「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」の版間の差分
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| 通称 = ヘイト法<ref name="asahi2019" />、ヘイトスピーチ法<ref name="rilg" />、ヘイトスピーチ解消法<ref name="moj" />、ヘイトスピーチ規制法<ref name="noguchi2021" />、ヘイトスピーチ対策法<ref name="daijisen" /> |
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'''本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律'''(ほんぽうがいしゅっしんしゃにたいするふとうなさべつてきげんどうのかいしょうにむけたとりくみのすいしんにかんするほうりつ)とは、[[ |
'''本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律'''(ほんぽうがいしゅっしんしゃにたいするふとうなさべつてきげんどうのかいしょうにむけたとりくみのすいしんにかんするほうりつ)とは、[[2016年]](平成28年)[[6月3日]]に施行された、本邦外出身者([[外国人]])に対する不当な差別的言動([[日本のヘイトスピーチ|ヘイトスピーチ]])の解消に向けた取組を推進するため、基本理念および国と地方公共団体の責務を定めるとともに、国や地方公共団体が相談体制の整備・教育の充実・啓発活動などを実施することについて規定する[[日本]]の[[法律]]。 |
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この法律は「不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)の解消」を目的としている<ref name=":32">{{Cite web|和書 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshuppan/52/0/52_25/_pdf |title=ヘイトスピーチ解消法の問題点 |access-date=2023/9/2}}</ref>。しかし、この法律が解消を目指しているのは「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」だけで、日本人に対するヘイトスピーチは法律の対象に含まれていない<ref name=":32" /><ref name=":2">{{Cite book|和書 |author=小山常実 |title=「ヘイトスピーチ法」は日本人差別の悪法だ |date=2016/12/17 |year=2016 |publisher=自由社 |pages=14-15}}</ref>。 |
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附帯決議は「「本邦外出身者」に対するものであるか否かを問わず、国籍、人種、民族等を理由として、差別意識を助長し又は誘発する目的で行われる排他的言動は決してあってはならない」としている。しかし、附帯決議には政治的効果があるだけで、法的効力は存在しない<ref name=":4">{{Cite web|和書 |url=https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/keyword/katudo01.html |title=委員会の活動(1)法律案の審査 |access-date=2023-08-15 |publisher=参議院}}</ref>。 |
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日本人に対するヘイトスピーチを見逃さず、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」だけではなく「人種等を理由とする不当な差別的言動」全体を問題にすべきであるとの指摘がある<ref name=":32" /><ref name=":2" />。 |
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第3条では『基本理念』と称してヘイトスピーチを解消する義務を課している<ref name=":32" /><ref name=":2" />。しかし、この義務は国民だけに課されており、日本に居住する外国人は義務を課されていない<ref name=":32" /><ref name=":2" />。国民だけでなく日本居住の外国人にも義務を課すべきであるとの指摘がある<ref name=":32" /><ref name=":2" />。 |
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上記2点から、本法は、人種差別撤廃条約に違反した「法の下の平等に反する法律」ではないかと厳しく指摘されている([[本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律#批判と議論|後述]])<ref name=":32" /><ref name=":2" />。さらに、禁止規定がないなど、実効性の面でも問題があるという批判もある。当時の民進党案(野党案)ではヘイト禁止が「何人」に対しても課され、「人種等を理由とする差別」全体が禁止されていた<ref name=":2" />。 |
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このような考えから、2018年、[[国連人権理事会]]は日本政府に対する勧告の中で「あらゆる人に対するヘイトスピーチを対象に含めるよう保護範囲を適切なものとするなど、ヘイトスピーチ解消法を改正すること」を受け入れるよう日本政府に厳しく迫った<ref>国際人権ひろば No.142(2018年11月発行号)</ref>。しかし、日本政府はこれを『黙殺』し、一度もこの法律を改正していない。本法は、明らかに、権利の平等に反する法律である<ref name=":2" />。 |
