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オルゴール

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櫛の歯が18本のシリンダー・ムーブメント 写真提供:日本電産サンキョー商事株式会社
30本の櫛歯を持つシリンダー・ムーブメント(約25年前の製品)
ディスク・オルゴール

オルゴールは、機械仕掛けにより自動的に楽曲を演奏する楽器の一つ。自鳴琴とも呼ばれた。

概要

オルゴールは大きく分けて、円筒にピンを取り付けたシリンダー・オルゴールと、円盤にピンを取り付けたディスク・オルゴールに分類される。

宝石箱やぬいぐるみのおもちゃなどで良く見るシリンダー・オルゴールは、回転する円筒の表面に植えられたピンが、形の音階の金属板を弾く構造である。音源としては、金属製の櫛に加えて小さなドラムベル、カスタネットやリード・オルガンなどを内蔵しているものもある。

日本語の「オルゴール」は、オランダ語orgelオルガン)に由来する。英語の表記は musical box または music box である。

このミュージック・ボックスという語は幅広く使われる傾向があり、主には「オルゴールの宝石箱」のように金属の機械部分とそれが収められた箱との全体を指して言うが、機械部分のみをオルゴールと呼ぶこともある。ここでは区別のために機械部分はオルゴール・ムーブメント、または単にムーブメントと呼ぶこととする(英語では musical movement )。

またオルゴール(ミュージック・ボックス)はカテゴリーとしても広い範囲を言うことがあり、ゼンマイ仕掛けのフイゴと笛を使うシンギング・バードや、時には自動オルガンの類も含める場合がある。つまり、いわゆる自動演奏楽器全般をオルゴールと呼ぶ場合がそれである。中でも、楽器の規模が大きいものをオーケストリオン(オーケストラが語源)と呼ぶこともある。ここでは音源に金属の櫛歯を使うものをオルゴールと呼ぶこととする。

現在、日本各地のオルゴール博物館でそれらの多種多様さを見聞することができる。

歴史

後年、見上げるような大型のものも作られることになったオルゴールの原型は、上着のポケットに入ってしまったり、懐中時計に組み込まれたり、指輪に仕込まれたりと小さなものとして始まった。後にはコーヒーテーブルにちょうどよいものや、高さ3mほどの大きな家具に相当するものまで、いろいろなサイズが作られた(実際オルゴールの箱であるケースの大型のものは家具会社で作られた)。

ムーブメントは時計と同様、ぜんまいばねや歯車の仕掛けによって動かされるものであるため、初期には時計技師・職人によって作られた。

18世紀末に作られた初期の小さなオルゴールはシリンダーではなく、金属製のディスクにピンが植えられていた。ディスクが上下して2曲を演奏するものもあった。シリンダーへの切り換えはナポレオン戦争の後に完成されたと思われる。

最初のオルゴール工場は1815年に Jeremie Recordon と Samuel Junod によって開かれた。19世紀、オルゴールの生産の大部分は時計の産地でもあったスイス西部に集中したが、ウィーンにも少数のメーカーがあった。

シリンダーは通常、金属で作られ、動力源はゼンマイである。複数の曲目を演奏できるようシリンダーが横にスライドする構造がとられたものも多い。また高価ではあるが、より多くの曲目を演奏できるようシリンダーをムーブメントから取り外して交換できるものもあらわれた。インターチェンジャブル・シリンダー・オルゴールである。これは1862年パイヤールが発明し、1879年ジュネーヴの Metert によって完成された。

動力源では、4つのゼンマイを持ち、3時間にわたって連続演奏を行うものも現れた。

しかし19世紀末、ドイツからディスク・オルゴールが現れる。シンフォニオン (Symphonion ) やポリフォン (Polyphon のようなモデルでは、シリンダーの代わりにディスクが使われた。ディスクは交換が容易で、すなわち曲目の変更が簡単で、また比較的安価であったために普及した。また新しい市場を求めて、ポリフォンやシンフォニオンなどはアメリカにいくつかの工場を開いた。 ポリフォンアメリカ代理店は後にポリフォンから独立しレジーナ社に変わり、シンフォニオンはアメリカシンフォニオンとなる。

