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スクラップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
古鉄から転送)
リサイクル用に固められた缶

スクラップ(scrap)とは、細切れ、細切れにする、細切れになってしまったという状態を意味する英語である。本稿では特に金属製品の廃棄物や、金属製品の製造工程で生じる廃金属について説明する。

俗語用法として、大きく損傷して修理再生の見込みがなくなった機械製品を指して“スクラップ”と通称することがある。

廃金属以外の意味としては、雑誌や新聞、写真を細切れにしてノートなどにまとめて貼り付けるスクラップブックがある。

スクラップの再利用

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アルミニウムスズなどのスクラップは回収して、当該金属の新たな原料として利用している。循環型社会を進める上でスクラップの再利用・再資源化(リサイクル)は重要である。

鉄を中心に複数の非鉄金属プラスチックガラスなどが入り混じったものを雑品スクラップと呼ぶ。処理に手間がかかったり、再利用して作った製品の質が低下したり、再利用できない廃棄物が多く残ったりする問題がある[1]

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鉄のスクラップは屑鉄(くずてつ)ともいう。鉄鉱石と同様、重要な製鉄原料である。鉄スクラップは、電気炉(電炉)によって再び鋼鉄へとリサイクルされる。高炉を持たない電炉メーカーが鉄スクラップを原料とする。しかし、鉄スクラップを原料とした鋼鉄は不純物[2]の量がやや多いため、鉄鉱石から生産された鋼鉄よりは品質が劣る。

代表的な鉄スクラップとして廃車(プレス後のもの)、スチール(プレス後のブロック状)がある。鉄スクラップには大きく分けて「市中スクラップ」と「自家発生スクラップ」とがあり、このうちここで一般に鉄スクラップと言っているのは、市中から発生する「市中スクラップ」のことである。なお「自家発生スクラップ」は、製鋼会社の工程から出てくるスクラップのことで、製鋼の工程の中で再利用が図られており、市中に出回ることはない。

アルミニウム

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日本で消費されるアルミニウムのうち、約70 %は新地金であり、残りの約30 %はリサイクルされたものである。アルミニウムの素であるアルミナ電解製錬には大量の電力を使うため[4]、2度の石油危機による電力原単位の上昇と円高による国際的な価格競争力の低下のため、1978年には年産164万トンの製錬能力を誇った日本のアルミニウム製錬も、自家発電による低廉な電力を有し、最後まで製錬を続けた日本軽金属蒲原製造所が2014年3月末をもってアルミニウム電解事業を終了したことで幕を閉じた[5]。ほとんどの会社は電気料金の安いブラジル中東などで製錬し、アルミニウム地金のかたちで輸入している。既存のアルミニウムもしくはアルミニウム合金のスクラップを溶かして再生アルミニウム地金を作るほうが、アルミナを電解製錬するより価格面ではるかに有利なため、空き缶やサッシ、車両のホイールをはじめとするアルミニウム金属・合金のスクラップからアルミ地金が再生産されている。

また従来はアルミスクラップからできた再生地金はもとのアルミニウム合金の組成の違いから再びアルミニウム合金として使用できず、アルミニウム鋳物の材料など限られた用途にしか使用できなかったが、高出力パルスレーザーをアルミスクラップに当てて合金組成を判別して組成ごとに分別回収し、再びアルミニウム合金として活用する道が研究・開発された[6]。その成果により鉄道車両で使用されたアルミニウム合金の構体を溶かしてアルミニウム合金地金とし、再び鉄道車両を造る試みがなされている[6]

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銅もまたスクラップ原料が多用されており、銅地金製造過程、銅製品製造過程でも種々使用されている。銅製錬に於いては、欧州や日本製錬が銅スクラップを多用する。かつては転炉における冷材としての使われ方がメインであったが、昨今硫化鉱における硫黄分の上昇、それに伴う銅精鉱品位の低下による銅分補填という意味合いが大きくなっている。一方、銅電線や銅管、そのほか伸銅品においてもコスト削減の観点から市中のリサイクル原料が一定量使用されている。とりわけ、黄銅棒においては切削加工屑である黄銅ダライ粉などスクラップ原料が原料の大半を占めている。

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携帯電話コンピュータの接点部品としてが使われる。このような金を回収して、再利用している。携帯電話PHSスマートフォンを含む)、集積回路(IC)、コンピュータアクセサリーなどが廃棄されたものを粉砕して精錬し、再度、電子部品などの生産に使う。

