ラザロ
聖ラザロ(聖ラザリ) | |
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ラザロの復活(画:フアン・デ・フランデス) | |
崇敬する教派 |
正教会 非カルケドン派 カトリック教会 聖公会 |
記念日 | 6月21日 |
ラザロ(古代ギリシア語: Λάζαρος、ラテン語: Lazarus)は、ユダヤ人の男性で、イエス・キリストの友人。『ヨハネによる福音書』に語られる、イエスによって死から甦る『ラザロの復活』の逸話によって著名な人物である。日本ハリストス正教会ではラザリと転写される。ラザロという名はユダヤ名・エルアザルがギリシア語化した名と推測される。
なお、「金持ちとラザロ」で知られるラザロが『ルカによる福音書』16章に登場するが、これは同名の別人とされていることに留意が必要である。
人物
[編集]キリスト教の正教会、非カルケドン派、カトリック教会、聖公会で聖人。記念日は6月21日。エルサレム郊外のベタニアに暮らし、マリアとマルタの弟で、共にイエス・キリストと親しかった。イエスはマリアとマルタの家を訪れている(『ルカによる福音書』10:38-42)。
『ヨハネによる福音書』11章によれば、ラザロが病気と聞いてベタニアにやってきたイエスと一行は、ラザロが葬られて既に4日経っていることを知る。イエスは、ラザロの死を悲しんで涙を流す。イエスが墓の前に立ち、「ラザロ、出てきなさい」というと、死んだはずのラザロが布にまかれて出てきた。このラザロの蘇生を見た人々はイエスを信じ、ユダヤ人の指導者たちはいかにしてイエスを殺すか計画し始めた。カイアファと他の大祭司はラザロも殺そうと相談した。(ヨハネ12:10)
伝承によれば、後にラザロはキプロスの初代主教となった。キプロス南東の都市ラルナカにある、聖ラザロ教会の地下クリプトにはラザロの墓所がある。正教会では、伝統的に聖枝祭(主のエルサレム入城)前日の土曜日(スボタ)をラザリのスボタと呼び、キリストによるラザロの蘇生を記憶する。
また、南フランスの伝承では、姉妹マルタ、マリアらと共にサント=マリー=ド=ラ=メールに辿り着き、その後マルセイユの地で布教に励んだという。
2021年、カトリック教会はラザロをマリアと共にマルタの記念日である7月29日に加え一般典礼で祝うことを発表、施行した[1]。
解釈
[編集]ラザロ蘇生の奇跡は、人類全体の罪をキリストが贖罪し、生に立ち返らせること(復活)の予兆として解釈されてきた。文学においても、時にその様なイメージの引用が見られる。例えば、ドストエフスキーの『罪と罰』において、主人公である殺人犯のラスコールニコフが自白を決意する契機として、ラザロの死と甦りの下りを娼婦のソーニャに請うて朗読させる場面が登場する[2]。
比喩表現
[編集]ラザロの伝承から、キリスト教圏の欧米を中心に、蘇生・復活に関連する学術用語にしばしば「ラザロ」の名が冠される。医学の「ラザロ徴候」や「ラザロ症候群」、分類学で絶滅したとみなされた後に再発見された生物種を指す「ラザロ生物群」などである。
フィクションでも、ホラー映画『ラザロ・エフェクト』や小説『ラザロ・ラザロ』(図子慧)、『幸福なラザロ』のように、ラザロを題名に取り入れた作品がある。
脚注
[編集]- ^ “一般ローマ暦:7月29日にマルタ、マリア、ラザロの三聖人を記念”. Vatican News. (2021年2月2日)
- ^ 『罪と罰(第四篇第四節)』:新字新仮名 - 青空文庫
関連項目
[編集]- 聖書の登場人物の一覧
- 聖ラザロ騎士団
- ラザロ徴候
- ファリサイ派 - ラザロを殺害しようと企む。
- GPS衛星 - 一度機能停止してから復活したため「ラザロ」の愛称を付けられた人工衛星が存在する。
- 死に至る病 - キェルケゴールの哲学書。
- ラザロの復活 (カラヴァッジョ) - 絵画作品
- インターステラー (映画) - 作中で、人類の新天地を求める移住計画の名前がラザロ計画と名付けられている。