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医業の広告規制

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
標榜診療科から転送)
クリニックの年中無休の表示

医業の広告規制(いぎょうのこうこくきせい)とは、日本の医療に際し医療法(第二節 医業、歯科医業又は助産師の業務等の広告)などで定められた広告規制のこと。「文書その他いかなる方法によるを問わず、何人も次に掲げる事項を除くほか、これを広告してはならない」と定めている(医療法第6条の5)。

この規定は「広告」に関する規定であるため、病院内部における掲示やインターネットウェブサイト等の自ら行う告知は規定に含まれていない[1]。しかし、ウェブサイトの適切なあり方についてガイドラインが示され自主的な取り組みを促している[1]

広告規制

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医療法の規制は、以下の医療機関を対象としている

  • 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所 (第六条の五)
  • 助産師の業務又は助産所(第六条の七)

医療法施行規則(省令)第一条の九により、以下の内容を広告してはならない。

  • 患者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告
  • 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと

ウェブサイト

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医療機関のウェブサイトは、医療法の規制対象ではないが、厚生労働省は以下のガイドラインを示している[1]

  • ウェブサイトに掲載すべきではない内容
    • 虚偽の内容・客観的に証明できない内容[1](「絶対安全」「必ず成功」など[1]
    • 比較広告(内容が事実であろうと)[1]
    • 誇大広告・都合のよい情報の過度な強調[1]

標榜科

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標榜科(ひょうぼうか)、標榜診療科(ひょうぼうしんりょうか)とは、病院診療所が外部に広告できる診療科名のこと。医療法第6条第1項第2号にて、定められた診療科名以外を広告してはならない、第6条の6にて、その診療科名は政令で定め、それ以外にも医師又は歯科医師が厚生労働大臣の許可を受けたものは広告できると定めている。

具体的な診療科名は、医療法施行令第3条の2に広告することができる診療科名として規定されている。

医業

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各科名横の丸括弧内は、医療法施行令第3条の2の2および厚生労働省「医療広告ガイドラインに関するQ&A(事例集)」において許容される表記。

  • 内科
  • 外科
  • 精神科
  • リウマチ科
  • 小児科
  • 皮膚科
  • 泌尿器科
  • 産婦人科(産科、婦人科)
  • 眼科
  • 耳鼻いんこう科(耳鼻咽喉科)
  • リハビリテーション科
  • 放射線科(放射線診断科、放射線治療科)
  • 病理診断科
  • 臨床検査科
  • 救急科
  • 上記の診療科の名称に、医療法施行令第3条の2の1のハで定められた下記に掲げる事項又は下記に掲げる事項のうち異なる複数の区分に属する事項とを組み合わせることができる(例:整形外科、小児救急科、内科(人工透析)、大腸・肛門外科、老人心療内科など)。この場合、医療法施行規則第1条の9の4および第1条の9の4の2に基づき、同一の区分に属する事項同士を組み合わせることはできない。各事項末の丸括弧内は省令で定められたもの。
    • 頭頸部[* 1]、胸部[* 2]、腹部[* 2]、呼吸器[* 3]、消化器[* 4]、循環器[* 4]、気管食道[* 3]、肛門[* 5]、血管、心臓血管[* 4]、腎臓[* 6]、脳神経[* 7]、神経、血液、乳腺[* 4]、内分泌[* 4]、代謝、(頭部[* 1]、頸部[* 8]、気管[* 3]、気管支[* 3]、肺[* 3]、食道[* 3]、胃腸[* 4]、十二指腸[* 4]、小腸[* 4]、大腸[* 4]、肝臓[* 4]、胆のう[* 4]、膵臓[* 4]、心臓[* 4]、脳[* 7]、脂質代謝)
    • 男性[* 9]、女性、小児[* 10]、老人[* 11]、(周産期、新生児、児童[* 9]、思春期、老年[* 11]、高齢者[* 11]
    • 整形[* 12]、形成[* 12]、美容、心療[* 13]、薬物療法、透析、移植、光学医療、生殖医療、疼痛緩和、(漢方、化学療法、人工透析、臓器移植、骨髄移植、内視鏡、不妊治療、緩和ケア、ペインクリニツク)
    • 感染症、腫瘍、糖尿病、アレルギー疾患[* 14]、厚生労働省令で定める特定の疾病若しくは病態(性感染症、がん)
  • 厚生労働大臣の許可を受けた医師に限り認められる診療科名(医療法第6条の6第1項、及び医療法施行規則第1条の10に基づく)
  • 依存症専門医療機関と依存症治療拠点機関(診療対象の併記が必須)[2]
    • 依存症専門医療機関(アルコール健康障害)、依存症専門医療機関(薬物依存症)、依存症専門医療機関(ギャンブル等依存症)、依存症専門医療機関(アルコール健康障害/薬物依存症)、依存症専門医療機関(アルコール健康障害/ギャンブル等依存症)、依存症専門医療機関(薬物依存症/ギャンブル等依存症)、依存症専門医療機関(アルコール健康障害/薬物依存症/ギャンブル等依存症)。