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この法律について、小山常実氏らを筆頭に法の下の平等に反すると指摘する人たちは「この法律自体、日本及び日本人に対するヘイト・憎しみを込めたものである」として「ヘイト法」と呼んでいる。また、「日本人ヘイト法」や「対日ヘイト法」と呼ぶケースもある。 |
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略称は'''ヘイト法'''<ref name="asahi2019">{{Cite web2 |date=2019-06-16 |title=(社説)ヘイト法3年 根絶への歩み止めるな |url=https://www.asahi.com/articles/DA3S14057764.html |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20230331021207/https://www.asahi.com/articles/DA3S14057764.html |archive-date=2023-03-31 |access-date=2023-09-20 |website=朝日新聞デジタル }}</ref>、'''ヘイトスピーチ法'''<ref name="rilg">{{Cite web2 |title=ヘイトスピーチに関する条例 |url=http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/001_hatespeach.htm |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20220516224625/http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/001_hatespeach.htm |archive-date=2022-05-16 |access-date=2023-09-20 |publisher=地方自治研究機構 |language=ja |quote=「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ法」という。)が、議員立法により制定され、平成28年6月3日に公布されたが、大阪市条例は、この法律に先行して制定されている。}}</ref>、'''ヘイトスピーチ解消法'''<ref name="moj">{{Cite web2 |title=ヘイトスピーチ解消法施行から4年 |url=https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00006.html |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20220122110026/https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00006.html |archive-date=2022-01-22 |access-date=2023-09-20 |publisher=法務省}}</ref>、'''ヘイトスピーチ規制法'''<ref name="noguchi2021">{{Cite journal2 |last=野口 |first=有佑美 |date=2021 |title=日仏のヘイトスピーチに対する法規制に関する一考察 |url=https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20210128-0215 |url-status=live |journal=法學研究 : 法律・政治・社会 |language=ja |volume=94 |issue=1 |page=230 |archive-url=https://web.archive.org/web/20220225233500/https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20210128-0215 |archive-date=2022-02-25}}</ref>、'''ヘイトスピーチ対策法'''<ref name="daijisen">{{Cite encyclopedia |title=ヘイトスピーチ対策法 |encyclopedia=デジタル大辞泉 |url=https://kotobank.jp/word/ヘイトスピーチ対策法-1741840 |access-date=2023-09-20 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230316030612/https://kotobank.jp/word/ヘイトスピーチ対策法-1741840 |archive-date=2023-03-16 |url-status=live |via=コトバンク}}</ref>などがある。 |
略称は'''ヘイト法'''<ref name="asahi2019">{{Cite web2 |date=2019-06-16 |title=(社説)ヘイト法3年 根絶への歩み止めるな |url=https://www.asahi.com/articles/DA3S14057764.html |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20230331021207/https://www.asahi.com/articles/DA3S14057764.html |archive-date=2023-03-31 |access-date=2023-09-20 |website=朝日新聞デジタル }}</ref>、'''ヘイトスピーチ法'''<ref name="rilg">{{Cite web2 |title=ヘイトスピーチに関する条例 |url=http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/001_hatespeach.htm |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20220516224625/http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/001_hatespeach.htm |archive-date=2022-05-16 |access-date=2023-09-20 |publisher=地方自治研究機構 |language=ja |quote=「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ法」という。)