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レンブラントライティング

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
レンブラント照明から転送)
かつて、レンブラントの作品とされていた
『黄金の兜をかぶった男』
このような光の当たり方を再現したのがレンブラントライティングである。

レンブラントライティング: Rembrandt lighting)は斜め上の光源により顔の陰影を際立たせる人物撮影照明技法である[1]レンブラント照明[2]レンブラントライト[3]とも。

概要

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レンブラントライティングは、光源を斜め45度ぐらいの角度でやや上方から当て、人の顔の場合、になる顔半分の頬骨辺りに三角形の光(レンブラントパッチ)を作ることででき、顔の立体感、陰影が強調される[2]

画家レンブラント・ファン・レインが、ポートレートを描くために使ったと言われている採光方法に由来するため「レンブラント」ライティングと呼ばれている[4]。なお、レンブラント・ファン・レインは決してレンブラントライトのような採光方法ばかりを使っていたわけではない[5]

レンブラントライティングは照明技法であり、カメラと被写体の位置関係に依らない。カメラアングルが変化しても光源が鼻筋に対し45度であればレンブラントライティングである(#カメラポジションに基づく分類[6]

最も基本的なレンブラントライティングは照明一灯とレフ板一枚で作ることができる[7]。多くの場合、陰影が強くなってしまうため、影側から補助光を当てたり、ループライティング(後述)のような陰影を柔らかくする工夫、あるいはその両方を行うというのが一般的である[8]

レンブラントパッチ

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レンブラントパッチ: rembrandt patch)はレンブラントライティングにより発生する、眼窩下部の明るい逆三角形である[9]レンブラントトライアングル: rembrandt triangle)とも。

パッチの大きさや形状は光源の種類・強度・角度などに依存する[10]

レンブラントパッチの原理

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頬眼窩下部の凸(横顔)

ヒトの顔面は大雑把には球面であり、斜め光源を用いると顔の半分が明るくもう半分が暗く見える(陰になる)。だが実際の顔面は球面上に凹凸をもつ。に着目すると、鼻の脇は深い凹となりそこから頬の眼窩下部(頬骨周り)が高い凸になっている(その後は耳の方へ球面状に回り込んでいく)。そのため斜めの光が陰側の頬の眼窩下部へ垂直寄りで投射する。これによりこの領域が明るく見える[11]

鼻の影も重要な役割を果たす。顔の正中には鼻が隆起しているため、鼻は陰側の顔面にを落とす。頬の眼窩下部がある程度高さのある凸になっているため、鼻の影は鼻と頬のあいだまで落ちることになる[11]

これが組み合わさることで逆三角形の明るい領域(レンブラントパッチ)が発生する。外縁は凸から球面への移行で現れる陰(self shadow)であり、内縁は鼻の影の縁(cast shadow)である[11]

分類

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カメラポジションに基づく分類

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レンブラントライティングは照明技法であり、カメラのポジションやアングルと原理的には独立している。しかしレンブラントライティングの微調整(例: 照明移動によるレンブラントパッチの形状調整)は最終的な画を意識しておこなわれるものであり、実務的にはカメラポジション/アングルごとにレンブラントライティングの傾向が異なる。このような背景からカメラポジション/アングルに基づいたレンブラントライティングの分類がしばしばなされる。以下はその一例である。

ブロードレンブラントライティング

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ブロードレンブラントライティングはカメラの位置を順光に近くなる位置に寄せたレンブラントライティングである。

カメラに向いた顔の広い面積が明るくなるので、「ブロード」と付いている。人の顔の場合、奥の頬に三角形のハイライトができる[6][8]

ショートレンブラントライティング

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ショートレンブラントライティングはカメラの位置を逆光に近くなる位置に寄せたレンブラントライティングである。

カメラの光軸に対して、右手より直角に入る光となり、明るい部分の少ない影中心の表現となる[6][8]

プロフィール

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プロフィールは横顔を半逆光で照らして撮影するレンブラントライティングである。

関連したライティング技法

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ループライティング

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レンブラントライティングの陰影を柔らかくするために生まれたライティング技法で、鼻の左側にできる影の形が輪っか状になることからこの名前がきている。レンブラントライティングより、光源の高さが低く、カメラマン寄りとなっており、光が顔に当たる角度がやや正面に近くなる[6][8]

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ "The Rembrandt lighting ... depicted the detailed facial expressions using contrast between shadows and lightings. The lighting used by Rembrandt is adopted by film directors since it is effective for close up shot of actor in movies. Therefore, it became one of the standard lighting for person." Joe 2005, pp. 340–341 より引用。
  2. ^ a b なぜレンブラント照明と呼ばれるのですか。 - 丰睿光电” (2022年10月16日). 2024年2月5日閲覧。
  3. ^ 「レンブラント‐ライティング」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書”. www.weblio.jp. 2023年5月31日閲覧。
  4. ^ "The Rembrandt lighting (closed loop lighting) is originated from a painting style created by a Dutch painter, Harmensz van Rijn Rembrandt, in the seventeenth century." Joe 2005, p. 340 より引用。
  5. ^ 名画に学ぶ人物ライティング”. seki-photo.com. 2023年5月31日閲覧。
  6. ^ a b c d 第12回 レンブラントライティングで撮るポートレイト | 玉ちゃんのライティング話 | Shuffle by COMMERCIAL PHOTO”. shuffle.genkosha.com. 2023年5月31日閲覧。
  7. ^ ジャパンカメラ編集部 (2016年1月17日). “ポートレイト写真のライティング:4つの基本照明タイプを極めよう!”. ジャパンカメラ : デジタル一眼レフカメラと写真のすべて. 2023年5月31日閲覧。
  8. ^ a b c d ポートレート基本ライティング7種類を解説! | Amazing Graph|アメイジンググラフ” (2019年3月21日). 2023年5月31日閲覧。
  9. ^ "The triangle shaped bright region surrounded by shadows is called Rembrandt patch" Joe 2005, p. 341 より引用。
  10. ^ "Whenever the light source changes its position, these three shadow lines are located on different positions." Joe 2005, p. 341 より引用。
  11. ^ a b c "Boundary lines of the Rembrandt patch are composed of three shadow lines. Moreover, the shadow lines are generated by two types of shadows. ... a self shadow line which is formed by surfaces that do not receive direct illumination. ... a cast shadow line projected by the nose ridge. ... a cast shadow line projected by the region of the eye." Joe 2005, p. 341 より引用。

参考文献

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  • Joe, Hongmi (2005). “Interactive Rembrandt Lighting Design”. Advances in Multimedia Information Processing - PCM 2005: 339–349. doi:10.1007/11581772_30. 

関連項目

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