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コンゴウフグ

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コンゴウフグ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: フグ目 Tetraodontiformes
: ハコフグ科 Ostraciidae
: コンゴウフグ属 Lactoria
: コンゴウフグ L. cornuta
学名
Lactoria cornuta
(Linnaeus, 1758)
シノニム[2]
  • Ostracion cornutus Linnaeus, 1758
英名
Longhorn cowfish
horned boxfish

コンゴウフグ(金剛河豚、学名:Lactoria cornuta)は、ハコフグ科に分類される海水魚の一種[3]インド太平洋に分布し、全長は最大50cmに達する。頭部にある長い角のような棘が特徴である[4]

分類と名称

1758年にカール・フォン・リンネによって『自然の体系英語版』第10版の中で Ostracion cornutus として記載され、タイプ産地はインドであった[5]。1902年にデイビッド・スター・ジョーダンヘンリー・ウィード・ファウラーハコフグ属英語版Lactoria 亜属を提案し、O. cornutus をその基準種とした[6]

属名は「乳牛」を意味し、目の上の棘が牛の角に似ていることに由来する。同様の理由から、本種やその近縁種の英名も「Cowfish (牛の魚)」となっている。種小名は「角のある」を意味し、目の前にある大きな棘を示している[7]

分布と生息地

紅海東アフリカからインドネシアを経て東はトゥアモトゥ諸島マルキーズ諸島、北は南日本韓国南部、南はオーストラリアロード・ハウ島まで、インド太平洋熱帯および亜熱帯海域に広く分布する[1][8]。日本では紀伊半島以南の太平洋岸で見られる[9]。近年はインドでも発見されており、サイクロン台風によって運ばれてきたものと推測される[10][11]

ラグーン内のサンゴ礁、礁原、河口、堡礁の海側に生息する[12]。また砂地藻場でも見られる[9]。幼魚はミドリイシ属英語版の付近で生活する。生息水深は1-45mで、100mに達することもある。

形態

正面から見た様子

全長は30-50cm。眼の上と腹の両側に1対の棘が伸びており、それぞれ眼前棘、腰骨棘と呼ばれる[8]。この棘は成長すると長くなるが、老成すると逆に短くなる[8]。また、この棘が古代インドの武具をたとえた法具である「金剛杵」に似ているため、和名がついた[13]性的二形は知られておらず、雄雌ともに体色は黄色からオリーブ色で、白または青みがかった斑点が散らばる。雄は体長65-155mm、平均103mmに成長するのに対し、雌は83-250 mm、平均121mmに成長する。体重は雌で17-156g、平均33gであるのに対し、雄は12-116g、平均26gである[12]。鰓蓋が無く、代わりに鰓穴は小さな切れ目となっている。鱗は六角形の皿のようで、箱のような堅固な甲羅を形成し、鰭と尾が突き出ている。棘のすぐ後ろには大きな目がある[12]。ホバリングのように泳ぎ、腹鰭は持たない。尾鰭は体と同じ長さになることもあり、動きは鰭に頼っている[14]。泳ぎが非常に遅いため、簡単に手で捕まえることができ、捕まえるとうなり声のような音を立てる。につながる筋肉を使って、ハミング音とクリック音、2種の音を出すこともできる[15]

生態

単独で行動することが多く、縄張り意識が強い。雑食性であり、藻類微生物有孔虫海綿動物、砂地の多毛類軟体動物、小型甲殻類、小魚などを捕食し、海底に水を噴出して砂を巻き上げ、出てきた無脊椎動物を捕食する行動も知られる。サンゴ礁を破壊する無脊椎動物を捕食することで、サンゴ礁の成長と形成に重要な役割を果たしている[16]。日没直前か直後につがいで繁殖する。卵と仔魚はプランクトンであり、海流に乗って広範囲に分散する[9]。雌は一般に雄よりも大きい。極度のストレスを受けると、皮膚からパフトキシンという致命的な毒素を含む粘液を分泌することがある。これは既知の魚毒の中では明らかに特異で、本種に対しても有毒であり、一般的な性質はナマコの毒に似ている。

本種の持つ棘は、捕食者に食べられにくくする目的がある可能性もある。また、捕食者に突進することで捕食者を追い払うためにも使われる[17]。棘は損傷しても数ヶ月以内に再生する[18]。角はほとんどが中空で、ミネラル化したコラーゲンの繊維から成る[19]。硬い外骨格と毒は、捕食者に対する強力な防御である。ベラスズメダイは卵を捕食する。親はこれら卵の捕食者を追い払うことができるが、捕食者から自身と卵を隠すために海底付近で産卵する[20]

3-4匹の雌から成るハーレムを形成する。雌は日没直後、または雲が多い日中に産卵する。産卵期は2月から10月上旬まで続く[20]。卵は楕円形で、孵化した仔魚は既に箱型の甲羅を持つ[21]

人との関わり

パンバン島英語版では、土地が分断されたときに島の牛がこの魚に変身し、海藻を食べたという伝承がある[22]。毒があるため食用にはされず[23]観賞魚として取引される。