が、議員立法により制定され、平成28年6月3日に公布されたが、大阪市条例は、この法律に先行して制定されている。}}</ref>、'''ヘイトスピーチ解消法'''<ref name="moj">{{Cite web2 |title=ヘイトスピーチ解消法施行から4年 |url=https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00006.html |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20220122110026/https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken05_00006.html |archive-date=2022-01-22 |access-date=2023-09-20 |publisher=法務省}}</ref>、'''ヘイトスピーチ規制法'''<ref name="noguchi2021">{{Cite journal2 |last=野口 |first=有佑美 |date=2021 |title=日仏のヘイトスピーチに対する法規制に関する一考察 |url=https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20210128-0215 |url-status=live |journal=法學研究 : 法律・政治・社会 |language=ja |volume=94 |issue=1 |page=230 |archive-url=https://web.archive.org/web/20220225233500/https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00224504-20210128-0215 |archive-date=2022-02-25}}</ref>、'''ヘイトスピーチ対策法'''<ref name="daijisen">{{Cite encyclopedia |title=ヘイトスピーチ対策法 |encyclopedia=デジタル大辞泉 |url=https://kotobank.jp/word/ヘイトスピーチ対策法-1741840 |access-date=2023-09-20 |language=ja |archive-url=https://web.archive.org/web/20230316030612/https://kotobank.jp/word/ヘイトスピーチ対策法-1741840 |archive-date=2023-03-16 |url-status=live |via=コトバンク}}</ref>などがある。 |
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<!--この記述には、過去の合意事項があります。詳しくはノートを参照。--> |
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*[[大月短期大学]][[名誉教授]]で[[作家]]の小山常実は第3条の条文について、「「国民は」のところですが、普通の国では、「何人も」というふうに規定するのです。「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」というところは、「人種等を理由にする不当な差別的言動」というふうに書くんです。」とし、「民主党案も、実はそのような書き方をしていました。民主党案のほうが、はるかにまだよかったのです。この問題に関しては、自公案は民主党案よりもひどかったんです。これは確認しておかなければいけないことです。私どもがある意味で一番信頼していた[[西田昌司]]さんが、こういう馬鹿なことをやってしまったわけです。もう日本は終わりだと思いました、本当に、法律が通った時にそう思いました。最近、ちょっと何とか元気を回復しましたけれども。」と民主党案への評価を述べている。 また、「この第3条ですね。「国民は」と書いていますから、国民だけに義務を課すわけです。これはまさしく、日本人を差別するものです。」「日本人を潜在的な差別者というふうにとらえるわけです。差別者は日本人だけであるという考え方ですね。外国人が日本人を差別するというふうには、捉えないんですね。実際には日本人を著しく差別しているわけですが、それを差別とはまったくとらえようとしないんです。そういう考え方が第3条には見事に込められているわけです。」と主張している。 その上で「だから、名称自体と第3条、ここから明確に今回の法律は「日本人差別法」であると言えます。ですから、ちょっと先走りますと、明かに[[人種差別撤廃条約]]に違反しているわけです。」と批判した<ref name=":2"/>。 |
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⚫ | *[[弁護士#日本の弁護士|弁護士]]の堀内恭彦は、「外国人に対する差別的言動は許されないが日本人に対する差別的言動については問題にしないというおかしな法律である」と評し、このような理念法が成立すれば、その後の個別具体的な法律が作りやすくなるため、今後、必ず禁止や罰則が付き「ヘイトスピーチ審議会」に特定の人種、利害関係者を入れ込むという法律制定の動きが出てくると危惧している。さらに、法律の成立過程を見る限り、自民党を初めとした多くの国会議員に「表現の自由」が侵害されることへの危機意識が感じられないと主張している<ref name=":0">{{Cite news |title=ヘイト規制法 低すぎる危機意識 |newspaper=産経新聞 |date=2016-05-26 |url=https://www.sankei.com/article/20160526-GOMQ6DAFZROMHLDN2Q3YJZ67UU/ |accessdate=2016-12-28}}</ref>。 |
