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万人救済主義

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
万人救済説から転送)
オリゲネス

万人救済主義(ばんにんきゅうさいしゅぎ、ユニバーサリズム、: Universal Reconciliation、Christian Universalism)はキリスト教の非主流派思想のひとつ。これは、すべてが神のあわれみによって救済を受けるという教理、信仰である。すべての人が、結局は救済を経験するとし、イエス・キリストの苦しみと十字架が、すべての人を和解させ、罪の贖いを得させると断言する。これは、ユニテリアン・ユニヴァーサリズムとは異なっている。

万人救済主義は地獄の問題と密接に関係がある。救済に至る方法や状態に関して様々な信仰と見解があるけれども、すべての万人救済主義者は、究極的にすべての人の和解と救済に終わると結論する。

万人救済の教理、信仰についての論争は歴史的に活発に行われてきた。初期において万人救済主義の教理はさかんであった。しかし、キリスト教の成長にともない、それは廃れていった。今日の多くのキリスト教教派は万人救済主義に否定的な立場を取っている。

歴史

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古代にはオリゲネスの思想に見られ、近代のカール・バルトも万人救済を唱えたとされている。

万人救済主義とはキリスト教信仰の有る無しに関わらず、全人類がすでに救われているという思想である。これに対しキリスト教において正統とされてきた神学はアウグスティヌスらが唱え、19世紀までキリスト教会で主流であった排他主義(Exclusivism)である。これは信者のみが救われるという神学である。

初期の歴史

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ダマスカスの周辺の初期のクリスチャン共同体が万人救済の教義を提唱したと信じられている。様々な神学者が初期キリスト教において万人救済主義の立場に立った。アレクサンドリアのクレメンスオリゲネスらである。

近代の万人救済主義者は、それが6世紀にカトリック教会によって根絶されるまで、万人救済主義が教会の主要教理であったと主張する。アウグスティヌスが万人救済主義を強力に否定する前は、さまざまな神学的考えがあったと見なされている。

オリゲネスとアポカタスタシス論は、544年コンスタンチノープルの総主教によって非難された。また553年第2コンスタンティノポリス公会議でこの非難が批准された。多くの異端がオリゲネスと関連付けられた。彼に対する15のアナテマは、アポカタスタシス、魂の前存、アニミズム、異端のキリスト論、体の復活の否定であった。

万人救済説の復活

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宗教改革時代に万人救済説の和解の教理は復興した。エラスムスらがギリシャ教父に対して再び関心を持たせた。教父の著書が出版され、オリゲネスら初期の万人救済主義者が知られるようになった。宗教改革時代から啓蒙主義の時代は救いと地獄について活発に論争がなされた。

16世紀ドイツ人の神学者によって万人救済説が広がった。17世紀にはイギリスにも存在していた。ペンシルベニアのクエーカーは万人救済を受け入れ、この思想は18世紀アメリカの植民地にももたらされた。北米の万人救済主義は積極的、組織的であった。ジョナサン・エドワーズはこれを脅威と考え、万人救済主義の教えと主張者に反対し、ニューイングランドの正統的な会衆派牧師の立場から、多くの著書を書いた。 [1][2][3]

近年

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2008年4月7日バチカンにおいて、ロシア正教会ウィーン主教(肩書き当時)イラリオン・アルフェエフは、神の慈しみが非常に大きいので、神は罪人を永遠の刑罰に宣告しないと論じた。但しイラリオン・アルフェエフは自身の説明を、祈祷書などの正教の伝統的文言に出典を求めた上で正教の伝統に位置付けており、オリゲネスの思想とは区別している[4]。また、(西方教会の神学とはかなり異なる別系統の神学的伝統を正教会は有していることもあり)イラリオン主教の言説は正教では通常万人救済主義とは看做されていない。

2007年5月16日に、ワシントンD.Cの国立メモリアル教会においてキリスト教ユニヴァーサリズム協会が設立された。それは近代的なユニテリアン・ユニヴァーサリズムから区別するための動きであった。

2005年にローマ・カトリックのウェストミンスター大司教、マーフィー・オコーナー枢機卿は、万人救済説がカトリックの教えと両立できると主張し、万人救済に関する彼の個人的な希望を表明した。

福音派は、万人救済に反対し、永遠の地獄の教理を弁護して、20世紀の数十年の間に多くの出版物を出した。しかし,今日、福音派の代表的指導者であるジョン・ストット[1921-2011]は伝統的かつ正統的教理である地獄に反対する声をあげるようになった。

日本の福音派日本福音同盟は第一回日本伝道会議、第二回日本伝道会議において、リベラル派エキュメニカル派)の万人救済主義を新普遍救済主義(ネオ・ユニヴァーサリズム)と呼び、異端として退けている。新普遍救済主義はエキュメニカル派の万人救済主義であり、アルミニウス主義普遍救済主義と区別される。[5][6]

脚注

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  1. ^ Seymour, Charles. A Theodicy of Hell. Pp. 30-31. Springer (2000). ISBN 0792363647.
  2. ^ Thomas Brown A History of the Origin and Progress of the Doctrine of Universal Salvation
  3. ^ Catherine L. Albanese A republic of mind and spirit: a cultural history of American metaphysical
  4. ^ イラリオン・アルフェエフ主教著・ニコライ高松光一訳『信仰の機密』東京復活大聖堂教会(ニコライ堂)2004年発行、190頁
  5. ^ 日本伝道会議『京都宣言-解説と注釈』
  6. ^ 宇田進『福音主義キリスト教と福音派』

関連項目

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