「ノート:印章」の版間の差分
「はんこ」への移動の提案 |
(相違点なし)
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2007年1月23日 (火) 08:23時点における版
役所・金融機関にて聞き取り調査・ならびに関連する文献を調べた結果、印鑑については、次の事実が判明しておりますので、本記事の「はんこ」への移動を提案します。
印鑑の定義
1.由来は、江戸時代、関所や番所になどに届けておく「印影」の見本です。
2.現代においては、印の真偽を鑑定するために、市町村役場や銀行・登記所・取引先などにあらかじめ提出しておく、実印の印影とされています。
3.印鑑は所有・譲渡・持ち運ぶことが可能です。ただし、それは割符・台紙など押印された結果を持ち運べるということを指します。たとえば「印鑑ください」という言葉に対しては、当然、印章本体ではなく「押印した結果」を渡すことで運用されています。
以上の事実から、印鑑は印章(はんこ本体)を含みませんし、また印鑑という名称は日本固有と推定されます。
定義の裏付け
1.言語的裏付け 印鑑の「鑑」は、年鑑や人名鑑と同じ、情報を書き込んだものを指します。 多くは収集されて綴じられることを想定しており、例として「印鑑簿」「印鑑帳」があります。
2.法的裏付け 商業登記法第9条の3では「印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。」とされており、平面でなければならない(印章が含まれない)ことが明記されています。 ・刑法第167条では私印を「印章又は署名」としており、印鑑は署名として扱われています。
3.実務的裏付け 銀行・郵便貯金では印章・印影・印鑑はそれぞれ別のものとして定義されており(後述)、現実に運用されています。
印章・印影・印鑑
多くの背景から、印章・印影・印鑑は、大きく次のように定義できます。
- 印章・・・はんこの本体側。印材を加工・成形して作られる
- 印影・・・押された結果・インク側
- 印鑑・・・照合用の印影
ただし、辞典に掲載するにあたり、これらの定義が国民生活と乖離したものであってはなりませんので、思慮したうえ、「生活」に密着し・もっとも「はんこ」を扱うであろう「金融機関」に問合せを行いました。 その結果、都市銀行では、おおむねこのとおりの運用規定であるとのことでしたが、規定そのもののコピーはしていただけませんでした。 しかし、郵便貯金は運用規定が公開されており、「郵便貯金等規定6の2・暗証取扱規定」として
- はんこ本体の変更を「印章変更」
- 台紙に押印したものを「印影」
- 照合に用いる印影を「印鑑」
と呼んでいることがあきらかとなっています。 以上の事実から、この定義は現実に限りなく即しているものと思われます。
誤用の歴史
川端康成の1935年の作品・「田舎芝居」において、「竹三郎は里子の母・しな印鑑を盗用して」とあり、この時点で印鑑と印章の混同らしきものが確認できます。 印鑑簿が法律に登場するのは、1900年司法省令第18号(登記所の備え付け帳簿等)であり、この時点では、誤用はありません。 したがって、おそらくはこの間に混同がはじまり、それがのちの誤用につながっているものと推定されています。 ※なおこれについては、現在も引き続き調査中です
現在、一部の印章店はSEO対策のためか、あえて印鑑という言葉をサイト上に多用し集客している例があります。なお、これにも歴史があり、ルーツは職業別電話帳がタウンページになった際に、はんこ・はんこ屋だけでなく「印鑑」などキーワードが自由化されはじめ、近年は「印鑑製造」なども使用できるようになっています。
記事名「印鑑」の問題点
- Wikipedia内での他の項目に対して、実際に不具合が生じています。
例として記事:電子署名があげられます。日本の電子署名法は、はんこ制度を援用するかたちで制定されているため、Wikipediaに限らず、いくつかの解説記事で はんこ制度との比較が用いられることがよくあります。
Wikipedia以外の記事では、公開鍵と印鑑、電子証明書と印鑑証明書を対比して解説していますが、Wikipediaでは 印鑑が印影・印章と混同されて記載されているため、電子署名の記事において「(公開鍵は)印鑑照合に使う台紙に対応するものである」という誤った記述に発展しています。
- 問題点は本記事冒頭の英訳にもあらわれています。本記事では印鑑のことを 英:seal としていますが、はんこは「Stamp」であることはあきらかです。たしかに 印鑑を公印と解釈した場合 seal とするのは妥当ですが、seal は 封緘(粘土樹脂や刻印)も含まれ、これでは他国に誤解を生じさせてしまう可能性があります。日本の運用実態としては Stamp としたほうが、適切であり、また、それを行うにあたり、印鑑の記事内にあることそのものが支障となってしまいます。
- 本記事の履歴を見れば、本記事の最初の執筆者は、「印鑑」が、まさか“はんこ”や“印章”からの転送を受ける事態になることは想定してなかったと思われます。
移動先を「はんこ」とする理由
はんこ制度そのものをあらわす言葉は、印・印章・判子・ハンコなどがあります。 しかし、印章業界そのものは、実物側を「印章」と呼び、はんこの制度・風習全般を「はんこ」と呼ぶならわしとなっています。 これは、業界誌の名称(「月刊現代印章」や「はんこコレクション」)にもあらわれています。 また 別項で述べている stamp の和訳が「はん」「はんこ」であること。さらに「はんこ」は、花押や手書判など古典印章も含むことばであもあるため、記事名は「はんこ」が適切であると考えます。
もし、はんこを「印鑑」と呼ぶ風習が日本に定着しているとするなら別ですが、しかしここまで述べたとおりそれは否定されています。 慣例として使用すること(川端康成の例)を まちがいだとは言いませんが、辞典としてはできる限りの正確性をこころがけたほうがよいと考え移動を提案します。--ちん 2007年1月23日 (火) 08:23 (UTC)
出典
- 大日本国語辞典 1巻 あ-き 富山房 1915
- 日本国語大辞典 第二版 第二巻 小学館 2001
- 刑法犯・犯罪事実記載事例 令文社 2002
- 広辞苑 第三版 岩波書店 1988