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二次創作

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
二次創作活動から転送)

二次創作(にじそうさく)とは、原典となる創作物を利用して、独自の漫画小説フィギュアポスターカードなどの派生作品二次的に創作[注 1]することを指す[1]

定義

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「二次創作」に広く受け入れられかつ厳密な定義は存在しない。一般に二次創作と呼ばれるものの例として以下が挙げられる。

  • 商業漫画のキャラクターが原作と異なるストーリーで登場する漫画を、原著者と無関係な個人が描くこと(二次創作同人誌
    • 同様に原著者が自身で描いた作品を対象に、「原作とは全く関係ないと明示」した上で描いた創作物
  • 既存のJ-POP楽曲を独自に和風アレンジすること(c.f. 編曲リミックス
  • ゲームに登場する3Dキャラクターの個人による模倣3Dモデルの製作(例: 二次創作MMDモデル)
  • キャラクター設定があるコンテンツの内、その一部を使用したり、または創作者間で作り上げた設定で創作すること。
    • キャラクターの権利を保有する団体側が同様に、「公式二次創作」という体で基幹設定に干渉しないように前置きしたコンテンツ展開をすることもある。

このように創作の元となる一次作品(原作)を持つことが共通項として挙げられる。しかし原作があっても「イラストのごく一部の色彩を少しだけ変えたもの」や「漫画を勝手にpdfとして電子形態に変えただけのもの」のような、派生と感じられないものは二次創作とは呼ばれない(侵害コンテンツ[2])。

一方で原作があり派生をしている場合でも、俗称として「公式作品」と呼ばれるような「商業漫画の公式アニメ化」や「原曲作家とコラボレーションしたアレンジ曲の作成」は二次創作とは呼称されない傾向にある。

すなわち、一次作品(原作)が存在しそれを独創的に発展させたものでかつ原作者による監修を受けていないもの、が大まかに二次創作と呼ばれている[3][4]。原作者による監修を受ける公式アニメ化作品等はメディアミックスと呼ばれる[5]。また多少の改変はおこなってもほぼ原作そのものであるものはデッドコピー海賊版と呼ばれる[2]

二次的著作物」は著作権法に定められた用語であり、二次創作とは異なる概念である。例えば「漫画原作の公式アニメ化作品」は漫画を原著作物とする二次的著作物であるが、一方でこれは二次創作とは通常呼ばれない。

著作権法上の位置づけ

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著作権者の許諾を得ていない場合を仮定して、二次創作を行った場合、次の著作権侵害となる可能性がある。

原作の絵や構図についてトレース、機械によるコピーなどを行っている、いわゆる「パクリ同人誌」は1に該当すると思われる。コラージュなどもこれに該当することとなる。また、表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ新たな著作物を創作する行為は翻案とみなされ、原作の表現上の本質的な特徴が感得されることが侵害の要件となる。表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、翻案には当たらない[6][7]

具体的表現から離れ抽象概念として存在するキャラクターの著作物性は最高裁の判示で否定されている[8][9]。しかし、キャラクターを表した絵は「美術の著作物」に該当し、絵画の模写は著作権法上の複製に含まれるが、細部まで一致することを要するものではなく、その特徴から当該登場人物を描いたものであることを知り得る絵を描いた場合は原作の絵の複製権の侵害とされる[8]。一方、媒体が文章である場合はキャラクターの性格や設定を利用しても著作権の侵害にあたらないとされる[10]。ただし、前述の最高裁の判示では登場人物の名称、役割、発想、設定、容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付する行為を翻案としている。

二次創作の現状と問題

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主に同人誌などにおける二次創作は権利者の許可なくしては販売が行えず著作権法違反となる可能性があるものの、一般的に許諾を取ることは行われていないとされる[11]

しかし、著作権者が二次創作について刑事告訴ないし民事訴訟を行うことは極めて少ない。これについては

  • 発行部数が少なく、社会的影響が弱い。
  • もとの著作物への好意をもとにしたファン活動の一環なので、完全否定しにくい。
  • もとの著作物の宣伝になる可能性がある。

といった理由が指摘されている。[12]