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⚫ | *[[ヒューライツ大阪]]『国際人権ひろば No.128(2016年07月発行号)』では、「ただし、この法律が保護の対象としているのは「適法に居住する日本以外の国・地域の出身者」だけにとどまります。また、この法律にはヘイトスピーチの「禁止条項」もありません。」としてヘイトスピーチ解消法の規定が不十分だと批判している。 また、『ヘイトスピーチ解消のための法律を歓迎しつつ、「実効性」を考える』と題して「また、具体的な施策を実施するための、財政措置もありません。ヘイトの解消に「実効性」ある法とは何かを考え、さらにもう一歩を踏み出すことが、今後の課題です。」としている。 また、「法の施行にあわせて、警察庁は各都道府県警に、ヘイトスピーチに伴う違法行為に対して厳しく対処するよう通達しましたが、それでも禁止規定がない限り、ヘイトスピーチそのものを取り締まることはできません。不当な差別的言動の解消手段は、あくまで「相談体制の整備」と「更なる人権教育と人権啓発」を通じて国民の理解と協力を得ることだと記されています。深刻な人権問題の解決にとって、意識・態度の変革が重要だということは言うまでもありません。しかし、「教育・啓発をしている」ことが、ヘイトスピーチの解消や、被害者の実効的な救済ができないことの言い訳にされてはならないでしょう。」とも指摘している。 |
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⚫ | *[[憲法学|憲法学者]]の[[八木秀次 (法学者)|八木秀次]]は、具体的にどのような行為がヘイトスピーチに当たるのか不明確であり、[[地方公共団体|自治体]]や教育現場が法律を拡大解釈し過激化する恐れがあると懸念を示している。例えば、[[日本における外国人参政権|外国人参政権]]が無いのも、[[朝鮮学校|朝鮮人学校]]に補助金を出さないのも、戦時中の朝鮮人強制連行が歴史的事実として誤りだと主張するのも、在日韓国・朝鮮人に対する「侮辱」「差別」だと訴えられる可能性も否定できないとしている。そのため、政府は「どこまでが不当な差別的言動で、どこまでが許される表現なのか」を示す具体的な[[ガイドライン]]を作るべきであると述べている<ref>{{Cite news |title=拡大解釈を懸念する「外国人参政権ないのは差別」「強制連行否定も侮辱」… 八木秀次・麗澤大教授 |newspaper=産経新聞 |date=2016-05-25 |url=https://www.sankei.com/article/20160525-BTU42BU7JZP4JFLDHVUNFNIGXU/ |accessdate=2016-12-28}}</ref>。 |
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==== その他 ==== |
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*小山常実は、ヘイトスピーチ解消法の問題点として「韓国から物を売り込みに来た。その時に日本製品と比較して、「あれ、これは日本製品よりもこの点が劣るぞ、韓国の技術はまだまだだね」なんて言ったらどうなるか。「今の言葉は韓国人への侮辱である。名誉と誇りを傷つけられた。日本にはヘイトスピーチ規制法があるそうだが、場合によっては出るところに出て訴えることも考える」商談どころではありません。」を挙げている。 また、「企業は、こういうことが一番怖い。社員がヘイトスピーチをやって訴えられたと報道されれば、例えその実態がどうであれ企業のイメージはがた落ちです。その時点で、それを言ったサラリーマンの人生も終わるでしょう。韓国はおろか中国などがこの法律を盾にしていくらでも「押し売りビジネス」をやることが可能となるのです。」としている。 その上で日本人に対するヘイトスピーチを見逃していることなども紹介し、「稀代の悪法と断言できます!」と批判している<ref>{{Cite book|和書 |author=小山常実 |title=「ヘイトスピーチ法」は日本人差別の悪法だ |date=2016/12/17 |year=2016 |publisher=自由社}}</ref>。{{要ページ番号|date=2023年9月21日}} |
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=== その他の議論 === |
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==概要== |
==概要== |
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**第7条(啓発活動等) |
**第7条(啓発活動等) |
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*附則 |
*附則 |
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==賛否== |
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⚫ | *[[日本大学]][[法学部]][[非常勤講師]]の田上雄大は『ヘイトスピーチ解消法の問題点』という論文の中で「ヘイトスピーチを本邦外出身者に対して行うのが何も国民に限られないため,本邦外出身者が本邦外出身者に対してヘイトスピーチを行うこともありうるのである.ただし,2 条では,ヘイトスピーチを行う主体につい規定していないので,本邦外出身者が行ったものであったとしても本邦外出身者に向けられたものであれば,ヘイトスピーチに該当しうる.それにもかかわらず,その国民のみが解消に努めなければならないのは,[[法の下の平等]]に照らして問題がある」と批判した<ref name=":32" |