出典

  1. ^ a b Stiefel, K.M.; Williams, J.T. (2024). “Lactoria cornuta”. IUCN Red List of Threatened Species 2024: e.T193635A2250846. https://www.iucnredlist.org/species/193635/2250846 2024年12月5日閲覧。. 
  2. ^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2024). "lactoria cornuta" in FishBase. June 2024 version.
  3. ^ Nelson, J.S.; Grande, T.C.; Wilson, M.V.H. (2016). Fishes of the World (5th ed.). Hoboken, NJ: John Wiley & Sons. pp. 518–526. doi:10.1002/9781119174844. ISBN 978-1-118-34233-6. LCCN 2015-37522. OCLC 951899884. OL 25909650M 
  4. ^ Longhorn Cowfishes, Lactoria cornuta”. MarineBio Conservation Society. 2014年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月6日閲覧。
  5. ^ CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Lactoria”. researcharchive.calacademy.org. 2024年12月5日閲覧。
  6. ^ CAS - Eschmeyer's Catalog of Fishes Ostraciidae”. researcharchive.calacademy.org. 2024年12月5日閲覧。
  7. ^ Christopher Scharpf (2024年8月21日). “Order TETRAODONTIFORMES: Families MOLIDAE, BALISTIDAE, MONACANTHIDAE, ARACANIDAE and OSTRACIIDAE”. Christopher Scharpf. 2024年12月5日閲覧。
  8. ^ a b c 多紀保彦・河野博・坂本一男・細谷和海『新訂 原色魚類大圖鑑 圖鑑編』北隆館、2005年12月15日。ISBN 4-8326-0820-7 p.504
  9. ^ a b c 萩原清司 (2018)「コンゴウフグ」中坊徹次(編/監修)『小学館の図鑑Z 日本魚類館』p.475、小学館、ISBN 978-4-09-208311-0
  10. ^ Iqbal, A. M. Z., Mali, G., & Dollin, R. (2021). First Report of Lactoria cornuta from Karnataka, West coast of India–Role of tropical cyclones in Range Extension. bioRxiv.
  11. ^ Day, Francis (1878). The Fishes of India. Volume I. London: Bernard Quaritch. p. 697. https://archive.org/details/fishesofindiabei01dayf/page/697/mode/1up 
  12. ^ a b c Tresnati, J., Dolo, R., Aprianto, R., & Tuwo, A. (2020, September). Some population parameters of Longhorn Cowfish Lactoria cornuta (Linnaeus, 1758) in Laikang Bay, Takalar District, South Sulawesi, Indonesia (preliminary study). In IOP Conference Series: Earth and Environmental Science (Vol. 564, No. 1, p. 012014). IOP Publishing.
  13. ^ 木村義志『フィールドベスト図鑑 日本の海水魚』学習研究社、2000年8月4日。ISBN 4-05-401121-7 p.202
  14. ^ Moazzam, M., & Osmany, H. B. (2014). Fishes of family diodontidae, ostraciidae and molidae from Pakistan coast. International Journal of Biology and Biotechnology (Pakistan).
  15. ^ Parmentier, Eric; Marucco Fuentes, Erica; Millot, Morgane; Raick, Xavier; Thiry, Marc (2021-04). “Sound production, hearing sensitivity, and in‐depth study of the sound‐producing muscles in the cowfish ( Lactoria cornuta )” (英語). Journal of Anatomy 238 (4): 956–969. doi:10.1111/joa.13353. ISSN 0021-8782. PMC PMC7930766. PMID 33150619. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/joa.13353. 
  16. ^ Frias-Torres, S., & van de Geer, C. (2015). Testing animal-assisted cleaning prior to transplantation in coral reef restoration. PeerJ, 3, e1287.
  17. ^ Yang, W., Nguyen, V., Porter, M. M., Meyers, M. A., & McKittrick, J. (2014). Structural characterization and compressive behavior of the boxfish horn. Advances in Bioceramics and Biotechnologies II: Ceramic Transactions, 105–112.
  18. ^ Khan, Shahzad Kuli; Siddique, Mohammad A. Momin; Haque, Mohammed Ashraful (2013). “New record of the longhorn cowfish Lactoria cornuta (Linnaeus 1758) from inshore waters of the Bay of Bengal, Bangladesh”. Zoology and Ecology 23: 88–90. doi:10.1080/21658005.2013.779125. 
  19. ^ Yang, Wen; Nguyen, Vanessa; Porter, Michael M.; Meyers, Marc A.; McKittrick, Joanna. “Structural characterization and compressive behavior of the boxfish horn”. Advances in Bioceramics and Biotechnologies II: Ceramic Transactions 247: 105. http://meyersgroup.ucsd.edu/papers/journals/Meyers%20422.pdf. 
  20. ^ a b Moyer, Jack T. (1979). “Mating Strategies and Reproductive Behavior of Ostraciid Fishes at Miyake-jima, Japan”. Japanese Journal of Ichthyology 26 (2): 148–160. doi:10.11369/jji1950.26.148. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jji1950/26/2/26_2_148/_article. 
  21. ^ Leis, Jeffrey M.; Moyer, Jack T. (1985-08). “Development of eggs, larvae and pelagic juveniles of three Indo-Pacific ostraeiid fishes (Tetraodontiformes):Ostracion meleagris, Lactoria fornasini andL. diaphana” (英語). Japanese Journal of Ichthyology 32 (2): 189–202. doi:10.1007/BF02938448. ISSN 0021-5090. https://link.springer.com/deleted. 
  22. ^ Thurston, Edgar (1913). The Madras presidency, with Mysore, Coorg and the associated states. Cambridge University Press. p. 33. https://archive.org/details/madraspresidency00thur/page/33/mode/1up 
  23. ^ 藤原昌高. “市場魚介類図鑑 コンゴウフグ”. 2024年12月5日閲覧。

関連項目