常動曲
常動曲(じょうどうきょく)または無窮動(むきゅうどう、ラテン語:Perpetuum mobile, イタリア語:moto perpetuo)とは、常に一定した音符の流れが特徴的な、通常は急速なテンポによる楽曲ないしは楽章を指す。なお、「ペルペトゥウム・モビレ」というラテン語や「モト・ペルペトゥオ」というイタリア語は、文字通りには永久運動を指す。
手法
[編集]最も有名な作例は、フレデリック・ショパンの《ピアノ・ソナタ第2番》の終楽章である。8分音符の三連符の急速な音型が、楽章全体にわたって続いている。
その他の有名な作例に、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ《テンペスト》《熱情》、シューベルトの《即興曲》D.899の第2曲および第4曲、ウェーバーの《ピアノ・ソナタ第1番》とラヴェルの《ヴァイオリン・ソナタ》およびバルトークの《管弦楽のための協奏曲》のそれぞれの終楽章が挙げられる。
単独の小品
[編集]独立した楽曲としては、ほとんどが(具体的に回数は指定されていないが)何回も何回も繰り返されるように作曲されており、旋律の「動き」を止めることなく、曲の終わりから始まりまで戻ることができるような作品である、と定義付けることができる。輪唱やカノンは、無限に続けることができるように作られている(このようなカノンは、「無限カノン(ラテン語:canon perpetuus)」と呼び得る)。無限カノンの中には、バッハの《音楽の捧げもの》の「謎カノン」のように、違った音高や和声進行を含む例もある。
19世紀以前
[編集]独立した楽曲のジャンルとしては、19世紀末まで人気の頂点にあった。しばしばヴィルトゥオーソのアンコール・ピースとして演奏されたような曲は、きまって、反復されるたびに加速して演奏された。以下はそのような典型の例である。
- フェリックス・メンデルスゾーンのピアノ曲(作品119)
- ニコロ・パガニーニのヴァイオリン曲(作品11-6)
- カール・マリア・フォン・ウェーバーのピアノ・ソナタ第一番 終楽章《無窮動》
- ヨハン・シュトラウス2世の管弦楽のための「音楽の冗談」こと《無窮動》(作品257)
- ニコライ・リムスキー=コルサコフの《熊蜂の飛行》
- オトカル・ノヴァーチェクのヴァイオリンとピアノのための小品《常動曲》
- エリック・サティのピアノ曲《いやがらせ》
20世紀以降
[編集]- フランシス・プーランクのピアノ曲《3つの無窮動》(1918年)
- アルヴォ・ペルトの管弦楽曲(1963年)
- ジョン・クーリッジ・アダムズの管弦楽曲《高速機械で早乗り Short Ride in a Fast Machine》(1986年)
- ペンギン・カフェ・オーケストラ《Perpetuum mobile》(1987年)
- ジョセフ・シュワントナーのマリンバソロ《Velocities(Moto Perpetuo)》
- 松平頼暁《児童合唱のための無窮動(Perpetual mobile : for children's voices)》