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⚫ | *[[弁護士#日本の弁護士|弁護士]]の堀内恭彦は、「外国人に対する差別的言動は許されないが日本人に対する差別的言動については問題にしないというおかしな法律である」と評し、このような理念法が成立すれば、その後の個別具体的な法律が作りやすくなるため、今後、必ず禁止や罰則が付き「ヘイトスピーチ審議会」に特定の人種、利害関係者を入れ込むという法律制定の動きが出てくると危惧している。さらに、法律の成立過程を見る限り、自民党を初めとした多くの国会議員に「表現の自由」が侵害されることへの危機意識が感じられないと主張している<ref name=":0">{{Cite news |title=ヘイト規制法 低すぎる危機意識 |newspaper=産経新聞 |date=2016-05-26 |url=https://www.sankei.com/article/20160526-GOMQ6DAFZROMHLDN2Q3YJZ67UU/ |accessdate=2016-12-28}}</ref>。 |
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⚫ | *[[ヒューライツ大阪]]『国際人権ひろば No.128(2016年07月発行号)』では、「ただし、この法律が保護の対象としているのは「適法に居住する日本以外の国・地域の出身者」だけにとどまります。また、この法律にはヘイトスピーチの「禁止条項」もありません。」としてヘイトスピーチ解消法の規定が不十分だと批判している。 また、『ヘイトスピーチ解消のための法律を歓迎しつつ、「実効性」を考える』と題して「また、具体的な施策を実施するための、財政措置もありません。ヘイトの解消に「実効性」ある法とは何かを考え、さらにもう一歩を踏み出すことが、今後の課題です。」としている。 また、「法の施行にあわせて、警察庁は各都道府県警に、ヘイトスピーチに伴う違法行為に対して厳しく対処するよう通達しましたが、それでも禁止規定がない限り、ヘイトスピーチそのものを取り締まることはできません。不当な差別的言動の解消手段は、あくまで「相談体制の整備」と「更なる人権教育と人権啓発」を通じて国民の理解と協力を得ることだと記されています。深刻な人権問題の解決にとって、意識・態度の変革が重要だということは言うまでもありません。しかし、「教育・啓発をしている」ことが、ヘイトスピーチの解消や、被害者の実効的な救済ができないことの言い訳にされてはならないでしょう。」とも指摘している。 |
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⚫ | *[[憲法学|憲法学者]]の[[八木秀次 (法学者)|八木秀次]]は、具体的にどのような行為がヘイトスピーチに当たるのか不明確であり、[[地方公共団体|自治体]]や教育現場が法律を拡大解釈し過激化する恐れがあると懸念を示している。例えば、[[日本における外国人参政権|外国人参政権]]が無いのも、[[朝鮮学校|朝鮮人学校]]に補助金を出さないのも、戦時中の朝鮮人強制連行が歴史的事実として誤りだと主張するのも、在日韓国・朝鮮人に対する「侮辱」「差別」だと訴えられる可能性も否定できないとしている。そのため、政府は「どこまでが不当な差別的言動で、どこまでが許される表現なのか」を示す具体的な[[ガイドライン]]を作るべきであると述べている<ref>{{Cite news |title=拡大解釈を懸念する「外国人参政権ないのは差別」「強制連行否定も侮辱」… 八木秀次・麗澤大教授 |newspaper=産経新聞 |date=2016-05-25 |url=https://www.sankei.com/article/20160525-BTU42BU7JZP4JFLDHVUNFNIGXU/ |accessdate=2016-12-28}}</ref>。 |
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==== 積極的評価 ==== |
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*[[朝鮮籍|韓国籍]][[在日韓国・朝鮮人|在日朝鮮人]]で[[政治活動家]]の[[李信恵]]は、自身の[[Twitter]]に「路上が[[国会 (日本)|国会]]に繋がった。ヘイトスピーチ対策法は、路上に立ってたみんなが作った法律だと思う。嬉しくて、涙が止まらない。」などと書き込み、ヘイトスピーチのデモに対する抗議行動など、差別反対の運動が法案整備につながったと評価した<ref>{{Cite news |title=ヘイトスピーチ対策法、成立へ 関係者が悩みながら評価したその意義とは |newspaper=The Huffington Post |date=2016-05-12 |author=吉野太一郎 |url=https://www.huffingtonpost.jp/2016/05/12/hate-speech-law-to-enact_n_9925254.html |accessdate=2016-12-28}}</ref>。 |
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==脚注== |
==脚注== |
2024年6月29日 (土) 06:13時点における版
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律 | |
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日本の法令 | |
通称・略称 | ヘイト法[1]、ヘイトスピーチ法[2]、ヘイトスピーチ解消法[3]、ヘイトスピーチ規制法[4]、ヘイトスピーチ対策法[5] |
法令番号 | 平成28年法律第68号 |
種類 | 司法 |
効力 | 現行法 |
成立 | 2016年5月24日 |
公布 | 2016年6月3日 |
施行 | 2016年6月3日 |
所管 | 法務省 |
主な内容 | ヘイトスピーチの解消に向けた取組の推進 |
条文リンク | 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律 - e-Gov法令検索 |
ウィキソース原文 |
本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ほんぽうがいしゅっしんしゃにたいするふとうなさべつてきげんどうのかいしょうにむけたとりくみのすいしんにかんするほうりつ)とは、2016年(平成28年)6月3日に施行された、本邦外出身者(外国人)に対する不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)の解消に向けた取組を推進するため、基本理念および国と地方公共団体の責務を定めるとともに、国や地方公共団体が相談体制の整備・教育の充実・啓発活動などを実施することについて規定する日本の法律。
