池袋暴走事故 (2019年)
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東池袋自動車暴走死傷事故 | |
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死亡した母子のために設けられた献花台。 2019年4月28日撮影。 | |
場所 | 東京都豊島区東池袋の交差点 |
座標 | |
標的 | 自動車、歩行者など |
日付 |
2019年(平成31年)4月19日 12時25分ごろ (UTC+9〈日本標準時〉) |
概要 | 通商産業省(現:経済産業省)の元職員で無職の男性(当時87歳)の運転していた車が暴走して多重衝突事故を惹起。男性の運転者と同乗者を含む10人が重軽傷を負い2人が死亡した。 |
原因 | ブレーキとアクセルの踏み間違い |
死亡者 | 2人 |
負傷者 | 9人(加害者を除く) |
対処 | 加害者を警視庁が書類送検・東京地検が在宅起訴 |
刑事訴訟 | 未定 |
影響 |
運転手が逮捕されなかったことや、容疑者ではなく肩書で報道されたことに人々から批判の声が上がった。 高齢ドライバーの運転免許証の自主返納の増加 |
管轄 | 警視庁(目白警察署および交通捜査課)[1]・東京地方検察庁[2] |
東池袋自動車暴走死傷事故(ひがしいけぶくろ じどうしゃぼうそうししょうじこ)は、2019年(平成31年)4月19日に東京都豊島区東池袋で発生した自動車暴走死傷事故。
概要
2019年(平成31年)4月19日12時25分頃[3]、東京都豊島区東池袋の東京メトロ東池袋駅付近の交差点において通商産業省(現経済産業省)の元職員の男(当時87歳)が運転していた乗用車(二代目トヨタ・プリウス)が暴走して多重衝突事故を惹起。乗用車は赤信号を無視して交差点内の横断歩道に突っ込むなどして2人(母子)が死亡し、乗用車を運転していた男性を含む10人が負傷した[4]。
車を運転していた男性は赤信号を2回無視しており、ブレーキをかけた形跡もないことがドライブレコーダーの記録から判明した[5]。男性は事故直後に息子に電話をかけ「アクセルが戻らなくなり、人をひいた」と説明したが、警視庁が調査したところ車に不具合は見つからず、エアバッグも正常に作動していた[6][7]。そのため、警視庁は最終的にこの事故の原因を「運転手によるアクセルとブレーキの踏み間違え」と判断した[8]。
当初は男性とその同乗者(1人)を含む負傷者8人・死者2人と報道されていたが、24日になって警視庁は新たに別の母娘が軽傷を負っていた事実が判明したことを明らかにした。そのため、運転者男性を含めて死傷者は計12人となった[9]。なお運転手の男性は事故の約1年前から脚が不自由で杖を使うこともあったが[10]、その原因について通院先の医師はパーキンソン症候群の疑いがあると診断し、男性本人に「運転は許可できない」と伝えていたほか、事故後には別の医師が改めて診断した結果「パーキンソン症候群の疑いがある」と判断している[11]。
警視庁交通捜査課は事故からおよそ7か月後の11月12日に、運転手の男性を自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で東京地方検察庁へ書類送検し[1][12]、東京地検は翌年2020年2月6日に在宅起訴した[2][13][14][15]。
事故当時の様子
加害者が運転していた自動車のドライブレコーダーには、事故前後の様子が録画されていた。
警視庁によると事故現場付近の左カーブの辺りで加害者の妻が「危ないよ、どうしたの」と声をあげ、加害者は「あー、どうしたんだろう」と応じた直後に車道左側、金属製の柵[16]、縁石に衝突。周辺の防犯カメラの映像によると、そのままパニックとなって時速100キロメートル近い高速で交差点に進入。ごみ清掃車両と衝突し横転させて、回転。交差点周囲の多数の自転車、歩行者などを巻き込んだと見られる[17][3][18]。
加害者は「予約していたフレンチの時間に遅れそうだった」と制限速度の時速50キロを超えるスピードでカーブに進入。 前方のバイクや車を追い越すため、 車線を3回も変更する蛇行運転をしていた[19]。
