コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

ムハンマド・アル=バシール

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ムハンマド・アル=バシール
Mohammad al-Bashir
محمد البشير
2024年撮影
シリアの旗 シリア暫定首相
就任
2024年12月9日
指導者アブー・ムハンマド・アル=ジャウラーニー
前任者ムハンマド・ガーズィー・アル=ジャラーリーアラビア語版
第5代 シリア救国政府首相
任期
2024年1月13日 – 2024年12月9日
大統領ムスタファー・アル=ムーサー英語版
前任者アリー・ケダ英語版
後任者シリア暫定政府
個人情報
生誕Mohammad al-Bashir
1983年(41 - 42歳)
シリアの旗 シリアイドリブ県ジャバル・アッ=ザーウィヤ英語版地方マシュウーン村
国籍シリアの旗 シリア
政党シャーム解放機構
教育アレッポ大学 (工学学士)
イドリブ大学英語版 (教養学士)
職業政治家

ムハンマド・アル=バシール (アラビア語: محمد البشير‎, 文語アラビア語発音:Muḥammad al-Bashīr、英字表記例:Mohammed al-Bashir、1983年 - )は、シリア政治家エンジニア。現在、同国の暫定首相。2024年1月13日よりイスラーム教スンナ派組織シャーム解放機構 (HTS)の文民政権であるシリア救国政府英語版の首相(第5代)を経て、バッシャール・アル=アサド政権崩壊後の2024年12月10日からシリア暫定政府の首相となった[1]

名前

[編集]

ムハンマド・アル=バシール

  • アラビア語محمد البشير(文語アラビア語発音:Muḥammad al-Bashīr)
  • 英字表記例:Mohammed al-Bashir(口語発音依拠、モハンメド・アル=バシール)

ムハンマドがファーストネーム、アル=バシールは男性名由来のラストネーム(家名に相当)に当たる。

日本語カタカナ表記については、学界も含めた日本国内慣用として定冠詞アル部分を除去したムハンマド・バシール、メディアなどの一般記事における長母音「ー」除去を適用したムハンマド・バシル、Muhammadの慣用的カタカナ表記ムハマドを用いたムハマド・バシル、ムハンマドの口語発音に依拠したMohammedをモハメドとする慣用的カタカナ表記を用いたモハメド・バシルなどが混在している。

来歴

[編集]

バシールは1983年、イドリブ県ジャバル・アッ=ザーウィヤ英語版アラビア語جبل الزاوية, Jabal al-Zāwiya)地方のマシュウーン(アラビア語مشعون, Mashʿūn、英字表記例:Mashoun)村で生まれた[2][3]

アレッポ大学では電気・情報工学の通信分野を専攻、2007年に卒業。2011年に国営企業シリアガス会社(アラビア語شركة الغاز السورية, Sharikat al-Ghāz al-Sūrīya, シャリカト・アル=ガーズ・アッ=スーリーヤ、英語名称:Syrian Gas Company(略称SGC))のガス工場における精密機器部門の責任者となった[3][4]

2011年にシリア内戦が勃発し反体制地域での状況が悪化したことに伴い人道支援の道に転向。政府の学校に代わり戦争で被害を受けた子どもたちに教育を行うアル=アマル教育研究所(アラビア語معهد الأمل التعليمي, Maʿhad al-Amal al-Taʿlīmī, マアハド・アル=アマル・アッ=タアリーミー、英語名称:Al Amal Educational Institute[5])の所長となった[2][6]

2021年にはイドリブ大学英語版にてシャリーア(イスラーム法)ならびに法律の学位を取得。あわせて行政組織ならびにプロジェクトマネジメントの資格も取得した[4][7]

政治家として

[編集]

バシールは救国政府で複数の役職を歴任。ワクフ・宣教・教導省でイスラーム教育部門部長(2年半)、開発・人道問題省内部局の局長ならびに副局長などを務めた[2][3]

その後救国政府のアリー・ケダ英語版アラビア語علي كده, ʿAlī Keda)内閣における開発・人道問題大臣に就任、2022年~2023年の2年間にわたり務めた[2][3][7][8]

シリア救国政府首相

[編集]

2024年1月13日、救国政府議会である評議会(シューラー議会)は首相選出選挙を行い、バシールが当選[4][9]。彼の選挙公約は電子政府と政府の自動化に焦点を当てたものであった[10]。バシール政権は不動産手数料を引き下げ、計画規制を緩和し[10]、イドリブ市の区画整理計画を拡大するための協議を開始した[11]

2024年3月5日、イドリブでHTSに対するデモが行われ、ラマダーンが始まる中バシールは重大な犯罪で有罪判決を受けていない囚人に対し恩赦を与える法令に署名した[12]