この法律は「不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)の解消」を目的としている[6]。しかし、この法律が解消を目指しているのは「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」だけで、日本人に対するヘイトスピーチは法律の対象に含まれていない[6][7]。
附帯決議は「「本邦外出身者」に対するものであるか否かを問わず、国籍、人種、民族等を理由として、差別意識を助長し又は誘発する目的で行われる排他的言動は決してあってはならない」としている。しかし、附帯決議には政治的効果があるだけで、法的効力は存在しない[8]。
日本人に対するヘイトスピーチを見逃さず、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」だけではなく「人種等を理由とする不当な差別的言動」全体を問題にすべきであるとの指摘がある[6][7]。
第3条では『基本理念』と称してヘイトスピーチを解消する義務を課している[6][7]。しかし、この義務は国民だけに課されており、日本に居住する外国人は義務を課されていない[6][7]。国民だけでなく日本居住の外国人にも義務を課すべきであるとの指摘がある[6][7]。
上記2点から、本法は、人種差別撤廃条約に違反した「法の下の平等に反する法律」ではないかと厳しく指摘されている(後述)[6][7]。さらに、禁止規定がないなど、実効性の面でも問題があるという批判もある。当時の民進党案(野党案)ではヘイト禁止が「何人」に対しても課され、「人種等を理由とする差別」全体が禁止されていた[7]。
このような考えから、2018年、国連人権理事会は日本政府に対する勧告の中で「あらゆる人に対するヘイトスピーチを対象に含めるよう保護範囲を適切なものとするなど、ヘイトスピーチ解消法を改正すること」を受け入れるよう日本政府に厳しく迫った[9]。しかし、日本政府はこれを『黙殺』し、一度もこの法律を改正していない。本法は、明らかに、権利の平等に反する法律である[7]。
この法律について、小山常実氏らを筆頭に法の下の平等に反すると指摘する人たちは「この法律自体、日本及び日本人に対するヘイト・憎しみを込めたものである」として「ヘイト法」と呼んでいる。また、「日本人ヘイト法」や「対日ヘイト法」と呼ぶケースもある。
略称はヘイト法[1]、ヘイトスピーチ法[2]、ヘイトスピーチ解消法[3]、ヘイトスピーチ規制法[4]、ヘイトスピーチ対策法[5]などがある。
批判と議論
批判
この法律に対しては、ここに載せているものだけで言うと、「法の下の平等に反する」「規定が不十分で実効性に乏しい」「対策が不十分」「表現の自由への侵害」との種類に分けられる。
法の下の平等に反する
- 大月短期大学名誉教授で作家の小山常実は第3条の条文について、「「国民は」のところですが、普通の国では、「何人も」というふうに規定するのです。「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」というところは、「人種等を理由にする不当な差別的言動」というふうに書くんです。」とし、「民主党案も、実はそのような書き方をしていました。民主党案のほうが、はるかにまだよかったのです。この問題に関しては、自公案は民主党案よりもひどかったんです。これは確認しておかなければいけないことです。私どもがある意味で一番信頼していた西田昌司さんが、こういう馬鹿なことをやってしまったわけです。もう日本は終わりだと思いました、本当に、法律が通った時にそう思いました。最近、ちょっと何とか元気を回復しましたけれども。」と民主党案への評価を述べている。 また、「この第3条ですね。「国民は」と書いていますから、国民だけに義務を課すわけです。これはまさしく、日本人を差別するものです。」「日本人を潜在的な差別者というふうにとらえるわけです。差別者は日本人だけであるという考え方ですね。外国人が日本人を差別するというふうには、捉えないんですね。実際には日本人を著しく差別しているわけですが、それを差別とはまったくとらえようとしないんです。そういう考え方が第3条には見事に込められているわけです。」と主張している。 その上で「だから、名称自体と第3条、ここから明確に今回の法律は「日本人差別法」であると言えます。ですから、ちょっと先走りますと、明かに人種差別撤廃条約に違反しているわけです。」と批判した[7]。
- 日本大学法学部非常勤講師の田上雄大は『ヘイトスピーチ解消法の問題点』という論文の中で「ヘイトスピーチを本邦外出身者に対して行うのが何も国民に限られないため,本邦外出身者が本邦外出身者に対してヘイトスピーチを行うこともありうるのである.ただし,2 条では,ヘイトスピーチを行う主体につい規定していないので,本邦外出身者が行ったものであったとしても本邦外出身者に向けられたものであれば,ヘイトスピーチに該当しうる.それにもかかわらず,その国民のみが解消に努めなければならないのは,法の下の平等に照らして問題がある」と批判した[6]。
- 弁護士の堀内恭彦は、「外国人に対する差別的言動は許されないが日本人に対する差別的言動については問題にしないというおかしな法律である」と評し、このような理念法が成立すれば、その後の個別具体的な法律が作りやすくなるため、今後、必ず禁止や罰則が付き「ヘイトスピーチ審議会」に特定の人種、利害関係者を入れ込むという法律制定の動きが出てくると危惧している。さらに、法律の成立過程を見る限り、自民党を初めとした多くの国会議員に「表現の自由」が侵害されることへの危機意識が感じられないと主張している[10]。
規定が不十分で実効性に乏しい
- ヒューライツ大阪『国際人権ひろば No.128(2016年07月発行号)』では、「ただし、この法律が保護の対象としているのは「適法に居住する日本以外の国・地域の出身者」だけにとどまります。また、この法律にはヘイトスピーチの「禁止条項」もありません。」としてヘイトスピーチ解消法の規定が不十分だと批判している。 また、『ヘイトスピーチ解消のための法律を歓迎しつつ、「実効性」を考える』と題して「また、具体的な施策を実施するための、財政措置もありません。ヘイトの解消に「実効性」ある法とは何かを考え、さらにもう一歩を踏み出すことが、今後の課題です。」としている。 また、「法の施行にあわせて、警察庁は各都道府県警に、ヘイトスピーチに伴う違法行為に対して厳しく対処するよう通達しましたが、それでも禁止規定がない限り、ヘイトスピーチそのものを取り締まることはできません。不当な差別的言動の解消手段は、あくまで「相談体制の整備」と「更なる人権教育と人権啓発」を通じて国民の理解と協力を得ることだと記されています。深刻な人権問題の解決にとって、意識・態度の変革が重要だということは言うまでもありません。しかし、「教育・啓発をしている」ことが、ヘイトスピーチの解消や、被害者の実効的な救済ができないことの言い訳にされてはならないでしょう。」とも指摘している。
