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酸化トリウム(IV)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
二酸化トリウムから転送)
酸化トリウム(IV)
識別情報
CAS登録番号 1314-20-1 チェック
PubChem 14808
特性
化学式 ThO2
モル質量 264.04 g/mol
外観 白色固体
密度 10.00 g/cm3
融点

3390 °C, 3663 K, 6134 °F

沸点

4400 °C, 4673 K, 7952 °F

への溶解度 不溶
磁化率 −16.0×10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 2.200
構造
格子定数 (a, b, c) a = 559.74(6) pm[1] Å
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −1226(4) kJ/mol
標準モルエントロピー So 65.2(2) J K−1 mol−1
危険性
引火点 不燃性
半数致死量 LD50 400 mg/kg
関連する物質
その他の陽イオン 酸化ハフニウム(IV)
酸化セリウム(IV)
関連物質 酸化ウラン(IV)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

酸化トリウム(IV)(さんかトリウム よん。英語: thorium(IV) oxide)は、化学式ThO2と表されるトリウム酸化物である。

性質

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ThO2は既知の酸化物の中で、最高の融点を有する[2]。トリウムの酸化物としては、ThO2の他に、トリウムが+2価を取っているThOも知られている[3]。ただ、トリウムは+4価の状態が化学的に比較的安定である事が知られている[4]。トリウムが+4価の状態にある化合物のThO2は、化学的に安定である[4]。しかし、トリウムには1つも安定核種が存在しない[5]。したがって、化学的には安定であっても、トリウムの原子核が崩壊し、放射線を出して別な元素に放射性崩壊するため、僅かずつながらThO2は次第に減少してゆく性質も有する。もちろん放射線被曝も引き起こす。

人間とのかかわり

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  • かつて医療において、ThO2が血管造影剤トロトラスト)として使用された事もあったものの、造影剤として投与してから10年以上経過した被験者に、肺や肝臓での悪性腫瘍が発生したとの報告が有る[6]
  • 1970年代までのカメラの高性能レンズには、酸化トリウムやウランを含むガラスが用いられていたことがあった。1979年時点でレンズメーカーなどに約6トンもの酸化トリウムが保管されていた[7][8]。ただし、トリウムを含むガラスは放射性の他に、黄変するという問題もあり、ランタノイドに取って代わられた。

製造

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酸化トリウム(IV)はシュウ酸トリウム(IV)の焙焼[10]、または、硝酸トリウム(IV)の焙焼で得られる [11]

出典

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  1. ^ Yamashita, Toshiyuki; Nitani, Noriko; Tsuji, Toshihide; Inagaki, Hironitsu (1997). “Thermal expansions of NpO2 and some other actinide dioxides”. J. Nucl. Mater. 245 (1): 72–78. doi:10.1016/S0022-3115(96)00750-7. 
  2. ^ Emsley, John (2001). Nature's Building Blocks (Hardcover, First ed.). Oxford University Press. pp. 441. ISBN 978-0-19-850340-8 
  3. ^ 元素111の新知識, p. 365.
  4. ^ a b 元素111の新知識, p. 367.
  5. ^ 元素111の新知識, p. 366.
  6. ^ 土山 秀夫(編)『病理学 総論』 p.333 医歯薬出版 1983年7月1日発行
  7. ^ 核物質ずさん管理露呈 売った会社既に倒産『朝日新聞』1979年(昭和54年)7月7日朝刊13版 23面
  8. ^ 酸化トリウム含有のガラス片の発見について”. コニカミノルタ (2005年6月24日). 2021年9月22日閲覧。
  9. ^ 核物質を無防備貯蔵 鎌倉の会社社長 人騒がせな温泉研究『朝日新聞』1979年(昭和54年)7月7日朝刊13版 23面
  10. ^ Allred, V. D.; Buxton, S. R.; McBride, J. P. (1957). “Characteristic Properties of Thorium. Oxide Particles”. The Journal of Physical Chemistry 61 (1): 117-120. doi:10.1021/j150547a029. ISSN 0022-3654. 
  11. ^ Murphy, Richard; Grant, Nicholas J. (2014). “PROPERTIES OF NICKEL-THORIA ALLOYS PREPARED BY THERMAL DECOMPOSITION OF THORIUM NITRATE”. Powder Metallurgy 5 (10): 1-12. doi:10.1179/pom.1962.5.10.001. ISSN 0032-5899. 

参考文献

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