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多角形表記

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メジストンから転送)

多角形表記(たかくけいひょうき、polygon notation)とは、多角形を用いた巨大数の表記法である。ユゴー・スタインハウス英語版によって考案され、後にレオ・モーザー英語版によって拡張された。

スタインハウスの多角形表記

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スタインハウスの多角形表記は、次のように定義される。

  • 三角形の中にn = nn = n↑n = n ↑2 2 = n → 2 → 2
  • 四角形の中にn = 「n 重の三角形の中の n
  • 円の中にn = 「n 重の四角形の中の n

この表記を用いて、スタインハウスは次の数を定義した。

  • 円の中に2メガ (mega) という。
  • 円の中に10メジストン (megiston) という。

モーザーの多角形表記

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モーザーの多角形表記は、スタインハウスのものを拡張し、一般の多角形を用いるようにした。

  • 三角形の中にn四角形の中にnはスタインハウスのものと同じ。
  • 五角形の中にn = 「n 重の四角形の中の n 」 (= 円の中にn )
  • 一般に「m 角形の中の n 」 = 「n 重の (m - 1) 角形の中の n

円の中に2角形の中の2」 をモーザー数と言う。

ブラケットでの表記

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ヨーク大学のSusan Stepney教授は、自らのサイトで次の代用表記を使っている。

  • p 角形の中の n と表す。
  • は必要なだけ繰り返せる。たとえば、p 角形の中の q 角形の中の n と表す。
  • k 重の p 角形の中の n と表す。つまり、
である。

これを使えば多角形表記の定義は次のようになる。

  • 三角形の中にn = n[3] = nn
  • 四角形の中にn = n[4] = n[3]n
  • 五角形の中にn = 円の中にn = n[5] = n[4]n
  • 一般に n[m] = n[m−1]n(mが4以上の場合)

他の例としては:

  • 4重の三角形の中にn = n[3]4

スタインハウスとモーザーが定義した巨大数は次のように表せる。

  • 円の中に2(メガ) = 2[5]
  • 円の中に10(メジストン) = 10[5]
  • モーザー数 = 2[2[5]] = 2[②]

この代用表記は、モーザー数のような、忠実な多角形の図による表記が事実上不可能なほど巨大な数も表記できるという利点がある。

計算

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左から計算される。

簡単な例

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  • 2[3] = 22 = 4
  • 2[4] = 2[3]2 = 4[3] = 44 = 256

スタインハウスのメガ

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円の中に2 = 2[5]

= 2[4]2
= 2[4][4]
= 256[4]
= 256[3]256

したがって、円の中に2+1はフェルマー数である。

256[3]nを順に見ていくと、

ここで、↑はクヌースの矢印表記である。

となる。ここで、きわめて大雑把な「近似

を導入する。しかし近似といっても実際は

であり、通常の感覚ではまったくかけ離れていることに注意。このような現象を「指数タワーパラドックス」と呼ぶ。

同様に、

[注釈 2]

と「近似」できる。したがって、

円の中に2 = 256[3]256 ≒ (256↑)256 257

である。

さらに大雑把な「近似」を認めれば、

円の中に2 ≒ 256↑↑257

と表せる。ただし実際は、

円の中に2 ≫ (256↑)256 257 ≫ 256↑↑257

である。

具体的な値は

円の中に2 ≒ (10↑)255(1.99×10619) ≒ (1000000↑)255(3.3206232×1000000103)

に近く、したがって

10↑↑257 < 円の中に2 < 10↑↑258

の範囲にあって、

1000000↑↑256 < 円の中に2 < 1000000↑↑257

の範囲にある。

スタインハウスのメジストン

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円の中に10 = 10[5] = 10[4]10

スタインハウスのメガの時と似た「近似」によって、およそ

(*)

であるとすると、

ここで、一般の a, b, n について次のような式を考える。ab = ab に注意すれば、

a, b が十分に大きければ

だから、

と近似してよい。

これを n が 1 になるまで繰り返せば、

したがって、nb ならば

(**)

と近似してよい。

(**) を用いて、改めて 10[4]2 を近似すると

である。以下同様に (*) と (**) を使えば

したがって、

であるので、大雑把には

円の中に10 ≒ 10↑↑↑11

である。ただし、実際はメガと同様に、

円の中に10 ≫ (10↑↑)10 11 ≫ 10↑↑↑11

である。

モーザー数

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モーザー数は 2[円の中に2] = 2[2[5]] である。したがって、2[2[5]]+1はフェルマー数である。先に示したように 円の中に2 は相当な巨大数であるので、円の中に2 角形はほとんども同然であり、忠実な多角形の図による表記は事実上不可能である。

モーザー数が 円の中に2 よりはるかに大きいことは自明で、また 円の中に10 よりもはるかに大きい。

しかし、グラハム数よりは圧倒的に小さいことが Tim Chow によって1998年に証明された[1]。この証明によれば、モーザー数 Mチェーン表記矢印表記、そしてハイパー演算子を用いて

である。

モーザー数をクヌースの矢印表記で厳密に表すのは事実上不可能であるが、およそ 3↑↑↑…(②−2本)…↑↑↑3 に近似すると考えられる。

その他

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多角形表記では、巨大数のレベルとしては、クヌースの矢印表記レベルの巨大数を作ることができ、増加速度としては、近似的には、多角形表記の多角形の角を1つ増やすことは、クヌースの矢印表記の矢印を1本増やすことに相当する。

関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ 桁数が非常に大きいため、時間の単位をプランク時間のいずれにしても無視できる範囲で近似する。
  2. ^ ここから先は、宇宙論で使われた最大の数(複数の宇宙の全質量を1個のブラックホールに圧縮しそれが蒸発した後に、ポアンカレの回帰定理に従い再びブラックホールができる時間)[注釈 1]よりも更に巨大化していく。

出典

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  1. ^ [1]

外部リンク

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  • Susan Stepney's Big Numbers
  • Weisstein, Eric W. "Steinhaus-Moser notation". mathworld.wolfram.com (英語).