える。

Pharoideae

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  • Phareae

Puelioideae

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  • Puelieae
  • Guaduelleae

BEP clade

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タケ亜科 Bambusoideae

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タケ類。かつてはイネ科のうち最初に分岐したという説もあり、タケ科 Bambusaceae とする場合もあった。

エールハルタ亜科 Ehrhartoideae

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イネ亜科 Oryzoideae とも。

イチゴツナギ亜科 Pooideae

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小穂は多数花、二花の場合、先端から退化傾向。

PACCAD clade

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Micrairoideae亜科を認める場合は PACCMAD clade とすることもある。

Aristidoideae

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  • Aristideae

ダンチク亜科 Arundinoideae

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ラッパグサ亜科 Centothecoideae

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ヒゲシバ亜科 Chloridoideae

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Danthonioideae

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  • Danthonieae

キビ亜科 Panicoideae

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小穂は二花、下側は実をつけない傾向。

所属不明

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  • Eriachneae - Micrairoideae亜科を認める場合は Micrairoideae 亜科に含められる。
  • Micraireae - Micrairoideae亜科を認める場合は Micrairoideae 亜科に含められる。
  • Streptogyneae

画像

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脚注

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  1. ^ a b c 北村四郎村田源『原色 日本植物図鑑』 木本編II(改訂10刷)、(株)保育社、大阪府大阪市淀川区、1983年5月1日。ISBN 4-586-30050-7 
  2. ^ 1本のイネが生育するときに、どのくらい枝分かれしているのですか。:農林水産省”. www.maff.go.jp. 2023年11月18日閲覧。
  3. ^ 分げつhttps://kotobank.jp/word/%E5%88%86%E3%81%92%E3%81%A4 
  4. ^ 真道, 大江 (2008). “分げつについて”. 日本作物学会紀事 77 (2): 229–232. doi:10.1626/jcs.77.229. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcs/77/2/77_2_229/_article/-char/ja/. 
  5. ^ 高刈りによるイネ科雑草と斑点米カメムシの抑制”. lib.ruralnet.or.jp. 2023年11月6日閲覧。
  6. ^ a b Bouchenak-Khelladi, Yanis; et al. (2008), “Large multi-gene phylogenetic trees of the grasses (Poaceae): Progress towards complete tribal and generic level sampling”, Molecular Phylogenetics and Evolution 47: 488-505 
  7. ^ Grass Phylogeny Working Group Home Page
  8. ^ 日本DNAデータバンク (DDBJ) が採用

参考文献

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外部リンク

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