スイスのシリンダー・オルゴール・メーカーは大きな影響を受ける。対抗するために独自の構造を持つディスク・オルゴール"ミラ"や"ステラ"などを製造しはじめるが、そのころ現れた自動ピアノや蓄音機に、ドイツのディスク・オルゴールもろとも、間もなく置きかえられてしまう。その生産は急速に衰え、主要な会社は閉鎖された。オルゴールに代わるオリジナルの製品を扱っている少数のメーカーのみが生き延びた。

現在、19世紀から20世紀初頭にかけて作られたオルゴールは収集家によって珍重されている。日本でも各地のオルゴール博物館で当時のオルゴールを鑑賞できる。またメーカーは少数にはなったが、現在でも伝統的なムーブメントの製造が続けられている。(ポーター、三協など)

“ジュークボックス”としてのオルゴール

ヨーロッパやアメリカではオルゴールは家庭で楽しまれることも多かったが、レストランやパブ、ホテル、駅などでコインを入れて音楽を楽しむ自動演奏装置としても普及した。ディスク・オルゴールの中にはセットされた10~12曲から選んで演奏できるものもあり、レストランなどではヒットソングを次々入れ替え客の要望に応え、蓄音機やレコードの時代のジュークボックスと同様の役割を担った。

またスイスでは駅の待合室に置かれたオルゴールをステーション・オルゴールと呼び、近年まで見ることができたが、老朽化やオルゴールを壊してコインが盗まれることもあり、多くが取り除かれた。

構造

  • シリンダー・オルゴールの円筒は金属でできている。ディスク・オルゴールの円盤も同様に金属製である。他の全ての部品は金属の基盤(ベッド・プレート)上に固定されている。
  • 動力源であるぜんまいを巻くため、巻上げクランクや巻き戻りを防ぐ歯止め装置がある。
  • ぜんまい(長時間の動作をさせるため、複数を使用することがある)、または電動モーターを用いて、数分から長いものでは1時間以上も演奏する。
  • 音源である櫛(コーム)は異なる長さの何十から何百もの金属製の歯状に切られ、歯(ティース)は音階に合わせて調律されている。
  • シリンダやディスクには譜面に合わせて音楽が記録されている。シリンダー上にはピンが植えられ、ピンが歯を弾いて音を出す。ディスク・オルゴールの円盤には突起または穴があり、スター・ホィールと呼ばれる歯車を介して櫛の歯を弾く。

生産地の推移

蓄音機とラジオの出現、その性能の向上によって、スイスやドイツ、アメリカのオルゴール・メーカーの多くは廃業、または元の時計や新しい分野である蓄音機タイプライターカメラ自動販売機、真空掃除機などの製造へ業種を変えることになる。その中でスイスのリュージュ社は現在も製造を続けている。

第二次世界大戦後、オルゴールの大規模な生産地はスイスから日本へ移った。株式会社三協精機製作所(現日本電産サンキョー株式会社)がオルゴールの製造を始め、小さなキーホルダーから大きいモデルまでのさまざまなオルゴールを供給した。自動化された工場による製造方法を築き、ついにスイスをしのぎ世界最大のメーカーとして市場の80%以上を占めるまでに至った。現在オルゴールの生産は子会社の日本電産サンキョー商事株式会社の手に移っている。日本電産サンキョー商事ではオルゴールの旋律を電子化し着信音として携帯電話にダウンロードできるサービスも行っている(おるごーる本舗)。

スイス、日本では今も高品質のオルゴール・ムーブメントが作られているが、安価なオルゴールの大規模な生産は中国に移動した。現在では中国でも高級な製品が作られつつある。

一方アメリカ・バーモントの Porter Music Box 社 はレジーナ (Regina ) の規格を持つディスク・オルゴールとディスクを現在も生産している。ポーターのオルゴールの動力源はゼンマイまたは電気モーターが選べ、またディスクの曲目は最近のポピュラーソングまで約1,000曲ほどを供給している。ディスクはドイツのポリフォンとアメリカのレジーナのオルゴールと共通の規格を持つため、円盤の寸法が同じであればそれらのアンティーク・オルゴールででも演奏ができる。

関連項目

参考文献

外部リンク

オルゴール関係の博物館など。

メーカー