コングロマリット
コングロマリット(英: conglomerate)は、直接の関係を持たない多岐に渡る業種・業務に参入している企業体のこと。複合企業(ふくごうきぎょう)とも。主に異業種企業が相乗効果を期待して合併を繰り返して成立する。
複合企業体としてのコングロマリット
企業は、通常ならば業務関係のある会社と合併するが、業務の内容において直接の関係を持っていない企業の買収などによって、全く異なる業種に参入し企業グループとする企業形態の一つがコングロマリットである。 コングロマリットは1960年代のアメリカ合衆国で盛んに行われ[1]、異業種間同士の相乗効果によりグループ全体の活性化(株価や企業資産の安定化やリスクヘッジを含む)が期待された。
異業種参入の難しさに加え、期待した相乗効果が得られない、拡大したグループの収益悪化といった問題が発生しやすい企業形態であるが、業種を超えてシナジー効果が得られた場合は、技術面・ブランディングにおいて非常に強力なものである。また、それぞれが独立した業務・業種であることから、独立や解体・再編など事業再構築(リストラクチャー)が比較的ペナルティなく行えるため、積極的に試みられた。
近年では企業にも変化する市場に対する柔軟性が要求されるため、コングロマリットの構築~解体のサイクルも1990年代以降は短くなりつつあるとも言われるが、そもそものコングロマリットという巨大企業形態自体が足かせとなる事も多い。巨大複合企業体の全盛期は1960年代〜1980年代であり、現在は欧州におけるエアバス社などが独仏両国による新生コングロマリットだと指摘される事もあるが、この場合の一国で保有する複合企業という定義とは異なり、北米でも一部を除いて殆どが残っておらず、もっと緩い業務提携で留める事が多い。
日本のコングロマリットの実例
- 純粋持株会社解禁以前
- 戦後、純粋持株会社は認められなくなったために、この時期、コングロマリットの例は日本ではあまりない。この期間のコングロマリットの代表的な例としては、日本楽器製造があげられる。ピアノなどの楽器製造メーカーである日本楽器は、ブランド名『ヤマハ』を使っていた。この名を使い、社内でオートバイを生産し始めたが、この「楽器製造」と「オートバイ製造」は(実際には楽器生産により培った鋼管加工技術の展開先として発動機パーツへ進出しているため関係性は強かったが)最終製品において特段に相乗効果はなく、この2分野を共におこなっていた時期はコングロマリットと呼べなくもない。ただこの期間は短く、オートバイ製造部門はスピンオフされて、ヤマハ発動機として独立した。
- なお、鉄道会社が遊園地を経営したりプロ野球球団を持ったりデパート経営するのは旅客輸送を増やすため、NECが半導体や電子製品を作ったのは川上から川下まで手がけるため、ユニ・チャームが紙問屋から紙の性質に着目し生理用品製造をはじめたのは隣接分野への領域拡大、オカモトがコンドームからタイヤ生産に進出したのも同じゴム素材による事業拡大、ダイエーが百貨店やコンビニエンスストアを展開したのも隣接分野への進出であり、このような場合はコングロマリットとは呼ばない。
- 純粋持株会社解禁以後
- 純粋持株会社が解禁以後は、機動的なM&Aを行いやすくなり、教科書的なコングロマリットが出現した。
- ライブドアは積極的な買収を繰り返し、純粋持株会社の下に、多種の企業をぶら下げる形になった。しかし経営につまずき、実質的に崩壊した。
- USENももともとの事業は有線放送だけであったが、純粋持株会社となり、積極的な買収を繰り返し、純粋持株会社の下に、多種の企業をぶら下げる形になった。しかしドメインが拡散しただけに終わり、有線放送事業以外をすべて売却し、この膨張と縮小の過程で債務を積み上げた。
脚注
- ^ “わが国のM&Aの動向と課題”. 経済社会総合研究所. 2013年3月23日閲覧。