また、民法上での損害賠償の扱いは実損害分しか賠償されず、そのため著作権者が訴えるほどに赤字になる可能性があり、訴訟とならないことが多い[13]

裁判になった例

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キャラクターグッズなどを無断複製して販売して、著作権侵害として逮捕されるケースが数多い[14]。その他、以下のように、もともとのキャラクターのイメージを棄損する場合も逮捕や賠償が命令される。

許諾と黙認

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著作権者の許諾(63条)があれば、許諾の範囲内で二次創作を行う限りにおいて著作権侵害となることはない。公式サイトなどで、頒布方法や性表現の有無など一定の条件において二次創作を認めるガイドラインの提示を行っている法人個人の著作権者もおり、ガイドラインに従って権利者に認められた範囲内で利用する場合は侵害にはならない。個々に許諾申請を求める者もおり、許諾の条件として金銭を求める場合もある[18][19]。クリエイターの収入に関する問題にも絡むことがあり、二次創作を広く認める立場であっても、何らかの利益の還元を必要とする意見がある[20]。このように著作権については様々な立場や考えなどがある。

このような具体的な許諾を受けていなくても、著作権者が二次創作を法的手段で規制しようとせず、黙認の姿勢を示すことがある[21]。また、一部の出版社は公式ウェブサイトにおいて二次創作を含む著作物使用が著作権侵害にあたることを明記しつつ、Twitterなどにおいて健全なファン活動は規制しないと説明している[22]

また、古典作品などをはじめとしたパブリックドメインに属する著作物など著作権フリーの物は、権利を保持する者がいないため許諾を求めることもできず、許諾を必要としない。ただし著作者人格権については著作者が存しなくなった後においても侵害となるべき行為をしてはならない(60条)。

赤松健の漫画作品UQ HOLDER!のタイトルロゴの左下に配置された同人マーク。本作が初の採用例

2013年、二次創作同人誌作成や同人誌即売会での無断配布を有償・無償問わず原作者が許可する意思を示すための同人マークという新たなライセンスがコモンズスフィアによって公開された[23]。これは環太平洋戦略的経済連携協定 (TPP) 交渉で著作権侵害が非親告罪化される可能性が言及され[24]、実際に非親告罪化された場合に第三者による告発などで権利者が黙認したいケースでも訴訟に発展するなどの事態を防ぐことを目的に漫画家赤松健が発案したライセンスであり[25]、赤松自身の漫画作品で『週刊少年マガジン』2013年39号(同年8月28日発売)より連載開始のUQ HOLDER!で採用されている[26]

2018年には「TPP関連法案国会審議」に基づく同法の改正案が可決成立し、非親告罪化規定が、TPP11協定発効日である2018年(平成30年)12月30日から施行される事が決定した[27]。弁理士氏の大沼加寿子は、二次創作作品をコミックマーケット等で販売する行為は「対価を得る目的」「原作のまま」「権利者の利益が不当に害される」という要件を満たさない場合が多いことから、対象にならない可能性が高いとしている。二次創作作品をブログに投稿する行為も「原作のまま」ではないため、非親告罪の対象にならないとしている[28]

例外だが、CardWirthなど一部のコンピューターゲームは二次創作が存在しなければ作品そのものが正常に機能する事が無い。

ライセンス

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二次創作の健全な活発化を目的として [29][30][31]、原著作権者(原作権利者)によって二次創作作品の利用に関するライセンス(利用規約)・ガイドラインがしばしば設定される [g 2][g 5][g 6][g 1][g 4][g 3][g 7]

これらのライセンスでは利用者に対し二次創作作品の利用を一定の範囲内で非独占的に許諾することが多い。具体的には例えば、二次創作者に対して自身による二次創作作品の作成(翻案権, 27条)、複製(複製権, 21条)、公開(4条)を許諾し、また二次創作作品のタイトル・解説における原著作物名称の利用(商標権・不正競争防止法1号・2号)の許諾がおこなわれる[注 2]

