民事訴訟
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(形成訴訟から転送)
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
民事訴訟(みんじそしょう)とは、私人間の生活関係(民事)に関する紛争(権利義務に関する争い)につき、私法を適用して解決するための訴訟である。
概要
[編集]具体的には財産に関する紛争(勝手にされた土地の登記を直せ、貸した金を返せ、損害賠償をしろ、など)を対象とする。手続は民事訴訟法および民事訴訟規則などに基づいて行われる。
身分関係(離婚、認知、親子関係の存否など)に関する紛争を解決する訴訟類型を含む場合があるが、そのような類型は人事訴訟と呼ばれる。
行政訴訟も民事訴訟に含めて考える場合がある。これは民事訴訟法の規定が原則として行政訴訟にも準用されるためで(行政事件訴訟法第7条)、刑事訴訟法によって規律される刑事訴訟と対比される。
民事事件における裁判手続には、訴訟によって確定した権利を実行する執行手続(民事執行法により規定)やそのための準備段階にあたる民事保全手続(民事保全法により規定)、および債権債務に関する多数当事者の関係を規律する倒産処理手続も存在するが、これらは、当事者間の権利義務を終局的に確定させるものではないなどの点において訴訟事件とは性質を異にするため、非訟事件に分類される。
種類
[編集]- 通常訴訟
- 手形訴訟・小切手訴訟 - 簡易迅速に手形・小切手紛争を解決することを目的とする特別の訴訟手続である[1]。手形・小切手取引自体の減少に伴って訴訟件数も減少している[2]。
- 少額訴訟 - 60万円以下の金銭の支払いを求める請求に限定して、1回の期日で審理を終える特別の訴訟手続である[3]。
民事訴訟の開始と終了
[編集]民事訴訟の開始
[編集]民事訴訟は、原告による訴えの提起により開始する[4]。訴えの提起は、裁判所に訴状を提出することによる(民訴法133条1項)。
訴訟係属の状態は、訴えの提起だけでは足りず、被告に訴状が送達(民訴法138条1項)されることにより生じる。被告に訴訟が提起されたことおよびその内容を知る機会を与え、適正手続を保障する趣旨である。
民事訴訟の終了
[編集]裁判による終了
[編集]- 訴状審査の結果補正命令(民訴法137条1項)が出されたにもかかわらず原告が不備を補正しない場合、命令で訴状が却下される(同条2項、いわゆる訴状却下)。
- 訴状の不備が補正不能である場合には、口頭弁論を経ないで却下判決が下される(民訴法140条)。
- 原告が訴訟費用を予納しない場合、決定で訴えが却下される(民訴法141条1項)。
- 訴訟が裁判をするのに熟したときは、裁判所が終局判決(民訴法243条1項)をすることにより訴訟が終了する。
裁判によらない終了
[編集]- 原告が訴えを取り下げた場合(民訴法261条1項)、訴訟は最初から係属していなかったものとみなされて終了する(同法262条1項)。ただし、被告が本案について答弁をするなどした後は、被告の同意が必要である(同法261条2項)。被告に既判力ある請求棄却判決を得る機会を保障する趣旨である。
- 当事者が請求の放棄または認諾(民訴法266条1項)をした場合も訴訟は終了する。
訴えの種類
[編集]- 給付の訴え(給付訴訟)
- 訴訟物が一定の給付を目的とする訴訟(例 : 建物収去土地明渡請求訴訟)。訴訟においては基本的な類型である。
- 現在の給付の訴え
- 将来の給付の訴え
- 確認の訴え(確認訴訟)
- 訴訟物が法律関係の確認を目的とする訴訟(例 : 債務不存在確認訴訟)。訴訟においては補充的な類型で、一定の要件を満たしたときのみ許容される。
- 積極的確認の訴え
- 消極的確認の訴え
- 形成の訴え(形成訴訟、創設の訴え、権利変更の訴え)
- 訴訟物が一定の法律関係の形成を目的とする訴訟(例 : 株主総会決議取消訴訟)。
基本原理
[編集]脚注
[編集]出典
[編集]- ^ “手形・小切手訴訟の手続の概要”. 裁判所ウェブサイト. 2021年7月31日閲覧。
- ^ 中村元弥. “民事訴訟の現状分析” (pdf). p. 40. 2021年7月31日閲覧。
- ^ “少額訴訟”. 裁判所ウェブサイト. 2021年7月31日閲覧。
- ^ 裁判所職員総合研修所監修『民事訴訟法概説(九訂版)』 司法協会 ISBN 978-4-906929-29-0、109頁