船舶油濁等損害賠償保障法
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船舶油濁等損害賠償保障法 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | 油濁法 |
法令番号 | 昭和50年12月27日法律第95号 |
種類 | 商法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 1975年12月12日 |
公布 | 1975年12月27日 |
施行 | 1976年9月1日 |
所管 |
(運輸省→) 国土交通省 (船舶局→海上技術安全局→海事局) 法務省(民事局) 環境省 (環境管理局→水・大気環境局) |
主な内容 | 船舶油濁損害における船舶所有者等の責任、被害者保護など |
関連法令 |
船主責任制限法 国際船舶・港湾保安法 など |
制定時題名 | 油濁損害賠償保障法 |
条文リンク | 船舶油濁等損害賠償保障法 - e-Gov法令検索 |
船舶油濁等損害賠償保障法(せんぱくゆだくとうそんがいばいしょうほしょうほう)とは、船舶に積載されていた原油等による油濁損害に関する船舶所有者等の責任や被害者の損害賠償請求権の保障について規定した日本の法律である。
もともと、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(船主責任制限法)に対する特則としての意味を持つ法律(船舶油濁損害賠償保障法(昭和五十年法律第九十五号))であるが、2005年3月1日から施行された改正法の成立経緯から、保険未加入の外国船舶の入港を阻止するための法律として注目されるようになった。
沿革[編集]
1967年、リベリア船籍タンカーであるトリー・キャニオン号がドーバー海峡において座礁し、大型の油濁汚染事故を引き起こした。そして、同事故をきっかけに、海運業界において油濁事故に関する国際的な保険組合を結成することにより損害を補償する動きが出てきた。
また、国際連合の専門機関である国際海事機関 (IMO) の前身である政府間海事協議機関 (IMCO) も油濁汚染損害に関する条約案を検討し、1969年には「油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約」が成立。1971年には、同条約の補充のための国際基金の目的とした「油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約」が成立した。
本法は上記の条約を国内法化したものである。なお、制定当時の題名は「油濁損害賠償保障法」であったが、2004年の法改正[1]により題名が「船舶油濁損害賠償保障法」に改題された(改正法の施行は2005年3月1日)。
その後、2016年5月に兵庫県淡路島で発生した座礁事故においてタイ船籍の台船が保険金が支払われなかったことにより放置される事案等が発生したことなどを背景に「燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約」及び「2007年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約(ナイロビ条約)」を国内法化するために2019年5月に法改正され[2][3]、題名が「船舶油濁等損害賠償保障法」(油賠法)に改題された[4](改名は2020年10月1日施行[5])。
なお、船主責任制限法は民法の特例法として法務省民事局が所管しているが、本法律は船舶法など他の海運関連法令と同様に国土交通省(旧・運輸省。船舶局→海上技術安全局→海事局)が実務に当たる。ただし、国土交通省は法務省および環境省(環境管理局→水・大気環境局)と連携して本法律の執行を行う。
タンカー油濁損害賠償責任[編集]
損害賠償責任及び責任制限[編集]
ばら積みの原油等(原油、重油、潤滑油その他の蒸発しにくい油で政令で定めるもの)を輸送するタンカーから流出・排出された油による汚染により損害を生じた場合、原則として、当該タンカーの所有者は無過失責任に近い損害賠償責任を負う(第3条)。
その反面において、タンカー所有者は上記損害賠償責任の範囲を制限することができる(第5条~第9条)。これは、船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(船主責任制限法)において船主の責任制限が認められるのと同趣旨によるものであるが、タンカーに起因する大型の油濁汚染による損害賠償である点に鑑み、本法において特例が定められているものである。