歯科医業

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改正歴

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現在の制度では38の標榜科の内容が分かりにくいとの指摘があり、厚生労働省が見直しを進めていた。

2007年9月21日削減される診療科を専門とする学会が反発してきたため厚生労働省は、標榜科を20程度に再編する方針から標榜科を拡大する方針に変え内科や外科、歯科などの診療科に身体や臓器などの部位や疾患名を組み合わせた診療科の「腎臓内科」「消化器外科」「糖尿病・代謝内科」「腫瘍内科」」「気管食道科」「感染症内科」「乳腺外科」などを標榜科として新たに認める方針を固め同日、医道審議会で了承された。「総合科」の新設が目玉とされるが導入は見送られた。

2008年の改正により、従来認められてきた「神経科」「呼吸器科」「消化器科」「胃腸科」「循環器科」「皮膚泌尿器科」「性病科」「肛門科」「気管食道科」は2008年4月1日以降は広告が認められなくなり、「消化器内科」「消化器外科」「循環器内科」「循環器外科(心臓血管外科)」「呼吸器内科」「呼吸器外科」などに移行した[3]。この2008年の診療科名の定義の細分化のため、医師数の変化等の推移を見る際には留意が必要である。

助産所

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はり・きゅう・あん摩マツサージ指圧および柔道整復

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施術所の名称については、施術所以外の医業類似行為施設と区別するために「マッサージ指圧」、「鍼灸」、「接骨」等を名称につけることが望ましいとされている[4]

はり・きゅう・あん摩マッサージ指圧

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はり・きゅう・あん摩マツサージ指圧については、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律にて広告規制が存在する。

第七条  あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。

  1. 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所# 第一条に規定する業務の種類
  2. 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
  3. 施術日又は施術時間
  4. その他厚生労働大臣が指定する事項

○2 前項第一号乃至第三号に掲げる事項について広告をする場合にも、その内容は、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。

—  あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律

あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第七条第一項第五号の規定に基づくあん摩業等又はこれらの施術所に関して広告し得る事項

  1. もみりようじ
  2. やいと、えつ[* 15]
  3. 小児鍼(はり)
  4. 医療保険療養費支給申請ができる旨(申請については医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
  5. 予約に基づく施術の実施
  6. 休日又は夜間における施術の実施
  7. 出張による施術の実施
  8. 駐車設備に関する事項

柔道整復

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柔道整復については、柔道整復師法において広告規制が存在する。 施術所では「ほねつぎ」「接骨院」といった名称を使用している。施術所の名称として認められていないものの例として、医院・クリニック・薬局・療院・治療所(医療法・医薬品医療機器等法その他の法律に抵触するため不可)[4]、はり科(科の文字を使用することは不可)[4]、鍼灸接骨院(『○○鍼灸院・○○接骨院』と並列表記は可)[4]、カイロプラクティック接骨院、鍼灸整体院、エステティックマッサージ院(医業類似行為名を使用することは不可)[4]がある。

柔道整復の業務又は施術所に関しては、何人も、文書その他いかなる方法によるを問わず、次に掲げる事項を除くほか、広告をしてはならない。

  1. 柔道整復師である旨並びにその氏名及び住所
  2. 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
  3. 施術日又は施術時間
  4. その他厚生労働大臣が指定する事項

2  前項第一号及び第二号に掲げる事項について広告をする場合においても、その内容は、柔道整復師の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたつてはならない。