2024年11月下旬、HTS主導の軍事作戦司令部英語版は、トルコに支援されたシリア国民軍英語版の反政府勢力の支援を受けてシリア北西部への攻勢を開始。アレッポを占領し、救国政府の支配地域を大幅に拡大した。記者会見でバシールは、この攻勢はシリア政府軍による民間人への攻撃に対抗するために開始されたと述べ[13]、それが数万人にも及ぶ民間人の避難につながったと主張した[14]。バシールは12月4日にアレッポを訪れて政府機関の再開を監督し、職場に戻った旧政府の職員を賞賛した[15]

シリア共和国暫定首相

[編集]

2024年12月9日のアサド政権崩壊後、バシールはHTS司令官のアブー・ムハンマド・アル=ジャウラーニーおよび旧アサド政権首相のムハンマド・ガーズィー・アル=ジャラーリーアラビア語版と会談し、政権移譲を調整した後、暫定政府の樹立を命じられた[16][17][18]。翌日、バシールは正式に暫定政府の首相に任命され、任期は2025年3月1日までとされた[19][20][21]。バシールはテレビ放送での声明の中で、救国政府の高官が政権移譲を促進するために旧政権の代表と会談したこと、救国政府内閣が暫定政府においてそれぞれの役割を担うことを発表した[22][23]