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公式による
第三者による
政治利用された例

脚注

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注釈

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  1. ^ 平成28年度大学入試センター試験国語第1問の設問文(土井隆義『キャラ化する/される子どもたち』)中に「二次創作」の語が現れ、『既存の作品を原作として派生的な物語を作り出すことを「二次創作」と呼ぶ。』との語句注が付記された。
  2. ^ バーチャルYouTuberの規約ではキズナアイの規約にほぼ準ずる規約がしばしば採用される[g 2][g 5][g 6][g 7]

ライセンス

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  1. ^ a b c 「いちから二次創作ガイドライン」 by いちから株式会社
  2. ^ a b c 「キズナアイ キャラクター利用規約」 by Activ8株式会社
  3. ^ a b 「二次創作ガイドライン」 by KAMITSUBAKI STUDIO
  4. ^ a b 「ヒメヒナ創作ガイドライン」 by 田中工務店
  5. ^ a b 「二次的創作ライセンス規約」 by カバー株式会社
  6. ^ a b 「『電脳少女YouTuberシロ』と『アイドル部』と『メリーミルク』ライセンス規約」 by 株式会社アップランド
  7. ^ a b 「『774 inc.』所属タレント二次創作ガイドライン」 by 774 inc.

出典

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  1. ^ 田川隆博「オタク分析の方向性」『名古屋文理大学紀要』第9号、名古屋文理大学、73-80頁、2009年3月31日。 NAID 110007543597https://cir.nii.ac.jp/crid/13902827631279198722013年7月9日閲覧 
  2. ^ a b 「侵害コンテンツ(かつ、軽微でも二次創作でもないもの=相当分量のデッドコピー)」文化庁(2020) "著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律(説明資料)" 2020-10-09閲覧
  3. ^ 「『二次創作活動』とは、本コンテンツを原作品として、みなさまが本コンテンツに新たな創作性を加え、新たな表現物を生み出す活動をいいます。」[g 1]
  4. ^ 創作的表現性に関わらず(二次的著作物を含む)派生作品全般を指す場合もある「二次創作物 改変物および二次的著作物、その他著作物に依拠して作成された著作物を総称したものをいいます。」 [g 2]
  5. ^ 「メディアミックスは、自社の文学作品を映画化し、それを再びサウンドトラック化するなどして、商品として販売する戦略を取っていた。」田(2018) "メディアミックスに関する日本出版人の認識と実践に関する質的研究:ライトノベル編集者を中心に" 年報カルチュラル・スタディーズ 6(0), 145-168, 2018 doi: 10.32237/arcs.6.0_145
  6. ^  最高裁判所第一小法廷判決  平成13年06月28日 第55巻4号837頁、平成11(受)922、『江差追分事件』。判決全文(PDF)
  7. ^ 駒田泰土「著作物と作品概念との異同について」(PDF)『知的財産法政策学研究』第11号、145-161頁、2006-04-00。 NAID 20002277604http://www.juris.hokudai.ac.jp/coe/pressinfo/journal/vol_11/11_7.pdf2013年7月9日閲覧 
  8. ^ a b 最高裁判所第一小法廷判決 平成9年07月17日 民集 第51巻6号2714頁、平成4(オ)1443、『著作権侵害差止等』。
  9. ^ 後藤憲秋・植村元雄『知的財産法概論』(第二版)名古屋知的財産法研究会、2005年10月15日、581-582頁。 NCID BA74258065 
  10. ^ 堀越総明. “ハリー・ポッターの続編小説を勝手に執筆してもいいの!?~小説の登場人物の著作権にまつわる話”. 2013年6月23日閲覧。
  11. ^ パロディワーキングチーム 報告書(平成25年3月)” (PDF). 文化庁文化審議会著作権分科会パロディワーキングチーム. p. 25 (2013年3月). 2013年6月23日閲覧。
  12. ^ 『まるわかり著作権ガイド』(2006年 彩図社)pp.127
  13. ^ 福井健策 (2011年10月31日). “福井弁護士のネット著作権ここがポイント”. 2013年6月23日閲覧。 “通常の損害賠償は、著作権侵害で権利者などがこうむった実損害分しか賠償を求められない。通常たいした金額にはならず、しばしば弁護士費用にも足りない。日本の著作権は厳しいという一般の印象もあるようだが、現実にはこの賠償金相場などが原因で、大半の著作権侵害は訴訟に至らず終わっている。”
