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文化的人工物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
文化的工芸品から転送)
ローマのコロッセオ(撮影:David Iliff)(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.5

文化的人工物 (ぶんかてきじんこうぶつ、英語: cultural artifact)は、社会科学分野、特に人類学[1]民族学[2]、社会学[3]の用語。人間が制作したもので、それを創作し利用する人々の文化にまつわる情報を提供するもの。英単語の「artifact」という綴りは北アメリカ英語英語版で好まれ、他の地域では「artefact」が好まれる。

Nikon D70(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 2.5
修道院複合施設の文化的人工物(マケドニア、Zrze)(クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植

日本語では「文化的人工物[6][7]のほか、「文化的工芸品[10]、「文化遺物[11]といった訳語を当てることがある[12]

社会的人工物

文化的人工物は、類似した、しかしより狭義のニュアンスを帯びた社会的人工物 (social artifact) や考古学的遺物 (archaeological artifact ) に対して、より一般的な用語である[13][14]。文化的人工物には、遺跡からの出土品[15]なども含まれるが、近現代の社会における文物である、社会的人工物も含まれる。人類学的文脈からすれば、例えば17世紀旋盤ファイアンス焼き陶磁器テレビなどは、いずれもそれぞれが製造され、使用された当時の時代の情報を豊富に提供するものである。

文化的人工物は、古代のものであれ、現代のものであれ、その背景にある技術的諸過程や、経済的発展、社会構造、その他の諸々の側面についての洞察の契機を提供するものとして重要である。

哲学者マルクス・W・ワルトフスキー英語版は、人工物を以下の3つに分類した[16]

  • 一次人工物 (primary artifacts):生産に用いられるもの(ハンマーフォークランプカメラなど)
  • 二次人工物 (secondary artifacts):一次人工物に関連するもの(カメラのユーザー・マニュアルなど)
  • 三次次人工物 (tertiary artifacts):二次人工物を表象したもの(カメラのユーザー・マニュアルを表現した彫刻など)

社会的人工物は、考古学的遺物とは異なり、必ずしも物理的な実体を伴わず(例えば、仮想アーティファクト英語版)、歴史的価値をもつ必要もない(数秒前に生み出されたものであっても、社会的人工物となり得る)。

脚注

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  1. ^ Richard J. Watts (1981). The pragmalinguistic analysis of narrative texts. Gunter Narr Verlag. ISBN 978-3-87808-443-3. https://books.google.com/books?id=4SIXk2bp5u8C&pg=PP1&dq=The+pragmalinguistic+analysis+of+narrative+texts&lr=&as_brr=0#v=onepage&q=&f=false 
  2. ^ Amery, Rob (2016) (英語). Warraparna Kaurna!: Reclaiming an Australian language. University of Adelaide Press. p. 50. https://books.google.com/books?lr=&as_brr=0&q=warrabarna+kaurna!&btnG=Search+Books ISBN 1925261255, 9781925261257
  3. ^ Bailey, Kenneth D. (1994) (英語). Sociology and the New Systems Theory: Toward a Theoretical Synthesis. SUNY Press. p. 280 ISBN 0791417433, 9780791417430
  4. ^ 山住勝広「媒介的人工物の構築を通した創造的変容」『社会文化的活動理論による教科教授過程の構成に関する研究 : 教授-学習の実現過程への社会文化的アプローチ』神戸大学〈博士(学術) 乙第1996号〉、1996年。doi:10.11501/3116976hdl:20.500.14094/D2001996NAID 500000137852https://doi.org/10.11501/3116976 
  5. ^ 山住勝広. “創造的な学習活動のためのクロス・スクール・ワーキング” (PDF). 関西大学. 2016年11月19日閲覧。
  6. ^ 山住は「媒介的人工物」[4]から「文化的人工物」[5]へ展開させた。
  7. ^ 片桐準二『文脈アプローチによる言語学習ビリーフの形成・変容過程の質的研究』名古屋大学〈博士(学術) 甲第10874号〉、2015年。 NAID 500000932607https://nagoya.repo.nii.ac.jp/records/19803 
  8. ^ 松原 剛、松田 なつみ、沖田 実嘉子、比嘉 明子『「文化的工芸品」のデザイン要素を活用した新商品開発~林原美術館収蔵品を対象に~』デザインチーム〈調査報告書〉、2019年3月https://tc-kyoto.or.jp/outcome/outcome-8777/2024年1月31日閲覧 
  9. ^ 「京都×能装束」文化ものづくりプロジェクト(調査報告書:平成30年4月~平成31年3月)”. tc-kyoto.or.jp. 地方独立行政法人 京都市産業技術研究所 (2018(H30)年). 2023年1月5日閲覧。
  10. ^ 京都市産業技術研究所調査報告書「京都×能装束」文化ものづくりプロジェクト(平成30年4月~平成31年3月[8][9])。
  11. ^ IV.文化遺物(1. 土器;2. 石器;3. 骨角牙器、貝製品、その他;4. 既往の出土遺物」『立教大学博物館学講座研究報告2』、立教大学博物館学講座、1963年、14頁- (12コマ目-21コマ目)、2023年1月5日閲覧 
  12. ^ 英辞郎 on the WEB: cultural artifact”. アルク. 2016年11月19日閲覧。
  13. ^ ジョゼ・ジョンストン、シャイヨン・バウマン, 著、村井重樹 訳『フーディー グルメフードスケープにおける民主主義と卓越化』2020年、140頁。 
  14. ^ Ram, Uri (2007). “Liquid Identities : Mecca Cola versus Coca - Cola”. European Journal of Cultural Studies 10 (4): 465-484. 
  15. ^ 鈴木尚 著「V 遺物 §1. 文化遺物」、日本人類学会 編『鎌倉材木座発見の中世遺跡とその人骨』岩波書店、1956年、25頁。doi:10.11501/1375436全国書誌番号:1375436 
  16. ^ Wartofsky, Marx W. (1979). Models: Representation and scientific understanding. Dordrecht, The Netherlands: Reidel.

関連文献

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  • Habib, Laurence, and Line Wittek (2007). "The portfolio as artifact and actor." Mind, Culture and Activity, Vol. 14, No. 4, ISSN 1074-9039. doi:10.1080/10749030701623763.

関連項目

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文化の3要素(ジュリアン・ハクスリー説)

外部リンク

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