脚注

[編集]
  1. ^ Service, TGO News (2024年12月11日). “Syria’s Interim Government Prioritizes Security and State Stability” (英語). The Gulf Observer. 2024年12月12日閲覧。
  2. ^ a b c d “سورية: حكومة الإنقاذ في إدلب تنتخب رئيساً جديداً لها [シリア:イドリブの救済政府が新大統領を選出]” (アラビア語). (2024年1月13日). https://www.alaraby.co.uk/politics/%D8%B3%D9%88%D8%B1%D9%8A%D8%A9-%D8%AD%D9%83%D9%88%D9%85%D8%A9-%D8%A7%D9%84%D8%A5%D9%86%D9%82%D8%A7%D8%B0-%D9%81%D9%8A-%D8%A5%D8%AF%D9%84%D8%A8-%D8%AA%D9%86%D8%AA%D8%AE%D8%A8-%D8%B1%D8%A6%D9%8A%D8%B3%D8%A7%D9%8B-%D8%AC%D8%AF%D9%8A%D8%AF%D8%A7%D9%8B-%D9%84%D9%87%D8%A7 2024年12月12日閲覧。 
  3. ^ a b c d محمد, عبده (2024年12月9日). “من هو محمد البشير رئيس وزراء سوريا بعد سقوط الأسد؟” (アラビア語). جريدة الأمة الإلكترونية. 2024年12月13日閲覧。
  4. ^ a b c إدلب.. محمد البشير رئيس جديد لحكومة "الإنقاذ"” [Mohammad Al-Bashir Appointed as the New Head of the 'Salvation Government'] (アラビア語) (2024年1月13日). 2024年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年12月12日閲覧。
  5. ^ معهد الأمل التعليمي/Al Amal Educational Institute”. 2024年12月13日閲覧。
  6. ^ “محمد البشير: ماذا نعرف عن المرشح لرئاسة الحكومة السورية الجديدة؟ [ムハンマド・アル=バシール:シリア新政府の首班候補について私たちは何を知っているのか?]” (アラビア語). BBC News عربي. (2024年12月10日). https://www.bbc.com/arabic/articles/clyj6vm86ymo 2024年12月12日閲覧。 
  7. ^ a b رئيس مجلس الوزراء في حكومة الإنقاذ السورية - حكومة الإنقاذ السورية” [シリア救国政府首相 - シリア救国政府] (アラビア語). Syrian Salvation Government (2023年3月27日). 2024年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年12月12日閲覧。
  8. ^ “Engineer Muhammad al-Bashir Elected as SSG Prime Minister” (英語). Levant24. (2024年1月13日). https://levant24.com/news/2024/01/engineer-muhammad-al-bashir-elected-as-ssg-prime-minister/ 2024年12月12日閲覧。 
  9. ^ Al-Jolani: The one-man rule” (英語) (2024年4月22日). 2024年9月26日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年12月12日閲覧。
  10. ^ a b SSG Reduces and Cancels Some Real Estate Fees” (英語). Syria Report. 2024年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ2024年12月12日閲覧。
  11. ^ Salvation Government Studies Expanding Idlib City Zoning Plan” (英語). Syria Report. 2024年12月12日閲覧。
  12. ^ “إدلب.. "الإنقاذ" تصدر عفوًا عن مرتكبي الجرائم وفق شروط واستثناءات [『救国』は条件と例外に従って犯罪加害者に恩赦を与える]” (アラビア語). エナブ・バラディ英語版. (2024年3月5日). https://www.enabbaladi.net/689939/%D8%A5%D8%AF%D9%84%D8%A8-%D8%A7%D9%84%D8%A5%D9%86%D9%82%D8%A7%D8%B0-%D8%AA%D8%B5%D8%AF%D8%B1-%D8%B9%D9%81%D9%88%D9%8B%D8%A7-%D8%B9%D9%86-%D9%85%D8%B1%D8%AA%D9%83%D8%A8%D9%8A-%D8%A7%D9%84%D8%AC/ 2024年12月12日閲覧。 
  13. ^ “Syrian insurgents cut off key road as 200 die in escalating violence”. ガーディアン. (2024年11月28日). https://www.theguardian.com/world/2024/nov/28/syrian-insurgents-cut-damascus-aleppo-highway-amid-fresh-offensive 2024年12月12日閲覧。 
  14. ^ “Armed factions of the Syrian opposition announce entry into several neighborhoods in Aleppo”. SCOPE 24. (2024年11月29日). https://scope24.net/en/world_news/13621.html 2024年12月12日閲覧。 
  15. ^ “Up to Double: Commodity Prices Rise in Aleppo” (英語). The Syrian Observer. (2024年12月5日). https://syrianobserver.com/society/up-to-double-commodity-prices-rise-in-aleppo.html 2024年12月12日閲覧。 
  16. ^ “المعارضة السورية تكلف محمد البشير بتشكيل حكومة انتقالية [Syrian opposition assigns Mohammed al-Bashir to form new government]” (アラビア語). アルジャジーラ. (2024年12月9日). https://www.aljazeera.net/news/2024/12/9/%D8%B9%D8%A7%D8%AC%D9%84-%D9%85%D8%B1%D8%A7%D8%B3%D9%84-%D8%A7%D9%84%D8%AC%D8%B2%D9%8A%D8%B1%D8%A9-%D8%B3%D9%8A%D8%AA%D9%85-%D8%AA%D9%83%D9%84%D9%8A%D9%81-%D9%85%D8%AD%D9%85%D8%AF 2024年12月12日閲覧。 
  17. ^ “Syria Rebel Group Political Chief to Form Temporary Government” (英語). ブルームバーグ. (2024年12月9日). https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-12-09/syria-rebel-group-political-chief-to-form-temporary-government 2024年12月12日閲覧。 
  18. ^ Picheta, Rob; Regan, Helen (2024年12月9日). “After decades of brutal rule, Bashar al-Assad's regime has been toppled. Here's what we know” (英語). CNN. https://edition.cnn.com/2024/12/09/middleeast/syria-assad-rebels-explainer-intl-hnk/index.html 2024年12月12日閲覧。 
  19. ^ أميركا تحث على دعم عملية سياسية "جامعة" في سوريا [アメリカ、シリアにおける『包括的な』政治プロセスへの支持を要請]. Independent Arabia (アラビア語). 10 December 2024. 2024年12月12日閲覧
  20. ^ “Syrian rebels name Mohammed al-Bashir head of transitional government” (英語). ル・モンド. (2024年12月10日). https://www.lemonde.fr/en/syria/article/2024/12/10/syria-rebels-name-mohammed-al-bashir-head-of-transitional-government_6735906_229.html 2024年12月12日閲覧。 
  21. ^ Der Islamist im Anzug: Wer ist der syrische Übergangspremier Mohammed al-Bashir?” [スーツを着たイスラム主義者:シリアの暫定首相ムハンマド・アル=バシールとは何者か?] (ドイツ語). Die Presse英語版 (2024年12月10日). 2024年12月12日閲覧。
  22. ^ “Assigning Mohammed al-Bashir to Head Transitional Syrian Government” (英語). The Syrian Observer. (2024年12月10日). https://syrianobserver.com/syrian-actors/assigning-mohammed-al-bashir-to-head-transitional-syrian-government.html 2024年12月12日閲覧。 
  23. ^ “Mohammed al-Bashir to head Syria's transitional government” (英語). エナブ・バラディ英語版. (2024年12月10日). https://english.enabbaladi.net/archives/2024/12/mohammed-al-bashir-to-head-syrias-transitional-government/ 2024年12月12日閲覧。 


公職
先代
ムハンマド・ガーズィー・アル=ジャラーリーアラビア語版
シリアの旗 シリア共和国首相
暫定:2024 -
現職