  14. ^ 「創作行為の価値ないがしろ」違法アニメTシャツで講談社 産経ニュース
  15. ^ 赤田祐一・ばるぼら『消されたマンガ』(鉄人社、2013年)186-191頁
  16. ^ 飯沢匡「イイザワ対談 遠近問答:ゲスト マンガ家長谷川町子」『週刊朝日』1970年12月25日号、朝日新聞社、1970年12月25日、48頁。 
  17. ^ 大阪地方裁判所判決 平成28年4月28日 、平成27(ワ)12757
  18. ^ コンテンツ利用許諾契約書”. 弁護士法人STORIA (2017年9月3日). 2018年5月30日閲覧。 “乙は,甲に対し,第2条に基づく本著作物の利用対価として,以下の方法により算出した著作権使用料を支払うものとする。”
  19. ^ 製品内の素材の使用に関するQ&A|Key Official HomePage”. ビジュアルアーツ (2012年11月14日). 2013年6月23日閲覧。
  20. ^ 作り手を“やる気”にさせる著作権とは――島本和彦氏など語る (1/3) - ITmedia News
  21. ^ 筆谷芳行 [@FUDE0415] (2011年3月29日). "二次創作についてTLが騒がしい。うまくやってくれればいいのです。趣味と応援ならうまくやってくれればいいのです。編集部に許可を求められると、「ダメ」としかいえません。うまくやってくれればいいのです。". X(旧Twitter)より2018年5月30日閲覧
  22. ^ “「けいおん」「まどマギ」もアウト? 芳文社が二次創作を禁止か、と話題に”. ねとらぼ (ITmedia). (2013年3月21日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1303/21/news147.html 2013年6月28日閲覧。 
  23. ^ “二次創作の同人活動を認める意思を示す「同人マーク」のデザインが決定”. マイナビ. (2013年8月18日). https://news.mynavi.jp/techplus/article/20130818-a050/ 2013年9月1日閲覧。 
  24. ^ 「TPPで同人誌は消えるのか?」シンポジウムで激論”. BLOGOS (2011年11月7日). 2013年9月1日閲覧。
  25. ^ “「警察の萎縮効果狙う」 赤松健さん、2次創作同人守るための「黙認」ライセンス提案”. ITmedia. (2013年3月28日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1303/28/news093.html 2013年9月1日閲覧。 
  26. ^ “二次創作OKの意思を示す「同人マーク」運用開始 - 許諾範囲も公開”. マイナビ. (2013年8月29日). http://news.mynavi.jp/news/2013/08/29/121/ 2013年9月1日閲覧。 
  27. ^ 平成30年12月30日施行 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について | 文化庁”. www.bunka.go.jp. 2018年11月8日閲覧。
  28. ^ “著作権法改正で何が起きる? コミケ、二次創作の行方は 弁理士がポイントを解説”. ITmedia. (2019年1月17日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1901/17/news105.html 2020年1月4日閲覧。 
  29. ^ 「KAMITSUBAKI STUDIOを支持してくださる方々が安心して二次創作活動を楽しんでいただけるよう、ガイドラインを改めさせていただきました。本ガイドラインが、バーチャル世界におけるクリエイティブの地平を広げる一助となれば幸いです。」 [g 3]
  30. ^ 「より多くのみなさまに安心して二次創作活動を行っていただけるよう、二次創作活動を楽しむためのガイドラインを策定いたしました。当社のコンテンツがより多くのみなさまに親しんでもらえるよう、今後ともご理解とご協力のほどよろしくお願いいたします。」[g 1]
  31. ^ 「極力自由に楽しんで創作してもらえればいいと思ってます」[g 4]
  32. ^ タイの学生による反政府デモ、「ハム太郎」がシンボルに ロイター 投稿日:2020年8月3日、参照日:2021年3月17日
  33. ^ カタルーニャ独立運動の象徴が『クレヨンしんちゃん』!? その意外なつながりとは… R25 公開日 2017.11.06

関連項目

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外部リンク

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