—  柔道整復師法 第二十四条(広告の制限)

厚生労働大臣が指定する事項

  1. ほねつぎ(又は接骨)
  2. 医療保険療養費支出申請ができる旨(脱臼又は骨折の患部の施術に係る申請については、医師の同意が必要な旨を明示する場合に限る。)
  3. 予約に基づく施術の実施
  4. 休日又は夜間における施術の実施
  5. 出張による施術の実施
  6. 駐車設備に関する事項
— 平成11年3月29日付 厚生労働省告示70号

上記以外の事項を広告することは違法である[5][6]。病名や効能などを広告することは禁止されており、「肩こり」「腰痛」「五十肩」などの効能をうたった広告に対しては自治体より改善要求が出されている[7]。2016年より、大阪柔整師会は広告規制の適正化を進めようとしている[8][6]

議論

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  • 乳癌の治療のため『乳腺科』を標榜できるようにすべきとの議論が高まっている[* 16]。2008年4月1日以降は、乳腺科そのものは認められないが、『乳腺外科』の形で標榜することは可能になった。

脚注

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注釈

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  1. ^ a b 泌尿器科とは組み合わせられない。
  2. ^ a b 泌尿器科、眼科、耳鼻いんこう科とは組み合わせられない。
  3. ^ a b c d e f 皮膚科、泌尿器科、眼科とは組み合わせられない。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m 皮膚科、泌尿器科、眼科、耳鼻いんこう科とは組み合わせられない。
  5. ^ 眼科、耳鼻いんこう科とは組み合わせられない。
  6. ^ 皮膚科、眼科、耳鼻いんこう科とは組み合わせられない。
  7. ^ a b 皮膚科、泌尿器科とは組み合わせられない。
  8. ^ 泌尿器科、眼科とは組み合わせられない。
  9. ^ a b 産婦人科とは組み合わせられない。
  10. ^ 小児科、産婦人科とは組み合わせられない。
  11. ^ a b c 小児科とは組み合わせられない。
  12. ^ a b 内科とは組み合わせられない。
  13. ^ 外科とは組み合わせられない。
  14. ^ アレルギー科とは組み合わせられない。
  15. ^ 「灸」の方言である。
  16. ^ よこはま と胃腸の病院 - 乳腺科が標榜科として掲げられず、「乳腺」部分を空白として病院名称を申請した。

出典

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  1. ^ a b c d e f g 医療機関のホームページの内容の適切なあり方に関する指針(医療機関ホームページガイドライン) (平成24年9月28日付け医政発0928第1号)』(プレスリリース)厚生労働省、2012年9月28日https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html 
  2. ^ 依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関の整備について』(PDF)(プレスリリース)厚生労働省、2017年6月13日。障発0613第4号https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12205250-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kokoronokenkoushienshitsu/0000202956.pdf 
  3. ^ 医政発第 0331042号 広告可能な診療科名の改正について』(PDF)(プレスリリース)厚生労働省、2008年3月31日https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/kokokukisei/dl/koukokukanou.pdf 
  4. ^ a b c d e 施術所・出張施術業 開設の手引き』(PDF)(プレスリリース)東京都北区保健所http://www.city.kita.tokyo.jp/seikatsueisei/kenko/ese/imu/sejutsujo/tebiki/documents/sejyutujyotebiki.pdf 
  5. ^ 内閣総理大臣 小泉純一郎 (31 January 2003). 参議院議員堀利和君提出柔道整復師の施術に係る療養費の支給に関する質問に対する答弁書 (Report).
  6. ^ a b 療養費適正化理念” (PDF). 公益社団法人 大阪府柔道整復師会 (2016年). 2016年6月1日閲覧。
  7. ^ “看板修正:相次ぐ 橿原市が接骨院などに改善要求、はり師やきゅう師の施術所にも指摘 /奈良”. 毎日. (2013年9月21日). https://web.archive.org/web/20131002192004/http://mainichi.jp/area/nara/news/20130921ddlk29040656000c.html 
  8. ^ “医療行政の舞台裏◎反社会的勢力による詐欺事件を契機に 柔道整復師と整形外科医が歴史的和解!?”. 日経メディカル. (2016年4月12日). https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201604/546514.html 

関連項目

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外部リンク

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