タンカー油濁損害賠償保障契約[編集]
油濁損害賠償に基づく被害者の損害賠償請求権を保障する観点から、2000トンを超えるばら積みの輸送に供する日本国籍のタンカーについては、船主相互保険組合や保険会社との間でタンカー油濁損害賠償保障契約を締結することが強制されている。また、日本国籍以外のタンカーについては、上記契約が締結されていなければ、2000トンを超えるばら積みの油を積載して日本国内の港に入港したり出港したりすることができない(第13条)。上記契約における保険金額は、当然、タンカー所有者の責任制限額を満たす必要がある。
国際基金からの補償[編集]
油濁損害賠償に基づく被害者の損害賠償請求権を保障するため、被害者は、条約に基づいて設立された国際基金に対し、賠償を受けることができなかった損害の金額について補償を求めることができる(第22条)。
また、上記基金の資金源とするため、日本の港に陸揚げされた原油等を1年間に15万トンを超えてタンカーから受け取る者は、年次拠出金を国際基金に納付しなければならない(第30条)。
責任制限手続[編集]
船主責任制限法と同様、タンカー所有者の責任制限手続に関する規定が設けられている(第31条~第38条)。
一般船舶油濁損害賠償責任[編集]
新設経緯[編集]
2004年の法改正(2005年3月1日施行)により、一般船舶(旅客又はばら積みの油以外の貨物その他の物品の海上輸送のための船舟類)からの燃料油の流出等による損害賠償責任や保障契約に関する規定が新設された。新設された規定は条約を国内法化したものではなく、日本国沿岸において一般船舶の座礁事故が多く発生していることに鑑み、それに対応するために規定されたものであるとされている。
損害賠償責任及び責任制限[編集]
一般船舶から流出・排出された燃料油により損害を生じた場合、原則として当該船舶所有者及び船舶賃借人は、無過失責任に近い損害賠償責任を負う。ただし、戦争や天災など例外とされる場合もある。(2019年改正後第39条の1)
その反面において、船舶所有者及び船舶賃借人の損害賠償責任の範囲を制限することができるのはタンカーの場合と同様であるが、タンカー所有者の場合と異なり、責任制限の内容は船主責任制限法の定めによる。
一般船舶油濁損害賠償等保障契約[編集]
被害者の損害賠償請求権を保障する観点から、総トン数が100トン以上の日本国籍の一般船舶(総トン数が百トン以上千トン以下のものに限り、その航行に際し燃料油等を用いることを要しないものを除く)については、船主相互保険組合や保険会社との間で一般船舶等油濁損害賠償保障契約を締結することが強制されている(2019年改正後第41条の1)
また、日本国籍以外の総トン数100トン以上の一般船舶については、上記契約が締結されていなければ、日本国内の港に入港したり出港したりすることができない(2019年改正後第41条の2)。北朝鮮船籍の船舶は上記のような保障契約を締結している割合が著しく低いとされており、そのような船舶による事故が日本国沿岸で発生した場合、被害者の救済が乏しくなる。このような危機意識から、保障契約未締結の船舶の入港を阻止する目的でこのような規定を置くことになった。
脚注[編集]
- ^ 平成16年4月21日法律第37号
- ^ 令和元年5月31日法律第18号
- ^ “海事:改正「船舶油濁損害賠償保障法」への対応について - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2024年3月17日閲覧。
- ^ “報道発表資料:「船舶油濁損害賠償保障法の一部を改正する法律案」を閣議決定~海難等による汚染等損害からの被害者保護を図るための措置を講じます~ - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2023年8月21日閲覧。
- ^ “改正「船舶油濁損害賠償保障法」への対応について”. 国土交通省. 2023年8月24日閲覧。 “改正油賠法の施行(2020年10月1日)【引用者注:一部は先行施行、改正附則第1条ただし書を参照。】”
関連項目[編集]
- 船舶の所有者等の責任の制限に関する法律
- 責任トン数 本法律の適用基準となるトン数
- サブスタンダード船
- ポートステートコントロール
- チルソン号 座礁事故を起こし2004年の法改正の一因となった船
- 放置座礁外国船
- 油流出
- バンカー条約