遺族の会見
死亡した2人の告別式は2019年4月24日に開かれた[20]。同日、死亡した2人の遺族の男性が記者会見を開いた。まず事故現場の献花台に溢れるほどの花を手向けた人、亡くなった2人に寄り添い心を痛めた人の温かい心に感謝を述べた後、「最愛の妻と娘を突然失い、ただ涙することしかできない」と絶望と苦しい心境を吐露した。2人の写真を公開した経緯については「今回の事故での(2人のような)被害者と私のような悲しむ遺族を今後絶対に出してはいけないとも思いました。そのために、私は(2人の)画像を公開することを決断しました」と説明した[21]。
7月18日、遺族の男性が再度記者会見を開き、娘の動画を公開。「亡くなった愛する2人との日常がとても幸せでした。交通事故は誰かの日常や命を奪ってしまう」と強調した。更に「今後、被害者と遺族がいなくなるように、加害者には厳罰を望みます」と車を運転していた男性に対して厳罰を求める署名運動を始めたことを公表した。遺族の男性はブログを開設し、署名活動の詳細や署名用紙を掲載。また、8月3日には娘とよく遊んだという南池袋公園で署名を募った[22]。8月30日にも会見を開き、厳罰を求める署名が29万筆を超えたこと、署名活動を9月中旬まで続けることが発表された[23]。
最終的には39万1136筆の署名が集まり、9月20日に東京地検交通部に署名が提出された[24]。
11月12日、加害者が書類送検されたことを受け、遺族の男性が記者会見を開いた。その際に加害者が一部報道のインタビューに応じ、「体力に自信はあったが、おごりもあった。安全な車を開発するようにメーカーの方に心がけて頂きたい。」などと車の性能の改善が必要だと主張したことに対し、「(あの限られた映像を見た感想を前提として)見た時は体が震え出し、怒りというよりはむなしくなってしまった。親族全員がつらく、中には憤りを感じる人もいた。この7カ月間、2人の死と2人がいなくなってしまった事を24時間ずっと向き合っている。私があのインタビューを見た限りでは、加害者は2人の死と向き合っているとは思えない。」と苦言を呈した[25][26]。
事故の影響・波紋
「特別扱いされている」という噂の拡散
本事故については、警察が運転者を現行犯逮捕しなかったことや[27]、報道機関が「容疑者」ではなく敬称や肩書きで呼称したことについて[28]、「警察やメディアが特別扱いしているのではないか」と批判の声が上がったことが報じられている[29]。
運転者が元官僚だったことから、インターネットでは本事故を起こした男性について「『上級国民』だから逮捕されないのか」との書き込みが相次ぎ、拡散された[27][29]。また、同月21日に神戸市で発生した神戸市営バスによる交通死亡事故で、バスの運転手が現行犯逮捕された事例ともネット上では対比されていることも報じられている[28][29]。捜査関係者は「逮捕しないのは、事故を起こした人物も負傷して入院しており刑事訴訟規則で定められた逮捕の要件『逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合』を満たさないため」引用エラー: 無効な <ref>
タグです。名前 (name 属性) がない場合は注釈の中身が必要です[27]「元官僚だったことは事故発生からしばらく経った後に判明したことで、ネット上の批判は当たらない」と説明している[30]。
当事故の加害者(被疑者)が「容疑者」と呼称されていない点について、『読売新聞』(読売新聞社)は事故当初「警視庁による事情聴取が行われておらず、刑事手続きに入っていない点を考慮して実名+肩書呼称で報道したが、事故の重大性から敬称は使わなかった」と述べたが[31]、同紙は運転手が警視庁から事情聴取を受けたことが判明した2019年5月17日夕刊から「容疑者」と呼称している[32][33][34]、フジニュースネットワーク(FNN)は運転者の男が書類送検された11月12日以降「容疑者」呼称に切り替えている[35][36]。また『朝日新聞』[注 1]『毎日新聞』『東京新聞』[注 2]は実名+敬称で報道したほか、『日本経済新聞』[注 3]『産経新聞』[注 4]は匿名で報道した[31]。また『西日本新聞』は2019年5月3日付朝刊で「逮捕前は敬称や肩書を付けるという明確なルールによるものだ」と説明している[29]。