対策が不十分
- 国連人権理事会は、ヘイトスピーチ解消法施行後もなくならない現状に懸念を表明し、「対策が限定的で不十分だとの認識」を示した[11]。
- 関東弁護士会連合会は、ヘイトスピーチ解消法に関するアンケートを実施し、「責務を果たそうとする姿勢は見られるが、全体として取り組みは不十分」と結論付けた[12]。
- 金哲敏弁護士は、「ヘイトスピーチ対策は不十分。」と指摘した[13]。
表現の自由への侵害
- 憲法学者の八木秀次は、具体的にどのような行為がヘイトスピーチに当たるのか不明確であり、自治体や教育現場が法律を拡大解釈し過激化する恐れがあると懸念を示している。例えば、外国人参政権が無いのも、朝鮮人学校に補助金を出さないのも、戦時中の朝鮮人強制連行が歴史的事実として誤りだと主張するのも、在日韓国・朝鮮人に対する「侮辱」「差別」だと訴えられる可能性も否定できないとしている。そのため、政府は「どこまでが不当な差別的言動で、どこまでが許される表現なのか」を示す具体的なガイドラインを作るべきであると述べている[14]。
- 産経新聞は『やはり危惧した通り…ヘイトスピーチ解消法による表現の自由の規制が始まった 自民党の責任は重いぞ!』という記事の中でヘイトスピーチ解消法に基づく「川崎市や横浜地裁川崎支部のような決定は、表現の自由に対する「事前規制」につながる」と批判した[15]。
その他
- 小山常実は、ヘイトスピーチ解消法の問題点として「韓国から物を売り込みに来た。その時に日本製品と比較して、「あれ、これは日本製品よりもこの点が劣るぞ、韓国の技術はまだまだだね」なんて言ったらどうなるか。「今の言葉は韓国人への侮辱である。名誉と誇りを傷つけられた。日本にはヘイトスピーチ規制法があるそうだが、場合によっては出るところに出て訴えることも考える」商談どころではありません。」を挙げている。 また、「企業は、こういうことが一番怖い。社員がヘイトスピーチをやって訴えられたと報道されれば、例えその実態がどうであれ企業のイメージはがた落ちです。その時点で、それを言ったサラリーマンの人生も終わるでしょう。韓国はおろか中国などがこの法律を盾にしていくらでも「押し売りビジネス」をやることが可能となるのです。」としている。 その上で日本人に対するヘイトスピーチを見逃していることなども紹介し、「稀代の悪法と断言できます!」と批判している[16]。[要ページ番号]
その他の議論
消極的評価と課題
- 東京新聞は『ヘイトスピーチ解消法5年 露骨なデモ減ったが…やまぬ攻撃「差別を可視化し、実効性ある規制法を」』という記事の中で「街頭でのヘイトは減少」と評価する一方、「それでも残る課題」の中で「憲法の「表現の自由」との兼ね合いから、条例制定に二の足を踏む自治体も少なくない」とした。
概要
この法律が解消すべきとする「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」は「差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑するなど、本邦の域外にある国又は地域の出身であることを理由として、本邦外出身者を地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」と定義された(第2条)。
「基本理念」を定めた第3条の中では「国民は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消の必要性に対する理解を深めるとともに、本邦外出身者に対する不当な差別的言動のない社会の実現に寄与するよう努めなければならない。」として国民の責務が規定された。
このほか、国や地方公共団体の責務、相談体制の整備、教育の充実、啓発活動等が規定されている。
法律の内容
前文
- 法律が制定されるようになった経緯として「我が国の地域社会から排除することを煽動する不当な差別的言動」により「多大な苦痛を強いられる」人がいること、「当該地域社会に深刻な亀裂を生じさせている」を挙げている。
目的
- 第1条において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消が喫緊の課題であることに鑑み、その解消に向けた取組について、基本理念を定め、及び国等の責務を明らかにするとともに、基本的施策を定め、これを推進することを目的」とする。
定義
- 第2条において「本邦外出身者に対する不当な差別的言動」を「本邦の域外にある国若しくは地域の出身である者又はその子孫であって適法に居住するもの」に対する「差別的意識を助長し又は誘発する目的で公然とその生命、身体、自由、名誉若しくは財産に危害を加える旨を告知し又は本邦外出身者を著しく侮蔑する」ものと定義した。
基本的施策・検討
- 本邦外出身者に対する不当な差別的言動について、以下のように定めている。
- 国民は、その解消の必要性への理解を深めるとともに、これがない社会の実現に寄与するよう努めなければならない(3条)。
- 国は、その解消に向けた取組を実施するとともに、地方公共団体が実施するその解消に向けた取組を推進するために助言などの必要な措置を講ずる責務を有し(4条1項)、地方公共団体は、その解消に向けた取組に、国との役割分担を踏まえ、地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする(4条2項)。
- 国は、これに関する相談に応ずるとともに、これに関する紛争の防止や解決を図ることができるよう、体制を整備する(5条1項)・これを解消するための教育活動を実施するとともに、その理解を深めることを目的とする広報などの啓発活動を実施し、そのために必要な取組を行う(6条1項及び7条1項)。
- 地方公共団体は、国との役割分担を踏まえ、地域の実情に応じ、上記の施策を行うよう努めるものとする(5条2項、6条2項及び7条2項)。