スクラップの形状

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甲山

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工場の生産過程で発生する物とは違う、社会に出回った鉄製品が廃棄された物。建築物に使われる鉄筋鉄骨も含む。鉄屑の中では流通量が最も多く、電気炉メーカーの主要な購入原料となっている。元になる製品が多種多様な為、電炉メーカーにおける格付けは細かく、価格も上下の幅が大きい。

甲山の種別

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溶断屑
溶断工場で加工した後に出た、メッキされていない鉄板。ほぼ純粋な鋼であるため基本的にHSより高値で検収される。
HS
鉄板やH鋼など厚みのある発生屑。厚みがあるため高値で検収される。
新断屑
"しんだんくず"、あるいは"しんだちくず"とも読む。
金属類の裁断屑。代表的なものとして、自動車のボディーを形成するために鋼板を打ち抜いた端切れがある。
不純物が少なく高品質のスクラップとして高値で検収される事が多い。
H1
主に解体の時に発生した鉄筋などがこれに当たる、検収は相応に高い。
H2
トタンロッカーなど厚さが薄いものが当たる。薄いために検収も弱い。
L1/L2/L3
が発生した薄いトタン等、鉄の品位が悪いもの。検収としては相当に低い場合もある。
メーカーによっては検収規格としていないところもある。

ダライ粉

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金属類の加工時に出る切削屑(せっさくくず)のこと。業界では、切り粉(きりこ)などとも呼ばれている。旋盤機などで丸棒を加工形成したり、ねじの溝を削ったりするときなどに発生したもの。昔、主にダライ盤(オランダ語)という旋盤を使用して金属を切削していた事によりダライ粉と呼ばれる。鋳物の切削粉の場合は銑ダライ粉と呼ばれ検収規格も違う。

メカス

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ねじボルトナットを作る時に発生する金属屑のこと。

スクラップヤード

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リサイクルや廃棄に回すスクラップを保管しておく施設を「スクラップヤード」と呼ぶ。循環型社会には必要な存在であるが、金属が野積みされたり、破砕・切断されたりするため景観の毀損、騒音・振動、火災リスクなどにより迷惑施設とみなされることも多い。日本では条例で立地や運営について規制したり、政府に法整備を求めたりする地方自治体もある[7]

脚注・出典

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  1. ^ 「電炉悩ます雑品スクラップ」日本経済新聞』朝刊2018年4月5日(マーケット商品面)
  2. ^ 目的別に添加された元素成分も含む。原料内の添加元素成分が一定しないため、スクラップ内に混入した異物のみならず添加元素すら精錬の邪魔となることがあるため『不純物』とみなされる。例外は製鉄所で発生する溶断屑やプレス工場で発生する新断屑くらいで、もとの添加元素配合が既知なものは極めて限られる。
  3. ^ 井内俊明、新井一正「省エネルギー時代のアルミニウム電解技術」『軽金属』第25巻第7号、1975年7月30日、267–277頁、doi:10.2464/jilm.25.2672024年9月6日閲覧 
  4. ^ 日本国内の最盛期における電力原単位は、金属アルミニウム1トンあたり1万3千から1万4千キロワット時であった。電力会社のアルミニウム電解工場向け電力単価ですら、1 kWhあたり8円で、諸外国の電力単価の1ないし2円/kWhには到底太刀打ちできなかった[3]。アルミニウムの電解製錬にはアルミナ(酸化アルミニウム)の電気分解のみならず、溶融塩電解のためのアルミナ自身のジュール熱による加熱溶解のために費やされる電力も大きい。なおボーキサイトから純度の高いアルミナを得るにはさほどエネルギーを必要としない。
  5. ^ "アルミニウム電解事業の終了について" (PDF) (Press release). 日本軽金属. 2014年3月14日. 2024年9月6日閲覧。なお、最終年度の製錬能力はわずか7千トン/年の規模であった。
  6. ^ a b アルミ車両の水平リサイクル推進委員会報告” (PDF). 日本アルミニウム協会・アルミ車両の水平リサイクル推進委員会 (2019年6月). 2024年9月6日閲覧。
  7. ^ スクラップヤード「宝の山」か「迷惑施設のもと」か/再生資源屋外保管 騒音・火災に住民不安毎日新聞』夕刊2023年7月27日1面(2023年7月31日閲覧)

関連項目

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外部リンク

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