このような議論が生じたことについて、慶應義塾大学教授・大石裕は「男性が元官僚であったため『警察やマスコミなどがかばい合っている』という見方へと発展して批判が大きくなったのではないか」と述べたほか[28]、立教大学名誉教授・服部孝章(メディア法)は「逮捕されていない段階で『容疑者』とは表現しにくく、肩書呼称にしたことは理解できるが、捜査の進展状況により容疑者呼称に切り替えることを検討しても良いだろう。あえて匿名で報道したり、現行犯同然の状態で敬称を遣うことは違和感があっる」と指摘した[31]。また弁護士・竹田稔(元東京高裁部総括判事)は「呼称は報道各社の判断だが、社会的地位を示す肩書呼称にすることで社会的関心を集め、高齢ドライバー問題への意識を高めるきっかけになる面はあるだろう」と推測している[31]。
本事件の加害者の扱いをきっかけに「上級国民」という言葉が流行した。
運転免許証自主返納の動き
本事故の発生以後「運転免許証の自主返納をする高齢者が増えている」と報じられており、FNNは「事故発生翌週に運転免許証を自主返納した人は都内だけでも1200人にのぼったほか、同年の大型連休明けの3日間でも都内で1200人以上が自主返納をした」と報道した[38]。その後、読売新聞社が警視庁へ取材したところ、事件から半年間で運転免許証を自主返納した人は約3万7千人にのぼり、前年の同期間の約8割増となっている[39]。
なお東京都公安委員会は同年5月31日付で本件の加害者について運転免許を取り消す行政処分の決定を出した[40][41][42][43]。
脚注
注釈
- ^ 『朝日新聞』は逮捕されていない人物は通常敬称付きで報道しており[37]、広報部は敬称付きで報道した理由について「捜査対象だが、(現時点では)逮捕・書類送検されていないため」と説明した[31]。その後、2019年4月22日朝刊で「運転手の男の職歴に確証が得られた」として肩書呼称に切り替えた[31]。
- ^ ただし両紙とも職歴の裏付けが取れて以降は朝日と同様に肩書で報道している[31]。
- ^ 事故当初は「無職男性」と報道していたが、4月24日夕刊からは実名+「元院長」の肩書表記に切り替えている[31]。
- ^ 事故当初は「無職の男」と報道していたが、4月21日からは実名報道に切り替え「元院長」の肩書を付けた[31]。
出典
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- ^ 「赤信号を2回無視、ドライブレコーダーが記録 池袋事故」『朝日新聞デジタル』朝日新聞社、2019年4月20日。オリジナルの2020年3月9日時点におけるアーカイブ。2020年3月9日閲覧。
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- ^ 「都内で免許返納、池袋暴走事故後に8割増…大半が高齢者」『読売新聞』2019年11月6日。オリジナルの2019年11月10日時点におけるアーカイブ。2019年11月6日閲覧。
- ^ "Elderly man involved in fatal Ikebukuro accident to have driver's license revoked (池袋事故で運転免許を取り消された老人)" (英語). the japan times (2019年6月1日). 2019年9月17日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2019年5月31日東京夕刊第一社会面11頁「池袋暴走容疑者 免許取り消し」(読売新聞東京本社)
- ^ 「元院長の運転免許取り消し 池袋の母子死亡事故受け」『日本経済新聞』日本経済新聞社(共同通信社)、2019年5月31日、電子版。オリジナルの2020年3月9日時点におけるアーカイブ。2020年3月9日閲覧。
- ^ 「池袋暴走事故、元院長の免許取り消し処分を決定 都公安委」『産経新聞』産業経済新聞社、2019年5月31日、電子版。オリジナルの2020年3月9日時点におけるアーカイブ。2020年3月9日閲覧。