- 不当な差別的言動に係る取組については、施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする(附則2項)。
経過
第189回国会で、参議院に議員立法として、以下のことについて定める[17]「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案」が提出されたが閉会中審査となった[17]。
- 人種などを理由とする不当な差別的行為により他人の権利利益を侵害することを禁止すること(罰則は設けない)
- 人種などを理由とする差別を防止するため、国及び地方公共団体の責務・基本方針の策定・国会への年次報告・人種等差別防止政策審議会の設置について定めること
- 相談体制の整備・啓発活動・人権教育の充実・インターネットでの自主的取組、地域での活動や民間団体の支援・実態調査の実施・関係者の意見の反映を基本的施策として定めること
第190回国会で、参議院に議員立法として「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」が提出された[18]。
第190回国会で、参議院法務委員会で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案について以下の修正がされた。
- 本邦外出身者に対する不当な差別的言動の定義に「本邦外出身者を著しく侮蔑する」を追加する(2条)。
- 不当な差別的言動に係る取組については、施行後における本邦外出身者に対する不当な差別的言動の実態等を勘案し、必要に応じ、検討が加えられるものとする旨の規定を追加する(附則2項)。
第190回国会で、2016年(平成28年)5月13日に参議院で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案は修正され[18]、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案は否決された[17]。同年5月24日に衆議院で本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案は可決され[18]、本法は成立した。
2016年(平成28年)6月3日に公布され、「公布の日から施行する」(附則1項)こととなり、同日から施行した。
構成
- 前文
- 第1章 総則
- 第1条(目的)
- 第2条(定義)
- 第3条(基本理念)
- 第4条(国及び地方公共団体の責務)
- 第2章 基本的施策
- 第5条(相談体制の整備)
- 第6条(教育の充実等)
- 第7条(啓発活動等)
- 附則
脚注
- ^ a b "(社説)ヘイト法3年 根絶への歩み止めるな". 朝日新聞デジタル. 16 June 2019. 2023年3月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月20日閲覧。
- ^ a b "ヘイトスピーチに関する条例". 地方自治研究機構. 2022年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月20日閲覧。
「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下「ヘイトスピーチ法」という。)が、議員立法により制定され、平成28年6月3日に公布されたが、大阪市条例は、この法律に先行して制定されている。
- ^ a b "ヘイトスピーチ解消法施行から4年". 法務省. 2022年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年9月20日閲覧。
- ^ a b 野口, 有佑美 (2021). "日仏のヘイトスピーチに対する法規制に関する一考察". 法學研究 : 法律・政治・社会. 94 (1): 230. 2022年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ a b 「ヘイトスピーチ対策法」『デジタル大辞泉』。オリジナルの2023年3月16日時点におけるアーカイブ 。コトバンクより2023年9月20日閲覧。
- ^ a b c d e f g h “ヘイトスピーチ解消法の問題点”. 2023年9月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 小山常実『「ヘイトスピーチ法」は日本人差別の悪法だ』自由社、2016年12月17日、14-15頁。
- ^ “委員会の活動(1)法律案の審査”. 参議院. 2023年8月15日閲覧。
- ^ 国際人権ひろば No.142(2018年11月発行号)
- ^ “ヘイト規制法 低すぎる危機意識”. 産経新聞. (2016年5月26日) 2016年12月28日閲覧。
- ^ 「日本のヘイト対策「限定的で不十分」 国連委が強化勧告」『朝日新聞』2018年8月30日。
- ^ “ヘイトスピーチ対策「不十分」”. 2023年9月18日閲覧。
- ^ 「朝鮮人虐殺生んだ差別感情、今も 大量懲戒請求受けた在日コリアンの弁護士「国のヘイト対策不十分」」『東京新聞』2023年8月31日。
- ^ “拡大解釈を懸念する「外国人参政権ないのは差別」「強制連行否定も侮辱」… 八木秀次・麗澤大教授”. 産経新聞. (2016年5月25日) 2016年12月28日閲覧。
- ^ 「やはり危惧した通り…ヘイトスピーチ解消法による表現の自由の規制が始まった 自民党の責任は重いぞ!」『産経新聞』2016年6月25日。
- ^ 小山常実『「ヘイトスピーチ法」は日本人差別の悪法だ』自由社、2016年12月17日。
- ^ a b c “人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律案:参議院”. 参議院. 2016年12月28日閲覧。
- ^ a b c “本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案:参議院”. 参議院. 2016年12月28日閲覧。
関連書籍
- 魚住裕一郎「ヘイトスピーチ解消法 成立の経緯と基本的な考え方」(第一法規株式会社) ISBN 978-4474056817
- (監修)師岡康子、(著, 編集)外国人人権法連絡会「Q&Aヘイトスピーチ解消法」(現代人文社) ISBN 978-4877986469