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ミギワバエ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
渚蠅から転送)
ミギワバエ科
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : ハエ亜目(短角亜目) Brachycera
下目 : ハエ下目 Muscomorpha
上科 : ミギワバエ上科 Ephydroidea
: ミギワバエ科 Ephydridae
学名
Ephydridae
英名
shore flies
brine fly
亜科

本文参照

ミギワバエ(汀蠅、渚蠅)は、ハエ目ミギワバエ科(Ephydridae)に分類される昆虫の総称。全世界で約1500種が記録されている。多くは浜辺や湿地、湖沼の沿岸などに生息する。また幼虫が原油の中で生活するという特殊な生態を持つセキユバエ Helaeomyia petrolei も、このミギワバエ科に属する[1]

特徴

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Halmopota salinaria の翅

成虫の体長は2-9mm[2]。成虫は脚を水面につけて浮かんでいることもあり、主に藻類などを捕食している。成虫の外見はニセミギワバエ科の各種と類似するが、翅の臀室や第一経脈の有無(ミギワバエにはどちらもない、ニセミギワバエにはどちらもある)、前縁脈の切れ込み位置の違いなど、翅脈によって識別可能である[3]

ミギワバエは水たまりや湿原、塩性湿地、アルカリ性の湖などといった水辺に主に生息している。幼虫は主に植食性で、イネや沈水植物などの水草、もしくは藻類を餌として利用する。幼虫の中には特殊な環境で生活するものがおり、例えば Ephydra brucei の幼虫は45℃以上の水温がある熱水泉で生活している。また原油のプールで生活するセキユバエの幼虫や、塩分濃度が非常に高い水中で生活する Ephydra cinera の幼虫などもいる。

分類

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Hydrellia cardamines
Psilopa nitidula

日本では38属約100種が記録されている[4]

亜科と族

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亜科 Ephydrinae

亜科 Hydrelliinae

亜科 Parydrinae

亜科 Psilopinae

人間との関係

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イネヒメハモグリバエ Hydrellia griseola やその近似種のコトニミギワバエ H. tomiokai の幼虫が、稲の葉を食害して初期葉の枯死や生長遅延などの被害をもたらすことが知られており、特に北日本で重要な害虫として扱われている[5]。また干拓地などで異常発生する例もあり、大阪市では干拓地で異常発生したスガリミギワバエ Ephydra japonica が、家屋にまで侵入するという被害が報告された[6]

一方、湖沼の有害雑草として扱われるクロモの防除のために、幼虫がクロモを利用する Hydrellia pakistanae を放虫する試みがフロリダなどで行われている[7]

ギャラリー

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脚注

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  1. ^ 横山雅司『極限世界のいきものたち』(2010年、彩図社)pp.24-25
  2. ^ bugguide.net (English)
  3. ^ 川合禎次、谷田一三(共編)『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』(2005年、東海大学出版会)p.1258
  4. ^ 笹川滿廣(2002)「日本産双翅目ノート 1」Japanese journal of entomology. New series 5(2), 29-34
  5. ^ 城所 隆 , 藤崎 祐一郎 , 高野 俊昭(1982)「イネヒメハモグリバエの多発要因としての田植時期について」日本応用動物昆虫学会誌 26(4), 306-308 [1]
  6. ^ 田中 英雄 , 西村 猛 , 佐野 竜蔵 , 峰野 幸雄 (1966)「大阪市の干拓地におけるスガリミギワバエ (Ephydra japonica) の異常発生事例について (第 18 回大会講演要旨)」衞生動物 17(2), 144-145
  7. ^ G. S. WHEELER AND T. D. CENTER 1996. The Influence of Hydrilla Leaf Quality on Larval Growth and Development of the Biological Control Agent Hydrellia pakistanae (Diptera: Ephydridae). Biological Control 7 1-9

関連資料

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同定に用いられる検索表を掲載した文献。

  • Andersson, H. (1971), The European species of Limnellia (Dipt., Ephydridae). Entomologica Scandinavica 2: 53–59.Key to European species.
  • Theodor Becker, T. (1926), Ephydridae. 56a. In: Lindner, E. (Ed.). Die Fliegen der palaearktischen Region 6: 1–115. Keys to Palaearctic species but now needs revision (in German).
  • Canzoneri, S. & Meneghini, D. (1983), Ephydridae e Canaceidae. Fauna d’Italia XX.Revision of the Italian species for these two families (in Italian).
  • Mathis, W.N. & Zatwarnicki, T. (1990), A revision of the western Palaearctic species of Athyroglossa (Diptera: Ephydridae). Transactions of the American Entomological Society 116: 103–133. Revision of the West Palaearctic species of the genus.
  • Zatwarnicki, T. (1997), Ephydridae. In: Nilsson, A. (Ed.) Aquatic Insects of North Europe (A Taxonomic Handbook). Apollo Books, Stenstrup, Denmark. Includes a key (in English) to the genera.